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2016年11月26日 (土)

潜脳ロリーナ/Floral tribute【n-project】161125

2016年11月25日 シアターカフェ Nyan (55分)

愛する人を失って悲しみの中にいる人。
自分たちが犯した過ちから、そんな人たちがたくさんいる世界。
喪失を受け止めきれず、時を止めて、悲しみに囚われる。
そんな人への救済を描いたような話。

最初から愛があって、人は繋がるわけではない。繋がりの中で、互いに心を通じ合わせ、共有し合う時間の中で愛を育んでいく。
愛する人を失った時、そんな時間は全て過去のものとなり、これ以上、愛を大きく育てることは出来なくなってしまう。だからといって、その愛が消えるわけではない。共に過ごして育んだ愛の尊さを知り、互いにとって、それは幸せへと自分たちを導いてくれる素晴らしいものだったことを心に留めた上で、その愛と決別しなくては、先に進めない。
でも、それはとても辛いことだ。
そんな辛くて、切ないけど、そうやって生きる者は未来へ向かって生きなくてはいけない。だから、全ての傷ついた人たちに祈りを込めて花を届けたい。
そんな気持ちが見える作品だったように思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

地上で長く続いた戦争は、核により終止符を打たれる。
生き残った人間たちは地下都市で暮らし、不自由で先の不安な日々を過ごす。
夫は戦争に行って帰って来ず、娘を爆撃から守ることができずに失った女は、娘の脳を移植したアンドロイド、アリスと共に過ごしていた。
女は、そのアリスに亡くなった娘を重ねながら、生かしてあげれなかった悔いと贖罪の念を常に抱きながらも、一緒にいられる喜びを得ていた。
しかし、そのアリスが突然、機能を停止する。このまま、朽ちてしまうかのように。
そんな機能停止する直前にアリスが 残した、こうするしか無いという言葉と笑顔の意味を、娘の想いを知りたいと、女は手段を選ばず、お金を準備し、危険な脳内ダイブという、人の脳の中に潜り込む研究に参加する。

医師のガイドの下、アリスの脳に潜り込む。危険な副作用があるので、その時間は短い。時間を空けながら、何度か挑戦する。
そこでは、この脳の支配者であったアリスに代わって、新しく生み出された人格であるロリーナによる世界統治が行われていた。
ロリーナは、この世界にある様々な人格を取り込み、単なる情報データとして処理して統合しようとしている。様々な人格たちがロリーナによって吸収されて消えていった。
残った人格たち。
情報を司どる人格、時計。ロリーナが、必要だと判断して残しているようだ。
野生を司どる人格、猫。人間に逆らえない三原則に囚われるアンドロイドの概念を覆して、人間らしくあるために存在しているみたい。
しかし、ロリーナの統合は進み、こんな人格たちにも手を出し始める。
女は脳内を彷徨う中、芋虫に出会う。脳の隅っこで、自由に流されるように生きる。
もう取り戻せない失ったものに囚われる女にとって、その生き方は難しい。

副作用は酷く、医師は目が見えなくなり、文字を書く力もなくなっている。
もう、これ以上の脳内ダイブはできないと女に言う。
女は平気だと言うが、彼女の目には花が見えている様子。この地下都市に花は無い。彼女は幻覚を見るようになっている。
しかし、女は何がなんでも、脳内ダイブして、ロリーナと話をすると必死。
そんな女の母としての姿を見て、医師は断れない。自分の母は焼夷弾から自分を守って死んだことが蘇る。

女は最後の脳内ダイブでロリーナと対峙する。
どうして、止まってしまったのかという女の質問にロリーナは答える。
止まったのは母だ。アリスのためにしか生きていない。でも、自分はそんなアリスになることは出来なかった。生前の娘の姿にはなれない。
これからは母自身のために自由に生きて欲しい。ごめんねと思いながら生きなくてもいい。全て忘れて、幸せになって欲しい。
産んでくれてありがとう。
その言葉を残して、ロリーナは消える。
世界が崩壊する。
母はどこへともなく向かって走る。
芋虫がいる。そこには蝶になれなかったけど、この世界で自由に幸せに過ごして来た、寂しくも、母から愛情を受け続けた娘が投影される。
アリスの脳内世界から出て来た女。
目の前には、本当に失った娘への慈しみ、傷ついた母に捧げられる慰めの数々の花が舞う・・・

アンドロイドのアリスが女から受けていた母の愛情。
でも、アンドロイドのアリスは、生前のアリスにはなれなかった。脳というデータの集積だけで、その人自身を生み出すことは出来ないものなのだろう。
戦争で命を失ったアリス。この喪失は、単純な命の消滅と共に、これからの未来の一緒の時間が無くなったのだと感じる。
過去の思い出は、データとして修復することは可能だろう。でも、そこで全ては止まる。これからの未来のデータは存在できない。
未来が無いのだから、愛はきっと育たない。
母が生前のアリスに向けていた愛情は、生まれてからこれまで一緒に過ごしてきた時間の中で、様々なことを共有し合って育んできたものなはず。
それは徐々に大きくなり、これからもずっと大きくなり続けるはずだったが、人間の犯す過ちによってそれは成長を余儀なく止めさせられる。
アンドロイドのアリスはそんな愛の塊をいきなりインプットされ、女と共有することを求められたように映る。
でも、それは出来なかった。アンドロイドのアリスは過去の時間を女と共有していないから。
本当はこれからの未来の時間を一緒に共有し合って、新しい愛を一緒に育てればよかったのかもしれない。でも、人はそんな簡単に悲しみから脱却は出来ず、気持ちを切り替えられない。何かにしがみついて、それに囚われながら、生きるしかない時間が必要なのだろう。
アンドロイドのアリスが出来ることはたった一つしかなかった。
女がアリスと共に育んできた愛が如何に尊いものであり、アリスもそのことを深く感謝し、喜びの中にいたこと。あなたから命を与えられて、あなたと一緒に過ごしてきた時間がどれだけ幸せなものだったか。大人へと成長して世界を羽ばたく前に死んでしまったが、そんな幼いアリスはそのままの姿で自由に幸せにあなたの心の中で生き続けていることを伝えること。
それをアンドロイドのアリスは実行した。そして、愛する母が悲しみの呪縛から解放され、これからの自分の幸せへと目を向けることを祈りながら消えていった。
傷ついた者たちに捧げられる花。
慈しみ、慰め、感謝と共に、これからの未来に向かって生きることへの祈りが込められているように感じる。

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