« FOR【clickclock】160917 | トップページ | ЯEVERSE【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】160918 »

2016年9月18日 (日)

PANDORA -Op.5 最終章・はじまりの章-【Project UZU】160917・160918

2016年09月17、18日 芸術創造館
                  母の記憶編 (110分)
                  悪魔の心編 (105分)

5年を通じて、観ることが出来ました。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/09/130-c6bf.html
本当は、もう一編、追憶の愛編という作品があるのですが、どうにも日程調整が出来ませんでした。
感想は上記リンク先に例年積み上げられていくと記していますが、今年も同じくさらに積み上げられた作品が観られたということでいいかと思います。

感じたことの詳細は下記していますが、歪んだ人間の心に囚われて、絶望の世界へと進もうとする者たちを救済する話だったのだと思っています。
その救済の方法は、あなたを愛する、あなたは私にとって必要な人、あなたはこの世界に存在しないといけない人であることを真摯な想いで伝えること。
どんな絶望の中にもある人の愛や友情、信頼の心が、繋がりの中にいる自分を感じさせ、自己肯定から、これからの世界を創り出すはじまりの時へと導いたような感覚を得ます。
絶対的な人の力。ファンタジー作品ですが、その力を決して単純にただ優しく描くのではなく、人の負の部分も鋭く深く見詰めた上で、その尊さを見せようとしているみたいでした。

<以下、あらすじがネタバレしますので、白字にします。公演は明日、月曜日まで。5年の締めくくり。本当は観に伺いたかったけど・・・>

風の国、火の国、土の国、水の国と、滅びようとする世界を創造の魔法で再生しながら、竪琴の化身、ピュラと共に旅をしてきた勇者、アガタ。
最後の森の国で、母であるパンドラを救い、パンドラが絶望の中で生み出したこの世界は再生された。
アガタは、今、この数々の国を旅してきた世界に別れを告げて、外の現実世界に向かい、生まれようとしている。そこにはパンドラとピュラが待っているはずだ。

しかし、再生されたはずのこの世界に異変が起き始める。
風の国のハレ、火の国のイオ、土の国のルパ、水の国のマージは、みんなどこかに迷いこんでしまう。姫であるルパを守る騎士、ボーデンも同じ状況らしい。
どうやら、本来ならばこの世を構成する物質を司るエレメントだが、全てを無に帰そうとするエレメントがこの世界を消し去ろうとしており、消えつつある各々の国が緩く繋がったような世界が出来てしまっているようだ。
アガタの母であるパンドラと出会い、彼女から生を受けたい。そのアガタの望みは叶った。だから、もうこの世界は不要であり、無へと向かい始めているみたい
この世界の住人では無い、いわば物語の読者とも言えるフィロという女性はそんな終わりを迎えたくは無い、この世界がずっと続いて欲しいと、抗いの意志を示す。その意志は、この世界の人たちも同じ。
もう一度、アガタの創造の魔法で世界を再生してもらおうと考える。

この状況を知ったピュラは、アガタに世界再生のために力を貸して欲しいと会いにいく。
アガタにとって、これまでの旅でお世話になった人たち。人との繋がりの大切さを知り、それを失う悲しみも知った。怠惰がどれほど人を愚かにし、怒りの感情がどれほど人を恐ろしい者にするのかも知った。そして、何よりも、今、こうしてパンドラの下へ向かい、アガタの本当の世界で生を受けられるようになったのはみんなのおかげ。
アガタは創造の魔法で世界を再生しようとする。
しかし、パンドラがそれを止める。
ずっと繰り返すつもりなのか。それでは、いつまで経っても、生まれることはできない。
この世界は絶望から出来ている。そんな世界は終わってしまっていい。パンドラはそう言う。
でも、自分の望みを叶えるために、作り物の世界を壊してしまってもいいのか。出会ったみんなを消してしまっていいのだろうか。
葛藤するアガタ。そんなアガタの姿を見て、ピュラはある決断をする。

みんなは、仲間の名前や顔を忘れていく。世界が消えようとしている証拠だ。
それでも、忘れてしまう人が自分にとって大事な人だということは覚えている。それならば、本当に消滅したことにはならないと考えるが、やはり焦りも大きい。
そんな皆の下にピュラが現れる。アガタのところに案内すると言う。
フィロは止める。騙されている。ピュラはこの世界を終わらせようとしていると。
しかし、皆はピュラを信じて、ついていく。
ピュラに連れられて来たみんな。
そこには無のエレメントが待ち構えていた。
ピュラはただただ謝り、去っていく。
これでいい。私はアガタを救った。
無のエレメントに襲われるみんな。しかし、ボーデンが無のエレメントに立ち向かい、皆を逃す。

国境に住む魔女、アリエッタがアガタを訪ねて来た。
アガタは自分の苦悩の気持ちを伝える。
そして、アリエッタから重大な事実を聞く。
ピュラはこの世界の住人。アガタが生まれる世界にはいない。だから、外の世界に向かえば、それでお別れとなる。
世界を終わらせる、終わらせず再生を繰り返し続ける。選択は本当に二つだけなのか。
アガタとパンドラが、この世界を受け入れてしまうことで、新たな世界は開けないだろうか。
<母の記憶編>
アリエッタはそんな考えを示し、ある女性を連れて来る。
それは火の国のブレンナ。妊娠している。ごく普通に結婚して、ごく普通の幸せを手に入れる。そんな叶わなかったパンドラの理想の姿から生み出された女性。
アリエッタは、ブレンナをパンドラに会わせようと言う。その姿を見て、きっとパンドラは考えを変えるかもしれない。
ブレンナもそのことを了承。というか、違う理由があるらしい。パンドラに会わないといけないのは、私だけでは無い。アリエッタ、あなたもだ。ブレンナはそう言って、アガタに、パンドラに会いに行って、私たちを呼び寄せるように伝える。
<悪魔の心編>
アリエッタは、パンドラがまだ消化しきれない感情を持つ原因となるものを連れて来る。
それは火の国の悪魔、ラックリッカ。
この世界には、まだ悪魔が残っている。
それは、全て、人から生み出されている。毒されてしまう人の心が憎い。そんな世界は必要無い。パンドラはまだ世界を受け入れられていない。
この悪魔をパンドラが消化しないと本当の再生は完結しない。

アガタはパンドラの下に向かう前に、ピュラの下へ駆けつける。
ピュラが黙っていたこと。それは本当のことだった。
自分は世界を創造した。再生したこの世界を再び創造する。わがままかもしれない。でも、自分が創った世界だから好きなようにさせてもらう。そのために力を貸して欲しい。アガタの強い意志にピュラは手を携える。
創造の魔法。無のエレメントは消えていく。
そして、各国の景色が蘇ってくる。それは、アガタが旅の中でいつまでも記憶として刻まれている大切な思い出。
フィロは、世界が終わらなかったことを喜ぶ。
でも、アガタはこれが最後だと言う。永遠に創造し続けるつもりは無い。
アガタは自分の世界に戻る。そしてそこで生きていく。この世界も、これから同じように繋げていけばいい。

アガタとピュラは、パンドラと会う。
絶望から出来たこの世界を再び再生したアガタを非難するパンドラ。
でも、この世界は本当に絶望だけしかないのか。そう思えないとアガタは言う。
<母の記憶編>
そして、ブレンナとアリエッタを呼び寄せる。
様々な悲しみや辛さに襲われて、光を失った自分。我が子を愛せるかという不安、不幸な先しか見えない絶望。
ブレンナは、パンドラのその言葉に、でも、私はあなたの描く世界の中で幸せになったと言葉をかける。あなたは人を幸せにできる人だと。
その言葉をパンドラは覚えている。我が子の未来を案じながら、早くに亡くなったパンドラの母。人を幸せにできる人になってと願いながら息を引き取った。
アガタと同じ。アガタが母に会いたかったように、パンドラも同じだった。その願いは、彼女の描く世界の中でアリエッタとして登場していた。
アリエッタは、パンドラへの想いを伝え、それをパンドラは受け止める。パンドラの中に残る全ての悲しみは、今、昇華された。
<悪魔の心編>
パンドラの前に悪魔が登場。悪魔はみんなを煽る。悪魔は消えない。それは人の心の中に悪魔がいるから。ルパの中に潜む嫉妬の心が悪魔であるように。パンドラの中にある怒りは決して消えず、悪魔を生かし続ける。
パンドラは悪魔を剣で刺そうとする。
ボーデンがそれを止める。剣では悪魔を倒せない。自分は剣を捨て、ルパを守る意志を示す。
悪魔の心も含めて、その大切な人を守る。
怒りは捨てる必要は無い。消し去らなくてもいい。それが人間だから。
そんなこと全部含めて、あなたのことを人は愛することが出来る。
アガタはパンドラの持つ剣を取り上げ、自らを刺そうとする。剣は消える。
怒りも憎しみも、パンドラの全てを受け止めたアガタ。その想いはパンドラにこの世界、自分自身を肯定させる。

無のエレメントから逃げてきたみんながやって来る。
アガタはすぐにピュラのことを皆に語る。
この世界から逃げようとした自分。それを助けるために、ピュラは皆を消そうとした。
ピュラに非は一切無い。分かってあげて欲しい。そして、この世界に、ピュラの居場所を作ってあげて欲しい。
皆はアガタの言葉を、そしてピュラの真の想いを受け止める。
世界が再生されていく。
光が見える。その先にはみんなの国がある。
各々が、自分たちの帰る国へと向かい、お別れ。
ピュラともお別れ。
忘れることは無い。二人は抱き締め合い、笑顔で別れる。

アガタは暗闇の中で一人でいる。
生命誕生の場所。ここから、アガタの世界はまた始まる。
竪琴を奏でる老婆がいる。その音をフィロが聞いている。
その竪琴は、祖先から継がれているものらしい。
本を閉じれば、世界は終わる。そう思っていた。でも、そこには繋がり紡ぎ続けられる世界があるみたいだ・・・

本を読み終えて閉じても、それは終わりでは無い。物語を語れるように覚えていることで、その人の一部となる。そして、それはこれからに繋がれていく。ずっと竪琴が継がれているように。竪琴に込められたパンドラへの愛、ピュラの心は、その竪琴と共にいつまでも消えずにあるようだ。
そして、この物語を通じて、様々な人たちと共に過ごした時間も決して消えはしない。
終わりが始まりに。永遠が生み出されているかのよう。
この作品自体がそんなことを意識しているのか。
フィロは、この物語の中に入り込み、その世界を愛し、終わることなく、自分が始まりの世界にいつもいることに気付き、これからを生きようと考えることが出来る観客をイメージさせる。

永遠に終わらないのは、何も始まっていないことと同じ。
終わることを負と捉えない心。
そこから創り上げる、生み出す、変えていく精神が見えてくる。
負の感情から生み出される正の感情。逆に正の感情の中に潜む負に目を向ける。人間だから、そこに不明瞭なものが隠されている。
でも、それも含めて受け止めればいい。
現実と理想。必ず切り離すことはなく、融合した世界が始まりを告げる。理想どおりにはいかなくても、その想いで厳しい現実を包み込めばいい。
たくさんの悲しみや辛さから生まれた世界。必ずしもうまくいかない。
でも、それは絶望では無い。
だからこそ創造する。そんな希望を、幸せを導く力を人間は持つ。

繋がりを断ち切り、生まれる。
生は辛く悲しいものに思えてくる。
でも、だからこそ、この世界が幸せになるような願いが生まれるのかもしれない。
消えても世界に残るその人の想い。
世界は記憶の断片を重ね合わせ、膨らみ続ける。そして、流れる時の中で紡ぎ続けられる。
いつだって、そこにはこれからの始まりの時が見えてくる。

パンドラと同じようにピュラもアガタの想いを受け止められていなかったように見える。自分自身を肯定できずにいるみたい。
アガタがピュラを助けに入った時、ピュラは自分が救われるべき存在では無いような自己否定の姿が見え、ピュラとアガタは本当の意味で抱き締め合っていない。
一方向に自分に向けられる想いに戸惑っているのだろうか。
きっとパンドラも似た状態であったのではないだろうか。
アガタの創造の魔法を通じた二人への真摯な優しい想いが、そこにある二人の消化しきれない、自分はこの世界に不要な存在であるといった自己否定のような感情を打ち消した。
アガタが自分のことを大切に想ってくれていた。それは自分がアガタを想っている心と全く同じ。アガタだけでは無い。この世界の人たちと、自分は繋がり合い、想い合っていた。
想いは一方向ではなく、互いに受け止め合ってこれまでずっと過ごしてきたと思えるようになる。
自分が人を幸せに導くことが出来る大切な存在であり、同時に幸せになれる尊き存在であることを知る。
パンドラは、それを知った時、我が子であるアガタを受け入れ、自分の生を認め、同時に新たな生をこの世に生み出す覚悟をする。そして、ピュラは自分が愛の感情からこの世界に生み出された存在であることを肯定する。
愛は憎しみ生み出す。でも、自分は人の繋がりを切り離してしまうものではない。人の尊き愛する感情から、繋がりを生み出すための誇りある大事な存在であると。最後にピュラとアガタは本当に抱き締め合っている。
この章では、そんな自己否定の感情を取り除く、アガタの想いの力が描かれているかのよう。
フィロも同じかもしれない。現実への不安、先への希望が見えない今に、自分の居場所を見出せないでいて、自分自身が消えてしまうような錯覚に陥っているかのよう。
あなたは消えたりしない。この世の様々な人たちの繋がりの中の一員であり、その一緒に過ごした時間が各々に刻まれて、いつまでも、世界に存在し続ける大切な人だと、この壮大な物語から感じ取ったように感じる。

創造の魔法は、その奏でられる竪琴の音色が、人の心に想いを伝え、人々にこの世界にある自分の居場所を見つけさせ、そこから世界を創り出すというはじまりの気持ちに導く効果があるのだろうか。
不幸な出来事から自分の生がぐらつき、そんな自分から生み出される生に不安を感じてしまったパンドラ。
自分は、人間のかけがえのない繋がろうという愛の心から生み出されたにも関わらず、それ故に断ち切られた繋がりの怒り、憎しみを生み出す悪魔でもあることを知ったピュラ。
怠惰、嫉妬、怒り、憎しみと人間の歪んだ負の感情は、自身を世界を破滅させるような汚き悪魔の存在だと感じさせる。
そこには、この世界への絶望が生み出されてしまう。
違う。そんな歪んだ感情も含めて人間なんだ。そんな世界を穢す負の感情があるから、それを浄化しようとする正の感情を人は生み出し、互いに想い合って、繋がり合おうとする。
そこには、これからの世界への希望があり、それを創造するためのはじまりの時がある。
自分は、この世界の大切な一員であると、自身を肯定し、その歪んだ感情も含めて、愛し、愛されればいい。
絶望の中でも決して失われなかった愛や友情、信頼。人間は、自身に悩み葛藤しながらも、その想いの心を通じて繋がり合いながら必死に生きる。
最終的にはそんな懸命に生き抜こうとする者たちへの人間賛歌として聞こえてくるような物語だったように思う。

|

« FOR【clickclock】160917 | トップページ | ЯEVERSE【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】160918 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEI様

観劇感想の前に。

御意さん御一人でされているにもかかわらず行き届いた運営されているなあ、と思います。上演時間もゲネプロが終わった後Twitterで修正されるなど。私は本来当初発表の上演時間と結構違うと腹の立つ方ですがシリーズの最終作ということと発表が早かったので不問にします。上演時間の当初発表と実際の上演時間については最近面白いことに気づいたのでまた(笑)

難を言えば月曜日の上演開始時間は考えて欲しかったくらいかな。。どこともハシゴができない。

SAISEIさんが観られない回の当該部分はまたコメントできたらさせていただきます。

SAISEIさんは明日はアマサヒカエメですね(笑) 私はこの週はProjectUZU最優先なのとSPACE9で3.500円は高いと思ったので見送りましたが舞台美術が素晴らしいみたいですね。残念(>_<。)

投稿: KAISEI | 2016年9月18日 (日) 23時33分

SAISEIさん

ご来場、ありがとうございました。
5年間見届けてくださり、本当に嬉しく思います。
毎年SAISEIさんの丁寧な、時には私が言葉でうまく表現できなかった気持ちを文字に起こしたような考察、感想を楽しみに拝見してきました。

今後は改名しての活動になりますが、UZUの公演以外は変わらず積極的に活動してまいりますので、またどこかの劇場でお会いできる事を楽しみにしております。

投稿: 御意 | 2016年9月21日 (水) 08時19分

>御意さん

コメントありがとうございます。

まずは、お疲れ様でした。
そして、お疲れのところ、感想を読んでいただきありがとうございました。

5年間、PANDORAの世界を旅できたのは、私の観劇人生の中で貴重な時間になったと思います。
今はもう、その素敵な時間をくださった、御意さんはじめ、皆様に感謝するばかりです。
本当にありがとう。

≒AGATAが、完全なAGATAになったってことかな。
まあ、PANDORAを観た者はみんな、あなたがAGATAであることは忘れられないので、自然な流れですね。
今後も益々ご活躍ください。
演劇がどうしても多くなってしまいますが、その舞台で拝見できることを楽しみにしています。

投稿: SAISEI | 2016年9月21日 (水) 10時28分

>KAISEIさん

5年間、皆を率いて、大きな公演プロジェクトをやり遂げたパワーには頭が上がらないですね。
これからも、応援し続けたいなと思います。

上演スケジュールは確かにはしご組みにくかった。
この週も激戦で、やむなく観逃しが幾つもありました。

投稿: SAISEI | 2016年10月12日 (水) 14時27分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/64217467

この記事へのトラックバック一覧です: PANDORA -Op.5 最終章・はじまりの章-【Project UZU】160917・160918:

« FOR【clickclock】160917 | トップページ | ЯEVERSE【大阪大学劇団ちゃうかちゃわん】160918 »