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2016年10月

2016年10月31日 (月)

独鬼 -hitorioni-【竹村晋太朗 presents 劇団壱劇屋】161031

2016年10月31日 シアトリカル應典院 (75分)

千秋楽公演は、同時刻に映像配信するらしい。
それぐらい、観たいけど満席だから・・・って人の声があがったのだろう。
若干当日券はあるようなことは言われていたが・・・

そんな声があがるのも納得といったレベルの作品であることが、観たらよく分かりました。
珠玉の逸品ぐらいの言葉で記しておけば、ちょうどいいぐらいかな。
殺陣パフォーマンスは、もちろん壱劇屋で、しかも竹村晋太朗さんをメインに据えているのだから圧巻だったことは言うまでもないことでしょう。
ストーリーは切ないですが、優しさに溢れていて、心揺さぶられます。生きること、愛することの喜怒哀楽が真っすぐに伝わり、そこに人間の尊い強さを感じました。
この劇団の役者さん方のまとまりのある統制された動きはもちろん、たくさんのアンサンブルキャストが創り上げる空気、風景は凄まじい舞台の迫力に繋がっています。さらには、ずいぶんと贅沢なことをするなあと思わせるくらいの、小劇場を観劇していて名を知らぬ者はいないだろうってクラスのベテラン役者さん方の安定した貫禄あるお姿も。
見事だったと思います。
とりあえず、宣伝になればと、急ぎブログをアップしておきます。
観ないともったいないことだけは確かです。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、千秋楽。上記したように詳細は知りませんが映像配信あり>

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2016年10月30日 (日)

わたしたちの永遠【劇団ほどよし】161030

2016年10月30日 芸術創造館 (90分)

ちょっと後半、展開が急に早くなって、これまでじっくりと溜まっていたものが、急に溢れ出してしまった感じになったのが残念なところかな。あまり、長時間芝居は腰の負担もあり、好きではないが、もう30分ぐらいかけて、アンドロイドたちの心情を訴えかけてもらっても良かったようには思う。
それだけ惹き込まれる、面白い話だった。
愛する人を失ってしまう者の、狂気的な悲しみ。そこに倫理観から外れる概念が生まれてしまうのは仕方がないことか。
それでも、やはり喪失は受け止めて、先を歩まないといけない。それが人間は出来るのだから。
人とアンドロイドは何が違うのか。アンドロイドが必死に対峙しようとした愛の形から、それが見えてくるような作品でした。

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永久の神憑き【箱庭計画】161029

2016年10月29日 ウィングフィールド (80分)

観始めてすぐに、昨年、短編集で拝見した作品を基にしているのだろうことに気付く。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/151107-c9ef.html
そうそう、何か生き方を悩むせからしい女子大生と、豪快かつ飄々とした荒くれ男のコンビでワイワイとしている話だったなと。
あの時は、意味がよく分からないという印象が強く、これはちょっと厳しい観劇になるかなと思っていましたが、しっかりと膨らませているのか、まだ分からないところは多々ありますが、理解はできて、ちょっとした生き方指針みたいなものを描いているような感じかな。

暴走気味な女子大生と荒くれ男のコンビを、淡々と落ち着いた3人の役者さんがじっくりと魅せる丁寧かつ、繊細な演技でしっかりと固めるみたいなスタイルが、とても心地よく、観やすさを生み出しているようです。
キャラの特徴化が上手なのかな。
観ていて楽しく、狭い空間の中に惹き込まれるような魅力があります。

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蟷螂襲短編集【JUIMARCとパプリカン・ポップ友情企画】161029

2016年10月29日 common cafe (65分、休憩10分、65分)

女性二人の会話劇、2作品。
姉妹と友達と設定は異なるが、2作品とも同じ構造のような印象を受ける。
幼さを残す人と大人。
辛さや苦しみ、悲しみを漠然としてしか理解できておらず、それでもどこかに根付いているものに不安を覚える人と、そんな辛さを彷徨いからようやく道が見えてきたのか乗り越えつつある人。
そんな二人が互いに話すことで、各々の一歩を踏み出せているような感覚。
相手のことを分かっているから話せるし、分かるから聞ける。
通じ合ってるっていいなあ。一つの一つの言葉から、その人の心を自然に紐解いて、相手の心に寄り添おうと、本当に自然体でなされている素敵な関係。
きっと立場が逆転しても同じなのだろう。
今、生きる社会、時代。今じゃなかったら出来た、出来るのかもしれないけど、いつだって私たちは今の時間を過ごしているから。頑張ってもどうにもならないこと、自分だけではどうしようもないこと、そんなたくさんのことに悲しみや悔いを抱えながら生きている。
押し潰されそうな不安。でも、その抱えているものに目を向けて、少しだけでも一緒に抱えてくれようと差し伸べられる優しい手。
そんな感覚を覚える作品に、安堵と嬉しいような気持ちを思い起こさせてくれる。

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2016年10月27日 (木)

GLOVER【梅棒】161026

2016年10月26日 森ノ宮ピロティホール (125分)

ネタバレのことを考えると、素晴らしかったという言葉ぐらいしか書けないですね。まあ、そんなことは観る前から、ある意味分かっていることで、今さら、ここで書いても仕方がないか。
確かに観に伺って、素晴らしかったということを確認してきましたという報告ということで十分でしょうか。

ロミオとジュリエットをベースに、人間とロボットが敵対する世界の中で愛を描く。
登場人物相関やストーリーが明快なのはいつもと同じく。
もちろん、基本的にセリフは無し。個々の役者さん方のお得意な持ち味を活かしたダンスを中心とした身体表現で全てを伝える。
それなのに、どうして、こんなに頭の中に色々な情報が入ってきて、それを想像で膨らませて、満足感たっぷりの気持ちになるのか。
色々なことが心に訴えかけてきて、心が震え、締め付けられるくらいに感動して、涙がこみあげてくるのか。
不思議と言えば、不思議ですが、それが梅棒なんだろうと言われると納得できるような気もします。

今回拝見して、話、作品の根本に、人の優しさ、分かち合えること、善意を信じているところが強く感じられます。だから、私たちは必ずより良き道へと進めるんだという信念、それを実際に証明すべく、舞台で熱を込めて訴えかけてくる。そんなところに心を動かされてるように感じます。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、木曜日まで。仕事でどうしても行けず。何も無ければ、間違いなく、もう一度観に伺っている作品>

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2016年10月24日 (月)

サイレントナイト【椿project】161023

2016年10月23日 芸術創造館 (105分)

劇団赤鬼の作品。
この作品は、生では観ていないけど、DVDで恐らくは5回以上は観ている作品。
それだけに脚本の良さは確固たるものとして、配役やちょっと違うところは本家とどうしても比べてしまいます。
どこまで素直に観て楽しめるかなと思っていましたが、そんなこと関係なしに、すっかり楽しんで観てしまいました。そして、やはり80分ぐらいから、もうダメになりました。涙腺の壁が。
配役もピタリとはまり、その熱量、技量も申し分無かったように思います。
各々が抱く信念。それを独りよがりでなく、相手のことも認めて貫く姿。そんな人としての本当の強さを持つための成長が、熱く描き出されているような話でした。

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ロイドと【劇団ガバメンツ】161023

2016年10月23日 space9 (100分)

コメディーしかできない劇団。
この劇団のキャッチフレーズみたいだが、これまで、その通りの様々なコメディーを楽しませてもらった。
だろうなと思っていたけど、やっぱりコメディー以外も出来るんじゃん。それも、今までの上質な空気をそのまま保って。

人はみんな、孤独を、寂しさを怖れ、人を求める。そんな中でも、生きていかなくてはいけない。ただ、命を長らえるのではなく、社会の中で生活するという意味合いも込めて。
生き辛い世の中。募る孤独の不安。そんな、自分を取り巻く渇いた空気を潤したいと加湿器の力を借りる。
物理的に乾いた肉体に水分を補給するためではない。潤うことで、その人の中に生きていく活力を与えてもらうためなのかと思う。
それと同じように、寂しいからと、会いたい、一緒にいたい人を、装置の力を借りて具象化する。画像や動画では足りないから、もっとその人自身を求めて。そんな人工知能が未来には出来るのだろうか。
出来ても、それはきっと肉体に水分を補給するだけのような加湿器をより高性能化しただけのものなんだろう。
人が求めるのは、その人と会って、そこで想いを通じ合わせながら共の時間を過ごすことなはず。
単純なある期間、一緒にいましたという記録ではなく、その期間に互いに心を通じ合わせようと触れ合った時間、思い出、記憶なのでしょう。
そんな人工知能の限界をコミカルに見せながら、閉じてしまった人の心に入り込み、外に連れ出してくれるのは、想いを持てる人以外は無いんだろうなと思わせるような優しい、安堵を得るような気持ちになる作品でした。

今、現在でも、友達や恋人を、そんな自分の理想する形で人工知能に委ねることが出来るのだと思います。
様々な仕事も、やがて人工知能に置き換えられるなんて報道もよく見かけます。例えば、医師の診察だって、巨大なデータベースに頼った方が的確な診断ができるのだとか。
でも、それは本当でしょうか。こちらの痛いとか苦しいとかを、人以外が理解してくれるのでしょうか。
そんな人との触れ合いが必要な様々なことに対して、人工知能が取って代われると思えてしまうぐらいに、そこに人の感情や想いが無い世界になっているのかもしれません。
そんな本当に渇ききってしまったような世界に、警鐘と潤いを与えようとする作品にもなっているようです。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、月曜日まで>

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2016年10月23日 (日)

コインランドリー【べろべろガンキュウ女】161022

2016年10月22日 イロリムラプチホール (80分)

これまでと大きくは変わらないべろべろガンキュウ女らしい話。
これといって目新しさは無いよくありがちな演出。
自分たち自身の演劇をすることへの心の葛藤を描くのは、若い劇団はじめ、けっこうよく見かけるスタイル。
映像でスタイリッシュさを醸し、歌と楽器でエンタメ性を盛り上げるのも定番。
特にこれといったものは無かったように思うのだが、感想は新感覚のこれまでに無い興奮を感じる魅力溢れる作品だったとなってしまうのはどういうことなのだろうか。
若さが成せる技なのか、やはり奇才と呼べる劇団と出会えたということなのか、本気の度合いが常軌を逸脱するレベルなのか。
とにかく、べろべろガンキュウ女、期待を超えてきよるなあといったところだ。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで。演劇ならではの中毒性を得たいなら、ここはまずまずお薦めかもしれません>

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frascoの海【猟奇的ピンク】161022

2016年10月22日 油野美術館 (35分)

ゆったりと繊細に綴られていき、どんどんと深く潜り込んでいくかのような感覚を得る話。
難解で頭が混乱するのと、ちょっとスローテンポ過ぎる穏やかな流れで、意識が飛びそうになる。
観終えて、夢から覚めたかのような柔らかさのある幻想的な空間が印象的。

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Nice To Meet You, My Old Friend. Aチーム【劇団競泳水着】161021

2016年10月21日 インディペンデントシアター1st (75分)

もう2年前になりますが、今でも何故か内容をけっこう覚えている、この作品に近い感じかなあ。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2014/07/40-55cf.html
他人から見た自分を、自分で勝手に設定してしまい、幅を狭くしたり、壁を作ってしまったり。そんなめんどくさい人間だけど、ちょっとした触れ合いで、すぐに変わることも出来る。
要は気持ちの持ちようだとか、全否定を少しだけ緩めて部分否定にしたら、意外に全部受け入れられるような全肯定に代わって楽に生きられるかも。
そんな、何かしら救われるような気持ちになったような気がします。
心に残る作品。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

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2016年10月22日 (土)

さきっちょ【劇団チェリーボーイズ】161021

2016年10月21日 大阪大学豊中キャンパス 学生会館2階大集会室 (95分)

昨年の筆おろし公演の感想。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/105-d6aa-2.html
やや厳しめの感想だけど、今回、前回公演のDVDをもらえるというだけで、一発目公演に伺っているので、あまり認めたくないけど、この劇団、大好きなのだと思う。

今回の感想だが、とても惜しかった。
70分ぐらいまでは、これは素晴らしいなあと、乏しい語彙力でどう褒めた感想を書こうかと考えていたぐらい。
作・演、主演と大活躍の大野皓太郎さんは、出だしから、妄想一人芝居でもされたら、かなり魅力的な空気を醸されるのではないかと思うくらいに、リズム良く、ダメ男を演じられる。そんなダメ男の周囲を取り巻く男たちも、シュールだったり、考えの浅いバカだったり、悪い妄想に憑りつかれていたりと個性豊かなキャラが、変にぶつからず、頭がおかしいというベースで均整のとれたバランスの良さを見せる。
女優陣も、その個々の可愛らしさ、美しさ、ちょっと痛々しい姿で、魅力を振り撒いている。
おまけに何かよく分からないシュールなキャラや、飛び道具的なキャラを走り回らせて、舞台にメリハリをつける。
話の展開はスムーズ。笑いも、程よい下ネタに加えて、そのキャラに合った様々なタイプの笑いを舞台に飛び散らす。
メタ的な展開に持っていく腕も魅せて、演劇ならではの魅力も兼ね備える。
これが終盤に私の中で崩れてぐちゃぐちゃになってしまった。
突拍子も無い展開に、置いてけぼりになり、もう話についていくことが出来なくなってしまった。
それらしき作品名ではあるが、おふざけだけでは無いところは前回と同じだ。チェリーのセックス観と同じく、社会生活をテクニシャンのように巧く生きられず、不器用に、単なる漠然とした憧れのようなものを抱いてでしか生きられない若さの中でのもどかしさを感じさせるような話になっているはず。
学生を卒業して社会に出る。でも、その心はまだ取り残されてしまっているから、色々なことで悩み、不安を抱き、それでも頑張って生きなくてはいけない。ただ、セックスして童貞捨てたら、チェリーじゃなくなって、道が開けるのかと思っても、人生そう甘くないのと同じような感じだろうか。
そんな、チェリーという言葉に込められている若者の様々な想いに、もっと心を響かされて、終えることが出来たら、最高だったのだが、ドタバタになり過ぎて、それがほとんど消えてしまったように感じる。
もっと最高だったと思いながら、劇場を後にすることが出来る作品であり、それを実現できるだけの方々が揃っていたように感じるのが少々、残念。
でも、まあ、そんなことも含めて、やりよるなあと思わせるだけのパワーを感じさせられる楽しい時間だったと思います。

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2016年10月17日 (月)

宇宙の人々【劇団925】161016

2016年10月16日 インディペンデントシアター1st (60分、65分)

宇宙人をテーマにした2作品。
設定がシュールで面白いのだが、不思議と笑えるよりも、温かみを感じるような作品に仕上がっているような。
価値観の異なる者同士が分かち合い、繋がる。
そんな場で、活躍する大した力も無く、平凡だけど、真摯に誠実に、相手への想いを伝えようとする地球人。
地球、そこに住む地球人ラブって感じの人間賛歌の誇りを得るかのような感覚も残る、どこか優しい両作品だった。

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2016年10月16日 (日)

最果てクロニクル【関西大学劇団万絵巻】161016

2016年10月16日 シアトリカル應典院 (90分)

2年前、少し観劇をお休みしていた間に、本家、劇団赤鬼の本公演で上演された作品。
その後、DVDでは拝見しているが、やはり生で観たかったという気持ちはどうしても出てくるもので、それをこの劇団が上演するというならということで、足を運ぶ。
程よいコミカルさを交えながら、しっかりと魅せる力を持つ個々の役者さん方のバランスのいいまとまりで、分かりやすいスムーズな話の展開、その先にある感動を得るというドラマチックな赤鬼作品がとてもよく似合っている劇団だと感じているから。
それに、Twitterなど、SNSでも高評価の感想が並んでいる。
と、そんなことで、少々、ハードルを上げての観劇になってしまったのだろうか。
率直な感想を一言で書くと、普通みたいな言葉になってしまう。

決して、面白くない、楽しくない、感動しないというわけではない。
観終えて、上記したような魅力は十分すぎるくらいに、心に刻まれて、さすがは万絵巻きだなあという気持ちはある。
今回は特に男優陣の魅力が光る。本家の劇団赤鬼の男優は少々、年齢層が高い。それだけに落ち着きある安定感、そして、ちょっとおっさんぽいコミカルさが楽しみの一つだ。それを見事に引き出している。若さを抑えて、穏やかな安定した空気を醸しながらも、ちょっと面白いというのは、弾けまくることより、数段難しいように感じられ、それを実現する底力を強く感じる。
代わって女優陣は、個性的なキャラで町の空気をまとめる。キレキャラから、ごく普通の空気を醸すアンサンブル的なキャラに至るまで、細かく行き届いた言動が、この最果ての町の特殊な雰囲気を美しく浮き上がらせているようだ。

それにも関わらず、まあ、普通に出来のいい作品を観たというだけの感が残ってしまっている。
それというのも、まず、実はこの作品の話があまり好みじゃないというところは大きいだろう。
DVDで拝見していて、事件の真相に迫る部分にウェイトがかかり過ぎて、いまひとつ、少女と父親や、町の人たち、事件のカギとなる政府関係者たちの想いが繋がらず、いつもなら心揺さぶる、人の優しさや温かみが自分の中に入ってこないなあと思っていたので。
それに、背景となる政府の闇の部分がどうも曖昧だ。こんな町が生み出されてしまう根本がイメージしにくいように思う。
全て、生ではなく、DVDで観たからだと思っていたが、どうも違うようだ。

それと、あとは、舞台セットだろうか。
何とも物足りなく寂しく感じるのは、単に素人目線だからだろうか。
最果ての地。極寒の中で、闇を抱えて、大切な人との別れを経験して、その闇と共に生き抜く。だからこそ、そこで繋がり合う町の人たちの心は、互いに手を差し伸べ合うことで、外の世界でのことで凍ってしまった心を優しく溶かしながら、ほのかな温かみある光を生み出して日々過ごしている。
そんなイメージが浮き上がってこない。
黒を基調にした殺風景な舞台は、町の人たちの心を象徴するのかもしれないが、この町にいる人たちは、そこから自分たちでその寂しい心を満たそうと、必死に町を創り上げてきた歴史があるのだと感じる。それならば、観る風景は、普通の街並みであり、そこに潜む黒い影を想像させるような感覚で舞台を観たかったように思う。
また、これは観る側の想像力を必要とするのだろうが、舞台から登場人物がいなくなる時、消えるのではなく、どこか違う場所に行っているはず。その奥行きが、そういう舞台だから分からない。場所は色々とシーンによって変わる。それがこま切れとなって、全体的な町の風景にまで頭の中で組み立てることができず、舞台に入り込むことが難しかったように思う。

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2016年10月15日 (土)

いつかの夏は【シバイシマイ】161014

2016年10月14日 カフェ+ギャラリー can tutku (70分)

穏やかに流れる温かい時間が心地よく、舞台に溶け込むかのような安堵感を得る作品だった。
人が人を傷つける。そんな人が犯す過ちを寛容する。どうしようもないことは幾らでもあるから。
傷つけた者も、傷つけられた者も、かけがえのないものを失う悲しみを心に抱えることになる。そんな失った悲しみは、必ず差し伸べられた手を掴み、新たに得る繋がりから始まる未来の自分が癒してくれる。
今という苦しみが、流れる時間の中を生きることでたどり着く未来の自分が、きっとそれを大切なこと、時間、日だったことに気付いて、これからを生きる自分の希望へと変えてくれる。そんな日が来ることを信じて、今を生き抜く。
流れる時間の中で、過去は決して失われてしまうだけのものではない。今、これからの自分の大切な糧であったことに後からだが気付く。失うことの悲しみも、今はそのどん底で苦しみの中にいても、きっとそれが幸せな喜びを導く大切な思い出として、心に刻み込めるようになるはず。
だから、今という大切な時間を、自分、そして周囲の人たちと共に、心を寄せあいながら生きようと勇気づけられるような感覚を得る話でした。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

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2016年10月12日 (水)

壁の中の鼠【エイチエムピー・シアターカンパニー】161010

2016年10月10日 アトリエ劇研 (45分、休憩10分、45分)

同一作品を、若い女優さんお二人のモード組と、妙齢のベテラン女優さんお二人のトラッド組が各々演じる。
若いお二人から、妙齢のお二人に代わっているだけで、基本設定、セリフとかはほとんど変わっていないのだと思う。
セリフや行動も変わらないのに、なぜか空気が違う、それも明確にはっきりと違うようになってしまうのだから、演劇というものの演出というのは不思議なものだ。また、それに応えて、舞台を創り上げるという役者さんの力というのも凄いものだと改めて感じる。

作品自体は、いまひとつ掴めていない。
何かコミニュケーション不全、疎外、孤独に苛まれている女性の、日常に潜む狂気が襲って来る時間を描いているような印象は受けるのだが。
冷たくもあり、温かさもあり。力強い明日への希望もあり、またやって来てしまう明日への絶望もあり。と、相反する感覚が、二組同士、また各々の組の中でも感じられ、迷走する心の闇の怖さを感じる。ただ、最後は何か分からないが、そんな闇の肯定、それを抱えて生きていく人の力を魅せられているようにも思う。

 

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2016年10月10日 (月)

ウサギ小屋裁判【RandomEncount】161009

2016年10月09日 カフェ+ギャラリー can tutku (100分)

巧妙な展開、役者さんの切り替えの妙、子供と母親の心理を描きながら、同時に今の社会構造を浮き上がらせて、そこに鋭くメスを入れたような作品に驚かせられる。
非常にモヤモヤしたラスト。
綺麗事では終われない。
そんな中で、私たちは人との心の分かち合いを失うことなく、これからをより良き道へと導くためにはどうするのかを問い、各々でそのために自分自身にあった罪を考えなさいと突き付けられたような気がします。

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2016年10月 9日 (日)

猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方【劇団ジャブジャブサーキット】161008

2016年10月08日 ウィングフィールド (115分)

小説として読んでも、これまた面白いのではないかと思う、見事な話。
バラバラの登場人物たちのエピソードが、繋がっていく爽快感たるや。
おかしな個性的なキャラ、くすりと笑わせる言葉遊びの妙、何となく大きな力に抑え込まれているような不気味な背景、それでもこれからの未来に射し込む光を掴もうとしている力強さ。

震災などの天災により辛い思いをする人もいる。そんな人の悲しみを自分の欲に利用しようとする悪者がいる。それどころか、そんなことを国家がしていることもある。
家族を失い、身寄りの無い者。不幸な生い立ち。何をやっても上手くいかず、衰退していく人生。突然、降りかかる病気。死の宣告。虐待、DV。
不幸は幾らでも自分たちを襲って来る。
それどころか、どうやら、人にはそんな不幸に自分を追い込んでしまうかのような自己破壊欲なんてものもあるようだ。
そんな人間の姿を因果律の方程式で解析なんて出来るのだろうか。
無理だと分かっていても、そんな方程式を解いてみたい。
一つの答えが導かれたようだ。
人は傷つき、迷って、壊れたりしながらも、いつも変わろうと生きている。
今とは変わった明日を見て、それに向かって生きる。
その先に、死が待っていたとしても、それは生きようと懸命だった証。
死亡フラグを立てても、それは死へ向かうのではない。
死の伏線の中で、因果律を崩した法則の下、人はその原因から導かれるだろう結果を変えようと生きることが出来るみたいだ。
そんなことを感じるような話で、傷ついた人たちへのエールと共に、今の辛さ、悲しみからの脱却への後押しをしているかのような印象を受ける。

<以下、複雑な話なので、まとまっていないですが、相関図、あらすじを書いており、ネタバレしますのでご注意願います。大阪公演は月曜日まで、東京公演が11月にあるようなので、白字にもしていません。少し、前情報を頭に入れておいた方が分かりやすくなるような気もしますが、あらすじや相関図を頭の中で観ながら作るのが楽しい作品でもあるので、重々ご注意願います。>

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-Hana-【赤猫プロジェクト】161008

2016年10月08日 シアトリカル應典院 (85分)

美しい佇まい、仲睦まじい可愛らしい姿を見せる四姉妹に、純真無垢で、ちょっと小悪魔的な可憐さがある花たち。
冒頭から、その舞台に漂う美しさに魅了される。
でも、その時から既に何となく気付かされる。この美しく、楽しい空気の陰に隠れて、とても残酷な、まだ見せられていない核があることを。
ラストに向けて、その核は育っていく。
それは目を背けたくなるような悲しい結末を迎えるのだろうことが予期されても、この四姉妹、花たちから目を離すことが出来ないような惹き付けの力に惑わされながら、そのままえげつないラストへと導かれてしまったような感じか。

何となく萩尾望都を思い出すような世界観だろうか。こんな気持ちになるような作品を確か、昔に読んだような気がする。
相手を想い、自分を犠牲にしてでも守ろうとする。これは愛だろう。その中で生まれる相手への憎しみ。同時に狂おしいほどの愛が生み出される。これも愛だろうが、こちらは歪みとか狂気に近い感じだろうか。
その歪んだ狂気的な愛が美しい。
どうしようもない愛ゆえの残酷な美しさを醸す。
咲いている花も美しいが、その花が壊れて散っていく様も美しい。そんな人の持つ残酷な感情、でも、それが愛おしくも思えるような人間の本質を突こうとしているのだろうか。
ストーリー、舞台の美しさに惹き込む力を魅せつけたような作品でした。

<以下、あらすじだけを書いており、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

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2016年10月 8日 (土)

米元の変 2025【劇団SHINKOUJI】161007

2016年10月07日 心光寺 (90分)

日本が日本でなくなる日。
経済成長が頭打ちになって発展に影が見え始める現況、古き日本の否定、物事を全否定で見て拒絶してしまう不寛容社会、日本人である誇りをどこか持ちにくくなりつつある今の日本。
日本がいつか消えてしまうそんな日は、もはや現実としてあり得るような気もする。
それでいいのでしょうか。
自分たちのアイデンティティーを喪失して、何かに従属して生きる。それは本当に自分の心に素直に生きていると言えるのだろうか。
変わりゆく時代の中で、変わらない自分たちの真実の想いに目を向けてみて下さい。
その場所として、お寺という日本独自の、仏様のいらっしゃる、いつも変わらない空間はけっこういいのではないでしょうか。
そこには家族と共にいるかのような、憩い、安らぎを与えてくれて、きっとあなたを笑顔にしてくれます。そして、気付かせてくれるはずです。私たちはいつも家族や周囲の人たちと共に笑顔で生きていきたいと祈っていることを。
そんな本当の自分の心を知って、そのために生きるという信念を忘れることなく、今の社会をより豊かにしていきましょう。

そんなことを伝えているような作品かな。
お寺という場所を活かし、仏様の教えを交えたりしながら、何かに締め付けられて、自分を失いつつある者たちを繋がりを通じて、自身を取り戻させ、さらに、皆と共にこの世を素敵に生きたいという気持ちにさせる話となっているように感じます。
とこんな感想を書くと、堅苦しい感じがしますかね。
実際は一言で書くと、コメディー作品です。各キャラに吉本新喜劇ばりの特徴的な個性を持たせ、そんな人たちがドタバタする中に、ほのかに上記したようなことを感じさせるような作りになっているので、基本は笑える作品だったと言っていいかと思います。
観終えて、何か爽快、明日への安堵を得るような感覚になります。

<以下、あらすじだけ書いているので、ネタバレしますのでご注意願います。公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

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