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2016年12月 1日 (木)

イヤホンマン【ピンク地底人】161130

2016年11月30日 ライト商會 (65分)

久しぶりのピンク地底人だったが、自分が植え付けているイメージとあまり変わってはいなかった。
シュールな設定の中で、厳しい現実をもがきながら生きる人たちのこれからへの道を描いているような。
これまでのことは、どこかで終わりを迎える。それが正しいと言われていたことでも、誤りだったとされて終わるかもしれないし、いつまでも正論として生き残るかもしれない。
それでも、時間は経ち、自分たちはその流れにのって、その先へと流されていく。
過去に囚われて、それにしがみついて、感情をその頃のままに残していては、前へは進めない。
変わっていかないといけない。前へ向かって歩まないといけない。自分のしたいことを実現しながら。
不条理だろうが、そうやって生きていかないといけないのだろう。
そんなどうしようもないやるせなさのある悲哀に辛さも感じるが、それが出来る、そうしてきた人間の強さもほのめかされたような話だった。

京都のとある喫茶店。
銀色1が、ノートパソコンを開きながら、さほど好きでもないのに、ドリアを食べている。
こんな夜遅くに食べても太らないと言う銀色1に、ダイエット中の店員は羨ましさも込めて、呆れたように話しかける。人間は見かけを気にし過ぎると銀色1は平然としている。
毎日ドリア。さほど好きでもないのに。その理由が知りたい。それに、なんでドリアって名前なんだろう。
ドって言うキツイ感じの響きかな。それがグツグツしている見かけの地獄感とマッチする。
そんな会話をしていると、銀色2が入って来る。店員はちょっと女の表情を見せる。
銀色2は、デスメタルを聞きながら、ドリンクバーを注文。地獄感が高まる。
銀色2は、今日も街中で人間から嫌な思いをさせられた模様。
銀色2は、脚本を机の上に出す。銀色1が執筆した脚本。
日清戦争のくだりはいい。でも、銀色が最後、人間を殺して終わりというラストは厳しい。何とか対話で解決したみたいにはできないか。
そんな銀色2の言葉に銀色1は反発。迫害の歴史を描いて何が悪いのか。甘過ぎる。
怒りを鎮めるために、銀色2はパフェを奢る。注文を受ける店員に、さりげない褒め言葉をかけて、デレデレにさせて、さらには、パフェを食べれる店でのデートの約束を。
すっかり人間と仲良くやっている銀色2に、銀色1は苛立ちを隠せない。

外からおかしな音がする。スースー。
窓を開けて、外を見ると、そこにはバンクシーが、スプレーアートをしていた。
自分たちの反逆の魂を絵に込めたスプレーアート。
銀色1は、顔を拭いて、その銀色を輝かせて、外へ向かう。
店員がパフェを持って来る。
銀色2は、銀色1はトイレに行ったと嘘をつく。どうやら、友達である人間にも知られてはいけない行動らしい。
店員は、それを聞き、複雑な表情を浮かべながら、よく分からない自分のおかしな癖を語り出す。誰かがトイレに行くと、その排泄する姿を思い浮かべてしまうらしい。
銀色2が、話を合わせて、トイレのフタの必要性という素朴な疑問を話すと、店員は思った以上に食いついてきて、トイレのフタの必要性を、臭いものにフタをするという歴史的な観点、排泄物を流す時にフタをしておかないと人に害があるという機能的な観点から説明を始める。
調子に乗って、バカな話をしてしまった。自分を責める店員を銀色2は、きどって、慰める。二人はいい感じに。
そこに客がやって来る。
店員は露骨に嫌そうな顔をその客に向ける。

客の男は軍服を着ている。
兵役中で、憲兵の仕事をしているらしい。
外にはバンクシー。自分の管轄する地域にややこしい奴が現れた。だから、見て見ぬふりをしている。
憲兵は、銀色2に話しかける。お土産屋で働く銀色2。そんなことをしていたらダメ。だって宇宙船を造る技術を持っているんでしょ。あの対馬の宇宙船が動く噂があるみたいだけど。憲兵は上から目線で、どこか銀色2を揶揄している。
銀色2は、反論する。そんな技術は分からない。自分たちが、いつ、どこから、どうやって、ここにたどり着いたのか分からないのだから。
でも、それは、実は人間だってそうなんじゃないだろうか。
歴史の教科書には、1492年、コロンブスが新大陸を発見した頃、日本では倭寇が日本海を騒がしていた。その海賊船が沈み、対馬沖の無人島に流れ着いた一人の船員。その上空で、銀色の宇宙船が発見された。銀色は地球に上陸し、これまでの日本を変えていく。そして、日清戦争後、銀色は、危害を及ぼすと隔離区域で生活をさせている。

銀色1が戻って来る。憲兵の姿を見て、震えながら、トイレに行っていたと嘘をつく。
憲兵は、その不自然な言動、険悪な雰囲気を察して、銀色1と接触を図る。
机の上の脚本の内容、たまたま開いていた爆弾の作り方のページ。憲兵は銃を取り出し、銀色たちを拘束しようとする。
でも、そんなことをした経験が無いのでどう振る舞ったらいいのか分からない。憲兵と言っても、兵役中の身分。この前は、飲み屋で騒いで、上層部から相当、叱られたばかりなくらいだ。でも、そんなミスを相殺しようと、緊張しながらも、やたら使命感に燃えて張り切っている。
そんな憲兵の緊張っぷりを見て、銀色2は落ち着くよう説得。
しかし、憲兵の緊張は極限まできていた。
昔からそうだったみたいだ。何故か人前で緊張してしまう性格。なのに、中学生で吹奏楽部に入り、毎回、緊張。いつしか中学生の小遣いではきつかったが、オムツをするようになる。便意がオムツをさせるのか、オムツが便意を呼ぶのか。オムツはかっこ悪い。でも、それは人前に晒された時にそうなる。と、わけの分からない禅問答のようなことを言い出して、トイレに駆け出して行く。

銀色1は、さっきまで怯えて震えていたが、怒り心頭。
銀色2に、憲兵に拘束されている姿の写真を撮影させて、フェイスブックにアップすると意気込む。
銀色2は止める。
さらに、店員が、実はあれは兄で、この前、揉め事を起こしたばかりだから許してやってと謝罪する。それに、兄が、あんな風にオムツをしなくてはいけなくなったのは、幼い頃、自分が兄をトイレに閉じ込めてしまった体験かららしく、今、そのおかげで助かったのだから、私のお願いを聞くべきという、これまたおかしな理論を持ち出してくる。
もう、許そう。怒りはそんなに持続しないものだから。
そんな銀色2の言葉に、銀色1は甘過ぎると怒り、店を飛び出す。恐らく、最近出入りしているらしい、過激派組織の下に向かったのだろう。
世界を変えるには、流れる血が必要なのだろうか。

憲兵がトイレから出て来る。
店員は兄に、きちんと謝るように促すが、銀色は人に危害を加える者だと決めつけている。銀色の肩を持つつもりかと謝る気は一切ない様子。
銀色1が戻って来る。
それだけの辱めを受けて、黙って逃げてきたことを過激派組織のリーダーから責められ、そいつを殺してくるように言われたらしい。
その時、店員が焦って、兄を厨房に呼び出す。テレビで、軍人である父が撃たれたというニュースが報道されている。兄は急いで現場に向かう。銀色1が、声をかけるが、全く無視。
銀色2は、店の後始末は私がしておくと店員に言い、鍵を預かって、急いで向かうように促す。
人間の肩を持つのか。銀色1は、腹立ちまぎれに、銀色1のイヤホンを裂いて、店を飛び出す。
一人になった銀色2。
窓を開けると、そこにはバンクシーの姿が。
銀色2はバンクシーに聞こえない声で語りかける。
どうして絵を描くのですか。それは銃より強いのですか。絵を描けない私はどうしたらいいですか。

10年後。
銀色1はすっかり銀色じゃなくなり、スーツ姿。
変わったと言う、銀色2にあれは若気の至りだと言っている。
銀色2は、まだ、お土産屋で働く。一回、就職した。でも、銀色は人間を滅ぼすと決めつけている上司の下だったので、給料も上がらず、我慢できなくなって辞めてしまった。
今時、時代遅れも上司もいるものだ。銀色1は同情する。
銀色2は続ける。私は迎合しない。
今、組織を作っている。宇宙船を直して、みんなで宇宙に戻ろうと。
そんな銀色2の言葉に、銀色1は答える。時代遅れはあなたの方だ。私は人間と結婚する。帰化して、人間となる。
立ち去ろうとする銀色1に、銀色2は、おめでとうと声をかける。
銀色1は、銀色2にずっと気にしていたとイヤホンを渡し、店を後にする。
銀色2は、暗闇の中、イヤホンをつけて、ただ静かに佇む・・・

シュールな設定で、重苦しさを感じさせない飄々としたノリで、話は展開するが、そこにはけっこう、人間がこれまで歴史的に犯してきた過ち、そして、それはこんな近未来の世界でも繰り返されるのだろうという、何とも変われない人間に意気消沈してへこんでしまうような感覚を得る。
歴史的な知識が欠けているので、適当にしか書けないが、銀色が発見されたという年は、新大陸が発見された頃だから、乗り込んできた白人と現地黒人の間の差別が始まり、長い年月、それこそ今だってきっと本当には解消されていない問題を含んでいるのだろう。
対馬などは、日本に西欧文化が流れ込んだ最初だろう。バンクシーも、パレスチナ問題などで名を聞く人だ。

自分たちの住む世界に、異なる者が入り込めば、同調か排除かみたいな選択肢を強いられる。
この作品では、どこか日本人らしい言動や考えが、所々に盛り込まれているように感じる。
日本のように水洗になっても、尚、トイレにフタを残すような文化だと、基本は臭いものにはフタをして閉じ込めよう、そして、自分たちに害が無いように流してしまおうといった考えに傾きやすいのかもしれない。無かったことにするのは得意で、従順なのか、教科書や報道で排除すべきものだと記されれば、それに盲目的に従ってしまう者も多いのだと思う。
シャイなところもあり、人と接する時に緊張してしまう。それを隠すためにオムツをする。そんなオムツをしているという後ろめたさを抱き、それを隠すために虚勢を張る。本当の心を開くのが苦手だから、同調路線はとりにくそうだ。
理屈っぽいのか、何をするにも理由を求めるのも、国民性かな。
ドリア一つでも、いちいちうるさい。食べたいから食べる。それでいいのだろう。
バンクシーにも、なぜ絵を描くのか、それが何に繋がるのかと考え込み過ぎる。きっと、描きたいから描いている。差別をなくしましょうみたいな意識は心の内にあるのだろうが、そのために描くというかは、今、やりたいことをしているだけで、それに理由がついてきているだけのように感じる。便意があるからオムツなのか、オムツをしているから便意が生まれるのかと同じような理論だろう。

自分が何をすべきか悩む銀色2。演劇をしたいのだったら、今、それをすればいいのに。理由をつけないと行動に至れない。それは色々なことで締め付けられ、この先に閉塞感を植え付けられているからそうなってしまっているのだろうか。それならば、銀色の正体は、今の若い世代じゃないか。
自分たちとは異質だから、すぐキレて怖いから、汗水流さないで物を右から左に流すことで楽して働こうとするから、ゆとりで生きてきたからきちんと管理するようにしないといけないと言われているから。そんな偏って植え付けられた偏見が、銀色を支配してしまっていて、そこで様々な形で銀色は自分たちを、世界を変えようとしている。
そんな構図も浮かんでくる。

迫害されたり、分かち合えなかったりしてできた傷跡はずっと残る。
でも、怒りが持続しないのと同じように、その痛みはずっとは続かないだろう。
傷跡を見て、あの時の痛みを思い出して、怒りをまた呼び起こすよりかは、もっと前向きな方法もあるはずだ。
この傷はあいつのせいでできたと思うのではなく、あいつのおかげでできたと変換してしまうのも一法なのかもしれない。詭弁に近いが、そんな考えを抱けるなら、楽にも生きれそうにも思う。
ラストは、そんな傷跡を飲み込めた銀色1と、その傷跡を自分たちの誇りやポリシーの象徴として、いつまでもあの時の怒りを奮い立たせようとし続ける銀色2の対比で締められている。
銀色2が、渡された新しいイヤホンで聞く音は、これまでの音と変わっただろうか。過去に囚われて、自分の怒りを増長するために聞く芸術では無く、自分のこれからを見詰めさせてくれ、新しい歩みへと進み出せる芸術に触れることが出来ていればいいように感じるのだが。

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