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2016年10月12日 (水)

壁の中の鼠【エイチエムピー・シアターカンパニー】161010

2016年10月10日 アトリエ劇研 (45分、休憩10分、45分)

同一作品を、若い女優さんお二人のモード組と、妙齢のベテラン女優さんお二人のトラッド組が各々演じる。
若いお二人から、妙齢のお二人に代わっているだけで、基本設定、セリフとかはほとんど変わっていないのだと思う。
セリフや行動も変わらないのに、なぜか空気が違う、それも明確にはっきりと違うようになってしまうのだから、演劇というものの演出というのは不思議なものだ。また、それに応えて、舞台を創り上げるという役者さんの力というのも凄いものだと改めて感じる。

作品自体は、いまひとつ掴めていない。
何かコミニュケーション不全、疎外、孤独に苛まれている女性の、日常に潜む狂気が襲って来る時間を描いているような印象は受けるのだが。
冷たくもあり、温かさもあり。力強い明日への希望もあり、またやって来てしまう明日への絶望もあり。と、相反する感覚が、二組同士、また各々の組の中でも感じられ、迷走する心の闇の怖さを感じる。ただ、最後は何か分からないが、そんな闇の肯定、それを抱えて生きていく人の力を魅せられているようにも思う。

 

部屋で食事するイラストレーターの女。食べ残しの魚の骨を、いつもやって来るのか、猫にあげようと外に放り投げる。
上の階の人の音がうるさい。電話して、もう11時だとたしなめる。
静かになり、風呂に入る (アイマスクをする)。大好きな落語(音楽)を聴きながらリラックス。
同居しているOLの女が帰宅(黙って寝転がっていた同居している女が口を開く)。
女が風呂に入っている(アイマスクをしている)のを確認して、ワイングラスを二つ用意して、ボトルをあける。
先に一杯だけ。おっさんのような唸り声をあげて、身にしみる酒を味わう。
暇なので一人芝居。某有名健康食品メーカーのデキる営業の男にバーで口説かれる設定。営業だけあって、やたら健康食品に関する知識がある。恐らくはこのOL自身が会社の仕事の中で得た知識なのだろう。
風呂に入っている女がリンスが無い(パックを持ってきて)と騒ぎ出す。タンスの何番目か(バッグの中)に入っているらしい。大事なものはそこに仕舞うことになっている。
早くしないと、キューティクルが剥がれる(シワが出来てしまう)やらとうるさい。
外では救急車のサイレンが聞こえる。12時まで後、何分。
風呂上がりの(パックを終えた)女は、ワインを飲む。
OLの女は、お腹が空いたので食事の準備を始める。
イラストレーターの女は、幼い頃に枕に耳をつけるとドンドンと音がしたという話を始める。怖かった。でも、母親はフライパンのような足をした男が、家の前を歩いているのだと言って安心させてくれた。OLの女は冷静に心臓音だろうと言う。ロマンチックじゃない。
最近、そんな音を聞かなくなった。一人で寝ていると聞こえないらしい。それに、もうフライパンの男はいないから。かわいそうなことをしたと声を揃えて見つめ合う。あの時も暗闇の中、電気のスイッチが見つからず、二人とも目を見開いて互いに見つめていた。
アラーム音が鳴る。12時まで後、何分。
女は食事を済ませる。ワインは飲まない。残しておかないと残り少ないから。風呂に入る前に少し食休み(お肌の手入れ)。
暇になったイラストレーターは、一人芝居を始める。設定はやはり同じ。
OLの女が不機嫌そうに叫ぶ。痒い。猫を部屋に入れたのではないか。
入れてはいない。でも、一昨日、ちょっとだけ触った。昨日もお腹を撫でた。OLの女が出張だから大丈夫かと思ってと言い訳するイラストレーター。
ムヒをつけておこう。痒みが治る。昔からムヒがお得意だ。昔、山菜採りに行った時もムヒをたっぷり使っていた。その手でゼンマイを食べる姿が面白くて。二人は思い出話をしながら笑い合う。
カリカリと音がする。さっきから二人とも気付いていた。何かがいる。
ネズミ。鍋やらフライパンを持って、大騒ぎする二人。
外では救急車の音。今度は近い。
イラストレーターは見に行くと部屋を出る。
しばらくして戻って来る。違う人だったと。アラーム音が鳴る。12時になった。
見つめ合う二人。イラストレーターは缶ビールを買ってきたようだ。いい天気なので外で飲もう。
これどうする。机の上にある白い小箱。かわいそうなことをした。
箱を開ける。中には骨片が詰められている。
二人は顔を寄せ合い、空を見つめる(互いに顔を向き合わせ、見つめ合う)。

モード組を拝見した時のメモからのあらすじ。( )内はトラッド組。

モード組は、舞台が白黒で統一されていてモノトーンとか、スタイリッシュ。そこにある小道具も影のような感じで抽象的なイメージ。二人も平然を装いながら、それはわざと無機質でいるかのように見え、何か見えない力に怯え、感情を押し殺しているかのような感じ。不安を笑いで押し殺している。12時を迎えることの意味合いが理解できていないが、追い詰められて、遂に逃げ場を無くしてしまうように見える。特別な明日を迎えることで、世界が終わってしまうような感覚か。ラストも、どこかぼんやりと前も後ろも無い、不可思議な境界線の狭間に取り残されてしまったかのように映る。 謎めいた点も多く、どこか漠然とした不安を煽られる。
それがトラッド組になり、舞台に色がつく。モード組の黒い小道具は外に押し出されている。舞台上の小道具は確かに物であり、具象的なイメージとなる。その部屋の中は少し温かみも感じられ、二人の素直に発せられた感情が舞台に漂い始める。
モード組が抗い苦しみ、必死に現状打破をもがいてるようなところから、トラッド組は受け入れ、自分の糧とする手段を得たような巧妙さ、余裕も臭う。それがどこか安堵のような感覚に繋がる。こちらの12時は普通に繰り返される明日を迎えるような感じ。ただ、その先に終わりがあることは感じさせられる。ラストはその先を知りながら、また明日を迎えた自分たちを互いに見詰め合っているように見える。

昔、ある方から、作品を紐解くための色々を少しだけ教えてもらったことがある。 その中で、へえ~、なるほどなあと思った一つに、食べるという表現がそのままセックスに繋がっていることが多いということ。
この作品も、食べる、飲むが出てくる。健康食品のくだりで医食同源のような説明もあり、人が生きる上で欠かすことができず、同時に捨て去ることもできない欲という感覚を得たのか、妙に両組とも性的なエロい空気がどこかずっと漂っている。一人芝居で男を欲しているような露骨な描写もあるし。
結局、何を描こうとしているのかが、分からない状態なのだが、自分が観て感じたままの想像力に委ねていいのなら、どうも、この作品は女性が歳を重ねる時の漠然とした不安を含めた複雑な心境みたいなことを感じる。
例えば、モード組は、女性の20歳から30歳。トラッド組は30歳から40歳へみたいな。
こう考えると、私の中では、12時を迎える感覚の違いや、美を意識した表現の違い、舞台に漂う空気の違いとかが何となく納得出来るのだ。
仕事をしながら恋愛も。若い頃は戦い方に巧みさが身についていないから、相手を傷つけ葬るくらいまでの、勝たなければいけないといった、言い方は悪いがヒステリックな狂気だってあるのだろう。歳を経ることで、色々な巧妙さは身につけても、やはり根本は大きくは変わらないようだ。 上の階の人にクレームをつけるように、ナメラレたらあかんと、強くキツく生きてきたようなところや、二人の仲良い姿が、傷の舐め合いに近い励まし合いにも感じられ、少しコミュケーション不全に陥っているようなところも見え隠れする。どこか世間とは疎外されて、孤独に苛まれているかのような。
そんなコニュニケーション不全や、孤独の背景に潜んでいる日常の狂気。それは日常の中に溶け込んでいるが確かに存在し、二人もそのその不気味さを知っているが、わざと避けているみたいだ。

そんな漠然とした不安の中で、時折、襲ってきそうな恐怖に怯えながらも、流れる時間の中で明日を迎えて生きていかなくてはいけない。
その覚悟が、モード組は、まだ不安の中にいて、心も入り乱れているみたいに見える。でも、舞台は、物も少なく、妙に整理整頓されている。
一方、トラッド組は、ある意味、達観した感じで、慣れてしまったぐらいの余裕さも感じる。でも、舞台は物が散乱して、乱雑な状態で、およそ心の整理がついているようには見えない感じだ。
この心の中の状態と、その人が生活する姿の状態が同調していないところに、何か歪みを感じ、その中に得体の知れないものが潜り込んで、自分たちの心の隙間を突いてくるみたいな気味悪さを覚える。
でも、最後はどちらも缶ビールで乾杯するのだろうか。
明日を迎えられるということに想いを馳せて、どんなものを抱えていようと、これからを見詰めて、力強く生きていかなければいけないといった覚悟、というかそうしないと仕方ないでしょといったような感覚が残る。

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