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2016年9月12日 (月)

革命少年【劇団レトルト内閣】160911

2016年09月11日 近鉄アート館 (120分)

世界大戦という時代に、成功を夢見て、祖国を旅立ち、たどり着いた地で踏ん張って生きる在日と呼ばれる人たちの姿を、そこにある同胞、家族の絆と共に描き出しているような話。
在日の方々の実情を赤裸々に描き、そこにある圧倒的な力強さに、今の日本で生きる自分たちを振り返るような感覚は、Mayなどでよく拝見する話であるが、やはり同様に、心に響き、同時に失くしてしまったのではないだろうかと不安になる深く温かい想い合いの心や、苦境を乗り切ろうとする前向きな魂に思いを馳せる。

失敗、差別、裏切り、別れだとか、そこには生きる上での負がたくさん散らばっており、生きることへの絶望すら感じるものである。
でも、その失敗を成功へと結びつけようとし、不条理な分け隔てにはたくましい根性で対等な立場を勝ち取ろうとする。裏切りは、受け入れて、神への懺悔として昇華する。そして、裏切る相手を信頼で包み込む。別れはいつかまた出会える日の喜びを生み出す過程と考える。
自分たちは、明日、皆で幸せを掴み取るために今日を生きるのだと、強い信念を貫いて、前を見る姿が、誇らしく、どこか羨ましさを感じる。
人間の弱さ、脆さ、その人間が生み出した社会の不条理さ、冷たさ、汚さ。それでも、それを受け入れて、変えていく。人間は強くなれる。そこから社会は浄化され、平等な平和で温かい姿となって現れるように感じる。

町内会のボランティアスタッフの女性が盆踊りの寄付金集めに、キム・ソンジュの工場を訪ねてくる。
この度は大変だったみたいで、もうお体は大丈夫なんですか。女性のそんな言葉にソンジュは、今回のことを語り出す。
話のスタートは、ソンジュが幼き頃、1945年、米軍の本土空撃が始まり、死にかけた頃からのようなので長い話になりそうだ。

爆撃のショックで気を失い、幽体離脱。でも、何かの力が自分の魂を地上から離そうとしなかった。ソンジュ、何をしてるんだ、早く戻っておいで。鉄の女だった母の厳しい言葉。面倒見の良かった姉、まだ生まれていなかった妹の声まで聞こえてきたような気がする。何の力かと言えば、それは家族の力だったのかもしれない。
ということで死なずにすんだソンジュ。でも、そこからもけっこう大変。
父、ボヨンは、戦時中に、単身で日本へ船でやって来た。多くの祖国の人たちと共に、成功することを夢見て。その後、母、ソンユンが風呂敷一つで父を追ってやって来る。父は神戸にいて、金になりそうなことを色々と考えては事業を起こし、失敗する日々を繰り返していた。それに比べて、母は会社に勤め、技術と人脈を身につけて事業を起こす。
仕事はまずまずうまくいき、それなりに裕福な生活。
でも、戦後、事業を続けることはできず、さらには父が愛人をつくって失踪し、貧乏生活に。
日本人としての誇りを、戦争責任は天皇にあるという信念を曲げない隣の日阪という人が父代わりだった。
ソンジュもそんな中、在日を隠すために、金田タケシと名乗ることになる。
タケシは、映画に憧れ、同胞のリュ・ホンキ、今は野中という男と共に演劇を始めることに。野中は理想国家を創り上げたという祖国、北朝鮮の社会主義の思想を組み込んだ演劇をしたがり、それに同調してくれる劇団員を探す。お嬢様の町子が加わることに。
タケシは就職活動をするが、在日差別がはびこり、なかなか雇ってくれる会社は見つからない。ようやく、日阪の紹介でカブの修理工場で働くことに。
姉のミフィ、美妃は水商売。いつしか、くだらない、しかし金を持っている男の下へと嫁いでいく。家族を支えるために仕方が無いのだと。
妹のハリムも、芸能人を目指して家を出ることに。きっと有名になって、みんなにいい生活をさせてあげるからと。
家族はバラバラになった。
タケシは、金を稼いで、また一緒の暮らせる日を目指して頑張ることを誓う。

ある日、タケシは革新的にカブの修理ができるアイディアを発見する。タケシは会社、金田商店を起こす。幼馴染の同胞のヤン・ユヒャン、花代も応援してくれる。
その修理システムは一挙に人気が出て、客が途絶えることは無い状態に。
タケシは、嫁ぎ先でDVを受けている姉を呼び戻し、社長に就任させる。妹も呼び戻そうとしたが、テレビの出演が決まったらしい。そうならば、することは決まっている。お金はある。テレビを買うことだ。妹の誇らしい姿を見るために。
タケシは名前をソンジュに戻す。背いて生きたくない。隣の日阪もよくそう言っている。
そんなソンジュを見て、野中は悩む。
日本人の町子が好き。結婚を考えたら、名前を変えることは出来ない。でも、祖国への想いも決して拭い去れない。

社長を姉に据えて、事業は順調。
桧垣と高城という優秀な社員も入社してくれた。温厚で真面目そうな高城に、冷徹でキレる感じの桧垣ってところか。
ソンジュは忙しい中、演劇もする。
町子に思いを寄せるソンジュ。でも、町子の心は野中に向けられていることを知り、ショックを受ける。
落ち込むソンジュを、嫉妬心を剥き出しにしながら慰める花代。
母と姉の勧めで、結婚することになる。
金田商店の修理システムは有名になり、数百台規模で買い取りの商談も入るように。機械を造るために金がいる。でも、銀行はダメ。在日だから。頼れるのは同胞。
姉は帰国運動をしている在日一世の田神から融資を受ける。
妹が久しぶりに帰宅。ソンジュの結婚式も海外ロケで出られなかったくらいに忙しい様子。
妹はソンジュに1000万円をせがむ。役を買い取りたいらしい。映画好きなソンジュはその考えに抵抗を感じ、それに会社だから勝手なことは出来ないのだと断る。
結局、妹は姉の下に向かい、自分の苦境を説明し、夢を語り、金をもらうことに。
さらに、融資をしてくれた田神も帰国運動への寄付を求める。そして、野中は、帰国するための資金を姉にせがむ。

ソンジュは、姉がそんな色々な人に渡す金を作るために経理操作をしていることに気付く。裏では桧垣が手を回している模様。そういう仲になっているのだろう。
ソンジュ名義の土地や資金が全て姉名義になっている。これに母も同意を示したらしい。
どうしてかと問い正すと、家族なんだから分け与え合わないといけないと言う。じゃあ、自分はどうなってもいいと言うのか。
金が家族を狂わせた。自分たちの家族を返してくれ。ソンジュは、会社も何もかも捨てて、家族と絶縁することに。
野中は祖国へと旅立って行った。そして、帰ってくることはなかった。北朝鮮に向かい、スパイ容疑で捕まったと報道される。保釈金を用意することも考えたが、韓国政府は何をする気も無いようだ。
3人の子供を抱えた町子はただ泣き叫ぶしか出来ない。
一人になったソンジュは祖国を訪ねる。何も無い酷いところだった。

ソンジュは新工場を建設する。
妻の花代、高城はついてきてくれたらしい。
その工場に父が愛人を連れて帰って来る。
ソンジュは二度と会うつもりはなかった家族を集める。
父は体を悪くしている。しかし、皆は冷たい態度を示す。家族が困っている時は、分け与えないといけないのではなかったのか。
花代だけは父は家族だから、面倒を見ると行って、連れて帰る
その後、父は危篤になり、この世を去った。母も姉も妹も、その死には立ち会わなかった。

ソンジュの事業はそこそこ順調。
高城の真面目な働きも大きく貢献している。
高城は、町子に思いを寄せているらしい。もう、十分、町子も頑張ってきた。二人は一緒になって、新しい人生を歩めばいい。
そんな矢先、野中の釈放が報道される。長い間の拷問生活で心身共におかしくなって日本に戻って来る。
ソンジュはそんな野中を自分の工場に雇い入れる。また、父、亡き後も愛人に仕送りをしているみたいだ。
数年後、野中の精神は少しづつ取り戻されていく。
誰も助けてくれなかった憎しみと恨み。祖国への不信。妻を奪われ、助けてくれなかった友人にこき使われることへの屈辱を語る。
時代は変わっていく。国は私たちに何も言ってもしてもくれない。日阪は危険思想で投獄されてしまったみたいだ。
妹は、芸能活動に行き詰まったのか麻薬で捕まる。
行き詰まったのは妹だけでなく、姉の会社もそんな状況らしい。
野中はソンジュに忠告する。会社を乗っ取られる。それも、一番信頼している男に。
高城が会社や資産を全て姉名義にしていた。野中は町子に会いに行った時に、偶然、それを知ったらしい。
理由は高城は愛人の息子だから。つまりはソンジュの弟。兄は会社で活躍。自分は貧しく日陰の生活。それに嫌気がさしたらしい。
ソンジュは姉を呼び出し、真相を確認し、全てを返すように言う。どうして、こんなことになってしまったのか。自分はただ夢を叶えたかった。家族と一緒に。
しかし、その提案を姉は拒絶し、暴露した野中の姿を見て、犯罪者と罵る。
野中は発狂し、ハサミを姉に向ける。
ソンジュがかばい、背中を刺される。
姉は神に祈る。全てを返す。この汚れた自分に許しを

町内会の女性は寄付金を集めに来ただけなのに、こんな膨大な話を聞いて泣いている。
ソンジュの下に、高城と町子がやって来る。新しい機械の設計はどうなっているか。そんなソンジュの言葉に、まだですと、しどろもどろな高城を叱りつける。
野中もやって来る。韓国政府を訴えるつもりらしい。自分は罪を犯していない。その信念を貫くつもりだ。野中にはもう一つ仕事がある。ソンジュは劇場を造るつもり。そのアドバイザーとして頑張ってもらわないといけない。
母、姉、桧垣、いや、お義兄さん、妹、もう一人のお母さん。
色々とあったが、これからも、ソンジュの夢と共に一緒に歩むのだろう。あの時、祖国の人たちが、日本に夢を見て、船で海原を渡って来たように、今の私たちも、これからに向けて、同胞たち、そこから拡がった家族と共に未来へと向かわないいけないのだから.。

圧倒される話でした。
在日を描いているので、様々な問題を含んでいるのでしょうが、作品から見えてくるのは、人間の凄まじい力と、そこにある温かく優しい想いの心。
それは、きっと社会をより良き道へと導いてくれる。
変えていくのは、国でも、神でもない。私たちが、その家族、仲間たちと共に変えていくのだという強い信念が沸きあがるような話だったように思います。

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