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2016年11月20日 (日)

かもめ -海に囲まれた物語-【ノアノオモチャバコ】161119

2016年11月19日 インディペンデントシアター1st (115分)

確かにかもめですね。
と言っても、原作は2年前に拝見しただけで、漠然としか覚えていないのですが。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/120-a76f-1.html
あの時、観終えて、残った心のざわつき。じゃあ、どう生きたらいいんだよと、頑張っても、頑張らなくても、何をやっても、結局は孤独はまとわりつき、本当の想いは受け取れないし、伝えることも出来ないのなら。と、何やら悲しい、でも、妙に納得いくような感覚が蘇ってきたような気がします。
人間の普遍的な心理を描いているんでしょうかね。だから、こうして時が経っても、現代風にアレンジしても、心を突いてくることはきっと変わらない。
それが面白いと感じます。

原作を拝見した時は、湖のほとりの町といった、土地への縛り付けみたいなものが強く、そこから人が囚われる心へと想像を膨らませるような感覚でしたが、こちらは少し直接的かな。芸能というものをテーマにして、自分を表現する、自分の世界を創るということで、自分を縛る心を描き出しているように感じます。
原作が、最初は何も無い美しい風景を見ながら、そこに住む人たちの渦巻く真実の黒さを見て、徐々に歪んでいく様を感じるのに対して、こちらは既に最初からその歪みが見えているような。だから、最初から何か畏怖のようなことを心の片隅に置いてしまう。でも、アイドルを登場させたりして、そんな畏怖をちょっと楽しさで覆い被せて見えないようにしているような感じになっているのかな。
そんなこともあってか、どうも俯瞰して観ることが許されないようになり、舞台の中の様々な人たちを自分に置き換えてしまい、悩み苦しみを注がれてしまうような生臭い感覚も残ります。
攻撃的とでも言うのでしょうか。戯曲を心静かに鑑賞するみたいな感じにはならず、お前にある孤独を見ろ、生きる苦しみを感じろと目を背けさせない圧迫した力を感じます。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

芸能界でビッグマザーと呼ばれる有名歌手の母親を持つカワタニケンタ。母子家庭で育ったが、母親は芸能活動に忙しくて、愛情を十分に注いでもらえなかった。自分には親はいない。そう言って、実家を飛び出し、ボロいアパートで猫と一緒に住む。
部屋に帰ってくると、その猫が寄ってくるから、餌をあげる。何か言っているようだが、分からない。ゲームをして、大好きなアイドル、かもめ46のキヌコの出演する番組を見る。独り言のように猫に語りかけるが、聞いてもらおうとは思っていない。猫だから。
アパートの下にはJRの貨物車が通り、轟音を響かせている。そんな音と相まって、自分の実体の薄さに対する漠然とした不安なのか、恐怖なのか、生首の幻影を見て怯える日々。

ケンタは缶詰工場で働く。特に活躍するわけでもなく、大きなミスもしないけど、目立った仕事っぷりを見せることもない。どういう力なのか、本人曰く服の上からパンチュが見える主任にからかわれながらの日々。その主任もバイトの女性からは疎まれている。
そんなある日、ケンタは女性バイトのロッカーをなんとなく漁っているところをコミヤという女性に見つかり、現場を連写されてしまう。内緒にして欲しい。そんなケンタの言葉に、コミヤは一つだけ言うことを聞いてと返してくる。それはバンドのギターとボーカルをすること。無理だと断ろうとするが、弱みを握られている上に、母のことを言及してきて、断ることが出来ない。

ケンタの実家にコミヤと、コミヤが多額の報酬を散らつかせて連れてきたバンドメンバーが揃う。母の力を借りるために。
インディーズからメジャーに行けそうなところでコンビ相手が脱退したらしいベースの週末。要は、実力不足でコンビ相手に捨てられ置いてけぼりということみたいだが、本人は強がっている。
そんな週末の強がりを突いて、喧嘩になるドラムのいこか。女性ながらこれまでプロ意識を持ってずっと頑張ってきた様子。
バンドや音楽業界のことなどさっぱり把握してないキーボードのまりちゃん。少々変わっており、感情の起伏は激しい。
優秀な小間使いの案内で部屋に通され、母の帰りを皆で待つ一行。

母がオネエキャラで有名なMC、マツヲを連れて帰って来る。マツヲは久しぶりに会うケンタ、イケメンの週末を見つけて興奮気味。
コミヤが挨拶。
母はそれを遮り、ケンタに問い正す。
この女に無理やり言わされているのだろうと。芸能界に興味が無く、親じゃないと啖呵を切って出て行った息子をまだ許せていないみたい。
ケンタは、それを認めると思いきや、自分の想いを母に伝える。
母に憧れていたこと。その気持ちが構ってもらえない妬みになって出て行ったこと。今の日々はまるで穴蔵の中。だから、自分は外の世界に出て挑戦したいのだと。
その言葉を聞いて、母はすぐにプロデューサーのナツキに電話する。母にとってはやはり大事な息子だから。

我輩はバンドである、名前はまだない。バンドの名前が決まり、デビューは、あのフジロックフェス。母の力。
名前の由来はケンタの飼っている猫から。デビュー曲も猫の視点から始まり、好きなアイドルからか、かもめの視点へと移りながら自分を捉えているような歌詞になっている。曲はコミヤが創った。もちろん、世間的にはシンガーソングライターのケンタが創ったことになっている。
実力不足は否めないが、デビューライブは無事に終了。まずまず、盛り上がる。打ち上げの場に、かもめ46のキヌコがいる。ケンタの創る世界に共感を覚え、是非会いたいと訪ねてきた。でも、ケンタは一人、東京に戻っていた。皆は母の自家用ヘリで東京に戻る。
コミヤはキヌコにケンタの住所を渡す。

缶詰工場。
ケンタは日常に戻る。
主任は相変わらず。コミヤが最近、出勤しないことを気にかけている。どうやら好きらしい。そして、彼女のパンチュは見えないらしい。一番、知りたい人なのに。
キヌコがケンタの下を訪れる。あなたの世界が好き。かもめの被り物をして、偽りの世界の中で自分を歌うケンタ。でも、それを見てくれている人がいる。それも最愛のキヌコが。ラインを交換し合う。これで、いつどこにいるのかが分かる。
二人は愛し合うようになる。

週刊誌の記者。ゴシップネタの真相を突き止めるのが好きなショウジは、同僚のイノウエと共にバンドのレコーディング現場を取材。
ケンタとキヌコの熱愛ネタをスクープするため。
ケンタはその場にいない。
どうせ、またキヌコと必死にラインをしているんだろう。そんな声がバンドのメンバーから飛ぶ。
ケンタはバンドのメンバーからかなり浮いた存在になってしまっている模様。何もしていないのに、人気者となった妬みもあるようだ。
その場にいたマツヲは、週末を狙っている。でも、週末はきっぱりと断る。好きな人が出来たから。そう言って、いこかの手をとる。
マツヲは仕方なく、イノウエに照準を定める。襲われるイノウエ。
そんなドタバタの中、もう一つのネタが手に入った。バンドの歌はずっとコミヤが創っている。今回の新曲はケンタが創ったようだが。

小間使いは母に進言。節約を。何でも、キヌコの家で見つかった不発弾処理の費用を捻出したらしい。キヌコの家は貧しい。でも、処理をしなければ、爆発してしまうかもしれない。愛したケンタが頼れる相手だったのか、それともその逆だったのか。
小間使いは、コミヤから渡された手紙を母に差し出す。生活水準を落とすのは大変だ。コミヤのこれからしようとしている策略に乗ってしまう。
ケンタとキヌコは家にいた。キヌコは今度の新曲はあなたの世界じゃないと不満の様子。いや、これこそが本当に自分で創った世界なのだが。
テレビをつけると、コミヤが新曲発表の記者会見をしていた。ケンタはそんなスケジュールは聞いていない。
コミヤがその場でめちゃくちゃなことを語り出す。
コミヤとケンタは夫婦であると。でも、ケンタは、女性のロッカーを漁り、キヌコと不倫し、自分が創った曲を自身が創ったのだとあらゆることで裏切った。
そして、母も登場。キヌコがその不倫のことで脅迫をしてきて、多額のお金を渡したと話す。
キヌコは混乱するケンタに別れの言葉を突き付けて、部屋を飛び出す。

2年後。
ケンタは実家で猫と共に暮らしている。
この2年、ずっと引きこもり、作詞作曲をしていた。その曲を母に提供。母は以前以上に売れっ子になっていた。
テレビをつけると、キヌコがプロデューサーのナツキからインタビューを受けていた。当時のアイドルとしての華やかさはもう無い。コミヤに騙されていたこと、自分は決して脅迫などしていないことを告白する。どうしようもなかった当時も振り返る。いっそ、不発弾が爆発すれば良かったのにとも考える。そうすれば、被害者になれたから。そんなキヌコに、ナツキは母もコミヤに騙された一人だから恨まないでやって欲しいと述べる。あの頃、仕事が全てだった。次、また売れないといけないという強迫観念に縛られて、窮屈に生きる日々。ナツキはそんな日々が、きっと母も同じ気持ちだったのだろうと思っているみたい。
母の新曲発表会。今度は盛大に行うため、ケンタも出席する予定。母はあの時のことをケンタに詫び、歌手として歌い続ける道を選んだ本音を告白する。そして、この2年、ケンタの才能を見込んで曲を創らせ、成功したことの感謝を。

新曲発表会。あいにくの雨。
前日、缶詰工場が燃えた。犯人はコミヤ。あれから、コミヤは全く売れることは無かった。見回りをしていた主任が灯油を撒いて、火をつけて逃げるコミヤを見つけたらしい。最後までパンチュは見ることが出来ず、自分の想いも伝えられなかったようだが。
発表会にはバンドメンバーも駆け付けてくれた。いこかは妊娠、週末はネクタイを締めて立派に働いているようだ。まりちゃんはキーボードピン芸人として着々と人気を掴んでいる。マツヲはモロッコに行っており、長い手紙が届く。
キヌコが訪ねて来る。あの時のケンタの世界があるのかを確認したかったとケンタに語りかける。そして、キヌコは消えるように立ち去る。
週末は、ケンタに最後のお前の世界の曲は嫌いじゃなかったことを告げる。コミヤが創っていた世界よりも好きだった。でも、今のお前は違う。どこにいってしまったんだ、お前の世界は。いこかが迎えに来る。二人は手を繋いで去って行く。
気付けば、ケンタは海の中。波の音が轟音となって響く。自分はどこにいるのだろうか。実体の無さから生首を怖れていた日々と変わらない。ケンタは薬を飲む。そして、拳銃をこめかみに突きつける。猫はその姿をただじっと見ている。
自分に無い全部を持っているのにどうして。だから、私は泣かない。笑うんだ。いつも着ていた黒い服はあなたのための喪服では無い。不幸な私の人生の喪服なのだから・・・

孤独。
ケンタも猫も。他のみんなも、全部。
みんな、自分を見て、分かってと求め合っている姿が浮かぶ。
弱いけど、それが人間であり、それがあるから人と繋がり、想い合える仲が生まれる。それが人間の素敵なところだ。
と書きたいけど、でも、そうも上手くはいかないんだよねといった、意地悪な感覚も芽生えさせる話。
どうして、こうも人間はややこしいのか。
自由に羽ばたく自分を追い求めながら、自分で自分を縛り付けて、そのロープをほどいてと他人に求めているような。それで繋がり合えると思ってしまうのだろうか。
複雑な気持ちが渦巻いて、何かしんどい。でも、そんな人の弱さに心地よさや安堵も感じる。

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