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2016年8月20日 (土)

寿歌【カイテイ舎】160819

2016年08月19日 京都市東山青少年活動センター 創造活動室 (90分)

色々な風に捉えることが出来る要素のオンパレードで、どう想像すればいいのか難解な作品ではあるが、関西弁のノリもあるのか、いい感じでええ加減で、癖のある3人のキャラの魅力も乗じて、楽しい作品であった。
扱っている放射能やら終末の世界は重いのだが、それすら、まあ、こうなったらなったで、今までどおり、前へ進むしかありませんでえといったノリの言葉が聞こえてきそうな感じ。
気負わず、背負わず、身の程をわきまえて。ええ加減でも、自分の心にいつも忠実に生きる。
そんな生き様の果てに、生きる覚悟を見出そうとしているような感覚になります。

<以下、ネタバレしますので、ご注意願います。有名作品であらすじはネットで調べたらたくさん出てくるので、白字にはしていません。公演は日曜日まで>

核戦争後の世界。
戦争が終わっても、コンピューターは、余りのミサイルを撃ち続けているようだ。
破壊力の大きな爆弾は、ほぼ全て撃ち尽くしたことだろう。今では、世界の地図が変わるぐらいに。もちろん、ここ日本も。
水爆やリチウム弾は、あらゆるものを消し去ってしまった。
芸一座でドサ回りをしていたゲサクとキョウコは、仲間たちを失ってしまった。残された二人は、今でも、あての無い旅を続ける。
芸と言っても、大したことは出来ない。コジキ踊りといったちょっとしたストリップと、シュールなよく分からない、自称、ラプラス逆転漫才といった代物。
いわば、ええ加減。ええ加減に、それでも二人で軽快な冗談を飛ばし合いながら、何処へとも分からず、ただ進む。
ある日、二人は不思議な能力を持つ男と出会う。名前はヤスオ。何かを手にして、自分の頬を叩くと、あら不思議。ポケットの中から手にした物が増えて出てくる。命名、物品引き寄せの術。
ヤスオは、だいぶ向こうを目指して旅してると言う。二人は、何処ということもなく、ちょこっと先を見ている。こんな三人だが一緒に旅をすることになる。

ヤスオのおかげで食べ物には困らなくなった。一粒の米を、おかわりが出来るくらいの白飯にすることが出来るのだから。まあ、ヤスオの頬は腫れているが
何も無い廃墟が続くが、綺麗な風景だ。でも、赤い夕焼けは放射能が燃えているのだし、流れ星はリチウム弾だ。
時折、子供の亡骸もある。そばには形代という穢れを祓う人形も置かれている。キョウコは、何も気にせずだが、ヤスオは、どこか苦痛の表情を浮かべている。
皆が眠りについた夜中、蛍が飛ぶ。
キョウコがそれを追いかけ、どこかへ行ってしまった。うなされて目を覚ますヤスオが、気付き、ゲサクを叩き起こす。
寝ぼけているのか、芸人としての本能なのか、はたまた、何かの病気か。ヤスオは、ダルタニアン、快傑ゾロ、ムサシ、サスケ・・・と数々の芝居に付き合わされ、フラフラになる。酸素吸入、飲水が必要なくらいにフラフラなのは、ゲサクも同じだが、ゲサクの芝居は終わらず、最後にはヤスオは絞殺されそうになる。
戻って来たキョウコ。幼き頃のトラウマでカバが苦手なゲサク。キョウコはカバの写真をゲサクに見せて、発作を抑える。
発作だったのか、蛍の怪しげな光が心を惑わしたのか。
蛍の正体は、アマガツが放射能で光ってるものだった。
キョウコは蛍の子を宿す。

ええ加減に歩いて、しっかりと歩かないから、思っていたのとは違う町に到着。
そこで3人は芸を披露。
キョウコは、可哀想になるくらいに、必死に可愛らしく踊りを披露する。
人は来ない。そう言うヤスオに、ゲサクは見えない観客の話をする。自分たちには観客は見えないもの。空気を感じれば、そこにいることが分かるはず。
今度はヤスオの芸。キョウコのしていたロザリオを増やして配る。ヤスオは、何か、もっともらしい役割だと張り切っている。
ゲサクは弾丸受け止め。戦争でリチウム弾を止めたぐらいなので、この程度は余裕。
キョウコの撃つ弾を受け止めるゲサク。もちろん、これが芝居ってやつだが。しかし、キョウコの銃が暴発。ゲサクは男の人生を撃ち抜かれる。背中。
ゲサクはヤスオにおぶられる。ゲサクは気付いていた。ヤスオがヤソ。神であることを。ゲサクはヤスオの背中に自分の体に残る弾を手で撃ち込む。自分の背中と同じ背中に神になってもらう。
クリスチャンになりたかったのだとか。

落雷。ロザリオに落ちる。町の人が死んだ。
3人は取り囲まれる。しかし、ヤスオは、神らしく、神に選ばれた人が天に召されたとか、もっともらしいことを言って、その場を凌ぐ。
息絶え絶えのゲサク。
きつねとクマとウサギの話。ウサギが主人を助けるために、自分の肉を食べてもらおうと火の中に飛び込む。
人食い虎の穴に落ちて助かる方法。食べられる前に、食べさせる。
犠牲的精神が美しいのでは無い。こんな程度ってこと。命を捨てて出来ることって。
そんな人生哲学を最後に語るゲサク。
キョウコは、ウサギとカメの話で、昼寝をする動物は猫以外にもいることを知ったという。科学の世界だ。
科学の合理性。宗教には無いものだ。雷は科学的には鉄のロザリオに落ちる。木のロザリオに落ちるところに神の存在がある。
お先に極楽へ。ゲサクの息は止まった。

ヤスオとキョウコがゲサクの墓を参ってると、普通にゲサクがやって来る。乾電池を見つけたらしい。これでラジオが聞ける。キョウコはラジオをいじり始める。
そろそろ、行き先をしっかり決めて歩こうと思う。ヤスオはエルサレムを目指すと言う。
ゲサクは一緒には行けない。だから、キョウコを促すが、ラジオをいじっているとはぐらかされる。そして、ゲサクと一緒じゃないならと拒否される。
ヤスオとお別れ。登場した時と同じようにあっさりと立ち去る。
泣きだすキョウコ。
ゲサクは、ヤスオから、あの力でキョウコの折れてしまった櫛を治したものを預かっていたことを思い出す。ただでもらうのはいけない。キョウコに干し芋を持って追いかけさせる。
背中の空いた穴から心に隙間風。神様と人間の違いだろうか、ヤスオの背中はふさがったらしいが。
一緒に旅をするのは無理な話。一座のみんな。バラバラになったみんなを慈しむゲサク。
しかし、キョウコは戻って来る。モヘンジョダロへ向かおうと。
ヤスオは初めから幻だったのだとキョウコは言う。
エルサレムで子供でも産めば良かったのに。ゲサクの言葉に、キョウコは寿歌を唄う。
雪が降ってきた。
いや、これは放射能による死の灰だ。
でも、掌で溶けるわずかながら、本当の白い雪もある。
ゲサクとキョウコは進む・・・

お調子者で、いかがわしく、でも、責任感や覚悟を感じさせ、どこか優しい雰囲気を醸すゲサク。
純粋で可愛らしい、自由奔放な姿の奥深くに悲しみを同居させているようなキョウコ。
不思議で、いつも心痛めて葛藤していて、今の二人との時間の中にいられることを祈っているようなヤスオ。
こんな三人が、何やら、よく分からない会話を繰り広げながら、旅をするという物語。

神と言っても、そんな大きな期待は抱けない。世界が滅びるのではないかと、何も無くなった廃墟の世界になってようやく姿を現す。そして、特に何かをしてくれるわけではない。聖書では天地創造なんて記されているけど、何もないところから物を創り出すことなど出来ない。せいぜい、今、あるものを増やす、どこかから引き寄せる程度。
それに神がいるから人が死ぬ。本来、科学の合理性を考えれば、人が人に爆弾を落とすようなことはしてはいけないとなるはず。でも、人は、それを神から選ばれたのだと落雷を落とすがごとく、実行してしまう。これが信仰という心なのだろうか。
神もそれを知っているから、苦しんでいるようだ。
神は全てをやり直すために、また始原の地、聖地へと向かうのだろうか。
人間たちはモヘンジョダロ、死の丘をひたすら目指すしかない。

ヤスオは神、ゲサクは創る人、キョウコは今を生きる人たちみたいな感じでしょうか。
神であるヤスオと、人であるゲサクとキョウコは、やがて進む道が異なり、別れることになります。
キョウコはヤスオへの恋心か、別れを深く悲しみます。ゲサクがクリスチャンになりたかったのは、神に近づき、キョウコと共にこの世界を生き抜きたかったからなのかな。でも、それは無理。ゲサクはキョウコをヤスオの下に送り込もうとするけど、結局、キョウコはゲサクとの共に進む時間を選択する。
自分の気持ちがどうであるのかに忠実に。
流されるのではない。
こんな世の中だから、絶望するのではない。
何も無いなら、何かを生み出せる。これが本当の創造者。ゲサク自身がそうありたいと考えているのか。

蛍の子を妊娠するキョウコ、身体にふさがらぬ穴を持ち、常に心に隙間風を吹かしながら生きていかなければいけないゲサク。
感覚的には、原罪を背負うアダムと、人が手にしてはいけなかったのかもしれない禁断の物質、放射能をお腹に宿したイブみたいな感じでしょうか。
アダムとイブは神から楽園を追放されて世界を創造しますが、こちらは、追放されたのではなく、自分から出て行った。神に追い出されたのではなく、自分から神と別れた。
だから、その道は希望では無く、絶望が待ち構えているのかもしれないが、それでも、ひたすら進む。命がけでって程のものでは無い。人が出来ることはそんなもんだから。
行き着く先は死の丘。それまでも、きっと極寒の氷河期が待っているのだろう。
それでも、進む。
芸をして生きるしかないゲサク、今日を楽しく生きるキョウコと共に。
ええ加減が、そんな人間の生きる覚悟に変わるようなラストで話は締められていました。

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コメント

SAISEI様

つぼさかさんが出演されてたんですね。

現状、私がSAISEIさんとやんさんと並ぶ関西小劇場3大観劇ブロガーと目しているセントさんの観劇ブログでも確認しました。セントさんはかなりの高評価でした。

投稿: KAISEI | 2016年8月24日 (水) 00時36分

>KAISEIさん

つぼさかさん目当てと、北村想さんの奇抜な脚本も経験しておこうと思って。
なかなか、衝撃を受ける作品でした。そして、つぼさかさんもいつにも増して、舞台での存在感をしっかりと醸されており。

投稿: SAISEI | 2016年8月27日 (土) 19時43分

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