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2016年8月 2日 (火)

追う女と追われる男【HPF高校演劇祭 箕面東高等学校】160801

2016年08月01日 シアトリカル應典院 (60分)

高校生らしいとか、らしくないとか、何を基準なのかということもあるし、別にこだわる必要も無い訳ではあるが、これはどちらだと言われたら、らしくない作品だろう。
熱血青春、甘酸っぱい恋なんかを突き抜けて、一挙に大人の歪んだ愛に向かってしまっているダークファンタジーみたいな感じか。
それだけに、こういった作品に挑戦して、かなりそのダークな空気を醸した舞台を創り上げられていることに驚く。

人は人を求めて彷徨ってしまう。特に男と女ならば、それは恋や愛の形を持って。
自分を否定してしまい、孤独に苛まれてしまった人が、自己肯定や居場所を求めることに執着して、それが自分を愛する自己愛や、相手からたとえ偽りでも愛を得ることをひたすら求めるといった歪んだ構図が感じられるような話だった。
奥深く、謎に包まれている空気が漂い、難解な作品だった。
複雑に絡み合った愛が、悲劇を生み出してしまうという、人のもろさや、愛の狂気が暗闇に浮かび上がるミズテリアスな感覚が印象に残る。

気になったのは、音と声のバランスかな。
声が小さいとか、音響が大きいではなく、多分、バランスの調整が上手くいっていなかったのではないだろうか。
聞き取りにくいシーンが多々あり、登場人物の過去や背景などの説明セリフもあるので、把握できないとやはりストレスがたまる。
会場によって異なるのだろうし、熟練した劇場の技術スタッフがいるはずなので、上手く調整して、せっかくの惹きつけられる話から、少し心が離れてしまうようなことは避けたい。
まあ、スムーズにシャキシャキと話を理解して進むような作品でもなく、謎で覆って、闇に包む、演出なら良しかもしれないが。

舞台セットは、珍しくがっつり組んだものだった。
心情こもる大切な言葉が、高さを活かした舞台で発せられ、メリハリの効いたものとなっている。
奥の4本の柱は何だろうか。照明に当たると、ぼんやりと青、黄、黒、赤と彩られるようだったが。
4人の女と同調しているのかな。あやめ、水仙、黒い心で覆われた女性、華やかな明るさを持つ華。
そんな女性の念に支えられていたサーカス団、そしてその団長。
それが歪んだ愛が明らかになることで、崩れていく悲しい有様、人のもろさを描き出しているように感じる。

様々な街を渡り歩く、あるサーカス団。
団長の旭は、亡き父との約束として、このサーカス団を続けている。
皆を楽しませ、自分も含めて、一人ぼっちの人が孤独から解放される場所。
今の団員は彩と華。
華は、サーカス団の看板役者。買い出しなどの雑用もこなしてくれるし、後輩の面倒見もよく、その明るい性格で悪くなった空気も吹き飛ばしてくれる貴重な存在だ。
旭を長年支えているのが彩。
サーカスの客入りはずっと悪い。客が0で、公演中止なることも頻繁だ。経営は厳しく、これからどうしていくのかをいつも悩んでいる。
それなのに、自由気ままに、今日も、身寄りの無い女の子、スイを拾ってきて、サーカス団に入れて面倒を見るなんて言っている旭に苛立ちを隠せない。
それでも、ずっと旭と一緒なのは、サーカスが好きなだけが理由では無い。私のことはどう思っているのか、先の人生をきちんと考えてくれているのか、新しい子を入団させたりして私のことを見てくれていないのではないか。そんな責め言葉を旭にぶつけると、旭は、彩が必要、好きだと言う。彩はその言葉が欲しくて、そしてそれを信じて、また旭についていく。
スイは、厳しい彩とは少し反りが合わないようだが、華からは可愛がられ、楽しい日々を過ごす。もう、一人じゃない。こんな自分の場所を作ってくれた団長の優しさに涙する。

そんなサーカス団がやってきた街で、記者の男は、一人の美しい、勘ではあるが、何か不思議なオーラを発してる女性を見つける。
記者は、女性に密着取材を申し出る。
女性に連れて来られたところには、白衣姿の研究員がいて、女性はその研究員とよく分からない合言葉を交わした後、惚れ薬2本を買い取る。
かつて、女性に裏切られた研究員。その恨みの念から、研究に没頭し、ついにこんな凄い薬を開発したらしい。と言って、その裏切られた女性に飲ませる気はない。もう、自分には研究が全てとなっているようだ。
女性はその惚れ薬をサーカス団の団長に使うつもり。
これは恋なのか、愛なのか。
謎の女が現れ、女性に忠告する。止めておけ。それは愛では無い。薬の力だ。
しかし、女性は、これは復讐なのだと反論し、意志を曲げるつもりは無いようだ。
去って行く謎の女。邪魔をされてはいけないから、記者に後を追うように指示。
そんな女性の姿を、記者は美しくないと否定しながらも、謎の女の後を追う。

見失って戻って来た記者。
女性は自分の過去を語り始める。
貧困が渦巻く、スラム街。そこにやって来たサーカス団。その芸は酷く、皆は罵声を浴びせる。そんな中、一人の女性がサーカス団の団長に恋をする。
やがて、旅立つサーカス団。女性は団長と別れるが、腹には子供が授かっていた。
その子供が自分。
母との貧しい二人暮らし。母は疫病で亡くなる。亡くなる前に、父のことを話してくれた。そして、父を探して、ついていくように言われた。そこがあなたの帰る場所だからと。
母の遺体は、スラム街の皆で食べた。そうしないと、今日という日を生きれなかったから。
自分にはもう愛が無くなった。自分のことを好きだと言う人も、この話をしたら、みんな逃げて行く。
あなただってそうなのではないか。
そう言って、女性は記者に惚れ薬を手渡す。
私は、これからあなたに酷いことを頼もうと思っている。私に惚れていないと出来ないことだと思う。だから、これを飲んで。愛の力は限界があるから、薬を使う。
その言葉を記者は受け止め、惚れ薬を飲む。あなたのことが好きだから、自分の好きな人の頼みを聞くことは出来ると。

女性は研究員に会いに行き、もう1本追加購入。
そして、惚れ薬をある人に手渡すように依頼する。
飲んだ惚れ薬を元に戻す方法はあるのか。
女性は研究員に聞くが、一生かかるような仕事のようだ。
戻って来た女性に記者は自分の過去を語る。
ハゲワシと少女で有名になった写真家、ケビンカーター。
彼は多くの賞賛と共に、非難も浴びて、自殺してしまった。
自分は、彼のように人の心を動かせるような写真家になりたいと道を歩んだが、才能の限界を見ることになる。
それでも、夢を捨てられずに、こんな記者の仕事をしながら、中途半端な生き方をしている。
そんな時に出会った女性。それがあなた。
あなたが復讐をしていなければ、もしかしたら二人は恋人同士になれていたのかも。

謎の女は、団長の下に向かい、忠告する。
あなたも、あなたの周囲も不幸にするようなことが迫っていると。
謎の女は去って行く。
研究員が団長に近づき、惚れ薬を手渡す。
恋や愛など自分には関係ない。自分にはサーカスしかないと言い張る団長だったが、とりあえず、持っておくだけでいい、人には言うなと無理やり押し付けて、研究員は去って行く。
華が団長に相談にやって来る。
サーカス団を辞めたい。世間の目もある。このままでいいのかと考えるようになった。一人の女性として、落ち着いた人生を歩みたい。
団長は、その言葉を聞き、惚れ薬を秘密に飲ませる。
一人の女性として、幸せになる。その相手が自分だったら、華は離れて行かない。
そんな姿を見ていたスイは、団長に飲ませた薬のことを問い詰める。
スイは自分に想いを寄せている。だったら、この子にも。
団長はスイにも惚れ薬を飲ませる。

謎の女は、女性に自分と同じことをしてしまっていることを伝え、止められなかったことを悔いる。
女性は、自分と同じように復讐に囚われた道を、こうして彷徨ってしまうことになる。
団長にも警告したが止められなかった。
団長とその周囲を滅ぼして不幸に陥らせてしまう。

団長は彩、華、スイに取り囲まれ、報われぬ恋の念に呪縛される。
はないちもんめ。欲しいのは旭。
記者は、サーカス団の実態を世間に知らしめる。
これで、サーカス団は滅ぶ。
研究員は、自分の研究が世界を滅ぼさせる力を持つことをただ喜ぶ。
全てを失った団長。
その目の前に美しい女性が立っている。
しかし、その女性もまた、もう自分の名前も忘れ、全てを失っている・・・

女性は、自らの不幸な生い立ちから、愛を失う。薬の力による偽の愛を、恨む父から得て、それを自らの勝利と考えていたようだが、記者と出会ってしまい、自分の中にかすかに残る愛が顔を出してきてしまったみたいだ。しかし、その復讐の念は、記者の本物の愛をも、薬によって偽としてしまい、女性は今度は自ら愛を放棄したみたいだ。
不幸な生い立ちや、酷い経験から、愛を信じられなくなってしまった人が、愛を拒絶してしまう。虐待の負の連鎖などと似た構図なのかもしれない。
本物の愛を見出し、自分のことを本当に想ってくれる人ともう一度、信じ合えるチャンス。それに気付き、そのチャンスを掴むことが、謎の女は出来なかったのだろうか。自分が出来なかったから、女性にはと考えたようだが、そうもいかなかったみたい。止められなかった理由は、かつての自分を思い、愛を否定せざるを得ないくらいにすさんだ心の深刻さが、ちょっとした言葉で癒されることが無いことを知っていたからなのかもしれない。
記者は、人生に行き詰まり、生きる力を衰えさせていた時に、女性と出会う。傷ついた者だから、感じることが出来たのか、女性から漂う悲しみの心。
本当ならば、互いに傷を癒し合えるような恋仲から、愛を深めることも出来たのだろうが、女性の愛への不信は並大抵のものではなかったよう。それでも、自分の想いを女性に知ってもらいたい、受け止めて欲しい。彼が飲んだ惚れ薬は、そんな偽りの形でもいいから、女性に届けたかった本当の想いを伝えたようだ。

研究員は、失った愛を、狂気的な破壊として昇華する。彼は愛から生み出される裏切りや葛藤の念といった負の感情だけしか見えなくなってしまっている。愛が喜びや幸せの源となる原料であることは忘れてしまったようだ。
惚れ薬は、そんな本当の愛を否定するものであり、機械的に偽の愛を生み出す。これは、相手を想うとかではなく、相手を手に入れたいといった、はないちもんめのゲームのような感覚なのだろう。
団長は、サーカスにこだわる。それは、そこが自分を孤独から救う大切な居場所だからだ。そのために、その場所を維持し続けなくてはいけない。自分がサーカスを愛するだけではそれは出来ない。サーカスを愛する仲間たちが必要。それが、やがて、自分を愛させるという自己欲に満ちた行動を起こさせているみたい。
彩、華、スイもまた、このサーカス団に救われた人たち。団長は、そのことを大義にして、サーカスを絶対的なものにまで上り詰めさせる。しかし、そこにある温度差が悲劇を招いてしまったようだ。愛は時に一方通行であり、その熱量も必ずしも等価では無い。そこから生まれてしまった歪んだ感情。それは憎しみや恨み、裏切りといった感情にまで発展してしまった。報われなかった恋は、そんな負の産物を生み出す。

感じるのは、人は孤独を恐れ、自分自身を否定するかのような立ち止まりに囚われてしまった時に、人を求めているということ。
その人を求めることが、相手への愛のように見えるが、実は、自己肯定するための、自己愛に過ぎないような印象を受ける。
自分にどこか不安があり、必要とされていないのではないかと思ってしまう時に、人は自分に向けられる愛を得ようと必死になる。
それでも、その愛の裏切りを経験した人にとっては、そんな愛が信じられず、自らが求めたのに、それを受け止められずに歪んでしまうみたいな構図が浮かんでくる。

旭、高槻知さん。孤独への不安から求める愛。それは自分勝手ではあるが、そうしないと生きられない人の弱さも表現されている。
女性、鳥喰楓さん。生い立ちから一度は捨てた愛。黒ずくめの姿、暗い面影。それでも、愛はあるのかもしれないと揺れ動く、復讐と愛の交錯した感情表現。
記者、小澤公誉さん。スマートなたたずまいで、内に潜む弱い心を隠す。それを曝け出すことが出来る女性への真の想いを感じさせる。
スイ、下村有里乃さん。おとなしくオドオド。自分を守ってくれる、かまってくれるといった感謝の気持ちと愛が混雑する、幼さを醸す姿。
彩、横野優希さん。歪めた顔、きつそうな空気。自分を欲してという欲望。大人としての、現実的な愛を求める象徴か。
華、仲野瑠花さん。明るく素直。まだ若いから、多岐の道がある余裕からか、一つの愛にこだわらない自然な姿を見せる。
謎の女、藤川未咲さん。姿恰好から、ほぼ声だけ。ミステリアスで、魔女のような声色で舞台のダークファンタジー色を彩る。
研究員、梅本広海さん。裏切りからの憎しみを、この世を滅ぼしたいという全面否定の狂気的な執着心を見せる。愛が生み出す狂気の念の恐ろしさか。

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