« ティル・ナ・ノーグ~太陽の系譜~【劇団ZTON】160723 | トップページ | 十二人の怒れる女たち【HPF高校演劇祭 大谷高等学校】160726 »

2016年7月26日 (火)

僕たちの好きだった革命【HPF高校演劇祭 金蘭会高等学校】160725

2016年07月25日 吹田メイシアター (140分)

凄いな。
今年も講評委員をさせていただいている手前、もっと、何がどうだから、どう素晴らしかったみたいにきちんと書かないといけないのだろうが、これだけ突き抜けた素晴らしい作品を観てしまったら無理だ。
所詮、舞台を観ることはずっと続けているが、演劇作品を創るなどという経験は一度もしたことが無い。
だから、こんな凄い作品を創って、見事に公演できるんだ。しかも、高校生が。凄い、凄い、素晴らしい、感動した。ということぐらいしか感想が書けない。
高校生がという書き方は失礼かもしれないが、だって自分の子供ぐらいの歳だし、それに自分が高校生の時のことを考えれば、およそ実現できるとは思えないような、想像し難いレベルの作品のように感じる。
いったい何なんだ、この素敵な子たちはって感じだ。
それに設定が1969年の学生運動時代から、38年後の世界。よくよく考えれば、演じる高校生は、どちらもそれほど知らない世界なのではないか。
それなのに、あの頃の思想、熱い気持ちを、今を生きる自分たちの言葉に変えて、熱いメッセージを込めた劇にしている。
いくら時が経とうと、未来を信じる想いに変わりは無い。夢や理想を追いかける。そのことで、何度も負けてしまうこともあるのだろう。でも、自分たちの想いに真摯に対峙して、自分が正しいと思うことを貫けば、いつの日かきっと勝てる。
貫くことはきっと大変だ。嫌な思いもいっぱいするだろうし、悲しく辛い気持ちに苛まれて、どうしようもなくなってしまうこともあるだろう。
でも、未来なんてどうせいいことなんかない。夢や希望を追っても、大人や権力層、時代に潰されてしまう。そう思って、じっとしている方が本当はもっと苦しい。だから、僕たちは未来を夢見て、動き出す。それぞれの理想を掲げて。そんな自分自身の革命を実現し、未来に希望の光をもたらす若い力が力強く描かれているように感じる。

劇中の高校生は、あまり認知されていない、いわばインディーズでくすぶりながらも、それに救われ、勇気づけられて、今の日々を過ごすファンが多いミュージシャンの言葉、音楽で想いを表現する姿を見て、自分自身が変わるきっかけを生み出している。
変わっていく自分自身を楽しみ始める。何で楽しいのか。それは、自分たちが、自分たち自身で輝く未来を創造して、それに向かって歩んでいるから。
こんな世の中だから、先への不安感を誰もが抱き、いつの間にか口を閉ざして、そのうち、もう何もしようとしなくなって、時間にただ流されてしまう。
何も思っていない訳ではない。心の奥深くでは、このままではいけない。何かを変えなくてはと思っている。それを引き出してくれたのが、そのミュージシャンだったなら、この演劇作品を公演した、この高校の演劇部がそれに同調する。
私たちは、彼女たちの熱いメッセージのこもった、この作品を観て、心震わされたその想いが、きっと、このまま終わっていく未来なんかにはしない。未来にはやっぱり希望があって、それを絶えず望む私たちの手によって掴めるように、今を、これからを生きるんだという気持ちを呼び起こしてくれたのではないかと思う。

あらすじは、同じくHPFで3年前に拝見した時の感想を参照。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/07/hpf130723-2b5d.html
感じるのは、こんなにコミカルな面白さがある作品だったかなということ。
この時は、作品として初見だったので、情熱溢れる熱き言葉や姿に、心が惹かれてしまっていたのかな。
けっこう、シュールなコミカルさを前半は醸して、それは後半の熱い想いが飛び交う舞台になっても、依然、消えずに心地よく残っている感覚が、長時間の割には、とても観やすかったように思う。
話としての感想は上記のとおり。
舞台は簡単なセットが組まれているだけだが、ちょっとしたことをするだけで、きちんと場面転換する巧妙さがあるみたい。
大人数であるが、それを活かして、その転換も実に統制がとられている。この統制は、以前にこの高校の作品を拝見した時も同じことを感じたので、歴史的に蓄積したものがあるのだろう。
動きがキビキビしていて、メリハリがしっかりとしている。それは、作品だけでなく、カーテンコールに至るまでで、完璧と言えよう。あまりにも完璧すぎて、ちょっと腹立つくらいの素晴らしさ。
高校生の姿をしているから、高校生が演じていることを時折、思い出したりするが、基本的にそれを忘れてしまう。等身大で演じ、かつ、ある意味では今とは違う高校生の心を客観視して演じているような感覚だろうか。
ちょっと気になったことを強いて書けば、音響かな。鍛錬を相当積まれているのか、元々、役者さんたちの声の通りが、非常にいい。だから、マイクを通しての喋りとかが、耳にきつい。ちょっと後半、耳鳴りするくらいに。よくは分からないが、音響のテクニックでどうにかなるものならば、上手く改善したら、いちいちビクってならないですむので、より安静して観劇できる。

総勢30人超え。
技術的な感想を言及する力が無いため、誤魔化す訳ではないが、極力、個々の役者さんにコメントをするようにしている。
今回は無理かなと思っていたが、観劇中にメモっていたのを見返すと、一応、全員追えたみたいなので、簡単に、ほぼメモそのままだが記しておく。
ただ、複数役をされている方が多く、どの役をされた時に感じたことなのかが一部分からない方が・・・

山崎、江川美乃里さん。
どうせこの世は終わるという思考。マヤ暦、2012年。いつかまた眠らないといけない日が来ることを背負う山崎。
それでもやる。終わるかもしれないからしないのではない。終わらない。未来が自分たちにはあるから。そんな力強さがある。
コミカルさ。空気を寒くするKY感、熱過ぎる熱意のバランス。
オッさん。ここまで変わるものなのかと驚愕。女が男を演じる、女子高生がオッさんを演じるというレベルを超える。確かに38年の眠りから覚めた山崎だった。

未来、有園果歩さん。
大きなことはしない。名前と同じように、当たり前に未来は来ると思っているからか。
母親のこと。何があったかは分からない。でも、きっと無理をした。だから、自分も大きなことはしない。現実主義。
母のことを知りたい。そんな心の中の気持ちの欠片を山崎から見出したのか。人のことを知ろうとする。成長する。自分を変える革命という、この作品名に通じる。ストーリーテラーとしても、じっくりと落ち着いた、自分自身との対峙する姿を見せる。芯の強さ。

日比野、野口彩華さん。
生徒会書記の立場。退学も怖い。それ以上に未来を想う。それは恋心でもあり、自分を変える何かを感じたのか。おちゃらけたり、駄々っ子キャラが可愛らしい。

日下部、村上茉斗香さん。優里、平野瑞稀さん。
おとなしく、程よく真面目で、それなりに遊び、それなりに勉強もする。強く主張もしないが、ただ従うだけには違和感を持つ。自分の置かれた環境を、家庭や社会の視点から客観視してしまい、空気を読んだ行動へと抑制される今の若い人の典型像かな。それでも、心がないわけではない。やっぱり、好きとか守りたいとか恋心がある。等身大の姿で、安心感のあるキャラ。

希、鈴木愛梨さん。
名前のとおり、自分の望みに忠実。幼さと直情的な感覚。ある意味、純粋さか。

兵藤、森田遥奈さん。
守らないといけない人が出来た。あの時の未来と今の未来は違う。夢と理想が人は変わる。否定されることではなく、それを信じて戦えるのかということ。山崎とは道を分かつ。でも、その未来を信じる想いは、きっといつまでも同士なのだろう。
堅苦しい性格なのか、自分を簡単に肯定したり、人を否定したりすることが出来ないので、苦しんでいる。この文化祭での学生運動で、本当の自分の想いを見出す。自己肯定できた革命の姿。

校長、松田圭来さん。
貫禄あるおばちゃん姿。典型的な権力層の人。教育を大義にしているが、その大義はさらに上から押し付けられたようなもの。それでも、自分を守るためにそれに従う。言葉にいつも自分への言い訳が入り込む。

担任、三好貴美理さん。副担任、石本千夏さん。
事なかれ主義な感じで、まず自分の楽しみを優先した考えを持つ担任。かと言って、他人が不幸になればいいとは決して思っていない。
担任に従っているが、そこに敬意の念は見えない副担任。影があり、何かあれば切ってしまうような冷徹さも見え隠れする。

生指部長、村田奈々さん。生指課長、稲葉ひなたさん。
権力に媚びるいやらしい人間像を抜群に醸す。チビだけど、虚勢を張って大きく見せ、自分の弱さを横暴さで覆って見えないようにする部長。
素っ気なく、無関心というか、流れに乗って、自分の身を守る賢さを持つ課長。

会長、大久保汐里さん。
神経質で真面目な優等生。と思いきや、後半は荒々しい獣のような激しい子へと豹変し、弾けたキャラとなる。キーキーしてるヒステリックさ。

副会長、出口七星さん。会計、大野聖奈さん。
会長のキーキーした、神経質なところを、独特な掛け合いとハーモニーで増長する。グイグイくる圧迫感を、二人で醸す。

福田、山根有貴さん。
今どきの若い子。深く物事と関わるのが嫌みたいで、壁をすぐに作ろうとする。

向井、芧野美夢さん。
あの男なら誰しもが憧れる伝説の男を愛する。飄々としたボケっぷりで息抜きキャラか。

井村、辻ひかりさん。
面白純朴キャラ。ただいるだけで、滲む独特の味あるオーラ。

木元、鍋島美和さん。
小動物みたいなちょこちょこした明るさを醸す。悪意無き、今どきのどこか冷たい女子高生。

未来の父、佐藤汐里さん。
最初のシーンでの医者でも凛々しかったが、この役でもスマートで優しさも感じさせるかっこよさを見せる。

未来の母、多田野乃佳さん。
狂気を帯びた病んだ姿。怖れ、怯えといった、革命は、それを超えなくてはいけないという厳しさを認識させる。

日比野の父、宮野日奈さん。
パン屋だけど、コテコテの荒くれ親父。曲がったことが嫌いみたいな、職人風。

山崎の叔母、谷口七海さん。
一人、昭和風。時代設定を理解しやすく。革命を起こす、自分を変える時に、不安も大きいけど、無償でそれを見守ってくれる母の存在を感じるような温かみのある優しさ。

機動隊の長、野津歩美さん。
表があれば裏もある。革命を起こす者があれば、それを止める者も。どちらも、自分の信念で動く。その揺らがない想いを厳粛な姿で見せる。

レポーター、村上富香さん、中西裕菜さん、渡辺早紀さん。
きつそうな向井の母の村上さんが、へんてこなタケコプターつけたリポーターでいいのかな。ちょっと混乱しています。
一瞬だけだったけど、父とは違い、やはり母として子を守りたいといった日比野の母を演じた中西さん。素朴な感じの空気を醸すカメラマンの渡辺さん。
このお二人が、コンビのレポーターかな。妙にシュールだったが。

タイトキック、片岡紗江さん、山口和咲さん。
OGらしいが、今でもコンビかなんか組んで何かされているのかと思うほど、息の合ったお二人。
この作品の熱いメッセージをラップとして、言葉にする。それは山崎のするシュプレヒコールとは違う。でも、やはり、大切なのは気持ちなのか、心に響く。

マネージャー、根本夏乃さん、北川明希さん。
このお二人もOGらしいが、見事なハーモニー。よくよく考えると、全体としても一体感が感じられる作品。こうした一体感を生み出すことは、この高校の色なのかもしれない。

で全員だと思います。
メインの方々は、さすがの熱演。
モブ的な生徒役などの方々も、劇中でメタ的に語られるが、演技の幅広さを活かして、30人でも多いのに、それをもっと多くの人が舞台にいるように見せる技。
最後はこの作品のテーマ曲を皆で歌って締められる。
あの舞台に立つ方々の輝く、そして真摯に前を見詰める目。
あの力強い姿を見ただけで、未来を信じられる。
この作品は虚構でも何でも無い。まぎれもなく、今の世の人々に語り掛けられた真実のメッセージだったのだと思う。
人の心を動かす演劇の、表現の力を存分に魅せた、この高校の演劇部の方々に最大の敬意と感謝を。

|

« ティル・ナ・ノーグ~太陽の系譜~【劇団ZTON】160723 | トップページ | 十二人の怒れる女たち【HPF高校演劇祭 大谷高等学校】160726 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/63966471

この記事へのトラックバック一覧です: 僕たちの好きだった革命【HPF高校演劇祭 金蘭会高等学校】160725:

« ティル・ナ・ノーグ~太陽の系譜~【劇団ZTON】160723 | トップページ | 十二人の怒れる女たち【HPF高校演劇祭 大谷高等学校】160726 »