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2016年11月24日 (木)

聖女 A組【少女都市】161124

2016年11月24日 インディペンデントシアター1st (110分)

まずは、凄まじい熱演に拍手でしょうか。
相当なもんだったように感じます。
ゲネプロを拝見していますが、これをベースにきっと更に調整を図るのでしょう。どんな感じになるのか、興味深い。日程の都合上、もう、観に行けないですが。

話としては、過去の様々なことから、自己否定して、何かに自分が囚われてしまった状態にいる、苦しむ人たちに救いがもたらされる話。
別に作品名のように、神が現れて助けてくれる訳もありません。私たち、人間が自分の力で、そんな苦しみを互いに救い合おうとする姿が描かれているように感じます。
自分を否定する過去の負を、自分が描く物語として昇華する。それは伝えたいことが書けず空を切って苦しんだり、自身の言葉にさらに傷ついたりしながらも、愚直に今から未来へ向けて歩む人間の力強さ、また、それが出来る人の生き方を信じたいような気持ちにさせられるものでした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

14歳の時、仙台から母と共に東京に引越しをしてきたユリ。
中学を卒業し、高校には行かず、高校生専門のデリヘルで風俗嬢として働く。
19歳になり、デリヘルは卒業。
クラブマリアという池袋の場末のスナックのママに拾われ、家を出て、貸してもらった部屋に住みながら、働くようになる。
そんな中、揉めてボコられていたキャッチの男、リヒトをユリは助けて、行くあての無いその男を自分の部屋に住まわせる。
リヒトは漫画家を目指している。そんな彼の描く漫画に魅せられたユリは、献身的にリヒトに尽くすようになり、リヒトはヒモのような生活を送る。
リヒトは、ユリの反対を押し切って、ボーイとしてクラブで働き始める。しかし、イケメンなリヒトは、他のホステスよりも客受けが良く、いつの間にかNo.1となる。
大学で絵の勉強をしているなのかはリヒトが自分の客を取ったことから、リヒトに冷たくあたる。それだけではない。仲良しの同僚、芸能の仕事を目指すじゅんなが、リヒトに目をかけることも気に入らない様子。
客との同伴、それ以上の性的な接待で忙しくなり、泥臭い人間関係に苛立ちながら、漫画の方は思ったように進まない。イライラを募らせるリヒトに、ユリはあなたのことが好き、あなたの描く漫画が好きだと励まし続けるが、それも、リヒトを苛立たせる要因となっている。

そんなスナックに、ミレイという小説家を目指すために社会勉強をしたいと言う女性が面接にやって来る。
ママはその綺麗な容姿から即座に採用。ユリは反対するが、あなたより断然と可愛い子を採用して何が悪いと聞く耳を持たない。リヒトの時も反対していたが、今やこうしてNo.1なのだから、逆に活躍すると考えるのが普通だ。そして、ユリに、もう客に付かなくていいと告げ、キッチンの方に回す。ユリはそれに反発することも無く、おとなしく言うことをきく。
ミレイはたちまち人気ホステスに。
なのかはそんなミレイにもイライラを隠せない。じゅんなは特にどうとも思っていない様子。
ユリは、ホステスとしての出番も無く、給料も落とされて、ママは先端恐怖症だからペンが持てないと訳の分からない理由で、様々な雑用に追われる。
ミレイはリヒトに興味を示す。リヒトがネットにあげている漫画、聖女。松島女子中学生殺人事件という、瑛子という女子生徒が同級生の夏美を殺害し、その場にいた別の女子生徒も重体となった事件を題材に描かれた漫画。
ミレイはその漫画が素晴らしいと褒めちぎる。
リヒトは、この漫画はユリも気に入っていて、これを読んでから、その漫画の続きを見たいとより自分に迫ってくるようになったことを話す。
そして、リヒトは自分の正体を明かす。瑛子の弟。一緒に住んではいなかった。跡継ぎの関係でリヒトは祖母に引き取られる。祖母は、リヒトを単なる人形のようにしか扱わなかった。でも、姉は違った。あまり会えなかったが、自分を一人の人間として認めてくれて、そんな姉を自分も信頼していた。
さらに、あの漫画の主人公が自分であることを話す。
蔵の中で、姉と一緒に写っている裸でピースサインをする女性。それは殺された夏美ではない。もしかしたら、この裸の女性が事件の真実を知っているのではないか。漫画にしたら、この人の目にいつか止まるかもしれない。そんな思いで漫画を描いていると。
そんな話を聞いて、ミレイはリヒトに共感できると言う。
父が有名人であるミレイ。そんな父の飾りかのようで、自分というものを見出せないミレイは、何かそんな孤独な自分と同じような人が起こしたのではないかと思える松島事件に興味を元々抱いていたようだ。
リヒトとミレイは心を通じ合わせ、互いのことを知り合い、各々の理解者となりたい思いを高める。

ミレイがスナックに来なくなる。
リヒトは落ち込んでいる。彼女のラインもブロックされて連絡が付かないから。
そんなイライラを、リヒトはまたユリにあたるが、ユリはただそれを必死に受け取るだけ。
そんな中、小説が発表される。作品名は聖女。作者はミレイ。いつの間にか、店を辞めたじゅんながレポーターとなって、ミレイに取材をしている。
ユリはパクリだと怒り、あんなのは事実じゃないと、リヒトに訴えるように言う。
違う。事実だ。姉が夏美を殺した。その事実を認めたくなくて、あんな聖女という漫画を描いていた。
そんなリヒトの言葉にユリは自分のことを語る。
瑛子と夏美は、自分に色々なことをさせた。蝉入りのハンバーガーを食べさせたり、新品の靴を取られて便所スリッパで歩かされたり、万引きをさせられたり、売りをさせられたり。
ユリが稼いだ金は、この町を出て、東京で暮らす瑛子のためのものだった。
瑛子が好きだから、ユリはどんなことも従った。だって、瑛子は自分が母に殴られていた時、いつも傍にいてくれたから。
でも、そんなユリも母が勝手に決めて東京に引っ越すことになる。
最後の最後まで、ユリは瑛子の嫌がらせを受け入れる。
ユリに対して、瑛子はどうして我慢するのか、本当のことを言わないのかと首を絞めてきた。自分が生きているから、瑛子は苦しむ。ユリは抵抗せず、そのまま意識を失う。
夏美がその様子に気付き、止めに入る。瑛子こそ、本当はユリのことが好きなのではないのか。認めたくない瑛子は夏美を押し倒す。打ち所が悪く、夏美は死んでしまう。
ユリが目を覚ました時は、瑛子はもうどこか遠くの会えない場所に連れて行かれていた。
蔵でリヒトが見つけた写真。あの裸でピースサインをしているのは私だと。
あの事件で殺されたのは自分。それをリヒトが見つけてくれた。リヒトは私にとって光だったと告げて、お別れをする。

新聖女。
事件現場にいた女性が書いた本当の真実として、ユリの書いた小説は一躍、人気となる。
ママはそのマネージメントを始め、なのかはその補佐。
ママは、第二弾として、その後のユリの人生を書かせようとする。
拒絶するユリにママは瑛子を探して会わせると約束する。
瑛子と会いたい。書かなくては、瑛子と会えない。ユリは必死に原稿を書き始める。
ミレイとリヒトは町中で再会。
ミレイは松島事件において、自分の中に通じるものを感じ、リヒトと接触するためにスナックに入ったことを告白する。
母から幼児ポルノの撮影仕事をさせられていた。一儲けするため。人形だった。だから、リヒトとは本当に共感を覚えた。
でも、自分がしたことは、人の人生で飯を食うこと。母と同じことをしてしまっていた。
ミレイはリヒトに謝罪し、あらためて原作者となって、あの聖女を、新々聖女として完成させたいと申し出る。
加害者の弟とパクリ小説家のコンビ。世の人たちは信用しないだろう。
そんなリヒトの正論に、ミレイは策があると言う。
やるからには、多くの人に認められないといけない。
幸いイケメンと美人の二人。二人はアイドルユニットとしてデビューして、認知度を高める。
ツイキャスなども駆使して、宣伝をしながら、二人は創作活動。今度の大きなコミケで発表することに。
なのかは、芸能界で活躍するじゅんなと会う。たびたび、連絡をとって会っている模様。
でも、じゅんなは冷たい。忙しいから、もう会ったりするのは止めよう。
スナックで仲良く一緒だったが、あれは気の迷いだったとじゅんなは言う。
スナックが気の迷いだったのは構わない。でも、一緒にいた時間を無かったことにはしないでと言うなのかにじゅんなはごめん、さよならと言い残して去って行く。
なのかは、今、猛烈に絵を描きたくなる。
店でユリが猛烈に筆を走らせている。でも、そのボールペンからはインクが出ておらず、空虚な原稿が飛び舞うばかり。
私はここを出て行く。ユリだっていつだって出て行けると言い残して、なのかは去って行く。

ママは原稿が書けていないユリを責める。
風俗嬢のお前を拾って、助けてあげた恩を返せと迫る。
ユリはペンを振り上げる。先端恐怖症のママは気を失う。
あの時の瑛子と同じだ。
夏美の幻影が嫌な笑いを振りまく。瑛子が何か声を伝えようとしている。
ユリはひたすら、書き始める。
ミレイとリヒトは作品も完成して、発表会に向かう。
リヒトは作品を仕上げたことで、自分の中にあった姉への呪縛が解かれていることに気付く。
まだ、影の中にいる人がいる。
リヒトはユリの下へと走る。
狂ったように筆を走らせているユリの手を取り、書かなくてもいことを伝える。
書かないと瑛子と会えない。
ユリはリヒトの首を絞める。
もっと、ユリと向き合わないといけなかった。だって、ユリは彷徨う自分を拾ってくれたのだから。
見つけてくれてありがとう。
その言葉を聞いてユリの手の力が緩む。
好きだった。だから、どうしたら笑ってくれるのかをずっと考えていた。
書けない。だって、あの14歳の時で自分の時間は止まっているから。でも、書かないといけない。
そんなユリの手を握り、リヒトは願う。
いつか、ユリが自分の言葉で傷つかなくなる日がくることを。
自分はそんな日を迎えることが出来た。だから、ユリのその日まで一緒に。
ユリ。あなたのことを知りたい。名前が何なのか。
リヒトはユリの手をとり、一緒に紙に自分を記し始めようとする・・・

自分のことを知って欲しいという承認欲求。
それがどういうことから、生み出されるのか。
家庭環境や親の無関心や歪んだ愛情。
伝わらない想い、叶わない恋。
自分の持って生まれた容姿や能力。
才能の限界、先行き不安な閉塞感。
バイオリズム的なスランプ。
不条理に降りかかる災難。
そんな色々なものが作品の中に散りばめられているように感じる。
そんな承認欲求に憑りつかれてしまった時、人は孤独で、苦しいほど人を求め、救われたいと願う。
そして、その求めた人に裏切られたり、無視されたりして、さらに傷つき、その想いを高ぶらせ狂気の道へと導かれてしまう。
それは弱く、切なく、哀しくなってしまうが、それで人は終わってしまったりはしない。必ず、救いの手は差し伸べられて、自己肯定できる安堵の道が開かれる日が来るはず。
それは過ちや罪という負は、人にのしかかって、その人を潰そうとするが、救済の手は差し伸べられて救われることが可能である人間の生き方を示唆しているように感じる。

自己否定してしまってる自分。そんな時、自分が自分に投げ掛ける言葉は、そのまま自分を傷つける武器にしかならないのかもしれない。
まずは、そんな自分を肯定していくところから。自分を否定してしまいたい現実の過去を、物語として昇華させていくことで、その否定の呪縛から抜け出せるような創作の力を言及しているようにも見える。
心の傷を癒えるには、薬のような安易な大丈夫という励ましだとか、金とか名誉とか地位とかでは無く、まずはそんな傷を負うことが悪いことではなく、そんな傷を負いながら歩むのが人生でもあると考え、傷ついた自分を認めるような感じでしょうか。
怪我をして苦しんでいる時は、ただその傷が痛くて苦しくて、自分をどうにかしてしまいたくなるかもしれないし、寄って来る人も苛立ちから退けてしまうのかもしれません。
こんな傷が自分にはあるんですと、人に言えるようになった時にはその傷は治っており、それがその人の生きる上での大切な糧へと変わっている。
そんな、傷を苦しみや不幸とだけ捉えて、そこで終えてしまうのではなく、私たち人間は、それを生きる上での活力へと変えてしまえる力がある。もちろん、それは独りで行うことではなく、繋がる人たちとの関わり合いを通じて、そんな方向を見出す。互いに、人を救う存在でもあり、救われる存在でもある。そして、こんな作品を生み出すような人は、この作品名のとおり、多くの人を救っているのかもしれません。
神のように、何かまじないでもかけてすぐに救ったりすることはできず、愚直だけど、力強いそんな人間の生き方を信じたいような気持ちになる作品でした。

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