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2016年11月27日 (日)

survive【遊劇舞台二月病】161126

2016年11月26日 ウィングフィールド (90分)

熊が山から、人間が生活する世界に下りてきた。
餌が無くなったのだろうか、その山では住めなくなったのだろうか、強大な力を誇示しようとでも思ったのだろうか。
とにかく、普通じゃない、恐ろしいものが自分たちの傍に現れる。
その時、人間がすること。それは、熊を撃ち殺すことだろう。
その普通のことをベースに、同じように、愛に飢えたり、不安でいっぱいになったり、その環境では生き辛くなったり、大切なものを失って悲しみに囚われていたりと様々な人間が、普通じゃないと言われる状態で姿を現す。
その時、どうなるだろうかを検証しながら、人が生きるということを考えさせているような作品に感じる。
いつものごとく、すごくもやもやが残る。
でも、自分が出せた答えは、人は作品名どおり、乗り越えて生き抜くことが出来るということだ。人は強いし、何よりも、どこへ向かっても、そこで差し伸べられる手が必ずあるから。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、日曜日まで>

健康ランドにいる若いカップル。お決まりのデートコースらしい。
男は女と一緒にいるのに、携帯をいじって、自分の世界に入り込む。そんな、男を女はつまらないと不信感を抱くようになる。別れる気は無い。でも、今、一緒にいてはいけないように思い、距離を置き始める。
テレビでは、熊が出没したというニュースが流れている。どこか遠くの話では無い。実家の近くに熊が山から下りてきているようだ。
そんな健康ランドに毎日、顔を出す女。噂では、ここで体を売っているらしい。

ユウカ。
父からの性的虐待、母からのネグレスト。
自暴自棄になっていた時に、トランスジェンダーのスズキに救われる。
スズキは風俗のスカウトを、イイダという男の下でしており、ユウカも風俗嬢として働く。
スズキは会社の寮に住むが、やはり世間の目は冷たく、やがてユウカと同棲するようになる。
仲睦まじく、互いに傷ついた心を寄せ合いながら過ごしていたが、スズキは、女を売れない自分とユウカを比較して、自分が惨めだという気持ちを持つようになる。
イイダが心配するものの、それすらユウカへの不信や妬みに繋がってしまう。
だけど、別れることはできない。
そんな中、スズキは、独立してマイノリティーを集めたラウンジを経営する道を選ぶ。ユウカは風俗の仕事を辞めて、店の支度金を用意するため、苦しい節制生活をする。
店が開店。順調にはいかない。スズキはユウカに客を引っ張ってくるようお願いする。それが何を意味するかはもちろん分かって。
さらに運転資金も乏しくなり、ユウカは再び、体を売り始める。そして、遂に終わりを迎える。
ユウカは、スズキの首を絞めて殺害。
指名手配されて、逃亡生活が始まる。
生きるために日銭を稼ぐため、流れ着いた健康ランドで体を売る。

熊を単独で駆除するために猟銃を抱えて山に入るムラタ。ナガイはそんなムラタに付いて回る。熊を殺さないでとお願いするために。
ナガイは銃を持つムラタを恐れる。しかし、ムラタは、自分が優位に立たないと安心できないと考えるナガイの方がよほど恐ろしいと感じている。
ナガイは大学に入学したが、その入ったサークルで暴行を受けた。子供が産めない体になり、入院。自殺を図ろうとしたところ、ナースのマツムラに救われる。彼女はナースとして、救えない命と何度も出会っている。誰に対してか、何に対してか、申し訳ない思いで一杯になってしまっているナガイに対して、逃げてでもいいから生きる道へと導く。
そして、自然を愛する会への参加を薦める。その活動はナガイの心に落ち着きを取り戻させるが、このままではいけないと考えたのか、個人で独立して活動をする決心をする。
ムラタは、熊を駆除するための猟師の会に所属していない。体が拒絶して、仕留めた熊を食べることができないから。
かつて、ワンダーフォーゲル部に所属し、いくつかの大学と共同で先輩と共に山へ向かったムラタ。熊に追われることになってしまう。二手に分かれたが、自分たちの方を熊は追ってきた。逃げのびたであろう、もう一方が救助を呼んでくれるだろうか。熊はすぐ先に見えている。何にすがって、安心すればいいのか。襲ってきた熊。ムラタは必死に逃げのびた。取り残された先輩は、小屋に身を潜め、濃い霧で視界を失った中、ただ、来るかも分からない救助を待っていたようだ。残された日記に状況が記されていた。後の現場検証で、先輩の無残な姿を見ることになる。
熊は危険だ。だから、殺す。
ナガイは、ムラタの熊狩りに同行する。危険が伴う。私は生きていていいのだろうか。その答えを得るためかのように。

若いカップルは、自分たちのことが見えなくなってしまったかのよう。悪いところは直す。そんな男の言葉に、女は何が悪いところなのか分からない。
一緒にいたらダメになると思い始める。自分だけでは無い。きっと男までもダメになる。
もし、自分がいなかったら、もう携帯はいじらないんじゃないのか、健康ランドも行かないんじゃないのか。
そんな女の言葉にも男ははっきりとした言葉を返せない。
自分の本当はどこにあるのか。
ナガイは、自分に優しかったマツムラから、厳しい言葉をかけられたことがある。本当に子供が欲しかったのか。別に産めない体になっても良かったのではないのか。大学には本当に行きたかったのか。退学は望んだことではないのか。失ってしまったから欲しがるのは汚くないか。失った命を見続けるナースの真剣な言葉。

逃亡していたユウカが、警察に取り囲まれる。世間に遂に姿を現した凶悪な殺人犯。熊だ。
山では、山を下りてきて姿を現した熊にムラタが照準を定める。止めるナガイに、ムラタは言う。恨みだけで撃つのではない。守らなけばいけないから。
銃声が響く。熊は仕留められた。
ユウカは警察に捕獲、裁判の末、懲役刑が執行される。
刑務所の中が、今度こそ、ユウカがユウカとして生きることができる場所なのかもしれない。
ユウカは力強く決意する。あなたを失くしてしまった私だが、私はそこで私として生きることを・・・

イイダは、トランスジェンダーで生きにくいスズキを救う。イイダは悪いことをしているのだろうが、人の心に目を向けられる人みたいだ。スズキは、両親からの歪んだ愛情で心に傷を負うユウカを救う。スズキとユウカは互いに救い合いながら生きていく。
マツムラは、大学で酷い目に合って行き詰ったナガイを救う。マツムラは命に対する人間の無力さを知っているから、その命の尊さを大事に考える人。ナガイは、先輩を熊に襲われたことに囚われ続けるムラタの傍に寄り添う。ナガイとムラタは、熊の命に関して意見を異にしながら、同じ時間を過ごす。
自分の今に不安を抱え、将来に閉塞しているかのような若い女。そこまで人生を見詰めていない若い男。男と女は、自分の今をぶつけ合うが、互いにどうしていいのかは分からず、その苦しみで彷徨い、もがいている。
だいたい、こんな構図が読み取られる。
最後、ユウカはスズキを自らの手で失ってしまう道を歩む。ナガイはムラタから自分の命を守るための非情さを教わり、自分の生きる道を切り開かれたような感じ。男と女は、道が見つからず、苦しみの中にいる。
各々、その最後は、光が見えないようなところもあり、もやもやが残るが、それでも、残った者が生きるという形で締められているよう。

こうして見ると、人はいつも救われている。実際は、救われていなくても、救われようとしているという感じかな。
餌に飢える。環境が破壊された。居場所が見出せなくなった。熊はそこから違うところを目指す。撃たれる。愛護問題は別にして、これはごく普通の感覚だ。だって、熊は今、自分たちが生きる世界に傍にいてはおかしい普通じゃない存在だから。しかも、傷つける危険性だってある。
人間は違う。
愛情に飢えたり、生活が貧困であったり、その場所に居ることが出来なくなったりして、どこかへ向かっても、撃たれはしない。そこで手を差し伸べてくれる人がいることだってある。熊とさして変わりはしない。すさんで、凶暴になってしまっていることだってあるのに。

そんな熊は周りにけっこういているのかもしれない。
生きることに窮して熊となってしまった者もいれば、偽りの強い力を意識して、熊が遊びながら人間を傷つけるのと同じように、人を弄ぶ者も。
そんな熊から逃げることは何も悪いことではない。逃避は自衛の最たる手段であろう。
熊を撃たなければいけない時もあるだろう。でも、撃つのは恨みからではいけない。それは自分たちの命を守るための手段でしかあってはいけない。

自然は脅威だ。自然界で命を守ることは簡単なことではない。
失ってしまい、それを欲する。そのために、どこかへ向かう。でも、自然界に生きる者がそれをしたら、人間に撃ち殺される。
勝手だけど、それが人間が生きることなのだろう。人間だって、自分たちの命を守っている。
自分の辛い過去や、どうしようもない持って生まれた身体や精神、自分の居場所を失う不安、大切なものを失った悲しみに囚われてしまう。そんな時、普通じゃない自分を心に抱き、周囲の普通に生きていそうな人から見ると、自分は熊みたいになってしまっているんじゃないかと思ってしまうものだろうか。
それでも、大丈夫だ。それを乗り越えて生きられるのが人間だから。熊になってしまったと思って、山奥に潜んで、失ったままで命が消えるのを待つ必要も無い。どこかへ向かっても、手を差し伸べてくれる人がいるから、自暴自棄になって、力を誇示する必要も無い。
ありのままの自分のまま、その辛い場所から、どこかへ向かえばいい。それが人が生きることだから。
そんな感覚を抱く話のように感じました。

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