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2016年10月30日 (日)

わたしたちの永遠【劇団ほどよし】161030

2016年10月30日 芸術創造館 (90分)

ちょっと後半、展開が急に早くなって、これまでじっくりと溜まっていたものが、急に溢れ出してしまった感じになったのが残念なところかな。あまり、長時間芝居は腰の負担もあり、好きではないが、もう30分ぐらいかけて、アンドロイドたちの心情を訴えかけてもらっても良かったようには思う。
それだけ惹き込まれる、面白い話だった。
愛する人を失ってしまう者の、狂気的な悲しみ。そこに倫理観から外れる概念が生まれてしまうのは仕方がないことか。
それでも、やはり喪失は受け止めて、先を歩まないといけない。それが人間は出来るのだから。
人とアンドロイドは何が違うのか。アンドロイドが必死に対峙しようとした愛の形から、それが見えてくるような作品でした。

AIの研究をしているハナは、研究室でたまたま見つけた研究者募集の広告を手にして、ある博士の研究所を訪ねる。
そこには数々のアンドロイドがいた。
施設を総管理する文字通り、母のような空気を醸すマザー。
幼く、やんちゃで、わがままで、まだお母さんが恋しいようなノブ。
ちょっとお調子者で、すぐにでしゃばって荒々しいゴウ。
リーダーのような凛とした空気で、感情を押し殺したヒカル。
冷静沈着に物事を解析するような頭脳明晰なサトシ。
人間よりも格段と優れた身体能力を有し、それを勝ち誇っているようなハルカ。
音楽や絵画を愛し、芸術に心を動かすことが出来るマユ。
特に何も出来ない、というか人より能力は劣っている関西弁の気楽なショウコ。
アンドロイドと言っても、それはもう人間そのもの。睡眠や食事も必要だ。それに、効率だけを求めているのではない。芸術を楽しんだり、非効率な面を持つ者など、各々に個性がある。
ハナは自分のこれまでしてきた研究レベルでは、何の役にも立てないと立ち去ろうとする。
しかし、博士は問う。なぜ、AIの研究をしているのか。
ハナは答える。どうしても会いたい人がいるから。
博士はハナを研究者として住み込みで雇うことにした。

ハナはヒカルの案内で施設を見学。
ヒカルに亡くなった恋人のことを話す。それは愛なのかとヒカルは問う。自分たちには分からない感情だから。私は愛から見放された失敗作。そんなことをヒカルは言う。
マユがユリの花の絵を描いている。
綺麗な花。ハナが触れようとすると、ヒカルが厳しい口調でそれを止める。
新種の花。名は純粋無垢を意味するイノセンティア。博士はそんな研究もしているらしい。
博士とロボット三原則のディスカッション。この原則には、矛盾が生じる可能性がある。
例えば、100人が乗った電車の前に、1人の自殺者がレールの上に立っていたら。アンドロイドは乗客を守るために1人を犠牲にするだろう。では、101人の自殺者が立っていたら。
結局は倫理観に委ねられるのかもしれない。
その倫理観が歪められたら。アンドロイドが人間をある枠で区別して、枠外の者を人間として見なさないようになったら、アンドロイドによる人間の大量虐殺も起こり得る。
ハナは博士に事故で亡くなった愛する人をアンドロイドとして蘇らせて会いたいことを伝える。これはエゴ。でも、どうしても会いたい。
博士は止めた方がいいと言って立ち去る。

サトシはイノセンティアの秘密を暴こうとしている。
この花が自分たちを縛り付けている。この花を傷つけたり、花からある距離を離れると自分たちの機能は停止する。
サトシはマユに毎日、絵を描かせて、そのイノセンティアを管理する。
博士がその秘密を握っているはず。
サトシは博士の記憶を読み取ろうと、一番旧型のマザーに博士の記憶の断片を埋め込んで、その記憶を投影しようとしている。
博士はアンドロイドの研究をしている。最初にサトシが完成した。続いてゴーとハルカも。
博士とヒカル。海にいる。そこで、博士はヒカルが重い病気を患っていることを聞く。
プラネタリウムに一緒に行きたい。そんな博士とヒカルのやり取りは全て日記に綴られている。そして、それは9/14で止まる。
博士はヒカルを生み出す。
しかし、それは姿かたちがヒカルであるだけで、そこに愛は感じられなかった。自分の全てを肯定するだけのロボット。
さらに、自分が生み出したアンドロイドたちは、その優秀さから人間を支配しようとし出す。
博士はイノセンティアを開発し、自分が仮に死んでも、アンドロイドたちが暴走しないようにした。イノセンティアは各々のアンドロイドに一輪ずつ対応している。睡眠などの生活状況に応じて、そのイノセンティアも呼応する仕組み。
ある日、博士はヒカルが、南十字星を見たかったと言っていたことを思い出す。博士はアンドロイドのヒカルに一緒に見に行くかを尋ねる。普通にハイと返事するヒカル。しかし、博士はそんなヒカルの首を絞める。アンドロイドでも、首を絞めたら傷つき、機能は停止する。それでも抗わない。私は博士を愛せていますか。
博士は絶望し、自殺する。
マザーはそんな記憶を投影して、そのまま壊れてしまった。
そんな記憶の投影をハナは隠れて全てを見てしまった。

ハナはノブやマユの下へ向かい、全てを聞く。
サトシたちが人間を支配しようとしていること。そのために、イノセンティアが開発されたこと。
そして、死んだ博士がいないと、自分たちの存続が危ぶまれるので、自分たちで博士をアンドロイドにしたことを。博士の記憶も都合のいいように改ざんした。
ノブはイノセンティアの下へ向かう。
そこには既にサトシ、ハルカ、ゴーがいた。
マユがずっと描いているイノセンティアの絵から、個々のアンドロイドに対応するイノセンティアが特定できたみたいだ。
夜更かしをよくしていたノブのイノセンティアを取り出し、ハナを殺すように命令する。でも、ノブは拒絶する。イノセンティアは踏み潰されて、ノブは機能停止する。
サトシはさらに、ハルカとゴーのイノセンティアを取り出す。
裏切り。ハルカとゴーも機能停止。続いて、ショウコ、マユも。
ヒカルがやって来る。続いて、博士もやって来て、目の前の惨劇に驚愕。サトシは博士に真実を告げる。そして、博士のイノセンティアも握り潰して機能停止させる。
最後に残った一輪のイノセンティア。サトシはそれを手にする。ヒカルは止めるように忠告する。
サトシは確信していた。最後に残っているイノセンティアは、花の状態から自分のものでは無いことを。しかし、マユは絵に細工をしており、その考えは誤っていた。
サトシがイノセンティアを握り潰すと、サトシはそのまま崩れ落ちる。
ハナがやって来た時、そこにはヒカルだけが立っていた。
ヒカルは胸のスカーフをとる。そこには心臓に埋め込まれた紅いイノセンティア。
ヒカルは倒れている博士の手を掴み、その掌で自分のイノセンティアを潰す。
そのまま、ヒカルは博士と寄り添うように倒れる・・・

厳しいラスト。でも、ハナの存在がそこに希望を見せているか。
愛ということを知った研究者であるハナは、これを基に、新しい人間とアンドロイドの関係を生み出すことが出来るのではないか。
アンドロイドに人が求めるもの、逆に人にアンドロイドが求めるもの。どういった倫理観を持って、この関係をより良き形で構築していけばいいのか。
その答えを、ハナは見つけ出せるような気がします。

愛から見放されたヒカル。
ヒカルは博士を愛そうとした。どうしたらいいのかを悩み、愛を自分の身に刻もうとしていた。その夢が博士のお嫁さんになるということだったように、本当はそれも愛だったのではないだろうか。悲しみに囚われ、博士は気付けなかったのかな。
一緒に育む愛。その過程できっと愛は育ち、二人のものとなる。
失った悲しみからか、博士は出来上がりの愛を作って、それに絶望した。それは効率的なアンドロイドをただ作ることと同じように見える。
ケンカをしたり、回り道をしたり、距離を置いたり、非効率的なことをしながらも、その時間を共に過ごすことで、愛は育つ。出来上がりの素晴らしい愛ではなく、無骨でもその過程が人間として素晴らしい。互いに歩み寄る、歩調や歩幅がいつの間にか近づいてくる。愛はその過程のことを示しているのではないのか。そのことは非効率的なアンドロイドや個性的なアンドロイドを作って、それを一緒の時間を過ごさせることで、より良き世界を生み出そうとした博士が一番よく知っていたはずなのに。

失ったものは、ヒカルそのものではなく、一緒に過ごした時間、思い出という記憶であるのだろう。それはデータとして取り戻せる。でも、愛は、いつまでも互いに育てて成長させられるものであり、そのための未来の時間はどうやっても手には入れることが出来ない。
失って止まった時間は受け止めて、それまでの記憶を胸に刻んで、その先を生きる者は進まないと仕方がない。
アンドロイドはそんな人間の欲望に応えることはきっと出来ない。人間のために動かなくてはいけないアンドロイドは、過去の愛に執着して、その人の時を止めてしまうことは、意に反する行動だろう。
アンドロイドのヒカルは、だから、単にヒカルのこれまでの愛を博士に与えるのではなく、これから育む愛を一緒に共有しようとしたのだろう。でも、それは出来なかった。お嫁さんになることも出来なかった。それは人間ではないから。
悲しいけれど、それが逆に人間の持てる尊きものであることにも気付かされる。

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コメント

今回もご来場いただき
ありがとうございました!!

投稿: 村上 琴美 | 2016年10月31日 (月) 03時29分

SAISEI様

ここ最近またステキな作品に出会うことが多くて。。小劇場から抜けにくくなりそうです(苦笑) この作品もそうです。

ちょっと後半、展開が急に早くなって、これまでじっくりと溜まっていたものが、急に溢れ出してしまった感じになったのが残念なところかな。・・・もう30分ぐらいかけて、アンドロイドたちの心情を訴えかけてもらっても良かったようには思う。

と感じられたんですね。言われてみれば確かに各アンドロイドの立場をもう少し描いても良かったかもしれませんが私は当ブログを見るまで気になりませんでしたね(笑)

最近アンドロイドネタの脚本多くないですか?(笑) 劇団ガバメンツもでしたし。

劇団ほどよしも毎回違うジャンルの作品を安定感のある演技で観せてくれる劇団。外せないです。

村上さんが出だしの台詞の時に「あ、ちょっと上のレベルに行かはったかな」と感じて(笑) 女性ではもう重鎮ですからね(笑)

及川さんのマザーはさすがですよね。及川さんも毎回脇で芝居を締めてくれたはります。

今回は北口さんが新たに印象に残ったかな。出てきはった時には研究者には見えませんでしたが演技的には今後も楽しみな存在に。

宇城さんはまさかの悪者(笑)

河本さんは『夏のランナー』に引き続き安定の子供役(笑)

三好さんは相変わらず粗っぽい役や(笑)

清田さんは再重鎮なのかな? 『詠人不知のマリア』のおばあちゃん役が結構印象に残ってて。今回はほわ~っとした役でした(笑)

辻川さんは今回はサイボーグっぽかった(笑)

佐藤さんは孤高な感じの役でしたね。

上杉さんは前半台詞が聞き取りにくい時がありましたが雰囲気は学者っぽかったかな。

投稿: KAISEI | 2016年11月 1日 (火) 17時33分

>村上琴美さん

コメントありがとうございます。

お疲れ様でした。
切ない役どころ。
残酷なラストではありましたが、それだけに愛の尊き姿も感じられたように思います。
愛が分からず、愛に見放されても、その愛を求めて生きているヒカル。苦しくもがきながらも、人の心に自分自身を刻みたいという欲望は、たとえアンドロイドでも、生まれるみたいですね。
動物や花、植物たちも同じなのかなとも感じます。
それが命や生というものに繋がっているように考えられて、作品に深みがあったように思います。

また、どこかの舞台で。

投稿: SAISEI | 2016年11月 1日 (火) 17時40分

>KAISEIさん

ほどよしさんは、ほどよし合衆国とやらと名乗っていた頃から、注目していて、毎回、向上しているなという感が強いです。

村上さんは、リーダーでもいらっしゃるし、若くても貫禄の演技だったように思います。アンドロイドという表情にある程度の制限がかかる中で、よく狂おしい心情表現をされているように感じます。
及川さんは同感。若手が集まる作品で、こういう方がいらっしゃるとしっかりと締まり、観やすさが違いますね。
北口さんに目をつけられましたか。私も前回公演から、気になっていて、今回で注目株として頭に刻み込みました。
次回は私もよく観に伺う空組に出演されますよね。

投稿: SAISEI | 2016年11月 1日 (火) 17時47分

SAISEI様

訂正

清田さんは「最重鎮」

ですね(笑)

投稿: KAISEI | 2016年11月 1日 (火) 17時51分

SAISEI様

村上琴美さん、宇城圭祐さん、河本宏樹さん、三好健太さん、清田亜澄さんは何回も拝見してるし顔と名前も一致してる方。

辻川京さんも火ゲキだったかなあ、でキレイな方だということとしっかりした演技をされてる記憶はあって。何となくは。

北口果歩さんと佐藤歌恋さんは入団されてるのはブログなどで知ってましたがやはり記憶に残るのは演技力ですから(笑)

前回公演の『MONOCHROME DIARY 〜読劇 風の又三郎』がこの劇団の作品にしてはイマイチ合わなかったんですよね(笑)

でも北口さんは知り合いの女の子に顔が似てる、と思ったのを思い出しました(笑)

投稿: KAISEI | 2016年11月 3日 (木) 11時42分

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