For スマイル【プロデュースユニットななめ45゜ 白木原一仁ソロマイム公演】160909
2016年09月09日 イロリムラプチホール (65分)
昨年、拝見した作品。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/60-fa1f.html)
さらに改訂を加え、一つのゴールにたどり着いたかのようなことが、当日チラシには書かれています。
なるほどと、その言葉の意味がよく理解できるような作品が創り上げられていたように感じます。
これまでと大きく違うように感じるのは、おじいさんが一人ぼっちという印象が強かったのですが、今回はおじいさんの周囲にいる人たちの存在が浮かび上がります。
おじいさんは、そんな人たちと一緒に、笑顔で今日を生きています。
おじいさんは記憶をたどるかのように、記憶の海の中を潜っていきます。もう年老いて、老い先短いからとか、もう生の時間が緩やかになりやがて止まってしまう日がくるから、過去の思い出をたぐりよせようとしているのではありません。
今を生きる、これからを生きる人であるから、過去を振り返っているかのようです。その思い出一つ一つ、出会った一人一人、自分の身の回りにある物たち。そんなものたちと対峙することで、そこにある大切な想いが見えてくるのでしょう。
記憶の欠片は、微笑ましい喜びに溢れるものばかりではありません。ちょっぴり寂しい辛い出来事や、悲しみに溢れた大切な人とのお別れなどもあります。
そんな思い出たちは、消し去ったり、奥深くに沈めこんだりするのではなく、いつだって、今の土台となってきた。人生をステップアップするかのように、自分で明日を迎えられるようにと、レンガを積み上げ、新たに生きる場所、ステージを繰り返し創り上げてきた。
喜びの中で楽しく次の住む場所を造ることもあっただろうし、涙を流しながら、それでも、今、ここにいたら記憶の海の中で溺れてしまうからと、必死に造り上げたこともあったでしょう。
でも、いつだって、そのレンガを積み上げる自分の心には、明日、笑顔でいられる自分への願い、笑顔にさせたい周囲の人たちへの想いがあったように感じます。
おじいさんの過去を、叙情的に描きながらも、そこにはおじいさんとその周りの人たちの笑顔溢れる明日しか見えないような作品でした。
上記リンク先に書きましたが、初演時から、パイプをくわえた白木原さんの姿がとても印象的で、なんかお気に入りなのですが、今回はそのパイプのエピソードも描かれています。
火をつけず、くわえるだけで、すぐにポケットにしまったりする仕草。これに意味があったようです。あのパイプには、おじいさんにとって大切な人からの優しい想いが込められていて、同時に大切な人への男として父としての覚悟ある想いがあったみたいです。
なんか素敵だなあとずっと感じていたのは、そんなものに込められていた想いが滲んで見えていたのかもしれません。
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コメント
SAISEI様
いつもありがとうございます。
白木原が伝えたい事を、的確に書いて下さって、本当に嬉しいです。
今後も続けていきます。
またよろしくお願い致します。
投稿: 秋津ねを | 2016年9月12日 (月) 13時18分
>秋津ねをさん
コメントありがとうございます。
観るたびに、感じること、思うことが拡がっているような気がします。
自分の時間の流れもあるのでしょうが。
また、色々な形で作品に触れられたらと思います。
ご活躍期待しております。
投稿: SAISEI | 2016年9月13日 (火) 13時57分