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2016年8月15日 (月)

うちの犬はサイコロを振るのをやめた【ポップンマッシュルームチキン野郎】160814

2016年08月14日 HEP HALL (120分)

噂では、かなり毒っ気があって、おふざけもけっこうきついということを聞いていたので、あまり好みじゃないかと敬遠する予定でしたが、せっかく大阪に来られているし、観劇日程にも少し余裕があるので、足を運んでみる。
素晴らしい作品でした。そして、素晴らしい劇団だと、すっかり虜になってしまいました。
今は、もう観逃さなかったことへの安堵でいっぱい。

開場前に15分ぐらいの短編作品がありますが、これが既にブラック。ネズミさんとか出てきて、やばいんじゃないかということをされます。
ちなみに、この短編が終わればすぐに上演が始まるので、それまでにトイレに行っておくように、開演してからトイレに行かれる方が多いと注意を促されていましたが、これは私からすれば、劇団側が悪いんじゃないかな。こんな面白い作品を見せておいて、途中でトイレに行けというのが無理な話。最後まで観てしまいますよ。私も結局、トイレに行けず、我慢しましたもの。

本作品も、随所に毒のある部分が。キャラも濃く、相当なおふざけもたくさん。噂は噂どおりでした。
でも、その毒やおふざけの芯に、きちんとしたものが込められているのでしょう。
観終えて、感動。歴史や世相を揶揄しているようなところも、本当の平和、幸せへの祈りがあるからこそなのだということが深く感じられる話となっていました。

<以下、あらすじがネタバレしますので、ご注意願います。既に行われた東京公演を観られた多数の方が、詳細を記されている記事がたくさんありますので、白字にはしていません。大阪公演は火曜日まで。お薦め>

1945年。満州の首都、新京。
独立を目指した活動をする父の度重なる引っ越しや、言葉の壁で地元の中国の子供達とは仲良くなれず、友達のいないウェイライ。
そんなウェイライは、犬のゴルバチョフと知り合う。中国だから何でもありなのか、ゴルバチョフは二本足で歩き、人と普通に話す。それでも、ウェイライは、何も気にすることなく、家族と共に、楽しい日々を過ごす。
しかし、ある日、関東軍の隊長がやって来て、一家を皆殺しにする。ゴルバチョフは、実験体として731部隊の研究施設へ連れて行かれる。
手術を受けたゴルバチョフは、食事をすると未来が見えるという特殊能力を得る。隊長は、この能力を大日本帝国の勝利へと活かすつもりのようだ。
しかし、ゴルバチョフは、そんなことに素直に従おうとしない。
同じように手術を受けた仲間たち。
軍人の栄養補給、軍事施設への材料となるのか、栄養豊富な卵と鋼鉄の卵を産むコケコ。
負傷した兵隊たちを再生して再び戦地に送れるようにとの研究なのか、トカゲにされた男。
戦う兵隊たちの癒しなのか、マッサージチェアとなる男。
特攻を拒否して収容された曹長と部下たちもいる。体力があり普通の拷問が効かないので、精神的なダメージを与えている様子。
ソビエトの空爆。
研究施設が爆撃される中、ゴルバチョフたちは、ゼロ戦で日本へと向かう。
コケコの鳥だからというだけでの危なっかしい運転。曹長の敵の戦闘機に生身でぶつかっていく大胆な抵抗。
敵の戦闘機に取り囲まれるが、ゴルバチョフの未来を見る力で雷雲の中へ潜り込み、無事に日本に帰還。
終戦を迎え、日本は敗戦する。

食うのもままならず、荒んだ日々を送るゴルバチョフたち。まあ、ゴルバチョフは、食べて、自分の能力が発揮されるのが苦しいのか、酒ばかり飲んでいるが。
そんなある日、ゴルバチョフは、ウェイライの面影がある少女と出会う。名前はシヅ子。
おかしな能力を持ち、犬なのに喋れる自分を責めるゴルバチョフを、シヅ子は、そんなこと何もおかしくない、みんな違って当たり前だと元気づけてくれる。シヅ子は、戦争の空襲で左目の視力を失っている。脳には未だ破片が残っているらしい。それでも、シヅ子は、叔父の経営するキャバレーで働きながら、大好きな踊りを毎日、必死に頑張って練習している。
行くところが無いなら、うちに来れば。そんなシヅ子の言葉に甘えて、ゴルバチョフたちはお世話になることに。
優しいオーナー、シヅ子の叔父。
無茶苦茶なアドリブで舞台の空気をおかしくしてしまうのが玉に傷だが、実力派ダンサーのカエサル。
そのカエサルと舞台での相方、美貌と踊りの実力を兼ね備えた看板女優のダンサー、クレオパトラ。
クレオパトラに憧れてダンサー目指すが、食べてばかりなので、すっかりぽっちゃりになってしまい、すぐに体力がなくなるマリリン。
同じく、クレオパトラと同じ舞台に立つためにキャバレーで働くアウグストゥス。
そのアウグストゥスに報われぬ、禁断の同性愛の想いを寄せる雪之丞。
やたら日本語が達者で、文化にも詳しい、いまいちリズム感の無い黒人兄弟。
そして、いつも懸命に明るく、夢を追いかけるシヅ子。
ゴルバチョフたちは楽しい日々を過ごす。
マッサージチェアなどは、店の椅子と結婚にまで至り、幸せを掴む。
ゴルバチョフは、あのウェイライたち家族と一緒に暮らしていた幸せな日々を思い起こす。

キャバレーは客入りも悪く、借金まみれ。
ゴルバチョフは、少しでも役に立ちたいと、曹長の下へ向かう。今はあの吉田茂と仲良く、野球拳をして遊ぶくらいに、すっかり偉くなっているようだ。
キャバレーにさらに、苦難が降りかかる。
クレオパトラが、辞めることに。
皆は、クレオパトラがいなくなれば、ショーが出来ないと止めるが、彼女の意志は変わらなかった。夢見て、ダンサーを目指したが、結局はこんなキャバレーで踊る程度にしかなれなかったことで諦めの気持ちを抱くようになったようだ。
かつての恋仲だったカエサルは、素直に自分の想いを伝えられない。硫黄島の激戦地に送られていたカエサル。生きて戻って来れたのは、待っている人がいるという希望だけだった。
でも、それはかつての話。互いに自分の道を歩むしかないと、クレオパトラに別れを告げる。クレオパトラは、キャバレーを去って行った。

ゴルバチョフはお願いしていた吉田茂の取り計らいで、マッカーサーがキャバレーにやって来ることになった。
でも、ショーをどうするか。
シヅ子がそのヒロインに抜擢される。しかし、シヅ子は、その右目の視力も失おうとしていた。
隠して練習に励むシヅ子だったが、その事実はすぐに明るみになる。見えないから、他の人と合わせることが出来ない。
ゴルバチョフは自分の能力を使う。未来を読んで、他の人の動き全てが分かっていれば、それに合わせて踊ることが出来るはず。
ショーが始まる。
シヅ子は完璧に踊る。さらにはクレオパトラも戻って来て、最高の舞台となる。
その頃、外ではゴルバチョフが、ある男と戦っていた。関東軍の隊長。自分から全てを奪った男。あの時の爆撃で左腕を失ったみたいだ。
大日本帝国が敗れたのは、お前たちが協力しなかったからだと発砲してくる。しかし、そんな隊長も神の裁きか雷にうたれて死ぬ。未来を知るゴルバチョフにとって、雷が落ちる場所に隊長を誘導することは容易なことだ。
キャバレーからは拍手喝采の声が聞こえてくる。
突然、ゴルバチョフの頭の中に何者かが話しかけてくる。
これまでに、ゴルバチョフが未来を読む力を使った時に、必ず現れていた男の幻影。
初めて話しかけてきた。
もう、これ以上は見ない方がいい。
シヅ子は、この後、視力を失う。そして、脳の破片は彼女の体を動かないものとしてしまう。
63号室。男はその言葉を残して、消えてしまう。

ゴルバチョフが気付くと、目の前に隊長がいた。手術を受けた自分に、大日本帝国のために働けと迫ってくる。
今まで見たことは夢だったのか。
ゴルバチョフは、63号室を訪ねる。
手足を切断され、栄養供給のチューブに繋がれた男がいる。
ゴルバチョフと同じ手術を受けているようだ。
これまでのゴルバチョフが見た世界は、能力を使って計算されて生み出された産物。未来の可能性の一つ。本当は、時間はほとんど経っていない。
男は手術を受けてまだ1週間足らず。その間に500年以上の未来の時間を頭の中で過ごしてきたようだ。
溥儀がやって来る。清王朝の復活、大日本帝国から独立する未来を男からずっと語られてきた。その希望にすがりつく溥儀。しかし、そんな未来は、全部、男の嘘。大日本帝国は敗れ、清王朝は復活することもない。溥儀は皇帝に復活することもなく、ただ普通の人として、残された人生を過ごすことになる。崩れ落ちる溥儀。
男はその溥儀の銃を奪い、自分を撃ち殺してくれとゴルバチョフに懇願する。
ゴルバチョフは、銃を奪い、男のこめかみに向ける。
男は、自分を殺した後、ゴルバチョフも死んだ方がいいと忠告する。地獄を味あわせたくないから。
しかし、ゴルバチョフはすることがあると言う。男は、ゴルバチョフが何をしようとしているのかを理解する。自分たちの力は、未来を変えられるのだろうか。もし、生まれ変われるなら、幸せな時代だったらいい。発砲音と共に、男は安楽の死の時を迎える。
隊長がやって来る。ゴルバチョフは、その隊長を撃ち殺す。
そして、曹長の下へ。ゴルバチョフの見た世界は、自分が力で見た未来の世界だから、現実には曹長とは初めて会う。でも、何かが通じ合ったようで、曹長はゴルバチョフを仲間だと見なす。そして、ゼロ戦で日本まで、ゴルバチョフたちは向かう。

空襲で街が次々に破壊される日本。
ゴルバチョフは、シヅ子を見つける。そして、爆撃から彼女を救う。
息絶え絶えのゴルバチョフ。シヅ子が心配して駆け寄ってくる。もちろん、ゴルバチョフのことは知らない。
あの未来の世界で出会ったシヅ子と同じく、明るく優しく、懸命に生きようとしている。叔父のところへ行きなさい。これで計算通りだ。
別れ際、ゴルバチョフは、シヅ子に食べ物が欲しいと言い、饅頭をもらう。
見たいものがあるから。
饅頭を口にして、ゴルバチョフは、未来を見る。
キャバレーの華やかなショー。
みんながいる。
カエサルとクレオパトラは夫婦のように息の合った踊りを披露している。
あいつらも、ダンサーたちも、みんな盛り上がっている。
そして、そんな舞台上でひときわ輝く女性。シヅ子だ。
ゴルバチョフは、そのまま眠りにつく。
ショーが終わり、休憩するシヅ子。
ワンッ。大きな犬の鳴き声がする。シヅ子は、笑顔を浮かべて、犬の方へと向かう。

酷い話ではある。
やはり、戦争は何もかもを狂わせる。そんな戦争の狂気に憑りつかれてしまった隊長。ウェイライはきっと未来。未来を自らの手で消してしまった彼に、未来は無くなったのでしょう。ゴルバチョフの描く未来の中で殺され、現実には終戦前に殺される。
この終戦前に、ゴルバチョフが隊長という戦争の狂気に終止符を打ったことが、未来を変えたのかな。いつまでも、彼のような戦争の思念の塊が、未来にもあれば、またいつの日か、戦争が始まってしまうと。溥儀を殺さなかったのは、彼が戦争の罪悪を未来に語り継ぐことが出来る存在だったからなのかもしれません。
その変わった未来で、ゴルバチョフは死んで、生まれ変わる。同じ手術を受けた男が、いつか幸せな時代に生まれ変わりたいと願ったように。
最後は、ゴルバチョフの描く未来では無く、現実に訪れた未来の中で、シヅ子と共に、生まれ変わりの奇跡を生み出したゴルバチョフがいることを想像させるようなシーンで締められています。
酷い話ですが、その中から、心温まるものを見つけ出そうと創り上げられたような話。それが、いつの日か、皆の平和や幸せに結びつくことを信じているように感じます。

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コメント

SAISEI様

私も最初は行くつもりは無かったのですが幾つかの理由で先週金曜日くらいに行くことにして予約。

感想は次に書くとして前半気になった台詞を

細かいことなんですが「すべからく・・・」を「すべて」の意味で使っておられましたね。「すべからく」は多くは「須く・・・べし」の形で使い「・・・しなければならない」を表し「全て」の意味はありません。文筆家でも多く誤用が見られますが。。

もう1つは「当局が政府を襲撃」という台詞がありましたかね? (?_?)のままなんですが。。どういうこと、って。聞き間違いかな?

投稿: KAISEI | 2016年8月16日 (火) 18時25分

SAISEI様

観に行った理由の1つは劇団最高傑作とあったからです。行ったら7階まで長蛇の列。こんなん初めてか2回目。吃驚、ただそのせいもあり開演前ショーは全部観れず。もう少し手際よくできなかったものか。。30分前に開場で20分前から開演前ショーとは。。劇団側も予想外の観客数だったようだが。考えんとね。

作品については正直舞台の背景となっている歴史については笑えんかった。731部隊とかちょっとねえ。会場の観客もその辺では笑いは起きなかったから同じ思いだったのかな。。観劇客は年齢層高いから。中国の悪いところネタも同じ。

とはいえよく鍛えられた劇団ですよね。小ネタなんかは面白かったし間の取り方も良かった。

役者さんは美津乃あわさんくらいしか観たことはないかな。。飾ってあった花に渡辺徹、榊原郁恵とあったのでそんな有名な劇団かと思ったら出演者の渡辺裕太さんが御子息なんですね。

印象に残った役者さん

●岡田達也さん。一人といったらこの方。出てきはった瞬間違うな、と。相変わらず上演前に一切当日パンフレットを観ないので先入感なく観れて良いです。キャラメルボックス所属なんですね。

●加藤慎吾さん。メイクでしたが表情の豊かさが感じられた。上手い方なんでしょうね。

●吹原幸太さん。何か雰囲気が好き(笑) さすが劇団主宰(笑)

●CR岡本物語さん。途中何か雰囲気が劇団壱劇屋の大熊さんに似てるなあ、と思ってから何かツボに(笑)

投稿: KAISEI | 2016年8月16日 (火) 23時39分

SAISEI様

当日パンフレットッテありました?

投稿: KAISEI | 2016年8月19日 (金) 06時13分

>KAISEIさん

当日チラシは、役名を記載した簡単なものがありました。
ここは笑えん冗談も多く、琴線に触れて、一挙に嫌悪感を抱くなんてこともこれからありそうですね。
(ちなみに、琴線に触れるって、こういった悪い意味では使わないみたいですね。使いやすいから、私はいつもこの使い方をしてしまいますが・・・)
DVDを一本購入して、鑑賞しましたが、やはり同じ感じですよ。
まあ、この点にはあまり目くじら立てずに、練られた話とエンタメの魅力に注目していこうかなと。

投稿: SAISEI | 2016年8月23日 (火) 14時48分

SAISEI様

SAISEIさんなら私の言いたいことはご理解いただけてると思いますが(笑)

力はホンマにあらはる劇団ですよね。それはわかりました。

投稿: KAISEI | 2016年8月24日 (水) 01時19分

SAISEIさん

「琴線に触れる」

SAISEIさんほどの方が言葉の使い方を間違われるなんて。。(笑)

今調べたら誤用で使ってる人が正しく使ってる人に迫っています(笑)

投稿: KAISEI | 2016年8月24日 (水) 01時23分

SAISEI様

SAISEIさんの例文だと「癇にさわる」が正しい使い方ですかね。

「怒る」に繋げはる人もやはるみたいで(笑) 「逆鱗にふれる」と混同されてますね(笑)

投稿: KAISEI | 2016年8月25日 (木) 14時46分

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