« Be honest【HPF高校演劇祭 工芸高等学校】160802 | トップページ | THE FIRST CAUSE【爆劇戦線 和田謙二】160804 »

2016年8月 4日 (木)

HPF2016 総括

講評委員をさせていただきました、久保健太郎と申します。
今年は9校の作品を拝見しました。
もう、5年目になりました。
何度か拝見しているので、今年も存分に楽しませてもらおうと期待を込めて。
難解な作品をかつて拝見しているため、きちんと理解できるかと構えながら、少し憂鬱になって。
初めてなので、どんな作風か分からず、ネットで調べてもそれほど情報も出てこないので、少し不安を抱きながら。
色々な想いを胸に、会場に足を運びました。
期待どおり、いやそれ以上の出来で驚愕したり、やはり難しかったかと唸ったり、作風が全く変わっていて拍子抜けしたり、これまでに無い新感覚の作品にとまどったり。
感想は様々ですが、どの作品も、各々のスタイルで、創意工夫し、挑戦し、勝負をかけて魅せようとする熱い気持ちに溢れているものだったように思います。
これは毎年のことですが、私の心を揺れ動かせてくれるような作品と日々出会える、貴重な時間だったと感じています。

全体として感じるのは、自己否定からの脱却、自主的に未来へ向かって挑戦しようとする熱ある姿でしょうか。
色々な悩みや苦しみを抱え込み、それに囚われて苛まれてしまう。そんな苦しみの中にいる人に、今の社会は決して優しくはないように思います。
そこから、もう自分はダメだと、自分を否定し、諦めてしまう。先行き不安な社会が、またそんな感情を後押しする。
でも、拝見した多くの作品の中で、そんな人が、また自分を肯定し、前へ向かって歩み出す姿が描かれているように思います。
そのきっかけになったのが、自分の周囲にいる人の想いだったように感じます。それは家族だったり、友達だったり、どこの誰かも分からぬ人だったり。
自分は人から想われている人であることを知り、その想いにきちんと応えたいという気持ちが、諦めや見限りが作る自分の壁を、見事に打ち破っている力強さを、多くの作品から感じたように思います。
自分たちが、諦めずに、希望ある未来を創り出す。そんな熱い真摯な想いを、演劇の表現を用いて、観る者の心にぶつけてくる、皆さんの力に感動しました。
そして、これが演劇の魅力であり、私が演劇作品を観続けている理由なのだろうと改めて思った次第です。
今年も、皆さんの創り上げられた素敵な作品たちから、活力を得て、自分自身の中に前向きで新鮮な気持ちが芽生えたように感じています。そんな人の心を動かす力を持つ皆さんに敬意と感謝の気持ちをここに記したいと考えます。

以下に、拝見した作品の感想記事のアドレスと簡単なメッセージを記すことで、講評に代えさせていただきます。
作品の感想、特に作品に込められているのであろう、感じ取ったメッセージを記しています。
また、私が読み取ったあらすじ、その解釈、個々の役者さん方の魅力的だと感じたところをコメントの形で後記しています。
講評というか、感想がメインとなってしまっていますが、今年からは少しだけ、改善した方がいいんじゃないかなとか、ここはいまひとつに感じてしまったなという点についても、言及してみました。
的外れなところや、私の知識、経験不足が理由である言葉も多々あると思いますが、私なりにしっかりした講評が出来るようにと毎年考えています。その微々たる成長を見ていただき、的を得ていないところはご容赦いただければ幸いです。
皆様が創り上げた作品が、公演として観客にどう届いているのかを知る術の一つとなり、今後の更なる発展に繋げていただければ非常に嬉しく思います。
(各校の感想記事は、枚数が多くなり過ぎますので、印刷の都合上、書面での提出を控えさせていただきました。お手数ですが、リンク先アドレスでご確認いただければ幸いです)

*8/20に開催される閉幕セレモニーで配布する資料として作成しています。

・ Z ~一度ならずも二度も手にとってしまったアレの話 【箕面・豊島高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-4.html

難解な作品かと構えて拝見しましたが、熱血、恋愛と学園青春群像劇スタイルのコミカルな作品でした。
その中に、組み込まれた恋など、色々な悩み。高校時代の心の葛藤と、それに打ち勝ち、成長した未来の自分を夢見る姿が描き出されていました。
個性的なキャラのぶつかり合いを、巧く制御し、ドタバタにならないように整然と話を進めながら、面白さを醸しています。

・ 僕たちの好きだった革命 【金蘭会高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-7.html

一言で見事な作品でした。
閉塞した社会で口を閉ざし、自分たちの想いを封じ込めてしまう。それでも、自分の理想を掲げて、夢や希望ある未来へと向かおうとする若者たち。
この作品での革命が、まさにこの高校が、この作品を演じる姿と同調しています。

・ 十二人の怒れる女たち 【大谷高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-8.html

生まれや経験の相違、偏見、執着する考え、主義主張の違いなど、人がぶつかり合う中で、一つの真実へと導き出されていく原理を検証したかのような作品でした。洗練されたまとまりのある空気の会話劇。
観劇後、コーチの方から感想にコメントをいただきました。
私が捉えきれていない、多くの意図するところがあったようです。大変、申し訳なく思いますが、なかなか奥深い作品で、照準を絞るのが難しかったように思います。

・ 熱海殺人事件 売春捜査官 【北摂つばさ高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-9.html

差別や格差ある社会が、人を歪ませ、等しく生まれて生きる尊さを否定し、傷つけ合わせようとするなら、自分たちが本来、抱いている優しい想いに目を向けて、希望ある未来へ向かって原点に立ち返ろうとしているような真摯な姿を感じさせる作品。
踏ん張って懸命に生きようとしてる者たちへの激励、いつか生み出される平等で平和な世の中を祈る想いに溢れています。

・ 悩殺ハムレット 【北かわち皐が丘高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-10.html

本家、柿喰う客の作品を巧みにアレンジして、特徴的な現代口語のリズミカルな会話を高校生の若さをもって上手にはめ込み、個性的なキャラを大胆に舞台で駆け巡らせた作品。
ややスピード感が緩めで、おとなしいというか、スマートな印象が残り、その分、笑いが減じている感は否めないが、総じて、愚かな人の業が招く悲劇、ハムレットを楽しませてもらいました。

・ たゆたう 【堺西高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-11.html

人の優しい想いが、連鎖して繋がり合うことで、希望ある未来を生み出せることを信じる世界を丁寧に描き出している。様々なことで傷つき、悩み苦しみの中にいるのであろう若者が、そんな想いの力を信じて、それに打ち勝ち、未来へ向かって歩み出す素敵な姿が描かれています。

・ ここは洋式トイレです。 【大阪女学院高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/hpf160731-8749.html

トイレ関係のものを擬人化するという、奇抜な発想から、シュールでコミカルな微笑ましい作品。
その中で、悩みや苦しみを抱えながらも、自分を信じて肯定し、そして、その周囲の人たちを信じて寄り添いながら頑張って生きていく、悩める若者の姿が浮かび上がる。
個々の役者さんが特有のリズムを持ち、それが互いにぶつかり合って乱されぬようにバランスのよい空気を醸されているのが印象的。

・ 追う女と追われる男 【HPF高校演劇祭 箕面東高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post.html

大人の歪んだ愛を描いたダークファンタジー。
人が人を求めて彷徨う。孤独に苛まれてしまった人が、自己肯定や居場所を求めることに執着して、それが自分を愛する自己愛や、相手からたとえ偽りでも愛を得ることをひたすら求めるといった歪んだ構図が感じられるような作品。
そのダークな空気を醸した独特の舞台が印象的。
複雑に絡み合った愛、人の脆さ、狂気が交錯し、奥深い謎を醸す難解な話でした。

・ Be honest【工芸高等学校】
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/08/post-1.html

悩みや苦しみを抱いてしまって、自分を否定し、人を悪意でしか見れなくなってしまった人が、周囲の自分へ向けてくれている想いに気付いて、立ち直っていく姿を見せる。同時に天使と悪魔というキャラを登場させ、人の弱さから、心の隙間に入り込む悪魔の心を、純粋な想いをぶつける天使によって浄化するような、パラレル構造を見せている。
自然に笑みがこぼれ、幸せな気持ちなれるハッピーエンドを惜しみなく魅せています。

|

« Be honest【HPF高校演劇祭 工芸高等学校】160802 | トップページ | THE FIRST CAUSE【爆劇戦線 和田謙二】160804 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEI様

講評お疲れ様でした。

今年は1公演しか観れず。金蘭を1度観てみたいんですけどね。

投稿: KAISEI | 2016年8月 6日 (土) 13時32分

>KAISEIさん

ふ~、終わりました。
なかなか、プレッシャーでね。

金蘭は、本当に一度、観て下さい。
驚きますから。

投稿: SAISEI | 2016年8月 8日 (月) 12時07分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/64006188

この記事へのトラックバック一覧です: HPF2016 総括:

« Be honest【HPF高校演劇祭 工芸高等学校】160802 | トップページ | THE FIRST CAUSE【爆劇戦線 和田謙二】160804 »