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2016年8月 3日 (水)

Be honest【HPF高校演劇祭 工芸高等学校】160802

2016年08月02日 シアトリカル應典院 (55分)

たたみ込むかのような、究極のハッピーエンドのラストに、唖然としながらも、自然に笑みが溢れる。
ここまでやれば、ほがらかな気持ちになって、何か嬉しくなってくる。自分の心が浄化されていくような美しさすら感じさせる力のある作品だった。

悩みや苦しみを抱いてしまって、自分を否定し、人を悪意でしか見れなくなってしまうことがある。まあ、悪魔みたいに、自己中心的に、他人を思いやれない考えに囚われてしまうのだと思う。
悪魔と言っても、本当の悪魔になどはなかなかなれないようで、そんな自分に嫌気がさして、傷ついてしまうみたいだ。
でも、そんな時に、周囲を見渡すと、家族や友達、どこかの誰かが、自分に想いを寄せてくれていて、手を差し伸べようとしてくれていることを知る。ずっと見てくれていた、見守ってくれていた。そんな想いを受け取ることで、傷ついた自分の心が癒されていく。
自分の周りにはいつだって天使がいる。
人は弱いから、すぐにへこたれてしまうと、自分はダメだと落ち込み、相手を傷つけようとしてしまう。でも、そんな自分を包み込んで癒してくれる想いが、本当は溢れている。
だから、そんな想いを向けてくれる人と、結ばれて、豊かな、そして幸せに生きるために歩んでいけばいい。
想われていることを、きちんと受け止められた人の強さ。今度は人を同じように想って、優しさを与えることが出来る。
そんな人の想いの力を描いているように思う。

悩みや苦しみなどを扱っているが、よくある天使や悪魔キャラを使用したりして、全体的にはコミカルで明るい空気となっている。音楽もちょっと、そんな楽しさを引き出すようなものだったように感じる。
特徴的なのは、会話やシーン転換の間合いがじっくりと置かれている印象がある。丁寧であるのだが、その分、若干、長い感覚もあり、短時間作品なので、ある意味、大胆だなあと思っていた。
ラスト、たたみかけるようなハッピーエンドの連続となる。下手すると、安直さや早急さを感じさせ、作品の魅力を軽減してしまうようなぐらい。
でも、これが、観ている間に、その時間の感覚に慣れさせられていたのか、実に巧妙に、計算されているのか、自然に溶け込んで観ることができ、ハッピーエンドを素直に受け止め、幸せな気分を得ることが出来たように感じる。

学校を休んで、もう1週間。
ふうは部屋に引きこもっている。
親友のももが心配して桃缶を土産に訪ねて来て、暗い空気を吹き飛ばそうと明るく振る舞ってくれるが、それを無視して素っ気なく対応し、傷つけるようなことを言って追い返してしまう。今はももを悪意でしか見れなくなってしまっているふう。
ももは親友だと思っていたのにと泣きながら、去って行った。
親友。だから、こんなことになったとも言える。
ももから好きな人がいると相談を受けた。その人の名前が吉野。自分が前から好きな先輩だった。
私も吉野先輩が好きだとは言えなかった。
進路のこともある。美大に行きたい。でも、母はお金の問題で厳しいと言う。父が蒸発しているので、家計の事情はよく分かっている。
何か、全てが終わった。悩みだらけだ。頭の中で色々な声が飛び交う。食べ物も喉を通らない。

そんなふうを、ここしばらく見守っている者がいる。正確には、判断能力が鈍った人間を救うために、天界が派遣した天使と悪魔。
ももから好きな人の告白をされた時、天使は言っていいことと悪いことがあり、今は後者だと、親友のももを思いやることを薦める。
悪魔は自分の幸せのために、もっと自己中でいいと言う。
天使は反論する。そんなの本当の幸せじゃない。友達は大事だ。自分はブログに色々な想いを書き綴っているが、毎日、コメントをくれる人間がいる。その人間は、友達だからと、いつも励ましてくれる。それで、悩みに潰されそうになっても、頑張ることが出来るのだと。
決めるのは自分だ。ふうの人生なのだから。そして、ふうは自分のことを告白しない選択をした。
そんな天使と悪魔。
悪魔は、どうも天使といると、その精気にやられて、疲れが溜まるみたい。いわゆる浄化作用というものだろう。
悪魔はしばらく魔界で休むことになる。
そして、ふうに自分のことを決めさせる手段を提案する。

悪魔は魔界に一時、戻る。
弟のラッピがその寂しさからか、兄と姉の人形を作って、遊んでいる。本当の兄の帰宅を喜ぶが、すぐに仕事に戻ることを知り、不機嫌に。昔みたいに、もっともっと遊んで欲しい、かまって欲しいみたいだ。まだ、子供だから。
ラッピは、兄が天使と仕事していることを両親から聞いている。天使は強いので、悪魔の兄の体が心配。でも、兄は天使もけっこういい奴で、互いに理解し合いながら仕事するから心配ないと言う。そして、休みのしばらくの間だけだが、ラッピと遊び、時間を過ごす。

ふうの部屋に母が入って来る。
ももとのこと知っているみたい。親友が恋のライバルなんて、いい青春を送っていると。
母はふうにコンビニへ買い物を頼む。
少し、気が楽になったふうは外出する。
コンビニの帰り道、ふうは怪しい男に話しかけられる。
父。もう、しばらく会っていないので、定かではない。一応、母の名前を聞いたりして確認。
父は困ったことはないかと聞いてくる。進路のこと。
父はふうの未来のためにずっと貯金をしていたらしい。
そのお金を使えばいい。必要な額は、母から聞いているみたいだ。
ふうは、自分にそんな大事なお金を使う価値は無いと言うが、父はふうのためにやってきたことだと。
ふうと父は家に一緒に戻る。父は母には会えないと言うが、家族だからとふうが言うと、聞き入れてくれたみたい。

ももはあれからずっと毎日、通学の途中でふうを待っている。
弱っているふうを傷つけてしまったことを謝りたくて。
そこで、毎日出会う吉野先輩。毎日、話をする間に少し親しくなれた。吉野先輩は、待っている友人のことを聞くと、いつでも力になるからと励ましてくれる。
ふうがやって来た。
二人は出会うなり、謝り合う。頭がガッチンコ。
笑い合い、それでお終い。友達だから。
そんなことより、学校に間に合わない。ダッシュで二人は駆け出す。

天使は悪魔を待っている。
自分の精気のせいで、悪魔を苦しめたことを悔いている。
そんなことを書いてブログ更新。
悪魔が戻って来て、どうなるか。次の更新が楽しみだというコメントが来た。
悪魔が戻って来る。
ふうとももが、二人で走って学校に向かう姿。
正直、もう、ふうはダメかと思っていた。最悪、死んでしまい、天界から自分たちは守れなかった罰を受けることになるだろうと。
人間は弱い。助けが必要だ。その助けが、ふうにはあったみたいだ。
とりあえず、これで一件落着。任務完了でお役目ごめんとなる。
嬉しいはずなのだが、なぜか元気が無くなっている天使を見て、悪魔はさあ、またお互い頑張って仕事だと励ます。

ふうはももに、自分の気持ち告白する。
私も吉野先輩が好き。ももが好きになる前からずっと。
ももは驚くが、二人はライバルだと、受け入れ合う。
でも、本当は、ももは、ふうに恋のキューピッドになってもらうつもりだったらしい。
小学校の時、自分の恋を結びつけてくれたから。
すっかり忘れていたが、あの時のことを思い出して、二人は大笑い。
まあ、改めてよろしくとふざけながらも、本当の自分の気持ちをぶつけ合い、仲直り。
吉野先輩が通りかかる。
ももに気軽に声をかけて、去って行く。
ふうは呆然としている。ここでふうを待っている間に、いつの間にか親しくなったのだとももは、ふうを気遣い、言い訳をする。
違う。私の好きな吉野先輩はあの人じゃない。
じゃあ、ライバルじゃないんだ。以前のまま、単なる親友同士だと喜び合う。そして、ふうはすぐにももを連れて、吉野先輩を追いかける。もちろん、恋のキューピッドになるために。

天使はブログを更新。
コメントはくるだろうか。励ましの言葉が欲しい。
悪魔への想い。でも、種族の違いの壁はあまりにも大きかった。それに、自分の力のせいで、傍にもいられない。
そんなことをブログに書いているのを悪魔に見つかる。
それどころか、悪魔はずっと天使のブログを読んでいたらしい。
終わった。全てを知られてしまった。力が抜けて倒れ込む天使を悪魔はからかう。
開き直って、天使は、悪魔が好きなことを認める。
仕事が終わったのに、どうしてここへ来たのか尋ねる。仕事以外で会いたいと思ったから。真顔で答えた後、悪魔は嘘だと、また天使をからかう。
天使は怒って、悪魔を追いかけ回す。

下界ではふうが母に見送られて通学。隣には通勤する父の姿も。
ももは吉野先輩と手を繋いで。ももだって、本当のお目当ての人に向かって頑張るつもり。
天界では、相変わらず天使と悪魔が追いかけっこ。
ずっと見守ってくれている人がいることを知って、どうしようもない悩み苦しみから解放されて、前へ歩めるようになったふう。誰かが、人を想うことで繋がる力の大きさ。そんな姿をずっと見ていた天使と悪魔だから、きっと大きな壁を乗り越えて、結ばれる日が来るのかもしれない。

天使は悪魔に純粋な恋心を寄せている。でも、種族の差や、自分の力のために悪魔を傷つけてしまったり、分かち合えないことに悩む。そんな、天使を友達だからと励ましてくれる人間がいる。
悪魔は、天使の気持ちを知ってか知らずか、素直になれずに生意気な態度で接する。でも、天使が自分のことを想ってくれる優しい、いい奴なのだとは分かっている。そして、きっと出来ることならば、一緒の時間を過ごしたいと思っているようだ。そんな、悪魔のことを慕い、大切に誇りに想ってくれている弟がいる。

ももはふうに、純粋な友情を持って接する。でも、理由は分からないが、自分の力足らずなのか、避けられていることに悩む。そんなももを、いつでも力になるよと励ましてくれる吉野先輩がいる。
ふうは、ももの想いを理解している。でも、素直になれず、どうしても悪意で接してしまう。また、前のように親友同士になって、笑い合える仲に戻りたいと思っている。そんなふうのことを、影でいつも見守り、幸せになってくれることを願ってくれている母や父がいる。

といった感じの、パラレルな構図になっているのかな。
一方は恋愛で、もう一方は友情なので、しっくりこないところもあるが、まあ人の想いというところは共通かと思う。
様々な悩みや苦しみに囚われてしまい、すっかり荒んで、自分を否定し、人を悪意でしか見れなくなってしまった時に、自分自身や周囲を見渡す。
そこには、いつも自分のことを想ってくれている家族や、向こうだって色々と傷ついているのに純粋な想いをぶつけてくれて、手を差し伸べてくれる友達がいる。
そして、そんな友達にも、その人を支えてくれている誰かがいる。
そんな想いの連鎖は、生きるということを豊かに、幸せにしてくれる大きな力を持つことを伝えているようだ。
この作品も、ラストはあり得ないくらいの究極のハッピーエンドを迎える。
純粋な想いを抱く天使。様々なことで悪意的な捉え方をするようになっても、その想いをきちんと知り、受け止めることが出来る悪魔。
人は弱いから、そんな天使や悪魔のどちらにも揺れ動きながら、生きている。
でも、自分のことを想ってくれる者たちの存在、いつでも見てくれている、見守ってくれているということを知った時、その天使と悪魔は結ばれるように思う。

天使、松澤日葉里さん。正論を言うおばちゃんのような貫録ある姿を見せたかと思えば、少女のような純粋な想いに、それに振り回されてしまう可愛らしい姿を見せる。最後は逆ギレの豪快キャラ。目まぐるしい変化を楽しむ。
悪魔、内見光希さん。特徴的な悪魔キャラをベースに、素直になれない男の幼稚さ、言葉なくとも、あらゆることを把握する懐の大きい大人の姿を同居させた魅力。クールで、内に秘める優しさを毒っ気で覆っているみたい。
ふう、江藤菜津美さん。悩みを抱いて葛藤している空気をしっかりと丁寧に醸す。自分なんてダメだと思ってしまう時に、ほんの少しの周囲からの想いがあれば、また歩みだせる。人は弱いけど、想われていることを知った時の強さ、そこから導かれる人を想う力の強さを感じさせられる。
もも、南希美砂子さん。真摯に真っ直ぐに、優しい想いをぶつける。人を想い続ける、善意で見ることが、必ず、人の心を動かし、それが自分自身の成長にも繋がることを思わせる。
吉野先輩、野中達也さん。何も考えていないくらいに、無邪気に底抜けに明るいキャラ。悩みを吹き飛ばしてしまうような豪快さがある。
母、清水夕那さん。声の質だろうか。どこか、艶めかしく、しっかりとした芯がある。母の広く深い海のような愛情を感じさせる安定感。
父、濱口文弥さん。ヤサ男風で、実直、誠実、真面目をまとめて醸される。滲み出てくるような優しさが印象的。
ラッピ、大原若菜さん。思いのままに。幼き頃は自分の素直な感情が出せていたが、大人になると出せなくなってしまうことがある。そんなことを思い起こさせ、そんな大人のややこしさが、色々な衝突を生み出してしまうこと、そして、そのことを一つ一つ経験して、乗り越えていくことが大人へと成長することだと思わせられるような、幼いキャラ。
もう一人の吉野先輩、浦矢幸見さん。最後の一瞬だけだったから、何とも言えないが、もう一方の吉野先輩とはまるで違う、理論を組み立てて行動を起こすような感じか。

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