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2016年8月 8日 (月)

ピエロどうもありがとうピエロ【努力クラブ】160807

2016年08月07日 アトリエ劇研 (75分)

これまでの作品と同じように、どこか男の彷徨いのロードムービーみたいな感じ。でも、彷徨っているだけだから、結局、どこにも行かないし、そもそも、どこにも向かっていないみたいな閉塞感が漂う。
心地よさを一切感じない作風は独特だろう。

自分を否定する人間が、何とか、そんな自分を肯定しようと、正当化の材料を探し求める。
その材料の一つが、面白さ。
面白さはとても不条理なものだ。正当化するには、ある意味、確立してしまえば完璧なまでに強固だが、中途半端だと脆く揺らぎやすいところもあり、材料として望ましくないような気もする。
でも、それに囚われてしまった人の悲哀を描いているような作品かな。

言われたことをきちんと出来ず、上司に叱られる男。でも、自分では悪いと思っておらず、生返事をしてその場を凌ぐだけ。男のせいで迷惑がかかったという街の人に、上司と謝罪しに行くが、その街の人は何も迷惑を受けていないし、クレームも入れていないと言うのだから、男が悪くないと思っていることもあながち間違いでは無い。それでも、とにかく謝る。許してもらわないといけないから。
後輩は、男に怒られやすい空気を作ってるからだと責めてくるが、この後輩のように、自分勝手な不満を、誰かれ構わず、平気で文句つけるほどの図太さは無い。
上司にはどうしようもない奴だと罵られ、後輩からも馬鹿にされ、何でか知らないが、失敗ばかりしている風になってしまう。自分のやばさは十分分かっているつもりだ。笑うことも忘れてしまうくらいに辛い。
彼女はそんな男にただ甘い言葉をかけて、ベタベタしながら慰める。そして、息抜きにサーカスに誘う。

サーカスでは、玉乗り師や綱渡り師や猛獣使いがいた。まあ、普通だった。でも、ピエロは面白かった。誰も笑っていないのに、男だけが大ウケして大笑い。
街中で、男は冗談の世界とかいう怪しいカルチャースクールに勧誘される。辛いあなたに、この怪しさが救いになるかも。言葉巧みに誘われ、体験入学。
先生に腹を掴まれる。痛い。面白くないかと聞かれる。ここでの冗談は暴力らしい。殴られて、生徒は笑っている。怖い。男は、逃げ出す。
家に戻って、男は彼女に別れを切り出す。ピエロになろうと決めた。だって、ピエロはインタビュー記事で語っていた。いじめられて、失敗ばかりだった。でも、それがおかしくて笑ってもらえるようになった。生きる価値を見出して、ピエロに自然になったと。
だから、自分もおかしくなる。笑ってもらう。別れるときっと面白いから。

男は、再び冗談の世界に。カルチャースクールではなく、秘密結社であることが先生から伝えられる。世界を冗談で面白くするらしい。
詳細を知るために、冗談の世界クルーズに出掛ける。
ダンボール箱を潰す仕事をする若者。ダンボール箱を偉そうに投げて渡す上司。大丈夫かという怒鳴り声に、はいと返事する若者。若者はそのうち、ダンボール箱を無視する。上司が怒鳴りつけると、若者はキレてダンボール箱で上司を殴りつける。
しつこいナンパをする男。最初は礼儀正しく。ダメだったら、ちょっとチャラく。でも、しつこ過ぎることに変わりは無い。思いっきり女性からビンタされる。
どちらも大笑い。
何となく、男は冗談の世界の考えを理解する。
男は、ここのことは一切、口にしないで、面白いことを世の中でしてと送り出される。
男は路上でいつもクイズを出してくる男と出会う。いつもはいいですと拒絶するのだが、受けてみることにする。
どうですか。男は答える。何かムシャクシャする。
正解。まさか、正解が出るとは。クイズ男は、難問を作り出す会に所属していた頃、対決したデカルトだかよくわからない会の連中に敗れる。その時に最後に作った難問。
クイズ男は男にピコピコハンマーを渡す。

サーカスは大盛況。
特にピエロの人気が凄い。もちろん、面白いから。
玉乗り師も綱渡り師も面白いピエロを持ち上げる。
追加インタビューの取材も。自分には面白いことしか出来ないからと答えるピエロ。
しかし、記者はピエロの顔色の悪さを見抜く。いつの間にか、自分を追い込んで面白くなろうとしている。傷心のピエロ。気付けば海を眺めていたくらいに病んでいる。
自分は面白くない。もう、ピエロを辞めたい。
ピエロはサーカスの舞台で、ただ暴れ回る。膝を打ち、悶え苦しみ、ただそれだけ。
団長に叱られるが、次は大丈夫だと誤魔化す。

ピエロは馴染みのうどん屋へ。
大将とくだらない冗談を言い合って笑い合う。全然、面白くないくせに、人気なんだってなど、口の悪いことを言ってくる大将。
気に病み始めるピエロ。
女性店員が面白いですよとフォローを入れる。その優しさに甘えて、セックスをせがむが、そんな人じゃないとたしなめられる。
うどんをズルズル食べていたら、面会の客が。
イライラしながら、ピエロが向かうと、そこにはピコピコハンマーを手にした男がいた。
自分もポンコツ人間で、何をやってもうまくいかない。失敗ばかりだった。でも、ピエロさんのおかげでそれを面白いことだと捉えられるようになったと感謝の気持ちを述べてくる。
ピエロは、自分はポンコツじゃない。面白くもない。ピエロも辞めたい。帰ってくれと言い放つ。
そんなピエロを男はピコピコハンマーで殴りつける。
冗談だから。駆けつけた団員に、こんなの冗談じゃないと言われ、男は逃げ出す。
ピエロは、ピコピコハンマーで殴られるという不条理なことをされたことで、真のピエロになったと、現れた巨大ピエロに認められて、たくさんのピエロたちと共にピエロの国へと旅立つ。
男は逃亡する中、こんなはずではなかったと、ピコピコハンマーで自決する。

本当にこんなはずではなかった。
男は、上司に呼び出される。抵抗するが、後輩が必死に取り押さえる。
どうしてあんなことをしたのか。
上司は問いただす。そして、続ける。
いつか何かをすると思っていた。だから、俺は準備をしていた。ピエロでよかったのか。本当は俺じゃなかったのか。
男は、ただただ涙を流して謝罪する。
謝るのは俺じゃない。そう言い放って、上司は去って行く。
一人、取り残された男は、ピエロたちに取り込まれて殺される。

男は、最後はピエロを殴って、意味深に終わることにするつもりだ。
冗談の世界に向かい、そこにある、伝説のピコピコハンマーを抜き取り、ピエロの下へ。
男はピコピコハンマーを振りかざし、ピエロではなく、自分を叩く。面白い顔をして。
ピエロは、面白い顔を止めさせようとする。
何度も、このピコピコハンマーで殴られて、いったい何なのか。メタファーなのか。自分の存在もそうなのか。
ピエロは男を責め立てるが、男は何も変わらず、終わりを迎える。

男の狂気を秘めた表情に、冒頭から気味悪さを感じてスタート。
話の真意は、よく分からない。
男とピエロ。ピエロは、不条理なことを受けながら、真の面白さを追求する悩める演劇人。男は、偽りの面白さを誇示して、演劇に攻撃を仕掛けてくる不条理な存在。ピコピコハンマーは、その傷つけてくる、そして、頑張る気を低減させるような言葉たち。そんなメタファー作品として観てもよさそうだ。
男の脳内世界を描いたようなパターンや、男とピエロが時空間を交錯して描いた同一存在みたいなパターンでもいけそうだ。
観方は色々とあるが、観たままならば、表と裏がある人間。その裏の悲哀を、表を表現しながら滲み出させてみようみたいな感じかな。

ふてぶてしい男の態度の裏には、どうしようもない自分への不信、否定が見え隠れする。自分を馬鹿にする上司や後輩への怒りや恨み。悪いことをしていないけど、謝っている。腹が立つけど、言うことをきいているし、相手を責めたりもしない。そんなことで、自分は良き人間だと無理矢理、正当化しているよう。
こういう人間は、何か鬱積した負のエネルギーを漏らしてしまっているのだろうか。
ダメな方に向かってしまうだめんずに好かれているが、その愛は男自身では無く、そんな不幸を背負っているような男の匂いに引き寄せられているだけみたい。
そして、そんな負のエネルギーが暴力となって暴発し、世の中が面白くなればいいのにみたいな愉快犯的なおかしな人たちにいいように弄ばれる。

それは、ピエロも同じ。陽気な振る舞いの中に、自分はこれしか出来ないという卑下や、玉乗り師や綱渡り師への妬みが見られる。自分は面白いからというのが、正当化の材料だろう。
ピエロに生きる価値を見出したのは、過去のこと。それも逃げてのことだったので、もう、その有効性は時と共に薄れてしまったかのようだ。自分に向けられていた好意は、やがて無関心へと変わっていく。というか、向けられていた好意も、ピエロ自身では無く、そんな面白さを醸せる、文字通りのピエロに寄せていたものだったみたい。

自己否定や正当化みたいなところは、男もピエロも一緒みたい。
ピエロは、そんな自分への否定を、面白さで自分を覆うことで、肯定へと結びつけ、そんな自分を正当化出来るようになった。でも、その面白さが薄れていくと、その正当化は揺らぎ、また自己否定の葛藤の中、苦しむ。
男は、良い自分を作るのに限界を感じたのか、もう、この手段では否定する、能力の無い自分を肯定できなくなったみたいだ。その救いをピエロに求める。面白ければ、それでいい。その安易な、人に委ねた逃げは、その面白さを生み出すために、暴力を利用することを考え出す。
その結果、起こった悲劇みたいな感じだろうか。

男とピエロは同じような感じなのだが、結局、自分を肯定するための努力の道が違うみたいだ。
行き着いた先、いわば、男は犯罪者で、ピエロは、身を削って、面白くあろうとする悩めるピエロとなっている。
世は不条理で、そんな偽りの面白さを追求する男が、ピエロを攻撃してくる。周囲もそれを煽ったりする。
ピエロはダメージを受ける。
それでも、ピエロはピエロでいるしかないから、同じようなピエロたちで集まって、巨大なピエロの下で、真の面白さを追求し続ける。
そんな、出口が見出せないのだけど、まあ未来に光はあるのかなといった漠然とした空気で話は締められる。

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コメント

SAISEI様

結局行けずに残念。。まさか平日が完売するとは思いませんでした。

私が立命館大学月光斜のエースと思っている安藤ムツキさんも出演されてたみたいですし。本当に残念。。

投稿: KAISEI | 2016年8月12日 (金) 18時36分

>KAISEIさん

私の観た回も、当日券でたくさん来られて、最後の方は床座りになっていましたね。椅子、無くなったのかな。

安藤さんは街の人役で、自然体の演技でしたね。
今回は大石英史さんはじめ、男優陣の力の方が際立っていたかな。

投稿: SAISEI | 2016年8月13日 (土) 12時09分

SAISEIさん

それはそうでしょう(笑) 大石さんに酒井さん、佐々木さんに丸山さんと実力者が。女性はキタノさんですか。熊谷さんも名前は見たことが。。

いや劇団月光斜の方あんまり外に出てない感じがしてて。それでです(笑)

安藤さん声の出し方良かったでしょう?

投稿: KAISEI | 2016年8月13日 (土) 17時20分

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