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2016年8月

2016年8月29日 (月)

un mask ing【演劇ゆにっと卯号室】160828

2016年08月28日 インディペンデントシアター1st (60分)

最初の数分で、生演奏の効果音を使いながら、マイムで話の全体像を目に焼き付けさす。この時点では、男一人と女二人の修羅場を迎えることぐらいしか分からない。
話が展開する中、社長が事故で意識不明になり、その妻を見舞う、社長の弟夫婦の話ということが分かる。
しかし、社長の弟は兄嫁と不倫、兄嫁は今の仕事が好きでそのために弟を利用している、弟嫁は夫に会社で確固たる地位を築かせたいといった、各々の本心が、剥がされたマスクから剥き出しになっていく様が描かれる。
最初にマイムで見たまま、修羅場だ。
兄嫁のキャリアウーマンの誇り高きプライドを持った高圧的な言動、弟嫁のねちっこく、人の弱いところを突いてくる嫌味な言動。それにただ翻弄されるだけのダメ弟。
そんな構図を面白おかしく見せながら、専業主婦と働く女性の隔たり、一般大衆のニーズとビジネス重視に囚われた会社との隔たりなども絡めて、人間の歪みを浮きあがらせていく。

オチがどうしても早い段階で分かってしまうこと、修羅場を迎えるシーンまでがじわじわといい感じで蓄積されていたのが最後、急であること、心に鈍く響く相手への言葉の攻撃が面白かったのに、結局はプロレスのような描写に行き着いてしまうことが、ちょっとマイナスに感じるところではあるが、冒頭のマイム演出など、観る者の頭にシーンを刻み込み、そこにあった登場人物たちの心情を、心に嫌な感じで刺し込んでくるような感覚は、新鮮な体験であった。

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最悪なきのうともう無いあした【べろべろガンキュウ女】160828

2016年08月28日 芸術創造館 (130分)

この劇団は3回目の観劇で、個性的なリフレインを連続してシーンを繋げて、話を膨らませながら展開するパターンは、少し慣れたものの、やはり難解な意識は残る。
でも、前回ぐらいから、少し、描きたいことがぼんやり見えてきた感じだろうか。
好きやら愛やらに囚われて生きる、もしかしたら生きざるを得ない人間への愛おしさが詰まった話のように感じる。
そして、それが生きる、世界を創る力となることを信じているようだ。
今回の話は、神によって終わりを決められた世界の中で蔓延る、人の好きという気持ちが、終わるはずだった今日から、明日への始まりを導き出した創世記のような印象を受ける。

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2016年8月27日 (土)

夏のランナー【STAR☆JACKS】160826

2016年08月26日 HEP HALL (70分、休憩10分、60分)

絶賛レベルの感想が流れる中、非常に書きにくいですが、私はどうもいまいち感が残ります。
実にすんなりと話が進み、分かりやすさはありますが、あっさりし過ぎで、平坦で起伏の無い流れに身を任せていただけみたいな感じでしょうか。
ところどころ、澱んだりするところで、深くじっくりと想いを馳せてみたり、落ち着いた流れに早く話の展開を見たいともどかしさを感じながら舞台に食いついたり、急激な流れに興奮しながらテンションあがったりとかしながらが、楽しい観劇であり、その感情の起伏に欠けてしまったので、やはり自分の中では盛り上がりに欠けてしまいます。

野球というものがとりなす技でしょうか。
洗練されたとか、爽やかな熱さが舞台にはびこっているのか、いつものような泥臭さやがむしゃらみたいな感覚が自分の中に沸いてこない。
話も戦後日本で、メラメラと奥深い底で燃えているようなエネルギー、力強いたくましさ、綺麗ごとじゃなくて生きていかなきゃならんのだという生々しい生き様が見えてきそうなのだが、どうもそのあたりが感じられず、いわばお上品な感じにすら思えてしまう。
勝手に自分の中で思い描く空気とのギャップがあったようで、終始、感じる違和感を、熱き魂の溢れる芝居で打ち消されそうになりながらも、またその違和感がひょっこりと顔を出してくるみたいな不安定な気分での観劇となった。
そのためか自分の中で心情の蓄積がなされず、最後にそれが解放されて感動して泣けるみたいな状況にならなかったといったところです。

ただ、それだけにけっこう冷静に観客席の周囲も見渡していました。
私のような感覚を抱いた人は恐らくかなり数少ないと思います。
皆さん、熱ある魂のこもった演技に圧巻されながら、そこに潜む想いを感じ取って、涙されていましたから。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

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2016年8月22日 (月)

狼は鎖をもて繋ぐ【東洋企画】160822

2016年08月22日 大阪大学豊中キャンパス学生交流棟前芝生特設舞台 (85分)

屋外の空気、風景が活かされているのか、この重たいテーマを、堅苦しくなく描き、その中で、明確な意志を持って歩むという覚悟が自然に湧き上がる、これからの日本の行く先を見るような高質な作品でした。
こんな作品を創り出してしまう才能なのか、積み重ねた力なのか、強い意志なのか。その作品に込められている、脚本の力、舞台を生み出す技術、演じる役者さん方の膨大な魅力にただただ圧巻。
観終えて、あまりの凄さにため息が出るような見事な作品だったように思います。

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撃鉄の子守唄【劇団ショウダウン】160821

2016年08月21日 HEP HALL (90分、休憩10分、95分)

180分は長いですね。
最近、大丈夫だったのですっかり忘れていました。頸椎ヘルニアの影響で、長時間観劇で右手が痺れることを。2幕後半あたりから、痺れだして、ちょっときつかったです。
長編の群像劇は、恐らく昨年のパイドパイパー以来でしょうか。この作品がどうも私の好みに全くと言っていいくらいに合わなかったので、ここは一人芝居をはじめ、少人数芝居が好みに合うのだろうなあと思い、上演時間の絡みもあって少し躊躇していました。

結果はどうも違うようです。
まあ、一言で言えば、最高の言葉でいいように思います。
1幕は、あのかっこいいガンマンたちの西部劇スタイル。各々の、その銃の弾丸に込める運命を描きながら、この作品の背景にある大いなる謎を見せています。ちょっと三枚目のキャラでコミカルさも醸し、西部劇と言えば、酒場。酒場と言えばショーって感じでエンタメ要素もたっぷり。
そして、2幕。
ワクワクと男のロマン、冒険心を煽る、様々な運命を持つ者たちの旅の物語を楽しみながらのロードムービースタイル。数々の出会いと別れ。裏切りによるどんでん返しを経て、その謎が明かされ、迎えに来る運命の結末に涙する。
そんな感動巨編といったところでしょう。

話の緻密な構成、それを実現する舞台の技術的な側面、そして役者さんの見事な力。これが巧く絡み合って素敵な作品に創り上げられているように思います。
目を惹く役者さんは多数ですが、今回は劇団「劇団」、いわゆるゲキゲキメンバーの方々が、客演なのにどうしてこんなにいいところをかっさらいまくっているのかと思うくらいに、素晴らしいお姿でした。

<感想は上記したので、以下、簡単に自分なりにまとめたあらすじしか記していません。ネタバレになりますので、ご注意ください。白字にはしていません。東京公演が9/1から始まります>

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カゲロウのような夏の日を、シャボン玉にうつる華の燈を【ステラポンテ】160821

2016年08月21日 カフェ+ギャラリー can tutku (90分)

話があっさりし過ぎていて、言葉がちょっと悪いですが幼稚臭いってところはありますが、けっこう好きな感じではあるかな。
ひと夏の思い出。
何か分からないけど、一生懸命な人がいて、その人に巻き込まれるかのようにワイワイとやった時間。もしかしたら、自分がその一生懸命な人だったのかも。
何を得たのか、自分の人生の何かの分岐点になっているのかなっていないのか。でも、不思議とあの時のことを思い起こすと、また頑張らなあかんなとか思える。
そんな時間って、けっこうあって、でも、どこかにいつの間にか隠れてしまって。そんなしみじみと思い起こす時間も無く、日々流れる時間に乗っているだけで精一杯になってしまうんだけど。
そんなノスタルジックな空気を楽しむ、心地いい時間だったように思います。

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2016年8月20日 (土)

「10分間」 2016 ~タイムリープが止まらない~【中野劇団】160820

2016年08月20日 インディペンデントシアター1st (130分)

2010年に拝見した作品。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/10101212-f29c.html
まあ、うろ覚えだけど、色々と変わっているところがあるように思うので、実際はかなり変わっているのでしょう。登場人物も増えているし。
でも、元々それほど感じはしませんでしたが、やはりタイムリープもので感じてしまう、力押しで強引に話を進める違和感が総じて無くなり、スマートになって、より洗練されたこの劇団らしいクレバーな良質な作品となってるように感じます。
時代感も6年前とは違って、少し今風になっているようで、スムーズに惹き込まれる感じです。
新たに盛り込んだためか、一部、はしょった感じで割愛された部分は、DVDで2010年版を観ると、なるほどとなるのではないでしょうか。

感想は一言。
鳥肌立つくらいに笑えて、面白い。
素晴らしいとしか書きようがありません。お見事。

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寿歌【カイテイ舎】160819

2016年08月19日 京都市東山青少年活動センター 創造活動室 (90分)

色々な風に捉えることが出来る要素のオンパレードで、どう想像すればいいのか難解な作品ではあるが、関西弁のノリもあるのか、いい感じでええ加減で、癖のある3人のキャラの魅力も乗じて、楽しい作品であった。
扱っている放射能やら終末の世界は重いのだが、それすら、まあ、こうなったらなったで、今までどおり、前へ進むしかありませんでえといったノリの言葉が聞こえてきそうな感じ。
気負わず、背負わず、身の程をわきまえて。ええ加減でも、自分の心にいつも忠実に生きる。
そんな生き様の果てに、生きる覚悟を見出そうとしているような感覚になります。

<以下、ネタバレしますので、ご注意願います。有名作品であらすじはネットで調べたらたくさん出てくるので、白字にはしていません。公演は日曜日まで>

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2016年8月15日 (月)

アワーベイビー【三好大貴プロデュース】160814

2016年08月14日 インディペンデントシアター1st (70分)

はあ~っ?
全く納得できない、同調できない話にびっくりしました。

と書くと、完全否定的な感想のように見えてしまうのでしょうが、作品としては心震える面白さを感じるものでした。
自分の考えと異なるのは面白くない理由にはなりませんから。空気とか感覚が合わないとかは、その理由になるのでしょうが、この作品というか、4人の役者さんの心情を真摯に込めた、程よく息を抜き、それでも、熱情的な想いが潜む迫力ある丁寧な演技に心惹かれたってところでしょうか。

話としては、彼氏の友人と浮気した女が妊娠する。友人には彼女がいる。そんな男女4人が、お腹の中にいる子供と共に話をするという設定です。
観る者の男女の性差、家族構成、宗教観、ジェンダーとセックスへの捉え方、浮気に対する考え、結婚の意味合い、親になることへの責任の捉え方、同経験の有無などなど、様々な観点で、見方も異なり、この作品で描かれる一つの結論が異なるものであることは当たり前かもしれません。それを否定する必要もありませんし、そんな考え、より良き導き方もあるのだろうということでしょう。
だから、個々のキャラやシーンに関して考えるのは言葉尻をとってしまうような感じで、あまりいいことでは無いような気がします。これをすると幾らでも、いいこと言った、こいつ最低だなとか、キリが無くなってしまいます。
全体として、何を感じるのか。
それは、この作品の場合、命の尊さだと思います。

基本的に上記設定で、会話の中に、ある言葉が一切出てきませんでした。堕胎。この中絶に関しても、色々な観点からの是非があるのでしょうが、ここでは、命ありきで、私たちがどうするかを考え、未来を導こうとした姿を描いたということになると思います。
作品中にも言葉として出てきますが、生まれたらいいわけでもなく、そのまま生きていればいいわけでもない。人を育てるという、愛を与えていかなくてはいけない。それは、生まれる前から、そうであり、生まれた時点で、既に愛されていた状態でなくてはいけない。
これを考えられるのが親なのかとも感じます。
4人は、皆、誰かを愛し、愛される人であると同時に、一つの命を通じて、人の親になろうとして、これからを考えているように思います。
そう、考えることが出来たのは、自分たち自身がきちんと人を愛し、愛されることが出来ているからなのではないかと感じます。
愛を知るから、生まれてくる命に愛が与えられるのを当たり前だと思い、そのために全力を尽くすことが出来る。それが、人の愛の繋がる姿のように見えます。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、月曜日まで>

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うちの犬はサイコロを振るのをやめた【ポップンマッシュルームチキン野郎】160814

2016年08月14日 HEP HALL (120分)

噂では、かなり毒っ気があって、おふざけもけっこうきついということを聞いていたので、あまり好みじゃないかと敬遠する予定でしたが、せっかく大阪に来られているし、観劇日程にも少し余裕があるので、足を運んでみる。
素晴らしい作品でした。そして、素晴らしい劇団だと、すっかり虜になってしまいました。
今は、もう観逃さなかったことへの安堵でいっぱい。

開場前に15分ぐらいの短編作品がありますが、これが既にブラック。ネズミさんとか出てきて、やばいんじゃないかということをされます。
ちなみに、この短編が終わればすぐに上演が始まるので、それまでにトイレに行っておくように、開演してからトイレに行かれる方が多いと注意を促されていましたが、これは私からすれば、劇団側が悪いんじゃないかな。こんな面白い作品を見せておいて、途中でトイレに行けというのが無理な話。最後まで観てしまいますよ。私も結局、トイレに行けず、我慢しましたもの。

本作品も、随所に毒のある部分が。キャラも濃く、相当なおふざけもたくさん。噂は噂どおりでした。
でも、その毒やおふざけの芯に、きちんとしたものが込められているのでしょう。
観終えて、感動。歴史や世相を揶揄しているようなところも、本当の平和、幸せへの祈りがあるからこそなのだということが深く感じられる話となっていました。

<以下、あらすじがネタバレしますので、ご注意願います。既に行われた東京公演を観られた多数の方が、詳細を記されている記事がたくさんありますので、白字にはしていません。大阪公演は火曜日まで。お薦め>

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2016年8月13日 (土)

飛んで散れ -sacrifice pundemic judgement-【crashrush】160812

2016年08月12日 シアターカフェNyan (85分)

石神禿さんを最後に拝見したのは、この時だったかな
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/100802-20ac.html
それからも、拝見したのかもしれませんが、私はこの時の印象が強くて。
自分たちの身体を苛め抜くような激しい演出で、舞台を必死に走り抜く。草魂って感じでしょうか。
この熱さと、それを感じさせるのに十分な、役者さん方の運動量と、心情のこもった真摯な言葉。
定番のヒーロー物だが、一風変わった話の展開に、流れるようなシーン転換のスムーズさで、舞台にしっかりと惹き付けられた作品でした。

ただ、どうして配役表が無いのか。
これだけの立派な作品をもって旗揚げプレ公演と称して顔見せして、12月には続編の形でシアトリカル應典院での公演が決まっているという。
舞台で、各々の魅力を発揮された役者さん方の顔と名前を覚えておきたいというものではないでしょうかね。

倒れてしまいそうなくらいに懸命に身体も心も動かして、観る者の心を打つヒーロー。
洗練された美しさの中に、芯のある純粋な想いを潜ませる婚約者。
悪役に徹し、完全に狂ってるなと、少し怯えを抱かせるくらいに、狂気の雰囲気を醸す博士。
と、この3人は、顔と名前が一致する。
報われぬ想いに葛藤し、その蓄積する憎悪を感じさせながらも、奥深くにある愛も見え隠れする純粋さを醸す男。
そんな男を誰よりも認め、荒々しい振る舞いの中に、相手の気持ちを重んじる思いやりある友情を感じさせる男。
空気のような清廉とした雰囲気で、向けられる兄、恋人、元恋人の各々の想いに応え、通じ合う人の力を思わせる女性。
兄として、その女性を守り、優しいオーラで包み込む繊細な空気を持つ男。
誠実、真面目、的確な判断能力と優秀さを見せながらも、どこかミステリアスな雰囲気も漂わせる男。
この5人は、初見で無いような方もいらっしゃるのだが、顔と名前がまだ分からず。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

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2016年8月11日 (木)

トランス【演劇集団よろずや】160811

2016年08月11日 インディペンデントシアター1st (90分)

観終えて、ネットでこの作品を検索してみたが、なるほど、やはり多くの方が、後半、混乱してしまうのだなと。
知らなかったから、ラスト15分ぐらい、たたみかけてくる展開にどうしようかとオロオロ。
離人症という精神疾患を抱える男、その男の治療に携わる精神科の女医、男の介護を真摯にするオカマ。
3人は、高校時代の同級生で偶然に出会うところから話は始まる。
人を愛せない、自分を愛せない、愛しても、一方向で、愛が向けられない。
そんな恋愛、親子愛、友愛、同性愛など、様々な愛情において、満たされない想いをした人が、自分を否定し始め、そこから、自分を許して、認めて生きるために、妄想の世界へと身を委ねてしまった人たちの姿が描かれているようです。
ラストはどう捉えたらいいのか分かりませんが、私は、そんな歪んだ狂気に囚われていても、幸せだと口にする姿がとても悲しく映りました。

3人芝居ですが、実際は、みんな精神疾患みたいな感じで、多重な人格が交錯します。同じ人の姿で、数パターンの役をされているみたいなものでしょうか。
交錯と言っても、本当に関係性があるのか、通じ合った会話が成されている時と、個々が孤独で、いわば独り言を言っているのではないかと思えるようなところも。
そして、結局、3人は誰も真実の姿を明らかにせず、どこかに4人目のこの3人を見ている人がいるのではないかと、描かれない様々な影を映し出していたように感じます。
3人の役者さんは、この劇団の若手と呼ばれる方々らしいですが、表情豊かで、声も通って、大変観やすかった印象が残ります。
そして、役の切り替えのメリハリや、何か潜んでいるという不安感や怖れを抱かせるような感覚が、非常に巧みに醸されていたように思います。

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2016年8月10日 (水)

ただ夜、夜と記されて【空の驛舎】160809

2016年08月09日 ウィングフィールド (90分)

生きるのはしんどい。
外に出れば、妙な競合社会みたいなものの中で、時間に追われ、必死になって自分を見失ってしまいそうになる。心も体も疲弊しきっている。
家にいても、抱えている様々な悩みはあるし、その悩みを包み込んでくれるほど、今の社会は優しくないし、余裕が無い。安らぎは無く、眠れない。
そんな今に馴染めなくなった、一人の女性が空地という、空虚な闇の中に身を置くことで、現実と夢が交錯する曖昧な境界で、自分を見詰め直し、生きる力をもう一度得るまでを描いたような話。
自分は自分でいいんだ。たくさん、過ちも犯すし、社会の役に立っているのかなども分からないけど、そんなこと関係なく、ただ、今を生きていればいい。そのことが、亡くなってしまった人たちの時間をいつまでも消し去らないことになる。そして、それが、みんなが本当の自分の姿でいられる、自然な社会を生み出す。
そんな生きることへの安堵を抱くような、優しい作品でした。

<以下、ぐちゃぐちゃになっていますが、一応、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は木曜日まで>

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2016年8月 9日 (火)

ここも誰かの旅先【空晴】160809

2016年08月09日 HEP HALL (90分)

勘違い、すれ違い、嘘、秘密・・・
部屋、押入れ、外とを繋いで繰り広げられる、王道のワンシチュエーションコメディ。
その中で、いくら勘違いしていても、その誤解は解けるし、いくらすれ違っていても、必ずぶつかり合って対峙する時が来る。嘘は、それが相手を思う優しいものだと分かるし、秘密はその真意をきちんと伝えた上で暴かれる。
最終的には、バラバラになっていても、一つにまとまる。いや、まとまってしまうものなんだ。家族ってやつは。
そんなことを温かく描いているような作品でした。
この劇団は、ここ何回か観逃してしまっていましたが、変わらないほっこり具合と、観終えて爽快、心地いい感覚を久しぶりに味わえて満足。

<以下、あやふやなあらすじですが、ネタバレにはなると思います。公演は大阪を終えて、東京、札幌と続きます。白字にはしていませんので、ご注意願います>

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2016年8月 8日 (月)

ピエロどうもありがとうピエロ【努力クラブ】160807

2016年08月07日 アトリエ劇研 (75分)

これまでの作品と同じように、どこか男の彷徨いのロードムービーみたいな感じ。でも、彷徨っているだけだから、結局、どこにも行かないし、そもそも、どこにも向かっていないみたいな閉塞感が漂う。
心地よさを一切感じない作風は独特だろう。

自分を否定する人間が、何とか、そんな自分を肯定しようと、正当化の材料を探し求める。
その材料の一つが、面白さ。
面白さはとても不条理なものだ。正当化するには、ある意味、確立してしまえば完璧なまでに強固だが、中途半端だと脆く揺らぎやすいところもあり、材料として望ましくないような気もする。
でも、それに囚われてしまった人の悲哀を描いているような作品かな。

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2016年8月 7日 (日)

三人どころじゃない吉三【少年社中】160807

2016年08月07日 近鉄アート館 (130分)

だいぶ前に観劇仲間から、凄くいい劇団だと教えていただき、DVDをお借りして拝見したことがある。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/dvd-8ba8.html
この機械城奇譚がなかなか良く、続いて借りた作品がネバーランド。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/dvd-241e.html
この迫力ある舞台を、いつか生で観たいなあなんて思っていましたが、ようやくそれが叶いました。

想像以上の魅せるエンタメ舞台で、素敵な役者さんの宝庫って感じか。
程よくコミカルさも交え、楽しく観ることを、凄く意識して創られている感があり、さすが、力があり、人気がある劇団は一味違うわなあと感じる。
ただ、どうも、今回の作品、何を伝えたいのかが分からず、観終えて、すごく消化不良な感覚が残ります。
一緒の時間を楽しむというエンタメ性は抜群ですが、どうも、この点が残念な結果。好みの問題でしょうが、私は作品の真意が読み取れないと、とたんに面白さが激減してしまいます。自分の読解力の問題は多々あるのでしょうが・・・

話は、ちょうど、この作品の原作とほぼ同じであろうものを、最近、拝見。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/115-cbf9.html
悲しいエンドを迎える、この作品を、お嬢吉三と、作品中で重要なアイテムとなる庚申丸の化身みたいな者が必死に、ハッピーエンドに変えようと、タイムリープを繰り返しながら奮闘します。
その奮闘たるや、相当な熱演で、本当にどうにかならんのかと一緒になって苦しむ感じになるくらいに、惹きこまれます。このあたりは、客席を引き込んで舞台を創る魅力の一つになっているのだと思います。
確かに、三人吉三は、かなりの負の連鎖で、どうしてここまで、業を背負わないといけないのかと、ちょっと腹立つくらいになります。ここで、どうにか出来ていたら、何とかならんかったのかと思う、その気持ちがそのままこの作品になったみたいで、少し嬉しい気持ちにはなります。
結局、ハッピーエンドになったようなのですが、ここがどうもしっくりこない。何か道の選択肢を変えたのではなく、業を背負わせていた、地獄の閻魔様自身も苦しんでおり、それを吉三たち自身に委ねて、世界を変えようとしたみたいな話になっています。
それに、もうみんな吉三になって、新しい世界にしてしまおうみたいな。
業は誰でも背負っており、その中でみんな懸命に生きている。そういう意味では、誰しもが吉三になり得る存在であり、そのことを受け止め、皆で助け合って、その業を封じ込めながら、幸せを掴む愛ある世界が、自分たちで創り上げられるのではないのかみたいなことなのかな。
辛さや悲しみが蔓延る世界は決して、神が人に与えているものではなく、自分たち人間なら必ずある負の心が生み出している。だったら、それは変えられる。何回でも、変えようとやり直してみて、その先にそんな悲しみや辛さを打ち消した、希望ある未来の世界を創る。バッドエンドに諦めるのではなく、それをハッピーに変えようとする力を持とうということを、吉三の作品を変えることで伝えようとしているようにも感じます。

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まつりのあらし【劇団カメハウス】160806

2016年08月06日 インディペンデントシアター1st (125分)

昨年に拝見した作品。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2015/08/115-cbf9-1.html
色々と変わっているところはあるようだが、基本設定はまあ同じようだ。
登場人物が増えているが、これは女子パワーの更なる増強と、統制された役者さんによるエンタメ性をより揺るがない完璧なものへとしている。
つまりは、相当パワーアップして、また戻って来たといったところだろう。
だから、感想も簡単だ。
上記リンク先の感想は、めちゃくちゃにとか、最高とか、文句なしとか、既にこれ以上に褒められない言葉を多用してしまっているが、もう1、2段階アップした感じにしてもらえればいい。

観終えて感じたのは、舞台で輝く、女子高生役の女優さん方の姿は、私が普段、観劇する学生劇団だとか、卒業したばかりの若手と呼ばれる社会人劇団だとかの役者さんの姿と同じだ。
仕事などをしながらも、自分たちのしたいことを必死に頑張り、懸命に前へ走ろうとされている。
この作品のように、ぶつかり合ったり、不条理なことに押し潰されそうになりながらも、きっと、自分たちで創り上げる公演というまつりに向かって、頑張られているのだろう。
そう思うと、先生や花火師といったやや年配の女性は、そんな若者の良き先輩たちといった感じだろう。先生のように、これまでの経験から、憎まれ役を買って出ないといけないこともあるだろうが、支えるべきところはとことんまで付き合ってくれている。熱い魂を持っているのは、何も若者だけでない。若者に負けない熱き魂を見せて、一緒にまつりに向かって先陣きって走る花火師みたいな人もいるのだろう。
そして、色々な事情で、演劇から距離を置かないといけないことだってあるだろう。でも、そんな人でも、きっと想いは一緒。そんな、かつての仲間たちの想いも背負って、まつりをする。そのまつりで、一緒に楽しみ、輝き合う。
そんな作品中のまつりに向かって走り続ける熱い女子高生たちの姿が、現実に拝見する、演劇を愛し、公演に向けてひたすら頑張る若い方々の姿と同調して見えてきた。
私は、そんなあらしのように駆け回り、実現にまでこぎつけた数々のまつりを、日々楽しませてもらっているわけだ。

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石ころとテイラー・スウィフト【DanieLonely】160806

2016年08月06日 Cafe Slow Osaka (75分)

亡き友人の想いと共に、男4人のロードムービー。 この劇団にはぴったりの設定だ。
ほくほくと幸せ気分。
互いに認め合っていた素敵な男の友情が浮き上がってくる。
死んでもなお心に刻まれ続けている友達の想い。
そんな想いが、今、これからを生きる男たちを成長へと導く。
失われることの無い大切な友への想いが、共に過ごした時間の感謝の気持ちと、これからを豊かに生きる活力を引き起こす。
変わらず、男の素敵なところを、温かく描き出そうとする、この劇団ならではの作品だったように思う。

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ウソを数えて108つ【劇団暇だけどステキ】160805

2016年08月05日 芸術創造館 (135分)

夢に向かっていた人たちが、大人の汚い事情に巻き込まれ、憎しみに囚われた復讐の道を歩み出す。その復讐劇の、登場人物にいつの間にかなってしまう、妬みや歪んだ愛を持つ者たち。
そんな悲劇を描きながら、愛に飢えて、闇に包まれてしまった人たちに、必ず向けられている想いをもって、光を射し込む救済劇か。
嘘で塗り固められているかのような世界。そこにある真実の想い。それは、ずっと紡がれ続けて、自分たちの大切な本当の未来へと導いてくれている。
そんなことを、いつまでも心に残る、本当の想いをぶつけた音楽として伝えているような作品。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

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2016年8月 5日 (金)

THE FIRST CAUSE【爆劇戦線 和田謙二】160804

2016年08月04日 人間座 (105分)

あまりベタ褒めするのも、何なのだが、何から何まで良かったなあ。
この劇団の作品は少年漫画によく例えられているが、その要素がしっかりと盛り込まれて、それこそ数十年前に、今から思えば、どうしてあんなにはまったのか分からないような、数々の名作たちと触れた時の興奮に近いものを得る時間だった。
シーン転換がちょうど、週刊誌の続きのような感覚で、早く次の展開が見たいとなる期待感を楽しみ、それを裏切らぬ、お約束ありきの意表を突く面白さを堪能。

やっぱり、愛と正義だし、ヒーローは内に秘めた力を持ってかっこいいし、悪はとことんまで腐っているし、ヒロインは清楚で綺麗だし。登場人物はキャラが立っていて、影ある狂気を秘めたミステリアスさで話を謎めかしているし、破天荒な自由な生き方が味あるし、やっぱり萌えや純粋さで心惹かれるし。
しっかりした個々の背景、作品の世界観を描きながら、人の心に巣食う天使と悪魔の心が、ぶつかり合い、夢や希望の未来を生み出す世界を導き出すような、見応えある作品でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

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2016年8月 4日 (木)

HPF2016 総括

講評委員をさせていただきました、久保健太郎と申します。
今年は9校の作品を拝見しました。
もう、5年目になりました。
何度か拝見しているので、今年も存分に楽しませてもらおうと期待を込めて。
難解な作品をかつて拝見しているため、きちんと理解できるかと構えながら、少し憂鬱になって。
初めてなので、どんな作風か分からず、ネットで調べてもそれほど情報も出てこないので、少し不安を抱きながら。
色々な想いを胸に、会場に足を運びました。
期待どおり、いやそれ以上の出来で驚愕したり、やはり難しかったかと唸ったり、作風が全く変わっていて拍子抜けしたり、これまでに無い新感覚の作品にとまどったり。
感想は様々ですが、どの作品も、各々のスタイルで、創意工夫し、挑戦し、勝負をかけて魅せようとする熱い気持ちに溢れているものだったように思います。
これは毎年のことですが、私の心を揺れ動かせてくれるような作品と日々出会える、貴重な時間だったと感じています。

全体として感じるのは、自己否定からの脱却、自主的に未来へ向かって挑戦しようとする熱ある姿でしょうか。
色々な悩みや苦しみを抱え込み、それに囚われて苛まれてしまう。そんな苦しみの中にいる人に、今の社会は決して優しくはないように思います。
そこから、もう自分はダメだと、自分を否定し、諦めてしまう。先行き不安な社会が、またそんな感情を後押しする。
でも、拝見した多くの作品の中で、そんな人が、また自分を肯定し、前へ向かって歩み出す姿が描かれているように思います。
そのきっかけになったのが、自分の周囲にいる人の想いだったように感じます。それは家族だったり、友達だったり、どこの誰かも分からぬ人だったり。
自分は人から想われている人であることを知り、その想いにきちんと応えたいという気持ちが、諦めや見限りが作る自分の壁を、見事に打ち破っている力強さを、多くの作品から感じたように思います。
自分たちが、諦めずに、希望ある未来を創り出す。そんな熱い真摯な想いを、演劇の表現を用いて、観る者の心にぶつけてくる、皆さんの力に感動しました。
そして、これが演劇の魅力であり、私が演劇作品を観続けている理由なのだろうと改めて思った次第です。
今年も、皆さんの創り上げられた素敵な作品たちから、活力を得て、自分自身の中に前向きで新鮮な気持ちが芽生えたように感じています。そんな人の心を動かす力を持つ皆さんに敬意と感謝の気持ちをここに記したいと考えます。

以下に、拝見した作品の感想記事のアドレスと簡単なメッセージを記すことで、講評に代えさせていただきます。
作品の感想、特に作品に込められているのであろう、感じ取ったメッセージを記しています。
また、私が読み取ったあらすじ、その解釈、個々の役者さん方の魅力的だと感じたところをコメントの形で後記しています。
講評というか、感想がメインとなってしまっていますが、今年からは少しだけ、改善した方がいいんじゃないかなとか、ここはいまひとつに感じてしまったなという点についても、言及してみました。
的外れなところや、私の知識、経験不足が理由である言葉も多々あると思いますが、私なりにしっかりした講評が出来るようにと毎年考えています。その微々たる成長を見ていただき、的を得ていないところはご容赦いただければ幸いです。
皆様が創り上げた作品が、公演として観客にどう届いているのかを知る術の一つとなり、今後の更なる発展に繋げていただければ非常に嬉しく思います。
(各校の感想記事は、枚数が多くなり過ぎますので、印刷の都合上、書面での提出を控えさせていただきました。お手数ですが、リンク先アドレスでご確認いただければ幸いです)

*8/20に開催される閉幕セレモニーで配布する資料として作成しています。

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2016年8月 3日 (水)

Be honest【HPF高校演劇祭 工芸高等学校】160802

2016年08月02日 シアトリカル應典院 (55分)

たたみ込むかのような、究極のハッピーエンドのラストに、唖然としながらも、自然に笑みが溢れる。
ここまでやれば、ほがらかな気持ちになって、何か嬉しくなってくる。自分の心が浄化されていくような美しさすら感じさせる力のある作品だった。

悩みや苦しみを抱いてしまって、自分を否定し、人を悪意でしか見れなくなってしまうことがある。まあ、悪魔みたいに、自己中心的に、他人を思いやれない考えに囚われてしまうのだと思う。
悪魔と言っても、本当の悪魔になどはなかなかなれないようで、そんな自分に嫌気がさして、傷ついてしまうみたいだ。
でも、そんな時に、周囲を見渡すと、家族や友達、どこかの誰かが、自分に想いを寄せてくれていて、手を差し伸べようとしてくれていることを知る。ずっと見てくれていた、見守ってくれていた。そんな想いを受け取ることで、傷ついた自分の心が癒されていく。
自分の周りにはいつだって天使がいる。
人は弱いから、すぐにへこたれてしまうと、自分はダメだと落ち込み、相手を傷つけようとしてしまう。でも、そんな自分を包み込んで癒してくれる想いが、本当は溢れている。
だから、そんな想いを向けてくれる人と、結ばれて、豊かな、そして幸せに生きるために歩んでいけばいい。
想われていることを、きちんと受け止められた人の強さ。今度は人を同じように想って、優しさを与えることが出来る。
そんな人の想いの力を描いているように思う。

悩みや苦しみなどを扱っているが、よくある天使や悪魔キャラを使用したりして、全体的にはコミカルで明るい空気となっている。音楽もちょっと、そんな楽しさを引き出すようなものだったように感じる。
特徴的なのは、会話やシーン転換の間合いがじっくりと置かれている印象がある。丁寧であるのだが、その分、若干、長い感覚もあり、短時間作品なので、ある意味、大胆だなあと思っていた。
ラスト、たたみかけるようなハッピーエンドの連続となる。下手すると、安直さや早急さを感じさせ、作品の魅力を軽減してしまうようなぐらい。
でも、これが、観ている間に、その時間の感覚に慣れさせられていたのか、実に巧妙に、計算されているのか、自然に溶け込んで観ることができ、ハッピーエンドを素直に受け止め、幸せな気分を得ることが出来たように感じる。

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2016年8月 2日 (火)

追う女と追われる男【HPF高校演劇祭 箕面東高等学校】160801

2016年08月01日 シアトリカル應典院 (60分)

高校生らしいとか、らしくないとか、何を基準なのかということもあるし、別にこだわる必要も無い訳ではあるが、これはどちらだと言われたら、らしくない作品だろう。
熱血青春、甘酸っぱい恋なんかを突き抜けて、一挙に大人の歪んだ愛に向かってしまっているダークファンタジーみたいな感じか。
それだけに、こういった作品に挑戦して、かなりそのダークな空気を醸した舞台を創り上げられていることに驚く。

人は人を求めて彷徨ってしまう。特に男と女ならば、それは恋や愛の形を持って。
自分を否定してしまい、孤独に苛まれてしまった人が、自己肯定や居場所を求めることに執着して、それが自分を愛する自己愛や、相手からたとえ偽りでも愛を得ることをひたすら求めるといった歪んだ構図が感じられるような話だった。
奥深く、謎に包まれている空気が漂い、難解な作品だった。
複雑に絡み合った愛が、悲劇を生み出してしまうという、人のもろさや、愛の狂気が暗闇に浮かび上がるミズテリアスな感覚が印象に残る。

気になったのは、音と声のバランスかな。
声が小さいとか、音響が大きいではなく、多分、バランスの調整が上手くいっていなかったのではないだろうか。
聞き取りにくいシーンが多々あり、登場人物の過去や背景などの説明セリフもあるので、把握できないとやはりストレスがたまる。
会場によって異なるのだろうし、熟練した劇場の技術スタッフがいるはずなので、上手く調整して、せっかくの惹きつけられる話から、少し心が離れてしまうようなことは避けたい。
まあ、スムーズにシャキシャキと話を理解して進むような作品でもなく、謎で覆って、闇に包む、演出なら良しかもしれないが。

舞台セットは、珍しくがっつり組んだものだった。
心情こもる大切な言葉が、高さを活かした舞台で発せられ、メリハリの効いたものとなっている。
奥の4本の柱は何だろうか。照明に当たると、ぼんやりと青、黄、黒、赤と彩られるようだったが。
4人の女と同調しているのかな。あやめ、水仙、黒い心で覆われた女性、華やかな明るさを持つ華。
そんな女性の念に支えられていたサーカス団、そしてその団長。
それが歪んだ愛が明らかになることで、崩れていく悲しい有様、人のもろさを描き出しているように感じる。

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2016年8月 1日 (月)

ここは洋式トイレです。【HPF高校演劇祭 大阪女学院高等学校】160731

2016年07月31日 ウィングフィールド (35分)

トイレで排泄することは、人間が生きる上で必須なのと同じように、心に溜まる不安や苦しみを流すことも大事なことなのだろう。
少女は現実から逃避して、トイレにやって来て、おかしな擬人化したトイレ関係のものたちと触れ合うという虚構の時間を過ごすが、その中で、もう一度、自分自身と、その現実とに向き合っている。
そこで得た数々の言葉は、みんな、悩みや苦しみを抱えながらも、自分を信じて肯定し、そして、その周囲の人たちを信じて寄り添いながら頑張って生きているということ。
悩んでいる自分は、みんなから救われる。そして、この演劇が、一時のこうした現実逃避の時間を与えてくれて、そこで、自分を見詰め直す時間を作ってくれる。
演劇をする少女は、救われた自分を心に留めて、今度は自分が、苦しみの中にいる人たちを救えるようになりたいと、前へと歩み出す。

トイレ関係のものを擬人化するという、奇抜な発想から、シュールでコミカルな微笑ましい作品。
逃げ込んだ小さな空間が、自分を否定せざるを得なくなって苦しむ人を、もう一度、前へと歩ませる大事な空間となっている。
この作品の少女にとっては、その一つが演劇であるような形で描かれているようだ。
少し、現実から離れ、しっかりと自分を見詰め直してみる。そんな空間を、人ならば誰しもが行かなくてはいけないトイレにしている。逃げるのではなく、そこで今までの自分を流し去り、すっきりした自分となることは、生きる上で必要なことであるという感覚が得られ、よく考えられた巧妙な話だと思う。

短時間作品なので、ラストへと向かうのが少し早急に感じるところや、もう少し話を盛り込んでも、楽しい作品なので全然、大丈夫だけどなあといった物足りない感は残るが、すっきりと綺麗にまとめあげられたいい作品だと思う。
キャラも微笑ましく、普段、観劇してる作品を料理だとするなら、これはお菓子のような、どこか甘酸っぱく、夢のある幸せな気持ちを導いてくれるような感じ。メインの話の進行の裏で、ちょこっとした小細工も多々、盛り込んでいるようで、話の筋や設定を理解した上で、もう一度観てみたくなるような、癖のある作品となっている。
全体的には、個性的なキャラがぶつかり合うわりには、非常に整然とした、バランスの良さを感じる。個々が他を乱さぬ、自分のリズムを持っている感じだろうか。
脚本、演出共に、創意工夫が顕著に感じられる魅力的な作品でした。

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