FOR【clickclock】160917
2016年09月17日 PLACEBO (90分)
これまでと同じく、刻まれるクリック音のリズムと音楽の中で、話が進む。
今回の話は地球の終末。
その地球で生きていた人たちの記憶をたどりながら、私たちが残した大切なものを見出そうとしていく。
いつでも繋がり合っていた私たちの生。
そんな大切な繋がりを、つまらないことで断ち切ってしまう。いつか、命が尽きることでお別れの時を迎えるのに、それを待たずして。
いつでも私たちに温もりある安寧の時を与えてくれていた地球。
それを汚染して、破壊してしまう。いつか、宇宙が終わりを迎えることで、全ては無に帰してしまうのに、それを待たずして。
自分たちで別離を生み出し、終末を迎える愚かな人間。
でも、人間はそれでも、断ち切れた繋がりをもう一度結びつけようと必死の想いを募らせ、光を失った地球で灯りを求めて声を飛ばす。太陽から得られなくなった温もりを、心を通わせることで手にして、幸せの時を生み出す。
そして、そんな人間が残せるものが、次の生命に繋がり、流れ続けることを祈る。
暗闇の中の光。極寒の中の温もり。無から生み出される有。
人間は強い力を持つ。
汚れた醜い世界の中にも、浮き上がる愛しい人の姿。
全てが終わりを迎える時、その終わりへの慈しみと、始まりへの希望の祈りを感じさせるような作品でした。
・FOR
ラジオDJ。
合唱部があった学校から、今日も放送を開始する。
いつもヘッドホンをしている合唱部の女の子。
今日も、いつものように部活の練習。
みんなは小遣いをいくらもらっているのかという話で盛り上がっているが、女の子はヘッドホンをして蚊帳の外。
当然、悲しいまでに生活水準の差はその小遣いの額となって明白になり、拗ねる者も出てくる。ノッポくんと呼ばれる、発達障害の男の子は、資本主義は差別を生み出すからなんて名言を吐いたりしている。
そんな言葉を女の子は聞き逃さない。そのヘッドホンからは音楽は流れていないから。
練習が始まる。ヘッドホンの女の子とノッポ君は、少々、他の人より劣っている感じだ。それでも、合唱だから、みんなで楽しく歌い上げる。合唱部の繋がり合い。
練習が終われば、女の子は一人残って自主練。みんなのように上手くなりたいから。もう一つ、理由がある。ノッポ君のお母さんが、迎えに来るまでの間、一緒にいられるから。
ノッポ君のお母さんが迎えに来て、いつも、うちの子が迷惑をかけてなんて言われて、ノッポ君とさようなら、また、明日。
女の子は一人で歌う。一人ぼっち。
こんな世界、流れ星が落ちてきて終わってしまえばいいのに。
その日、ロシアに隕石が落下。
翌日、部活でみんなは大騒ぎ。
いつもと違うことで、その漠然とした不安から気持ちに余裕が無くなっていたのだろうか。
いつもヘッドホンをしてコミュニケーションを取ろうとしない女の子を責める者が。それは発達障害のノッポ君にも飛び火する。
言い過ぎじゃないのか。その言葉で、また火がつく。いつもはみんなを上手くまとめる部長の手にも終えず。
結局、亀裂が走ったまま、お別れ。そのまま、その亀裂がふさがることはなかった。部長も引退し、みんなは散り散りになった。
・テレグラキ
隕石の電磁波の影響か、防空衛星は地球に向けてレーザービームを発射。多くの人が犠牲になる。
宇宙飛行士は地球に帰還することができず、もう3年も地上1万キロの暗闇の宇宙で、巡回軌道を回り続ける。
そんな宇宙飛行士に向けて、今日も引きこもってテレグラフで通信を試みようとするノッポ君。
ようやく繋がった宇宙飛行士との会話。
帰りたくはない。
そこから見える地球の姿。外界から閉ざされた空間で過ごす日々。
ノッポ君と宇宙飛行士は、繋がり合う。
やがて、訪れる防空衛星の終わりの時。落下する防空衛星。
ノッポ君と宇宙飛行士は互いに敬意を示し、最期の言葉を交わす。
・常冬のペーチカ
ヘッドホンの女の子は、ずっと私のせいだと思い続けている。私が弱かったから。女の子は悔いを残す。
みんなに合わせるのが下手だった。でも、みんなのことが好き。ノッポ君のことも。それに合唱が好きだった。
自分の想いをどう伝えたらいいのかは分からない。
そんな気持ちは合唱部の人も同じだったみたい。謝りたい。それをどう伝えたらいいのか。ネットも使えなくなってしまっているのだから。
そこで送られた手紙。住所も記し、会いに来て欲しい、いつかまた同窓会をと書かれている。
でも、女の子が返事を書くことも、家を訪ねることもなかった。
今の自分には、まだ会うことはできない。
望めば繋がり合える世界。
こんな世界、隕石が落ちてしまえばいい。
その日、隕石は太陽に落ちて、地球は終末の道へと進む。
誰もいなくなってしまった町。
太陽からの温かみは消え、発電所を一人動かし、生活を続ける女性。
傍には、冷たい身体のロボット。
二人は変わらぬ日常を過ごしながら繋がり合う。
やがて訪れる女性の命の終わり。
女性はラジオDJに手紙を送る。
自分の人生が幸せだったこと、それがいつも傍にいたロボットのおかげだったこと。そして、そのロボットが、これから放送を続けるDJの傍でいつまでも幸せにいられるようにと。きっと自分が死んで、喋ることもできないので、ただしょげているから、DJとの時間を一緒に過ごさせてあげて欲しい。
DJは読み上げる。ロボットが女性に向けて伝えたかった数々の想い、心からの感謝。
・千年ラジオ
DJの体にも異変が始まる。
この終末の時と同じく、動きが止まる日が来たようだ。
廃墟となった学校の中で、DJは一本のテープを見つける。
合唱部のラジオ番組を録音したもの。
伝えられなかったヘッドホンの女の子、ノッポ君への想い。自分たちの大きな夢。
そこには返事の録音もあった。
ありがとうと嬉しかった気持ちを歌で返す女の子。
DJは動けず、失われていく意識の中で、その音楽が人間が残した大切な財産であることに気付く。
終わりを迎える地球。そこにいた人類。
次の生命体に伝え、きっと繋がることが出来るであろう音楽に包まれて、DJは最期の時を迎える。
少しあやふやだが、4つの物語の連作で綴られた作品。
あやふやなのは、途中で寝てしまったから。少し意識を飛ばしたとかいうレベルでは無く、完全に落ちましたね。目が覚めた時、自分が観劇していることを忘れて、何をしているのか一瞬分からなくなったくらいなので。ここまで、失礼なことをしたのは久しぶりです。申し訳ない。
スレ違い、お別れとか人の繋がりを切ってしまうこと。地球が終わりを迎えること。
これが交錯した形で話が進みます。
人の幼稚さというのか、愚かな行動が、自分たち自身を切り離し、その生を置く場所を破壊する。
でも、そこから人の惹きつけ合う力や、繋がりを大切に思う心、地球をはじめ、この宇宙で全ての生が幸せの時を刻みながら時間が流れることを祈る想いが浮き上がってくるような話だと思います。
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