un mask ing【演劇ゆにっと卯号室】160828
2016年08月28日 インディペンデントシアター1st (60分)
最初の数分で、生演奏の効果音を使いながら、マイムで話の全体像を目に焼き付けさす。この時点では、男一人と女二人の修羅場を迎えることぐらいしか分からない。
話が展開する中、社長が事故で意識不明になり、その妻を見舞う、社長の弟夫婦の話ということが分かる。
しかし、社長の弟は兄嫁と不倫、兄嫁は今の仕事が好きでそのために弟を利用している、弟嫁は夫に会社で確固たる地位を築かせたいといった、各々の本心が、剥がされたマスクから剥き出しになっていく様が描かれる。
最初にマイムで見たまま、修羅場だ。
兄嫁のキャリアウーマンの誇り高きプライドを持った高圧的な言動、弟嫁のねちっこく、人の弱いところを突いてくる嫌味な言動。それにただ翻弄されるだけのダメ弟。
そんな構図を面白おかしく見せながら、専業主婦と働く女性の隔たり、一般大衆のニーズとビジネス重視に囚われた会社との隔たりなども絡めて、人間の歪みを浮きあがらせていく。
オチがどうしても早い段階で分かってしまうこと、修羅場を迎えるシーンまでがじわじわといい感じで蓄積されていたのが最後、急であること、心に鈍く響く相手への言葉の攻撃が面白かったのに、結局はプロレスのような描写に行き着いてしまうことが、ちょっとマイナスに感じるところではあるが、冒頭のマイム演出など、観る者の頭にシーンを刻み込み、そこにあった登場人物たちの心情を、心に嫌な感じで刺し込んでくるような感覚は、新鮮な体験であった。
株式会社クニエダ。
自社開発品が当たり、一家に一台はあるくらいに売れて業績も拡大。
しかし、その業績も飽和して伸び悩み、新製品開発を含めた商品展開をどうするかが大きな問題となっている。
そんな中、社長の國枝謙太郎が事故に遭い、意識不明に。
仕事が遅くなった時のために、謙太郎が会社近くに借りていたマンションの一室。
妻のみどりは、病院帰りに、その部屋を整理しにやって来ている。
そこに訪問者。謙太郎の弟、悠二と妻の茜。
みどりも疲れているだろうから、挨拶だけしてすぐに帰ると言う悠二。しかし、茜は今日こそ、しっかり話さないとダメだと悠二を煽り、長居を決め込む。
テンション高くペラペラと、主婦生活の愚痴、我が子のこと、保育園での出来事などをまくしたてる。さらには、食事をしようと悠二に出前を頼ませる。
悠二とみどりは不倫関係にある。この部屋でも何度も体を重ねている。悠二の中では、茜を連れて早々に帰り、また、夜に励ましに来ようという魂胆。仕事に徹し、子供が出来ないみどりは、専業主婦の茜を下に見て、デリカシーの無い発言に苛立ちを隠せない。
煮え切らない悠二に痺れを切らせ、茜が口を開く。
謙太郎に万が一のことがあった時のこと。経営に穴を開けるわけにはいかないはず。みどりだけでやっていくことは難しい。二人には子供がいないから、いずれは自分たち夫婦の子供が跡を継ぐことは暗黙の了解になっている。ならば、これを機に、悠二に経営権を渡して、よりスムーズに跡継ぎが出来るような体制を敷くべきではないか。
茜の提案に、みどりは嫌悪を示している。
この険悪なムードの中、よりにもよってピザが届く。
みどりは、茜と悠二を問い詰める。
これは悠二が求めていることなのか、さらには会社の実状をどこまで把握して、これから本当にやっていけるのか。
茜が主婦、素人視点での、海外に打って出るという商品展開を語る。悪いアイディアでは無い。しかし、そんな程度のアイディアは会社の経営陣も既に持っている。そのアイディアを如何に実現していくのかをリスクも含めた多視点で具体性を持って議論して行動するのがビジネスだ。
所詮は主婦。プロの経営を分かっていない。
子供がいなくて子育てもしていないから、実際の世の中が見えていない。リスクばかりで保守することしか目がいっていない。
みどりと茜の嫌味の言い合い。
いつの間にか、蚊帳の外の悠二が巻き込まれる。どうして、自分の意見をしっかりと言わないのか。すぐに逃げる。この前だって、今日のこの話になったら、逃げて朝まで帰って来なかった。どこで何をしていたのか。携帯にMと登録された人のところへ行っていたのではないのか。
追い詰められて、頭がパニックになっている悠二は、思わずごめんなさいと口走ってしまう。
ごめんなさいってどういうこと。茜はその言葉を聞き逃さなかった。
そこに来訪者。隣に引っ越して来たギター奏者。
悠二は地獄に仏と部屋に招き入れ、しばし歓談。しかし、それで逃げられるはずも無く。やがて、ギター奏者は奥さんが迎えに来て、連れて行かれる。
悠二が全てを白状する。みどりとの不倫関係。
まだ何もバレていなかったのに、全てを暴露する悠二に戸惑うみどり。
みどりと茜の戦いが始まる。
悠二を賭けて。・・・では無い。
悠二は甲斐性なしのダメ男。それは両方ともの同じ認識。
みどりは冷めた関係にある夫に見捨てられても自分のやりたい仕事を続けるために、茜は安定した生活、名誉のために、会社の経営陣という地位を失わないようにとの保険としては最適だったというだけ。
みどりと茜が、互いに技を繰り広げて、戦う。巻き込まれ、見も心もボロボロにされる悠二。
悠二は倒れ、みどりが茜にとどめを刺そうとする時、電話が鳴る。
みどりが出る。病院から。
謙太郎、意識取り戻す。もう話せるくらいに回復しているとのこと・・・
上記したように、オチはまあこうするしかないわなあと。変にゴタゴタせずに、スパっと切った感じのラストは嫌いではないが。
冒頭のマイムは目で見て楽しむ。前半はねちっこい歪んだ嫌悪なやり取りを心で感じながら楽しむ。
後半の戦いが、また目で見るだけのエンタメ要素が強くなり、前半の心に鈍く響いた感覚が消えてしまったような感じかな。
それを残した上での、後半の盛り上がりが、巧く描かれると、もっと印象に残る作品だったように思います。
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