« 独鬼 -hitorioni-【竹村晋太朗 presents 劇団壱劇屋】161031 | トップページ | あしたは全力モンキー【超人予備校】161103 »

2016年11月 3日 (木)

蓮池温泉 極楽ランド【仏団観音びらき】161102

2016年11月02日 一心寺シアター倶楽 (125分)

初観劇。
噂には聞いていたが、確かにこれははまるかもしれないな。
当日チラシに9割はエロと笑い。残りの1割にテーマである夢に対するメッセージが込められているみたいです。
とてもいいバランスです。盛り込まれたエロと笑いで興奮、大半は引きながらですが、笑って観ているんだけど、どこか心を突き刺してくるような鋭いところがある。その1割が、そういうところなのでしょう。観終えてから、振り返って、もう一度、楽しむなんてことが出来ますね。
楽しく面白い。でも、単純にそれだけでは帰さない。これぞ、演劇としての最高のエンターテイメントなのではないかと思います。
いい劇団、いい作品、そして、何か持ってる魅力ある役者さん方と出会えました。

テーマパーク、蓮池温泉極楽ランド。能勢の山里、さらに奥深くにあるという。
元々はホテルだったが、そこに温泉が湧く。それも、この付近では唯一、赤褐色の温泉。血の池地獄風呂と呼ばれ、バブル景気も手伝い、一躍人気のホテルに。
支配人は、儲けまくって女と遊びまくり。女将はそんな旦那のことを恨まずに必死に仕事に精を出す。
しかし、我慢の限界。体が熱い。抑え切れない憎しみと怒りを鎮めようと自分の中に観音様を生み出したのか。敷地内に巨大観音像を建設し、ナン・マイ・ダーとひたすら唱えるおかしな宗教を始める。自分に構ってくれない両親を見て、娘が精神障害を患い、自傷行為を繰り返すようになったのも、原因の一つみたいだ。
女将はそんな巨大観音像の真下に劇場を作り、そこでショーを開くことを考える。しかし、その時には既にバブルは崩壊。極楽ランド付近に幹線道路も走り、近隣の娯楽施設へと客はどんどん流れていった。

そんな、今や寂れまくった極楽ランド。
女将は狂ったように宗教にハマり、支配人はそんな妻に嫌気がさし、経理の女とずっと不倫関係を続けている。
ショーの演目は極楽ミュージカル、蜘蛛の糸。
出演するキャストは、落ちぶれて彷徨い、ここにたどり着いた人ばかり。
カンダタ役の男は、太秦上がりと言えば、聞こえはいいが、要は大部屋斬られ役。主役を張れる役者になる夢捨てられず、ここにやって来る。妻と子供を養うために、夜間のバイトも入れている。夢捨てられずと言いながらも、もう夢は捨てているのかも。その夢を子供に託す。名門劇団に入れて、役者に。子供がサッカーをしたいと言っても関係無し。要は夢の押しつけだ。
閻魔役の男は、バブル期には甘いマスクで、多くのファンをメロメロにしていた。おバカそうな、群がってくるファンたちを食い物にして、私腹を肥やす。その横にはいつもゲイの男。今は閻魔のお付きのセクシー悪魔みたいな役をしている。そういう関係だ。いつか一緒にブロードウェイに行こう、それだけの力があると励まし続ける。しかし、そんな人気も長くは続かない。所詮、実力があるわけではない。していることはどこかのパクリ。遂に伝説の演出家を怒らせて、業界追放となる。落ちぶれ人生の始まりだった。
テーマパークと言えば、やはりマスコットキャラ。
ここにも、キ○ィちゃんとピ○チュウがいる。もちろん、一目瞭然のバッタもんだ。
キ○ィちゃん役の女は、ビューロランドに勤めていた。でも、動き一つにしても、こと細かな厳しい指導についていけなかった。ストレスで激太り。当然、クビになる。自分に欠けていたもの。それは、プロ意識。たとえ、メンスになって股から血が滲んでも、ショーには出演する。今、そのプロ意識にこだわって、必死にキ○ィちゃんを演じる。それが偽物だと分かっていても。
ピ○チュウは、支配人と女将の娘が演じる。精神障害を患っているので、目が完全にイッてしまっている。ショーでも奇怪な行動を繰り返し、他のキャストからクレームが出るが、女将は頑張っているから仕方がないとかばい続ける。でも、この娘、もう一つの顔がある。ネットアイドル。自傷行為をニ○生映像配信をしたりして、フォロワーも相当数持っている。要は愛に飢えたかまってちゃんってところだろう。
観音様を取り巻く天女。二人の女性がその役を演じている。
一人は、専門のテーマパーク科を卒業。卒業公演では主役を張ったという女性。と言っても、その程度の実力の持ち主は、この世界では腐るほどいる。まだ、若いので、それほどの力があるわけでもなく、ショーではミスも目立つ。ダメ出しをいつもされるが、プライド高く、聞く耳を持たない。どうして、ここにいるのか。若いし、力もあるなら、U○Jのオーディションでも受けたらいい。でも、それが出来ない。下手に主役などを務めたので、失敗するのが怖くなってしまっている。オーディションに落ちたらどうしようかと、リスクばかりが頭をかすめる。
もう一人の女は、今度は逆に数々のテーマパークでオーディションを受けて、不合格が続いた上、ここに流れ着いている。気付けば妙齢。あなたは誰のために踊っているの。その質問に自分のためとしか答えられなかった。目の前にいるゲストを楽しませようとする。その心が欠けているらしい。笑顔。でも、重なる不合格続きで、そんな笑顔はどんどん忘れていく。そんな中、唯一合格したのがここ。ダンサーでいられる。妥協した夢だが構わない。今は、とにかく、ここにしがみつくしかない。
後は、観音様は女将、蜘蛛は経理の女、カンダタの心に棲みつく悪魔を支配人。
さして面白味のあるショーではない。
来る客と言えば、中国人観光客やら。それすら、すぐに飽きて途中退場。
後は、閻魔様のかつてのファンの女と、天女役の若い方のファンを名乗るオタク。こちらは、とりあえず若ければいいらしく、ネットアイドルにもはまっている。

経営は悪化するばかり。
経理によると、あと半年持てばいい方なのだとか。
支配人は相変わらず頼りないし、女将も経営無視でショーにこだわる。
こだわる割には、どこまで真剣に考えているのか。
カンダタが観音様が垂らした蜘蛛の糸を掴み登るシーン。実際は巨大観音像の手に吊るされたロープを登っている。
カンダタ曰く、ミシッと嫌な音が最近するのだとか。でも、女将は大丈夫だと宗教のお札をくれるだけ。聞けば、以前から嫌な音はしていたらしく、元々、親指にかかっていたロープを、そのたびに人差し指、中指と移していっていたらしい。今は薬指だ。
そんな中、とんでもない事件が起こる。
娘のニ○生放送。
フォロワーに煽られ、下着姿で入浴。卑猥なコメントが映像にひしめく中、閲覧数は伸びまくる。
気をよくして、娘はこの温泉の秘密を暴露。赤い粉を取り出す。これで着色していることをばらしてしまう。そして、ピ○チュウの被り物まで持って来て、正体をばらす。
放送はBANされて終わる。

翌日、極楽ランドはマスコミと警察に取り囲まれる。温泉の偽装、そして、著作権侵害で事情聴取。
キャストたちは、地獄の亡者のごとく、互いを責め、仲違いを始める。そして、娘を責めるが、全部、偽りだと叫ばれる。
そう、ずっと、みんな、偽りの自分に気付きながら、気付かない振りをして、このぬるま湯みたいな極楽ランドで過ごしていたのだ。
そのぬるま湯が今、無くなってしまう。
女将は、支配人と経理の不倫、二人がここを乗っ取るつもりであることをとっくの昔に気付いており、ここを潰してしまおうと考えていた。
二人の愛は、支配人は女将への嫌気から、経理は長年勤める中での腐れ縁のようなものであり、本物では無い。
カンダタは自分がもう役者を諦めなければいけない時期であることを知ってるし、子供には別にしたいことがあることも分かっている。
閻魔はバイセクシャルだ。金持ちの婦人を抱いて金をせびて生きるくらいに、自分が落ち目だという現実。ブロードウェイなど話にもならない。重たいだけ。
天女はこんなところにいたら、じわじわと力も衰えて、活躍の場を失うことを分かっている。挑戦しなければいけないことも。
もう一人の天女もしがみついて生きていくには限界があることを分かっている。どこかで違う道を考えなければいけないことも。
負けたくなかった。偽物でもいい。あの頃、力が足りず、叶えられなかった夢を、今、偽りのキ○ィちゃんをかぶって叶えている。それは自分を慰めているだけに過ぎないけど、それでも幸せだった。
精神障害なんて何も無い。ただ、母に愛されたいだけ。自傷行為をした時だけ、母は自分にかまってくれるから。私の夢は母に愛されること。
夢に縛られ、そのために、偽りの自分を演じて生きる。
蜘蛛の糸のように絡みつく自分の捨てられない夢。
ここは極楽なんかじゃない。地獄だ。
脱却したい。皆は必死にナン・マイ・ダーと唱える。

天からロープが垂らされる。
皆、それに群がる。
支配人は、ここまで皆を苦しめた、自分への情けなさからか、そのロープを首にくくり、首吊りを試みる。
轟音が響く。巨大観音像が崩壊。
女将はその下敷きとなって死んだ。彼女の薬指には結婚指輪がまだはめられていた。
女将の葬式。
棺から、女将が救いを求めた観音様が現れる。その極楽観音は、美しく舞い、自分たちの本当の夢を掴むかのように、天から垂らされたティシューを登り、天へと消えていく。

極楽ランドは潰れ、元の蓮池グランドホテルとして営業開始。
キャストたちは、各々、今の自分から逃げずに対峙して、叶えたい夢へと近づける一歩を踏み出すみたいだ。
妥協でもいい。夢に縛られる必要は無い。今、しなくてはいけないことから、目を背けないで進む。その先に、きっと本当の自分が見えてくるはずだ。
女将は経理が引き継ぐ。
ホテルの経営は意外に順調の様子。
そうなると、また人間は欲が出てくるのか。支配人は女遊びを始める。
体が熱い。女将は、そう言って救いを求める。
無間地獄へと・・・

夢を見失ってしまっている者、夢破れた現実から逃げている者、明確な夢があるけど行動が出来ない者、夢を叶える手段がおかしくなっている者。
人生の夢に絡んだ色々な人たちが、一休みしているかのような極楽ランド。
休憩も必要だから、そこで一休みならいいのでしょうが、ぬるま湯のようなところは居心地がよく、ついつい長居してしまう。そうすると、あの極楽だったと思っていたところが、一変、地獄だと気付く。もがき苦しみ、救いを求める。そんな姿が浮き上がります。
だいぶ、時間はかかったようですが、皆にここは地獄だと気付かせて、外の世界へと目を向けさせたのは、観音様のお導きだったのでしょう。

夢というものは人を縛りますね。
初めはきっと、こうなりたい、こうしたいという純粋な気持ちから生まれたはずなのに、持ってしまえば、成さねばならぬみたいな、妙な脅迫めいた観念に縛られてしまう。夢の奴隷みたいに、その夢のために生きる自分みたいな役を押し付けられて、演技をするかのように、偽りの自分が人生の舞台で動く虚構の世界みたいになってしまう。
じゃあ、その夢を叶えるためにどうしたらいいの、やってみておかしいと思ったらどうしたらいの、叶えるまで続けるなんて正論で、歳だって生活だってあるし、叶えられないと分かったらどうしたらいいの。そんな疑問に答えてくれているのか、そんなこと関係無しに、個性的過ぎるキャラたちのドタバタを見せて楽しませようとしてるのか分かりませんが、感じるのは、何にせよ、じっとお湯に浸かっているだけではダメなんじゃないのかなということでしょうか。
じっとしていることが夢なんて人は置いておいて、大体の場合は、叶えたい夢は外の世界に転がっており、それを掴むために、探し歩いて、見つけたら今度はそれを掴む手段を得るために知識や技術を身に付けないといけない。
そんな繰り返しの中で、自分の夢の軌道修正や、断念による軌道変更をしながら生きていくのかなと感じます。
あると思ったのに無かったり、見つけたけど掴み損ねたり、触れることすら出来なかったり。夢なんかそんなものかなと感じます。
見つからなかったら、まだ探してもいいし、そのうち、違ういいものを見つけてしまうのかもしれないし。今は掴めないけど、また違う時にくれば掴めるかもしれないし。もちろん、ワンチャンスを逃せば二度は無いことだってあるでしょうが。
執着し過ぎるのはいけないのかもなと。よく諦めず、ひたすら努力をして夢を掴んだなんて人がいますが、これはきっと、執着していたのでは無く、試行錯誤しながら、その夢を叶える術の幅を広げ続けているように思います。そして、いつの日か、その夢を包み込めるくらいの幅を得られるようになったように感じます。ただ、ひたすら同じことを繰り返す、例えば、この作品でいう妙齢天女みたいなオーディションの受け方では、いつまでも進まない。本人にその気は無くても、結局は湯に浸かっているだけで止まっていることになるのかもしれません。
こだわらず、フレキシブルに動く。難しいことですが、そんなことが大事なように思います。だからと言って、そうしなければ、人生終わりというわけでは無く、いくらでも、違う見つけた夢を、今度はこれまでの経験を踏まえてもっと賢く進めていける。極楽ランドを去る人たちのこれからの希望を見せるラストから、そんな夢を見ることができるように思います。

|

« 独鬼 -hitorioni-【竹村晋太朗 presents 劇団壱劇屋】161031 | トップページ | あしたは全力モンキー【超人予備校】161103 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEI様

仏団観音びらきは初観劇。昨年4月の公演は予約しようと思ったら完売。今回は初観劇を楽しみに。開場時間に受付をすると整理券もチケットもない。

お席は自由席となります。
開演の1時間前より受付順に整理券をお配り致します。
入場は整理券の番号順となりますのであしからずご了承下さいませ。

と予約確定メールにあったにも関わらず。上演時間も20分ほど増えたのかな。変更があったならー特に整理券ー連絡してこいよ、と。どこにも行けない。上演時間もTwitterやったはらへんのかな? ちょっと大幅に時間増えすぎ。かなりオカンムリです。初めての公演じゃあるまいに。

公演はまぁ面白かったですが。。ちょっと信用できんなぁ、と。

投稿: KAISEI | 2016年11月 4日 (金) 00時07分

>KAISEIさん

整理券、チケット無しは確かに問題だと思いました。
かなりの人数がロビーに溜まってなだれこむように開場でしたからね。
信用を失うのも仕方ないでしょう。
私もこの点は気になっており、面白く、今後も観たい劇団の仲間入りですが、この点で敬遠することはあり得ると思います。

上演時間は、ゲネプロで20分伸びたらしいですね。
まあ、仕方ないこととはいえ、情報をすぐに提示する姿勢は欲しいところです。それをきちんとしている劇団もあるのですからね。
はしご観劇では、ある程度の幅は持たせていますが、場合によっては失敗して、共に迷惑をかけてしまうことがあるのですから。

投稿: SAISEI | 2016年11月10日 (木) 17時22分

SAISEI様

宮脇さんおいくつくらいなんだろう?

劇団競泳水着の時は40代な感じがしたけれど今回はとても若々しく感じた。。最初わからなかったくらい。

役者ってやつは。。(笑怖い)

投稿: KAISEI | 2016年11月23日 (水) 21時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/64435719

この記事へのトラックバック一覧です: 蓮池温泉 極楽ランド【仏団観音びらき】161102:

« 独鬼 -hitorioni-【竹村晋太朗 presents 劇団壱劇屋】161031 | トップページ | あしたは全力モンキー【超人予備校】161103 »