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2016年7月17日 (日)

或いは魂の止まり木【A級MissingLink】160716

2016年07月16日 アイホール (100分)

ある家族と家を描いたお話。
たくさんの悲しみや辛さの上にある現実世界と、もし、そんなことが全く無くて、楽しみや喜びだけだったらという嘘の世界を交錯させて話を展開する。
喪失からの立ち止まった現実と、希望溢れる、拡がり続ける妄想。
やがて、その現実と妄想は境目を曖昧にし、喪失を受け止めて、悲しみや辛さを心に刻んで、希望ある未来へと歩みを進める世界を新たに生み出す。
そんなことを感じさせる、失い立ち止まる、もしくは立ち止まるから失わない、先を見出せず彷徨う人たちを優しく包み込むような作品だったように感じます。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

お盆に帰省して、アルバムを見ている佳織。
兄の学に話しかけられる。
懐かしい写真がいっぱい。アルバムの最後は17年前の家族の朝ごはんの写真。佳織が今、いる食卓。今となっては、7人が揃った奇跡の写真だ。家族の写真はそこで止まっている。
あの日の夜、祖父は心筋梗塞で亡くなった。その後、長兄が飛び降り自殺。父が蒸発。次兄の学は大学と就職で大阪に。佳織も就職で家を出た。祖母はなかなか粘ったが最後は肺炎で亡くなった。この家に残ったのは母だけだ。
そんな母が今年の盆はみんな帰って来いとしつこかった。佳織は毎年帰っているが、学は仕事やらバンドの音楽活動やら色々と言い訳をつけてなかなか帰らない。麻紀さんだって待っているのに。佳織も今年は学に会わしたい人がいる。そんなことを、色々と言って連絡したら、ようやく帰る気になったようだ。
学が帰って来たら、随分とシュッとした背の高い若い男が家にいる。育ちもいいところっぽい。外に停めている高級車。まさに三高。宇野澤と言うらしい
佳織と母は墓参りの準備で買い出しに出掛けているようだ。
妹の婚約者、義理の兄になる男というぎこちない時間を過ごしていると、二人が戻って来る。男の気も知らず、女性陣はあっさりとしていて、二人に裏山でシキビを取ってくるように命じたりする。
母が大事な話があると言う。
みんなが食卓に集まる。
宇野澤さんが紹介される。母の再婚相手として。
学は佳織から会わしたい人がいると言われていたので、当然、婚約者だと思っていたので驚きを隠せない。元々、驚きの表現がちょっと過剰な人なので飛び上がっている。
それだけではない。二人はハワイに移住するつもりらしい。
反対する理由は無い。色々と苦労させた母だから。この家にもう住む人はいなくなるわけだ。

佳織は想像する。もし、何かが変わっていれば、止まったアルバムにはどんな写真が貼られていったのだろうか。
お盆。童話作家である長兄は、大事な話があると学に帰省するように命じる。
学が帰省すると、家には麻紀さん。長兄と佳織は、墓参りの準備に、裏山にシキビを取りに行ったらしい。
麻紀さんは地元で黒豆畑を始めたりして、地元の活性化に注力している。学はその黒豆をご馳走になる。長兄とは長い付き合い。この家にも頻繁に出入りしている。
学が麻紀さんと久しぶりの懐かしい話をしていると、二人が戻って来る。
長兄は相変わらず、口うるさい。親父そっくりになった。右肩下がりの風貌も似ている。
佳織は、日焼けが嫌なのに、外に連れ出されてむくれている。
長兄からハガキを見せられる。父と母から送られてきた写真付きのハガキ。今はスペインでのんびりしているらしい。地中海でバカンス。佳織は妬み、羨ましさと喜びの混じったため息をつく。
長兄が大事な話があると言う。
みんなが食卓に集まる。
麻紀さんと籍を入れました。この家に一緒に住もうと思っています。
長兄の言葉に喜ぶ学と佳織。
長兄はもっとみんなが驚き、家も財産絡みで揉めると思っていたらしく拍子抜けしている。
何を言っているのか。こんなに長いこと待たせて、麻紀さんに感謝しないと。家だって、学も佳織も、今の生活があるから、もう戻ってくることは無い。きちんとこれからも住む人が出来て良かった。それに、長兄と麻紀さんが結ばれたらいいなあとずっと思っていたのだから。
嘘。これは嘘の妄想だ。でも、いい嘘。ずっと騙されていたい。

所変わって、ある施設。
取材にやって来た霧島は、崖から危うく落ちそうになって、純子という女性に助けられた。
確かにあの崖は、悩める人間にとっては、このまま飛び降りたらどうなるのかと思ってしまうような所だ。
純子はそんな人を救うため、崖を巡回して、そんな人の悩みを聞いているらしい。
霧島も実は今、少し悩んでいる。それを純子に見透かされて、少し意地になって、自分は悩みなんて無いと言い張ったりしている。でも、崖から落ちそうになったのは本当に自殺では無い。黄色い大きな鳥を見て、驚いて足を踏み外しただけ。
その鳥が、いきなり現れる。
その鳥はマリア。鳥というか、鳥人間。純子と一緒に働いているらしい。主な仕事は、崖の巡回だ。
話しかけても、ピーピーと鳴き声をあげるだけ。
霧島は、純子とマリアを一緒に写真に収める。

宇野澤と母はラブラブ。心はすっかりハワイらしく、ファッションショーで楽しむ。
これで、この家には誰も住まなくなる。地元で、母の面倒をよく見に来てくれていた麻紀は寂しそう。佳織に戻って来てくればいいのにとか言っている。無理な話なのだが。
学は、この集落はもうお終いだと言う。先が無い、いわばこの家と同じ。地元を活性化させようと頑張っていた麻紀の黒豆畑だってうまくいかなかった。
麻紀こそ、ここを出て行けばいいのにと学は言う。どこも行くところが無いからと寂しそうに答える麻紀。大阪に来れば、自分がいるじゃないか。そう、はっきりと言える勇気があれば、この先は変わっただろうに。
宇野澤が、一枚の写真を手にして、学にだけ内緒で相談を持ちかける。
そこには、若い女性と黄色い大きな鳥が写っていた。そして、裏には連絡先まで書き込まれている。
宇野澤の元カノは、未だ宇野澤につきまとってくる。いわゆるストーカーってやつだ。その元カノが、母と自分を別れさせるために、興信所に父の身元調査を依頼したらしい。父を家に帰らせて、母と自分を別れさせるという段取りだ。つまりは、この写真に写っているのは、蒸発した父ということ。
霧島という男に呼び出され、そのことを伝えられる。元カノはかなり粘着質な子。悪意を持って、ここまで仕掛けてきているようだ。
宇野澤は、この件を学に丸投げすると言う。不安らしい。母がこのことを知って、自分と一緒になる気持ちが揺れてしまうことが。
でも、本当は心配することなどなかった。母も純子に呼び出されていた。マリアの免許証を見て連絡したらしい。マリアは一冊の童話が書かれたノートを持っていた。
ある国の王様。横暴な王様は、第一王子を、無理矢理、戦争に行くように命じる。その戦争で第一王子は死ぬ。でも、残された兄弟、国の民たちが、もう戦争などしなくていいように、王様に呪いをかけて死んでいく。王様は黄色いカナリヤになり、ただ、さえずるしか出来なくなった。
純子はマリアと一緒に働いていると伝える。
母の返事は、もう関係無いだった。もちろん、恨みもあるが、今は、全てを忘れて、前へ進もうと思っているのだと。
この会話を霧島は隠れて聞いていた。

祭り。長兄と麻紀は浴衣を着て、張り切っている。少しイチャついているようにも見える。
花火大会。昨年は、舐めてかかって、ほとんど見えない上に、混雑して転けた先にゲロがあったりと全く楽しめなかった。このことは二人にとってトラウマになっているらしい。今年は最高の席を確保して、存分に楽しむ。その迫力に押されて、皆はテンション高く、祭り会場へと向かう。このまま覚めないで欲しい夢。

霧島は純子への調査を続ける。
ここに来た理由。まあ、予想通りの答え。彼女もまた、ここで人生を終わらせようとしていた。そこを巡回中のマリアに助けられた。
ここの運営資金はどこから出ているのか。この答えははぐらかされた。
そりゃあそうだろう。旦那のDVに耐えかねて、大金を持って家を飛び出したのだから。
取材なんて嘘だ。その旦那から身元調査を依頼された。尾行の末、ここにたどり着いた。もっとも、マリアという別の興味深い話に出会うことになるとは思わなかったが。
純子は外で待つ旦那に連れて行かれた。
霧島は戻って来たマリアを逃げていると責める。
マリアは正体を明かし、タバコを吸いながら、長男の自殺のことを話す。あの童話と自分は同じ。あいつは自分を殺して、生かした。
マリアは霧島の首に手をかけ、気絶させる。
旦那から逃げて来た純子。マリアはカナリヤに戻り、二人で誰もいない樹海へと向かう。
学がやって来る。宇野澤からもらった写真を手にしている。霧島は目を覚ましている。
霧島は、二人は世界の果てのさらにその先へと向かったと語る。
全ては自分の興味でしたこと。宇野澤には全て、冗談だったと伝えて欲しいと学にお願いする。
二人は、長兄の童話に書かれたノートを置いたまま、出て行く。

祭り。学と麻紀は浴衣を着ている。
昔、麻紀がゲロの上に転けたりして大変だった思い出話。
やはり二人は一緒にはなれないみたいだ。
麻紀はここでずっと待っていると学に伝える。でも、その家ももう無くなってしまう。

長兄の残した童話の書かれたノートを佳織は見ている。
長兄が現れる。怪我ですんだから良かったものの、あんなところから飛び降りてと責める。
父との確執。死ぬつもりだったというか、どうなるのかとふと考えて飛び降りた。
これは妄想。この家に帰って来れば、あったかもしれない世界を想像する。止まったアルバムの先を埋めようとしてしまう。
もう、ここには戻らない。佳織はそう誓い、ノートを長兄に手渡す。
母と宇野澤は出発。お別れに記念撮影。
その写真をアルバムに貼り付ける。
みんな、戻って来れたなら。そして、みんなでまた住めたなら。
ハワイなんか住むところと違ったと母と宇野澤さん。学と麻紀さんは一緒になる。父は純子さんを連れて帰って来る。元旦那と今の旦那の宇野澤さんがバッティングして気を使い合ったりしたりして。
佳織の最後の妄想。そう、これは妄想。止まってしまったアルバムの先は妄想では埋まらない。
皆は、これから、自分たちの道へと歩み始める。

家族と家のお話。
ある家族の現実の話と、もしかしたらこうなっていたかもしれない嘘の世界の話が交錯しながら進む。
どちらも、時間が経過して描かれる。
現実の話では、その家族の家は無くなってしまう。アルバムもある時で終わっていて、その後は空白。嘘の世界ではまだ家は在り続ける。アルバムも嘘の写真を貼り続けられる。
でも、嘘の世界の話は、どこかで終着を迎える。現実の世界は、この先、未来へとまだ終わらない。
何も失っていないことに出来るのに、終わってしまう嘘の世界と、たくさんのものを失ったのに終わらない現実。
嘘は嘘で、やはり現実からは逃げられない。でも、その嘘に私たちの希望や祈りがあり、そこに未来を見出せるなら、その嘘は大切なものなのではないだろうか。

長兄が死なない、長兄が麻紀さんと家を引き継ぐ、父と母は仲良く暮らし、戻って来る場所がある。佳織や学も、自分の生活の拠点を持ちながらも、帰る場所がある。
大切な者が、どこかへいなくならず、こんな閉鎖された鳥籠のような家で止まっていてくれたら、そこにあったかもしれない幸せな世界が映し出される。でも、それは嘘で現実の話ではない。作品名を使うなら、魂の止まり木など無くて、大切な魂はどこかへ旅立ってしまうのだろう。そこから進む、目を背けたくなるような世界であっても、それが現実だ。
辛いことだが、だからこそ前へ進め、未来へと歩めるのだと言っているような気もする。
何かを失うことと向き合い、それを過去のこととしてしっかりとアルバムのように心に刻む。それを抱いて、新しい未来へと自分の時間を進める。
消えて無くなってしまっても、確かにあった家とそこにいた家族。
舞台に吊るされていた鳥籠。鳥はどこかへ飛び立ってしまったのかいない。あの鳥籠はきっともうすぐ消えてしまう。でも、その鳥籠を見て、外にある大きな世界、鳥が飛ぶ新しい未来の世界を想うことで、あの中にいた鳥は今、生きているのだと感じられるように思う。

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コメント

SAISEI様

A級Missing Linkもまだ行けてない。。今回は分かりやすい作品だったらしく残念(>_<、)

投稿: KAISEI | 2016年7月20日 (水) 01時37分

>KAISEIさん

作家が土橋さんの時は、ちょっと難解かな。
それでも、ここ数作品は、少し、歩み寄られているのか、私にも理解出来るような感じの好みの作品が多くなりました。
是非、次回は。

投稿: SAISEI | 2016年8月 8日 (月) 11時55分

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