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2016年9月20日 (火)

次は、終点【アマサヒカエメ】160919

2016年09月19日 SPACE9 (105分)

最終電車という、なにか心ざわつく空気の中で、ある男の失踪をきっかけに別れることになった劇団員たちが再び集まる。
劇団員だけあって、そのキャラは個性的で、背景にも様々なことを抱えている。
1年前までは、それがぶつかり合いながらも、作品を創り上げ、公演が出来ていた。でも、それも限界が近づいていた。このままでは、ぶつかり合いによる爆発が起こり、全てが終わってしまう。それを終わらせないようにと去った男。
その男の手により、集められた劇団員たちは、自分自身を失っていた。劇団を解散して、本当の自分を抑え込み、偽りの自分として生きるみんな。
それでいいのか、本当の自分として生きなくて。
あの頃、戦隊モノをしていたように、みんなが各々の色を持ったヒーローだった。もう一度、それを取り戻して欲しい。
そんな劇団が好きで、そして、その役者である自分が好きだ。
男の真摯な願いは皆を変えて、本当の自分自身を取り戻させる。そして、みんなと一緒にまた演劇をしたいという望みも叶える。

失踪した男、集められた劇団員たちの最終電車の中でのやり取りをコメディーベースとして、この話の行き着くところはどこに向かうのかという謎解きのサスペンス要素も盛り込む。
一人一人がヒーローなんだ。自分の色で、本当の自分として、色々なことにぶつかって生きていけばいいんだ。熱血青春漫画のような感動を誘うラストへ向かう展開から、最後の失踪した男の願いが叶うブラックオチまで。
様々な魅せる要素を巧く融合しているように感じる。
作品名も、目的に向かって懸命に走る人たちという希望溢れる熱いイメージを持てるし、どうあがこうと終点という全てが無に帰す終わりに向かっているという厭世感も漂わせる。
その両方とも、作品の中で巧妙に感じさせるという魅せる腕が光る。
起承転結のメリハリ、その中での緩急のつけ方が巧みで、とても楽しく、笑って、感動して、ゾクっとして、震えるという感情の起伏をくずぐられる、いい作品だったように思います。

最終電車の発車前。
伊藤茶は、メールで呼び出した皆を待ち、どう再結成の話を持ち出せばいいかをSiriに聞いたりしている。
1年前に解散した劇団。伊藤はそんな劇団の元劇団員を呼び出し、再結成をしようと企んでいる。この最終電車は、誰も乗って来ないので格好の稽古場だった。その稽古は楽しく、終着駅まで結局行ってしまい、始発を待つなんてこともしょっちゅうあった。
宮藤ピンクローがやって来る。丁寧な口調だが無礼な男。マイペースだったのに、待ち合わせ時刻前にきちんと来るとは随分と変わったものだ。今は郵便局員をしていることもあってか、すっかりルールに神経質になっているようだ。
続いて樹木黄。紅一点の劇団員。相変わらす綺麗だ。
そして、竹内緑も。リーダー。寡黙でぶっきらぼう。それは今も変わっていない。少し頭が薄くなったようだが。

最終電車は出発。結局、4人だけ。1人は仕事で無理と言われている。もう1人は多分来ないような男だ。そして、もう1人は連絡も取れないので、来るはずもないだろう。
伊藤は再結成のことを話す。運悪く、車掌の案内放送に邪魔されて、何度もくじけそうになるがなんとか。
しかし、みんな、いい顔をしない。みんな、仕事があるのだから。
樹木は占い師。試しに占ってもらうがスマホで簡単なもの。ああ、開発したのが樹木らしいが。普段はもっと体力を使うらしい。
竹内は大工。力仕事ではなく、平面図を立体に起こすべく、色々とするらしい。説明をし始めるが誰も聞かない。
次の駅。チャラ男が入って来る。誰か分からない。夜青龍。すっかり変わっているらしい。今はピンサロのキャッチ。樹木は舞いながら占いを。どうやら、今の仕事はダメみたいだ。
次の駅に到着前、電車は緊急停止。
いつの間にか、1人の男がいた。赤岸仁。稽古中の電車から飛び出し逃げた男。いわゆる失踪というやつだ。
ただ、なぜか夜青龍にしか見えていないらしい。あの時、辛いだけの役者をしなくてもいいかと思い、逃げたが、やはり役者魂が疼き、戻って来た。赤岸の言葉は夜青龍にしか聞こえない。
ここに赤岸がいる。
気がおかしくなったかと思われる夜青龍。
樹木は再度占いをし始める。
伊藤は演技を始めたのかと喜び、自分もノリで付き合い始める
竹内は不愉快な表情を浮かべている。
赤岸は、夜青龍だけでは無理かと、樹木にも自分の姿が見えるようにする。
どうやら赤岸は幽霊らしい。
なぜ、2人に自分が見えるのか。それをみんなで考えて欲しいと言い出す。

樹木と夜青龍。二人の共通点。夜の仕事、接客・・・
夜青龍はピンサロに勤める女性に恋をしている。キャッチが店の子に手を出す。禁断の恋だ。それでも、夜青龍は、覚悟を決め、今日、駅でその女性と待ち合わせ。彼女は来なかった。それで、この電車に乗った。つまりは失恋したわけだ。
もしかしたら、赤岸はピンサロに行きたかったのではないか。その悔いが霊となって。

まあ、そんなはずもなく、赤岸は宮藤にも見えるようにする。
3人の共通点。失恋。
宮藤は離婚している。夜青龍は失恋。樹木は福山ロスらしい。
恋の話になる。
宮藤の初恋は樹木だった。でも、樹木は赤岸のことが好きで付き合っていた。
そんなことを言う宮藤を樹木は否定する。でも、宮藤は見た。赤岸と仲良くしているところを。
再現が始まる。
でも、どうやら、樹木は赤岸のことが好きでは無かったみたいだ。好きだったのは夜青龍。今はどうでもいいらしいが。
そんな恋愛関係があったとは。若いっていいことだ。いきなり、車掌が現れ、若者の恋愛事情を語り出す。
元劇団員のブラック・ピッグ。仕事とはこのことだったらしい。これで全員が揃った。
ブラックは一応、仕事に戻る。何でも、ラジオDJもしているのだとか。
再現が再び始まる。
赤岸の方が樹木を好きだった。だから、赤岸は意を決して告白する。しかし、その大事な場面で、宮藤が二人に声をかけて台無しとなった。
赤岸の恨みだ。
赤岸は宮藤と夜青龍を襲い始める。
ブラックがやって来て、赤岸を諫める。ブラックにも見えているみたい。

これで見えていないのは伊藤と竹内だけ。
色は関係ないだろうか。
かつて、この劇団は戦隊モノを上演するために、芸名にみんな色をつけた。
そんなことを懐かしみながら話している中、竹内が口を開く。
もういいんじゃないのか。赤岸のせいで、劇団は解散したんだ。あいつが失踪したから。
しかし、樹木は劇団が売れない理由を竹内が赤岸に押し付けて、責めたからではないのかと反論。
そうだ、竹内を嫌っている者が見えるのではないのか。
ということは、竹内のことが嫌いでは無いのは伊藤だけ。
赤岸は伊藤にも見えるようにする。竹内は唯一の味方を失い、ショックを隠せない。

赤岸は楽しそうだ。
いっぺんに見せないで、こんな風にもったいぶった感じは必要なのか。
答えはイエス。こうして、言い合うことが大事なことだった。
赤岸は竹内にも見えるようにする。
これで、本当に全員が揃う。
どうして逃げたのだと赤岸を責める竹内。
赤岸だけの問題なのか。自分たちにも否があったのではないのか。
そうやって、すぐに人のせいにして、自分は関係ないと逃げている。
皆は罵り合う。
赤岸がそれを止める。
1年前。こんな風に、皆が互いに対して、不穏な感情を爆弾のように抱えていることが怖くなった。自分が失踪すれば、全部が自分のせいになって、大丈夫になると考えた。
でも、実際はどうだ。
みんな、自分を捨ててしまっている。
客集めに苦しんでいた夜青龍はキャッチになり、優柔不断だった樹木は結論づけなくてはいけない占い師になる。
マイペースだった宮藤はきっちりしたルールに縛られる郵便局員。
いつも目立ってしまって場を乱すブラックは、車掌やDJと縁の下の力持ちに。
強引さが売りだった竹内は、決まった図面に従って仕事をする大工になっている。
どうして、あの頃の自分を否定してしまって、偽りの自分で生きているんだ。

赤岸はそのことを見なに伝えたかったみたいだ。
そう言えば、こう都合よく皆が揃うのも不思議だ。
これらは全て、赤岸が霊的な力も駆使して、導いたことだったみたいだ。
稽古をしよう。
あの頃と同じように。
電車が動き出す。各々、本当の自分の姿、色でぶつかり合う姿が見られる。
よかった。
赤岸は笑顔を見せる。大好きなみんなだから。
電車はそのまま脱線する。運転手、車掌、乗客と皆、助からなかった。
赤岸は笑顔で語る。
だって、本当にみんなのことが大好きだから・・・

赤岸の不気味な空気から、このブラックオチは読めていたとはいえ、やはり衝撃的な不気味さを受ける。
演劇をかじったからには、途中下車は無理。無理に下りたら、この世とお別れすることになってしまう。下車してもいつの間にかまた乗りたくなってしまう。それは下りた先では、本当の自分として生きられないから。
次の電車も無く、この最終電車で終わりの日までひたすら走るしかない。
そんな演劇人の人生を皮肉ったようなところもあるのでしょうか。
多彩な演劇作品の楽しさを巧妙に盛り込んだ作品でした。

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コメント

ご来場ありがとうございます(^-^)
いつもながら、細かなレポート恐れ入ります!

投稿: 松本大志郎 | 2016年9月20日 (火) 15時20分

SAISEI様

訊きにくい質問を一つ(笑)

回答しにくければthroughしてくださいませ(笑)

価格対満足度は如何でしたか?(笑)

私にとってはコメディはアガリスクエンターテイメントが最高峰になりますかね。一番笑ったという意味では。

アマサヒカエメについては旗揚げ公演『アストライアー』で非常に感銘を受けたので次回公演を楽しみにしていました。やはり感想は気になるところです。ゲキバトでも出場劇団を見て優勝するだろうな、と思ってましたがやはり勝ち抜きましたし。非常に高く評価をしている劇団の一つです。

大阪ゲキバカ『ソドム・・・』から山咲さんも注目している役者さんですしね。ただ『アストライアー』の記事のコメントに書いたようにマイナス要因をプラスに変えるあと一押しがなかったかな。。

伊藤さんと山咲さんの共演が観たかったり上杉さんが出演されてたので上杉さんで予約しようとも思ったのですがやはりSPACE9で前売り3,500円は躊躇う価格でした。今年の観劇費用の総価格もゾッとする桁になってきましたしね。

価格といい、「一度も笑わなかったら・・全額返金!!」といい攻めてますよね。そこは好きです。今回は応援しようという気にならなかっただけで。基本無礼と感じると拒否権が発動してしまうので(笑)

あとは行くとしたら土曜日の17時~だったかもしれませんが土曜日、日曜日はもう少し時間が遅くても良かったんじゃあないかな。土日月全て13時~、17時~だったので。優先にしなかっただけで行かなかったわけではないのでねえ。。

投稿: KAISEI | 2016年9月20日 (火) 15時52分

>松本大志郎さん

コメントありがとうございます。

ぶっきらぼうなツッコミにたくさん笑わせていただきました(゚▽゚*)
カン劇のかっこよさとは随分と違った新たな魅力。
また、色々な舞台で拝見できればと思っております。
今後もご活躍ください。

投稿: SAISEI | 2016年9月21日 (水) 10時16分

>KAISEIさん

そうですねえ。
私は、ちょっと金銭感覚がズレているところがあるからなあ。特に、観劇に関しては・・・

まあ、3500円は対満足度としては高いとはっきり書けます。
ここに応援分や、次世代として益々、演劇を盛り上げてくれという期待分、それを実現するべく実際に頑張られていることが感じられる感謝分として、まあ許容ってところですかね。
笑えなかったら返金とまで謳ったコメディーという点だけで見れば、私の基準では2000円以下かな。

投稿: SAISEI | 2016年9月21日 (水) 10時21分

SAISEI様

いつも答えにくい質問すみません。私が観たとして同じ感想になるかはともかく沢山観劇されてる方の意見はナルホドと思うこともあり。ありがとうございますm(__)m

前にもコメントしましたが小劇場で3,000円は1つの大台やと思います。今回も3,000円やと躊躇いながらも予約したと思うのですが3,500円はちょっと、と思ってまいました(笑) 舞台美術が凝ってるよ、みたいなのを宣伝してくれればそこに金かかってるのか、と納得できるので。SPACE9は好きな会場だし使用料金も高いのわかってるんでね。行って素舞台やと暴利を貪っとるなあ、と思うこともありますし(笑)

ただ本気で舞台で食う気なんやな、というのは伝わってきますしそこに尊敬の念は懐いています。ブラック☆タイツ型の経営ですね。それだけのものを魅せるからお金も取るよ、と(笑) 力量はあらはるので今後が楽しみですね(笑)

前のコメント、いろいろ文章を足していたら誤解されそうかなあ。山咲さんは好きですし応援もしてるし無礼ではない、というのを書き添えておきます。

笑ったのやとゲキバトのKING&HEAVYもかなり笑いましたね。こちらも書き添えておきます(笑)

投稿: KAISEI | 2016年9月21日 (水) 12時16分

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