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2016年9月11日 (日)

わが町【劇団六風館】160910

2016年09月10日 芸術創造館 (145分)

3年前に同作品を大学生の授業公演として拝見。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-d639.html

とても印象に残っている作品ではあるものの、やはり忘れてしまうもので、観ているうちに徐々に思い出してきました。
なんか甘酸っぱ過ぎて、ムズムズと落ち着かず、胸をかきむしりたくなるくらいに狂おしい幸せなエミリーとジョージの二人のシーンあたりで、急にこの作品のラストが蘇ってきました。そうだった、これは死の残酷さもまともに突き付けた上で、今を生きる、時間の流れに乗って進む今の生を尊ぶような気持ちが得られる作品だったのだと。
そんなことを思い出して、ラストを迎えましたが、不思議と以前に拝見した時と感想というか、心に残る感覚が異なる。
今回は、ただただ、死への辛さが残り、不安定で不条理な生に執着して生きなくてはいけない人間の悲しみが強く浮き上がるような気持ちになりました。
時の移ろいの中で、環境も人も自分も変化していく。その中で流れる生の時間。やがて、たどりつく死のゴール。それがいつかも知らずに。
そんな人間の生を見詰めているような作品なのだと思います。

あらすじは上記リンク先でだいたい記したとおりだと思います。
初見の近畿大学 vs 今回拝見した大阪大学。
別に優劣をつける必要はありませんが、同じ作品を観たとは思えないくらいに、観終えた後の感覚が異なりました。その理由を、以下にまとまらないですが、記してみようと思います。

今回は、死への悲しみ、悔しさを強く感じたような気がします。
きっと、舞台を観る時の視点が違っていたのではないかと思うのです。
近畿大学は、舞台を町そのものにしたかのような、すいぶんと大掛かりなセットを組んでおり、それを2階の客席から見下ろすような形での観劇でした。
それはミニチュアの町の中で人々が動く姿を見ているかのようで、虚構の世界を感じさせます。さらに、コロスとしての舞台監督の言動から、観ているこの町の姿、人々の姿は今はもう無く、時の移ろいの中で消えてしまったようなことを感じさせます。
つまりは過去の遺物を残像のように観ている感じで、この感覚は三幕で、死んでしまったエミリーが、過去を見て悲しみと共に、生が終わったという死の喪失を受け入れるようなものと同調するように感じます。ある意味、死という達観したような状態で全てを見詰めているような感じでしょうか。達観しているから、死を比較的、容易に受け入れられ、そこに生の尊さを導き出せたような感じです。

これに対して、今回は、工夫された舞台セットになっているものの、あくまで舞台上で描かれるのは、エミリーとジョージの家であり、町の姿は想像しなくてはいけません。最初に映像で地図が映し出され、頭にそれが刻み込まれ、そこから、観ている舞台の外側にある町を自分の頭で創る必要があります。コロスの舞台監督の言動、雰囲気は、どこか観ている客に寄り添っているかのようで、感覚的には、町を見下ろすのではなく、その町に自分も溶け込んで一緒にいるような気持ちになります。
それは、恐らく、今、観ている町の中で、自分も生きているという感覚であり、舞台上の人たちと共に流れる生の時間に乗っているように思わせているみたいです。
つまりは、達観した死者の立場では無く、脆く弱く、先を知らない不安定な生きる者としての視点なのではないかと。
その流れでずっと観ているので、やはり人が死ぬということに、ショックを受け、それに対する怒りや憎しみ、悲しみといった不安定な感情を抱いてしまったように感じます。死への辛さが大きく、それを容易に受け入れられず、生への執着みたいな感情が残ります。
未来を知るというところでは、今回拝見した時は、2回目なので、結末を知っていますから、近畿大学の時よりも、死者の視点で観れそうな気もするのですが、どうもそこは違っていたようです。

結局、観終えた後、近畿大学の時は、死を受け入れて、生の脆さ、不安定さを知った上でその尊さを偲ぶみたいなエミリーのような姿になれたのかな。
それに対して、今回は、エミリーの墓の前で泣き尽くすしか出来ない、死を悲しみ、不安定な生に囚われるしかないジョージのような姿になってしまったような気がします。
同作品でも、観方でずいぶんと異なるのだなあというのが、今回の一番の感想でしょうか。これは、自分ではなかなか制御できるものではなく、創り手の演出に依存しているところも、また面白いものだと感じます。

役者さんはたくさんご出演されているので、お一人お一人にコメントはちょっとしんどいので出来ませんが、ベスト3人ぐらいは挙げておきましょうか。
舞台監督の小島伊織さん。スタイリッシュに、客の心に触れてくるような凛とした優しい空気を醸されてとても印象的。長時間観劇をリラックスして出来たのは、この方の功績が大きいように思います。
エミリー、松田千怜さん。純粋でけなげな可愛らしい姿から、死を見詰める達観した大人の姿まで。2時間半で、舞台上で本当に少女から大人の女性へと成長したかのように姿を変える魅力が顕著に感じられます。
キブズ夫人、堀田彩花さん。今回、一番、目を惹いた方でしょうか。表情はじめ、ちょっとした振る舞いや、佇まいがとても丁寧な印象があり、そこから醸される美しさに心惹かれました。

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コメント

SAISEI様

 この観劇激戦週、どう消化されるのか? と思ってましたがやはり六風館行かれましたか? 場所のことを考えると行かれてるだろうな、と。となると今日は虎本さんがお好きなのでindependent theater 1st『汚れたアヒル』、レトルト内閣『革命少年』くらいですかね?(笑)

 私も六風館はかなり高い評価なので行く気満々でしたが『わが町』の原作者が外国人ということでやや不安に。検索( http://unterwelt.hatenablog.com/entry/20110130/p1 )とそれほど起伏に富んだ話ではない感じ(^-^; 正直予約するまで迷いましたししてからも迷走しました(笑) 145分と長いですからね。面白くなかったら確実に寝ますから(笑) 現に私の隣の男性は最初から最後まで寝たはりました(笑) 何しに来たんだ(笑)

 いや面白かったです。これは演出の良さでしょう。日常の何気ない風景を楽しく観せていただいたと思いましたが3幕構成で時間配分も原作通りなんですかね? 第3幕が主な感じに思い込んでて。

 SAISEIさんは「死への辛さ」を感じられたんですね。私はどちらかというと第1幕、第2幕の方が記憶に残ったかな。。六風館の皆さん演技はウマイのですがやはり学生劇団に総じて感じることなのですがやはり中年以上の年齢の役は現実的な設定の脚本であればあるほどなかなか出せない。第3幕の死の場面も春秋に富む劇団員の皆さんからは感じ取れなかったのかもしれません。しかし第1幕、第2幕は私も通ってきた道。いいよなあ、と思いながら観てました。

 しかし学生劇団の長時間の公演は持ちます。今回も145分が短く感じました。却って小劇場界の劇団の方が持たないと感じる時が多いです。体調にもよるとは思うのですが。。学生さんの熱意が伝わってくるんでしょうね。

 各役者さんに一言。相変わらずまだ配役は見てません(笑) 国枝さんしか顔と名前が一致しないので(笑)

●舞台監督・・・台詞も明瞭。声もよく届いていたし。落ち着いた感じでストーリーテラーをこなされてました。おまけに格好いい(笑)

●エミリー・・・高校も演劇部所属だったのかな? まだ粗けずり(少し演技がオーバーかな)な感じがしないではないですが観客の心を動かす力はあられるかな、と。

●ジョージ・・・とにかく身体が軽い。軽快。次は東洋企画で拝見かな。

●ギブズ・・・何回か拝見してると思うのですが見た目が優しい感じで出だしは役と合わないなあ、と前にも思った気が。ただ途中からなんかしっくりくるんですよね。不思議(笑)

●ウェッブ・・・ジョージとの結婚日当日の会話が好きでした。『ドラえもん』ののび太の結婚前夜のしずかちゃんとしずかちゃんとパパとの会話を今思い出しました(笑)

●ギブズ夫人・・・キレはるところキレはる感じ。完璧な安定感がまだあるわけではないですが声も印象に残ります。

●ウェッブ夫人・・・なんか雰囲気が好きでした。ヘアバンド? も似合ってらして。台詞回しもう少し練習が必要かな、とも思いましたが自然な演技で。

投稿: KAISEI | 2016年9月11日 (日) 16時48分

>KAISEIさん

特に何ということない話ですが、不思議と心に響きますよね。
私は初見時は、プロトテアトルの豊島さんとか、遊劇舞台二月病の三村さんとか、お知り合いになりかけていた役者さんが、まだ学生として授業公演をされていたので観に伺いました。
確か、体調悪くて、長いし、海外ものは感性合わないこと多いしみたいで同じように敬遠気味でしたが、この作品を知れたことは貴重な経験だったと思っています。
美しい空気を醸す作品なので、六風館にははまっているように思い、今回は優先して観に伺っています。
思った通りで、非常に素晴らしい作品に仕上げられたなあと感じます。
KAISEIさんの感想は、初見時の私と非常によく似ているように思います。
2回観た時、演出を変えた時にまた何か違う感覚を得るのかもしれませんね。

投稿: SAISEI | 2016年9月11日 (日) 23時39分

SAISEI様

私の感想が初見時のSAISEI さんと同じだなんて羞ずかしいですね(#^.^#)

劇団六風館は私も伺える限り伺いたいです。東洋さんショックは大きいです(笑) 今回は違いますが(笑) でも今回の演出さん、どの程度改変したんだろう? まさか歌うシーンはないだろうし。ダンスシーンも。。無さそうだ(笑) いやホンマに楽しく観られましたよ。感謝感謝です。

貶すわけではないのですが同じ大阪大学のちゃうかちゃわんはアタリハズレありませんか?(笑) オリジナル作品劇団なんですよね? そのせいかとは思いますが(笑) でも六風館もちゃうかも映像使うなあ、って(笑)

今週は神戸大学自由劇場の新人公演『学級裁判』も行きましたが大当たりでした。会話劇っぽいなあ、と思っていったのですがエンタメでした(笑) エンタメは私の中ではハードルが高いですからね(笑) でも面白かったです。会場が暑すぎたこと以外は無料でこれだけのものが観れたら満足。門地みかさんという名前を覚えておいてください(笑) これはもう1回観たい。
http://gakkyusaibann.web.fc2.com

投稿: KAISEI | 2016年9月12日 (月) 00時04分

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