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2016年7月24日 (日)

ティル・ナ・ノーグ~太陽の系譜~【劇団ZTON】160723

2016年07月23日 ABCホール (75分、休憩15分、75分)

繋がれる時を描いた重厚で奥深い話に、この劇団お得意の殺陣パフォーマンス。
心震わされる圧巻の舞台だった。
異民族・異文化が共存し合うことを祈る人たちの戦い。
その武器は剣でも力でも無く、自分たちが相手を想う気持ち、それを伝える言葉、文字だった。
そんな想い合いの力を信じ、未来に繋がる平和で豊かな社会のために、意志を貫いた人たちの姿が描かれている。

アトラス大陸で平和に豊かに暮らしていたフォモール族。火山の噴火により、その大陸は海の底へと沈み、民たちは散りじりになって逃げ出す。王とその側近、司祭と幾らかの民たちの乗る船は、厳しい船旅の末、遂に大陸を発見する。アイルランドのティル・ナ・ノーグ。
司祭は王に、ドルイドの神の言葉だと、その大陸の全ての他の民族を滅ぼし、フォモール族だけの国を創るように指示する。
フォモール族は、この大陸で古くから生活する数々の民族に戦いを仕掛け、滅ぼしていく。その戦いは100年経った今も続いている。特にダナーン族は抵抗激しく、未だ制圧できないでいる。
キッホル王は、男勝りで嫁の貰い手がいないエリウ王女を、騎士の中の騎士と名高い弟のモルクの下へと派遣する。ダナーン族を倒す術をモルクから学ぶために。ヨーヒー司祭は、ドルイドの神の教えだと、フォモール族の大陸支配を王に進言。神の教えに逆らえば、かつてのアトラスのように、この大陸にも天罰は下されるだろうと。
いつもからかってくるが、シスコンを疑うくらいにエリウを敬愛している弟のバロル王子としばしの別れの挨拶を交わし、3人の側近とモルクの下へ向かう。
スレンは少々、おちゃらけたところがあるが腕の立つ男。騎士の血筋では無い。ドルイド教の教えでは、本来は騎士にはなれないが、エリウの口添えで騎士になれた。その恩義、そして、それ以上の想いを寄せて、忠誠を誓っている。
ブレスは堅物で生真面目な男。剣の腕はスレンにはかなわぬものの、その冷静沈着な判断能力には王からも一目置かれているようだ。
エオヒドは、騎士に憧れているまだ幼稚な男。それだけに、単純な発想で安直な行動を起こしてしまうことがあるようだ。今回はあのモルクと会えることを凄く楽しみにしている。
エリウ一行はモルクと出会う。王女と王の叔父の対面。堅苦しい挨拶を交わしたと思いきや、すぐに本性が出る。互いに堅苦しいことが大嫌いだ。豪快に笑い合い、久しぶりの再会を喜び合う。エオヒドはモルクがイメージとちょっと違ってがっかりしている。
早速、エリウが要件を伝える。モルクもそれは察していたようだが、自分も話したいことがあると言う。用事が出来たらしく、少しモルクが席を外す。
その時、数人の者が、エリウたちに襲いかかる。奇妙な言語。これはダナーン族だ。どうして、ダナーン族がここに。剣を交えるが、エリウはその中の一人の男にやられそうになる。自分より強い奴は王ぐらいだと思っていたのに。何とか兵士たちによって捕えられる。モルクが駆けつけてくる。
モルクが話したいことと関係があるらしい。話より見てもらった方が早い。モルクは皆を地下に連れて行く。
そこでは、ダナーン族の者たちが働いていた。
戦争で前線の兵士たちの多くは傷ついている。よく見れば、足や手、目を怪我している者もいる。神の教えよりも、戦うことなく共に生きる道を見出したい。今は教会に見つかるといけないので、こんな地下に閉じ込めているが、いつか太陽の下で一緒に働き、日々を過ごせるようにしたい。言葉の問題もある。今は、滅びたバルホルン族のトゥアンが通訳をしている。それでも何を考えているか分からない。でも、通じ合えるようにいつかしたい。モルクは理想を語る。
しかし、エリウたちはその行動を教会への反逆と見なす。特にエオヒドは許されないことだと憤慨している。
突然、ダナーン族の者たちが、仲間を救出に襲撃してくる。
モルクはトゥアンを通じて、話し合いの解決を試みようとする。しかし、エオヒドは、暴走して、ダナーン族の一人を斬ってしまう。
それを合図に入り乱れて剣が飛び交う。エリウはさっきの男と対決。またしても、負ける。
ダナーン族たちは、仲間の一部を連れて逃げていく。

モルクとエリウたちは、ダナーン族の本拠地へと向かう。
エオヒドはとりあえず置いていく。
モルクはトゥアンを通じて、エオヒドの件の謝罪、不可抗力だったこと、ダナーン族と仲良くしたいが、賛成と反対派に分かれている実情を伝える。
ダナーン族の族長、ヌアザも理解を示し、友好関係が築かれそうになるが、エオヒドがやって来て、再び戦いに。その戦いの中、土砂崩れが起こり、エリウと、エリウを破ったダナーン族の男が取り残される。
ダナーン族の男はキアン。族長の息子らしい。足を怪我している。エリウはその手当をする。キアンは抵抗するが、厳しく治らなくていいのかと諌める。言葉は通じなくても、何とか気持ちを伝え合う。やがて、それは感謝と謝罪の言葉へと繋がり、二人は通じ合う。と言っても現実には言葉の細かなところは通じていないので、勘違いで口づけを交わしてしまったり。
エリウはダナーン族の他の民たちに最初は警戒されるが、ヌアザが彼女を認め、受け入れられる。共に食事。カエルやヘビとか。その食事はさすがにエリウは合わないみたいだが、それが仲違いをする理由にはならない。
モルクたちとはぐれて、森で彷徨っていたトゥアンが捕まって、やって来る。危うく、丸焼きにされて食べられるところをエリウの口添えで助けられる。命の恩人として、トゥアンはエリウに忠誠を誓う。
エリウは、すぐにでも、フォモールに帰りたいところだが、キアンの足の怪我が癒えるまでは、この地でお世話になることにする。

フォモールでは、モルクはエオヒドを牢屋に監禁。
エリウをダナールの本拠地で見かけたという情報が入り、スレンは大切な人、エリウを救いたいと必死になっている。
そんな中、キッホル王が、バロル王子、ヨーヒー司祭を連れて、モルクの下へやって来る。連絡の途絶えたエリウを心配して来たらしい。
再会を喜ぶモルクだったが、キッホル王は、モルクのしていることを責める。ドルイド神の教えよりも、前線の兵士の気持ちをと願い出るモルクを剣で斬りつける。とどめはバロル王子にやらせる。
スレンとブレスも殴りつけ、ドルイド神を最後まで信じ抜いたエオヒドを救出。
ダナール襲撃を皆に命じる。
スレンとブレスがエリウを発見。傍にいたキアンを敵と見なして剣を向ける。
エリウは必死に止めようとする。エオヒドが現れ、キアンに剣を振るう。キアンを守るため、エリウは、エオヒドを剣で刺す。
エリウとキアンは、対決しているキッホル王とヌアザ族長の下へと向かう。
スレンは思う。いったい何を信じればいいのか。ブレスはならば神を信じろと言う。でも、神を信じたエオヒドは今、こうして斬られたではないか。スレンはエオヒドに肩を貸して、救い出そうとする。
エリウはキッホル王に、キアンはヌアザ族長に、互いに戦いを止めるように進言。
2人に握手をさせて、停戦を促す。ヌアザは剣を捨て、キッホルに手を差し出す。しかし、キッホルはその手を剣で斬る。
ブレスが現れ、キアンを刺し殺してしまう。
戦いは終わり、フォモール族はダナール族を遂に滅ぼし、平和な世の中が訪れる。

フィンタンという女王が、ルーという男にそんな話を聞かせている。
もちろん、そんなことで平和になるわけがない。
この話には続きがある。

フォモールに戻ったエリウの妊娠が発覚。
ドルイド教の教えで父の分からない子は殺さなくてはいけない。
父が誰なのかを頑として言わないエリウ。
キッホル王は、エリウの腹の子を殺そうとする。
その時、スレンが口を開く。自分が父親だと。
王はスレンをさんざん、殴りつけた後、二人の婚姻を認める。
もちろん、スレンは父親では無い。どうしてと聞くエリウにスレンは、あなたを信じているからと答える。
ありがとう。エリウのその言葉。ダナール語では何と言うのか。スレンはエリウに問う。
だって、生まれてくる子に教えなくてはいけないだろう。この子の父親の言葉を。

ルーが、フィンタン女王に今度は、自分の話をする。
エリウから生まれた子は太陽を意味するルーと名付けられる。
エリウは、まだフォモールとダナーンが共存できる世の中を考えていた。
そのためには、ドルイドの本当の教えを調べる必要がある。アトラスが崩壊して、各地に逃げた民たち。その中にきっと、ドルイドの真の言葉を知る者がいるはず。
スレンの協力も仰ぎながら、ある海の一族に目を付け始める。
ルーは、ダナーンの言葉も教えられ、いつかフォモールとダナーンの懸け橋になって欲しいとエリウは願う。
ただ、教会にダナーンの言葉を話していることを知られたら大変なことになる。ルーは外では絶対にダナーンの言葉を話してはいけないときつく釘を刺されていた。
しかし、所詮は子供。ブレスにそれがばれてしまう。
ルーはダナーンとの混血、悪魔の子。粛清すべき。
ブレスはルーに剣を向ける。
キッホル王もこの事実に薄々気付いていたようだ。しかし、王が向けた剣の先はブレス。
スレンとエリウ、そしてルーを逃がし、自らが砦となる。ブレスは王を殺害し、ヨーヒー司祭の下、自らが新王を名乗る。
エオヒドは逃げるスレンたちを追い詰める。エリウに刺された古傷が痛むエオヒド。エオヒドはエリウを刺し殺す。ルーはスレンに託される。
血の繋がらない父と子。スレンは後は、自分で生きろとルーに言うが、そんなことが出来る男ではない。愛するエリウの願いをルーと共に叶えるために一緒に逃げる。しかし、追われるその途中、ルーとはぐれて行方不明に。
一人ぼっちになり、途方に暮れ、自分の存在が皆を不幸に陥れたことを苦にして、自殺を図ろうとするルー。
その時、マナナンと名乗る男に救われる。
彼は、言葉を文字にしようとしていた。この大陸の元々の言葉はダナーン語。侵略して来たフォモール語との共通点も多い。それを整理して、言葉を文字に出来れば、共に生きる道が開かれるはず。ルーはダナーンの言葉を知る。マナナンの弟子として、その文字の開発に努めることに。
そのマナナンも亡くなってしまう。後を引き継いで、懸命に文字を生み出そうとするルー。
そんなルーの下に、バルホルン族のトゥアン、フィルボルグ族のファリニシュ、ネヴェス族のネヴェスがやって来る。言葉を文字にする研究をしているマナナンに会いに来たらしい。しかし、既に亡くなっている。
そこにフォモールからの兵士がやって来る。率いているのはバロル王子。
その姿を見て駆け寄るルーに、バロル王子は剣を向ける。
お前のせいで、王も、姉も皆、殺された。
一族は異端者と罵られ、今はブレス王の下で、子供を人質にされて、仕えているバロル。
バロルたちは、ルーの家に火を放ち、周囲を取り囲む。
トゥアンらの手により、何とか逃げ出し、フィンタン女王のいるダナーンの集落へと向かう。
フィンタンは、フォモールに滅ぼされた族たちの生き残りを集め、各々の族が幸せに共存できる世を考えている人。
そして、ルーは今、ここにいる。

その話を聞き、トゥアンはルーが命の恩人、エリウの息子であることを知る。そして、ここにいる族長のヌアザ。彼の息子がルーの父。ヌアザは、もう一人のおじいちゃんである。孫との再会を抱き合って喜ぶヌアザ。
フィンタン女王は自分のことを語る。
自分はダナーン族の民。若かりし頃、街でモルクにナンパされる。いつしか、キッホル王を紹介され結婚。
子供をもうける。ダナーンとフォモールの混血となる。そのことが明らかになることを怖れ、姿をくらまし、ダナーンの地でひっそりと暮らす。その子が、今、ダナーンをはじめ、他民族を全て排他しようとしている。
モルクは、バロル王子に刺された後、生き絶え絶えでダナーンの地に。言葉を覚え、マナナンと名を変え、言葉を文字にすることを始めた。
そのことを聞き、ルーは自分の思いを深める。
自分はフォモールと戦いたくない。仲良くなりたいと思っている。そのために文字を利用して、民族同士を繋げたいと。

ブレス王は、ルーを殺し損ねたバロルを叱責。バロルは今度は必ず、あの悪魔の子を殺すと懇願し、再び、ルーの下へと向かう。
ブレスはエオヒドにバロルを監視するように命じる。
バロルはルーと再び出会い、剣を向ける。
ルーによって、殺された人たちの名前が、バロルの口から出る。
ルーはその人の名前を紙に文字で記していく。死んでも、こうして文字があれば、その人の名は残る。
ルーが倒れ、バロルがとどめを刺そうとした時、その名前が文字で記された紙から、確かな声をバロルは聞き、躊躇する。
エオヒドがすぐに現れ、バロルの甘さを責めて、ルーもろとも剣で斬りつけようとする。
その時、どこかから弓矢が。
生き別れとなった親子の再会。
スレンが率いる、もう一つのフォモールの民たち。
アトラスで別れたフォモール族の人たち。海からの使者。
彼ら曰く、ドルイドの教えに他民族排斥は無い。あるのは、共存して生きていくことの術のみだと。
つまりは、今のドルイド教の教えは教会が勝手に作ったものだということ。
となれば、することは決まっている。教会を潰すことだ。
ルーはそれでも、教会やフォモールと戦争をして傷つけ合いたくない。
バロルは教会への地下の抜け道を案内してくれるという。これで無駄な戦いは避けられる。
ルーはヌアザから父、キアンが使っていた槍を手渡される。
いざ出陣。

スレンはブレスと対決。
ブレスはフィンタンとのことを語る。
どうしてルーは同じ混血なのに、あんな生き方が出来たのだろう。
自分は、混血である不安を打ち消すために、誰よりもフォモールでなくてはいけなかった。そのためにドルイド教の絶対的な信者になる必要があった。
皆が共存できる世を。そのエリウの願い、それを繋ぐルーのために、父であるスレンは戦う。ブレスは自分にもそんな父が欲しかったと涙を流しながら、剣をスレンに振るう。
ルーは司祭の下に。
ドルイド神の真実を語る。それでも、司祭は動じない。利権のため。王族にドルイド教、教会は守られる必要があった。それが神に救いを求める民たちのためでもある。
ルーは文字を司祭に見せる。言葉だけだから流されてしまう。こうして文字があれば、神を都合よく扱わなくてもよくなる。
司祭はそれを見て、悪巧みを考える。この文字があれば、嘘の神を本物に仕立てることが出来る。ルーの文字を記した紙を持ち去ろうとする。
抵抗するルーに司祭は剣を振りかざす。
スレンが現れて、ルーを助ける。
大事なものを油断して簡単に手放すな。スレンはルーを叱る。
文字の記された紙を槍にくくりつけ、教会の屋根に掲げて、民たちに神の不在を伝えるつもりだ。ルーが向かおうとしたところ、司祭が最後の力を振り絞り、スレンを刺す。油断していたのは自分だったか。早く行けとルーを促すスレン。
スレンの刺された傷が深く、立ち止まるルー。
エリウが願った共存できる世の中。その願いを繋がなくてはいけないはずだ。
スレンのその言葉を聞き、ルーは教会の上へと向かう。
文字を掲げ、民たちに伝える。
神はいない。救ってなどくれない。天罰だって与えられない。
自分はこれまでたくさんの人に救われた。頼って生きてきた。
助けてくれたのはいつだって、自分の周りにいる人たちだった。
フォモール、ダナーン、フィルボルグ、ネヴェス、バルホルン、・・・
自分を愛してくれる人に、その想いを伝えられる世の中。
想い合えるその先に、皆が共存して幸せを掴める未来がある。
その言葉に、民たちは自分たちの周りにいる人たちを見詰める。
そこにいる大切な人。守りたい人。想いを伝えたい人。
その想いの言葉を文字にして、皆は新しい時代へと目を向け始める・・・

大作なので、観ているうちに記憶が薄れているところもあるが、だいたいの流れ。
異民族・異文化が共存するにはどうしたらいいのか、それも宗教が絡み、絶対的な神様が存在する中で。
これは、現実に国家間で起こっていることだし、もっと身近なことに置き換えてしまえば、例えば神を会社の大義にしてしまえば、派閥闘争にも通じる。
さらに狭い視点で考えれば、あの子とは付き合ってはいけませんなんて、なぜか分からぬ親や家族の規則に従って、仲良く出来なかった友達がいたりするかもしれない。
異なるから、それを無視する。さらに進んで、それを無きものにしようと、破壊する行動に出る。でも、異なるって、何と比較して異なっているのか。自分の真理は本当に絶対的に正しいものなのだろうか。それに、その真理は本当に自分のものか。誰かから、いつの間にか押しつけられたり、なぜか当たり前だと従順に従ってしまっている誰かの真理を自分のものだと信じ込んでいるのではないのか。それならば、自分の新しい真理を生み出すことが出来るはず。その真理は、今、異なっていると思っているものを、異なっていないものに変えられるのではないか。
きっと、そんな考えが、相手を尊重して、認め合うことに繋がるのだろうが、まあ、実際はなかなか難しい。
異なる、違うって思ってしまったことを、否定してしまうのは人間の性なのかもしれない。そして、そんな異なるものが逆に無いと、自分を肯定できない弱さがあるようにも感じる。
異なることは、これまで自分の傍にあった大切なものを傷つけられたり、失ってしまうのではないかと、畏怖の念を引き起こす。変化を怖れるような気持ちと同じか。それを守りたい。この気持ちから、攻撃する考えが出てくるのは至極、妥当なようにも思う。

でも、本当は、異なるのではなく、何も知らないから、異なるってことにしていることがけっこう多いような気がする。知らないから否定。無関心は、相手に干渉しないのではなく、時折、排除する考えに行き着くようだ。これは、本当は知ればいいだけの話。
この話でのフォモール族は、他民族のことを全く受け入れず、何も知ろうとせずに殺戮を繰り返し、侵略する。自分たちと異なるから、攻撃するというのは、後付けの理由であり、まずは、自分たちだけがこの大陸で繁栄し、豊かな暮らしをしたいという欲を持ったから。その利権を得たいという考えが、教会の神を盾に、自分たちが王族から重宝される利権と巧く同調したように思う。
そこに、相手を知ろうと考える人が現れた。相手のことを想ってみようとする人が現れた。その時に、互いの気持ちを量るためのツールである言葉の壁にぶつかる。でも、それは気持ちを通わして、心を通じ合わせる想い合いで乗り切っている。でも、それだけで、本当の分かち合いは生まれていない。あくまで、それは個と個が結びついただけ。民族と民族という集団を繋げるには、その個と個の全てを繋げていかなくてはいけないので、時間がいる。そんなことをしているうちに、人は寿命が尽きてしまう。受け継がれた子孫に託しも出来るが、やがて、その想いは希薄になってしまうだろう。だから、皆に想いを伝えられる文字を生み出そうとした。
エリウとキアンの結ばれることのなかった悲しい想い合いは、二人の子、ルーに受け継がれる。ただ、想いが受け継がれたのではなく、その想いが、本当の平和で豊かな世を実現し、それが未来へと繋がるように作品は、文字を媒体とした、時間の流れで消え去ることの無い刻み込まれた想いを描こうとしているように感じる。
異なるから、傷つけ合うのも人だが、異なるから互いに知ろうとして、その想いを通じ合わせようとするのも人。傷つけ合えば、それはどちらかが壊されてしまえばそこでお終い。でも、心を通じ合わせることに終わりは無い。それは未来へと永遠に繋がり続け、想い合いの連鎖へと発展していく。そんな愛ある世の姿が導かれることを祈るような話のように感じる。

異民族・異文化を共存させようとする者たちが戦う。
もちろん、剣や武器を持って。しかし、同時に自分が相手を想っていることを伝える言葉や文字を武器にしても戦っている。
ここはあまりにも有名なので、今さら凄いと言及する必要も無いだろうが圧巻の殺陣パファーマンスはもちろん、優しく力強い真摯な心を込めた役者さんの演技による後者の戦いにも目を惹かれる。
この抱く心情描写と、殺陣パフォーマンスが融合したバランスが非常に素晴らしく感じたのは、バロル王子とルーの戦いだろうか。実は、ZTONの中でも、そのかっこよさや美しさ、キャラの濃さからかやたら目を惹いてしまう著名な役者さんに隠れてしまっていたのか、あまり知らなかった方々。久保内啓朗さんと前田郁恵さん。
この人たちは大きなものを背負っている。きっと潰されてしまいそうな苦しみと悲しみ、そして自分を人間ではなく鬼にしてしまうような怒りや憎しみ。でも、それをそのまま、未来へと持ち込もうとしない。自分たちと共に消し去る、さらには何か新しい、人が持てる温かさ、優しさに変えて、未来へと進もうとしている。
凝り固まった概念の中で育ち、それこそが将来、王を継いで国を守らないといけないと考えていたバロル。自分の存在が何者なのかに苦しみ、誰もが否定されないような世の実現のために自分が出来ることを探し求めて実行し続けたルー。
幼い二人が、血筋という絶対的に自分が背負うこれまでを見詰め、自分自身と共に、この世をより良くするためにどうすればいいのかを真剣に考えて、相手と対峙するという、身体だけでなく、心がぶつかり合った姿が、戦うシーンから感じられ、心惹かれたのかもしれない。

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コメント

SAISEI様

とりあえず。

前田さんは2014年8月の『覇道ナクシテ泰平ヲミル』の後に入団、その前は柳沢さん、山中さん、チェサンさんら所属されていた劇団ヘルベチカスタンダードの看板女優だったようです。
『三國学園』では司馬イザベラ昨年の『覇道ナクシテ泰平ヲミル』では曹操に憑く龍を演じられてました。新人公演の活躍などからZTONファンの間では評価の上がっている女性役者でポストすてらさん的な存在ですかね。今回は髪をショートにされた少年役。声の通りも良くステキでした。

投稿: KAISEI | 2016年7月24日 (日) 23時08分

SAISEI様

久保内啓朗さんは『オルタソフィア』から出演されていて『三國学園』の後に入団されてます。昨年の『覇道ナクシテ泰平ヲミル』では偽劉備を演じられてました。その時の雰囲気から私は注目していて新人公演での活躍からかなり良い感触でしたが今回はかなり印象がアップしました。ポスト為房さん的な存在と感じましたかね。。今まで良いポジションをされていた森さん(『覇道泰平』では周瑜)が今回は不参加。その間隙を埋める活躍でした。いや良かった。

※補足・・・前田さんはSAISEIさんが初めてZTONを観られた一昨年の『覇道ナクシテ泰平ヲミル』では劉協役(昨年は池永百花さんが演じた役)。ゴサンケの『正義のミカタ』にも客演。スワロウテイル役でした(笑)

投稿: KAISEI | 2016年7月24日 (日) 23時26分

SAISEI様

今作は脚本家の意図はともかく観客にわかりやすい作品だったと思います。過去のZTON 作品と比べて笑いも非常に多かった(過去作品では下ネタを使って笑かそうとすることが多くファンの間でも賛否両論あったw )ですし泣ける場面も設定されてましたかね。泣かなかったですけど(笑) そういう感情面で揺さぶろうと(脚本家の意図はともかく)してきたのは初めての作品でしょうし三世代の叙事詩的(劇団側は年代記、という言い方なのかな? )な作品で想いを受け継いでいく、というのは脚本家や劇団中枢の役者の方々が人生の折り返し地点に入りかけまた生活環境のなどに変化が生じたのも1つの原因かなあ、とも思っています。

さてイロイロな演劇作品や映画を観劇したり漫画や本などを読んだりしていると似かよっているな、と感じることが出てきますよね。それは盗作とかというわけでなく普遍的な内容であればあるほどそうなってきます。それをどうウマく消化し作品として開示できるかどうかが大事になるわけですが。

以下、他作品と似ていると感じた部分。

出だしの地殻変動なのかな? 揺れて始まる部分は2014年4月同じABCホールで開催された演劇集団ザ・ブロードキャストショウ『Breathe One's Last』と類似していると感じました。

トゥアンとファリニシュは『スターウォーズ』のCー3POとチューバッカに似てると感じたのですが(笑)

投稿: KAISEI | 2016年7月25日 (月) 12時16分

SAISEI様

HPF審査員お疲れ様です(笑)

今回はアイルランド神話を土台としていますがアイルランド神話はお詳しいですか? 名前は大体そのまま使っているようですが『三国志』と同じく入れ替えたりしているようですね。口承・伝承文学なのでいろいろなバージョンがあるとは思いますがとりあえず以下のようなアイルランド神話はご存知でしょうか? また各役者の感想も挙げさせていただきます(笑)

●アイルランド侵略の神話

シーザー族(Cessair)
 最初にアイルランド島に渡り,この島に住み始めたのはシーザーが率いた人々とシーザーの夫フィンタンでした。紀元前3000年ごろ,コークあるいはケリー地方に居住したと考えられています。しかしこの島をおそった大洪水によってシーザーの人々はフィンタンを除いて死んでしまいました。フィンタンはその大洪水の間,鮭や鷲,雄しかや鷹などさまざまに姿を変え逃げのびたと言われています。シーザーはアイルランドに羊をもたらしました。

フォモール族(Formorians)
 フォモール族もアイルランド島に最初に住んだ一族と考えられていますが,この一族の起源についてはよくわかっていません。シーザー族の時代にはすでに存在し,後に力を持ったか,または大洪水が引いたあと海からやってきたと考えられています。いずれにしても後にパーソラン族がこの国に来たときフォモール族はすでにかなりの勢力を持っていました。フォモール族は,恐ろしい魔力をもつ巨人の一族で,海の底に住み,人間と同じ腕と足にさまざまな動物の身体の部分を寄せ集めて創った醜い姿の怪物であったと言われています。“残酷なウーア”の息子は“破壊”と呼ばれ,手足からにじみでる毒液は触ったすべてのものを腐食させていきました。またフォモール族の戦争の女神ロットはフォモール族を多くの戦争に駆り出しました。ロットは胸に口をもち背中に4つの目がありました。フォモール族の母神は“深海”のダムヌ。フォモール族は初期の妖精の種族であると言われ,また今日も魔神や海の怪物の象徴とされています。

パーソラン族(Partholans)
 紀元前2700年ころ,アイルランド島にわたってきた最初の侵略者はパーソラン族でした。王パーソランは25人の男と24人の女の兵士を率いてムンスター地方にやってきました。パーソランは故郷の国の王権を自分のものにするため両親を殺しましたが,目的は果たせず,その国を追われてアイルランド島にやってきたのでした。パーソラン族はアイルランド島を支配していたフォモール族と主権をかけて戦いましたが,300年にも及ぶ紛争ののちパーソラン族は敗れ,やがてフォモール族によってばらまかれた疫病によって滅んでいきました。しかしパーソラン族は“あらゆる手工業の達人”といわれ,兵士の他に7人の農夫,2人の鋤人,2つの鋤鉄,4匹の雄牛をひきつれ,アイルランドに農業と手工業をもたらしました。また2人の商人によって金や家畜ももたらされた。パーソランの長兄のルドーヒ(Rudraidhe)は古いアルスター地方の王の家系の祖先であると言われています。

ネミディア族(Nemeds)
 パーソラン族に続いて紀元前2300年ころスペインかあるいはスキタイからアイルランド島にやってきたのはネミドをリーダーとするネミディア族でした。ネミドの息子,アーサーが先導してフォモール族の王モルカに戦いを挑みましたが敗れました。以後ネミディア族はフォモール族に支配され,毎年生まれた子供や家畜の3分の2を税金として差し出さなければなりませんでした。やがてネミディア族もパーソラン族と同じく疫病によってほろび,生き残ったわずか30人のネミディア族は2つのグループに別れ,一つは北の地方へ,もう一つは西の地方へ逃れて行きました。

フィル・ボルグ族(Fir Bolg)
 西の地方へ逃れたネミディア族はフィル・ボルグ族として紀元前1930年ころ再びアイルランド島へもどってきました。フィル・ボルグ族の長老,セミオンのとりはからいにより,フォモール族と融合し,フォモール族とともにアイルランド島を支配していきました。フィル・ボルグ族は狩猟に長け,アイルランド島を5つの地方に分け,それぞれの地方はすぐれた王によって統率されていました。これらの一人は Eochaid で彼が支配権をもっていたころ収穫のない年はありませんでした。偽りは追放され,法律が成り立ち最初に裁判も行った王でした。

トゥアハ・ディ・ダナーン(Tuatha De Dannan)
 一方,北の地方に逃れたネミディア族は変わりました。女神ダヌを母神とする神々の一族トゥアハ・ディ・ダナーンとなり,巨人で魔法を身につけ,紀元前1900年ころ霧の中に姿を隠しアイルランド島にやってきました。トゥアハ・ディ・ダナーンは高い文化,文明,すぐれた技能や芸術をもち,フィル・ボルグ族は彼らを巨人の魔術師と呼びました。トゥアハ・ディ・ダナーンはフィル・ボルグ族の土地をつぎつぎ侵略し,人々を支配下に治めていきました。そしてついにゴルウェイのコングの近くマグ・トゥレド(モイトゥラ)でアイルランド島の主権をめぐり2種族の戦いとなりました。フィル・ボルグ族は勇敢に戦いトゥアハ・ディ・ダナーンは苦戦を強いられ,戦いの末フィル・ボルグ族の王 Eochaid は命を失いましたが,トゥアハ・ディ・ダナーンの王ヌアダも片腕を失いました。戦いは4日間続き,トゥアハ・ディ・ダナーンはフィル・ボルグ族にコナハト地方を与え,和平を結ぶこととなりました。
 片腕を失ったヌアダは王位の掟により失脚し,トゥアハ・ディ・ダナーンはその後任として,フォモール族との平和と善意の統治を期待してフォモール族の王子エラーサとトゥアハ・ディ・ダナーンの女神エリウの息子であるブレスにアイルランドの王権を与えました。しかしブレスは支配的な暴君となり高い税金を課するなどトゥアハ・ディ・ダナーンの人々を苦しめました。ヌアダの兄弟ディアン・ケヒトは腕を失ったヌアダのために銀で腕をつくり,やがてヌアダがその腕をつけて王位にかえりざくとトゥアハ・ディ・ダナーンはすぐにブレスを追放しました。怒ったブレスはフォモール族を再結集し戦いにそなえました。
 その当時フォモール族の王は“こぶしの格闘家”と呼ばれたバロルでした。バロルは額に猛毒の一つ目をもつ怪物で,ひとたびバロルの目がひらかれると,目にうつるすべてのものを破壊してしまう力があり,そのまぶたはとても重くつねに4人の兵士がそれを支えていました。
 バロルには,のちに自分の孫息子に命を奪われるという予言がありました。そのためバロルは娘のエスニウを塔に閉じ込め隔離しました。ディアン・ケヒトの息子キアンは,その予言を知るドルイドのビローグの助けをかりてその塔に忍び込み,やがてエスニウは男の子を生みました。その存在を知ったバロルはその子を海に捨てますが,ひそかにビローグに助けられ,少年は海の神マナーン・マクリルに育てられました。その少年こそがルーで,ルーはあらゆる芸術や技術を身につけ万能の神となって王都タラにやってきました。ちょうどヌアダが再び王位についた祝宴をしていたところでしたが,ヌアダはルーのたぐいまれな才能を認め王位をルーに譲りました。
 紀元前1870年ころ,ルーを王としてのトゥアハ・ディ・ダナーンとフォモール族の戦いがスライゴーのアロー湖の近くで行われました(モイトゥラの2度目の戦い)。ここにアイルランドの歴史のなかでももっとも英雄的な戦いが開始されました。
 トゥアハ・ディ・ダナーンからは多くの優れた神々がこの戦いに参加しました。かじ屋の神ゴブニュは強力な槍と剣をつくり,オグマはたぐいまれな戦力でつぎつぎと敵を倒し,ダグダは巨大なこん棒で恐るべき速さで敵を殺していきました。医療の神ディアン・ケヒトは魔法の泉で負傷した兵士の傷を癒しました。またトゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの三女神のひとりバブドもこの戦いに加わりました。通常バブドはずきんをかぶったカラスとして戦場をとり囲んだり,兵士たちにまざって狼の姿となって戦場に現われましたがこの戦いにおいてはそのままの姿で現れました。
 戦いがいよいよ激しくなり,ついにルーは,バロルと一騎討ちとなりました。バロルは目を開いてまずヌアダを殺し,次にルーに向ってその目を開いたとき,ルーはバロルの目をめがけて石を放ちました。石と目はバロルの頭をつきぬけ,宙に浮いたバロルの目はフォモール族の兵士をつぎつぎと倒していきました。目はやがて天高くのぼり,太陽に吸い込まれていきました。
 バロルは予言どおり孫息子のルーに倒されました。戦いの最後にはタラのドルイドの王フィゴル・マクマモスは巧妙な魔法を使い,ついにフォモール族を倒しました。
 戦いの後生き残ったフォモール族は海に逃れ,ロックランと呼ばれる海の怪物としてテスラ王のもと,海の底の王国マグ・メルに住んでいると言われています。 現代でも物語の中にフォモール族はたびたび登場します。またアイルランドの西の地方では夜になるとぞっとするような生き物が海から岩の海岸に上ってくるのが見られるのだそうです。
 モイトゥラの戦いで,戦場となったスライゴーの広大な平原は“フォモールの野原”と呼ばれ,アイルランドの主権をかけたこの3種族の激しい戦いを記念するかのように,多くのケルンや柱石や古墳が点在しています。
 英雄トゥアハ・ディ・ダナーンは後に5番目の侵略者マイリージャ族にアイルランド島を奪われますが,約200年の間アイルランド島を支配し,島に数多くの痕跡を残しました。トゥアハ・ディ・ダナーンは今日も謎とされる巨石群や古墳を各地に建てました。またタラの丘にリア・ファイル“運命の石”と呼ばれる石柱をたて,アイルランドの上王たちはその上に立ち王位を授けられたと言われています。もしその石が満足げに大声で笑うとその人物は王としてふさわしく,もし王にふさわしくないものが乗ると苦悩で大声で泣きました。またトゥアハ・ディ・ダナーンはアイルランドを4つの地方に分割し,それぞれ独自の行政権をもたせました。そしてさらに4つの地域に細分し,それぞれ中心となるひとつの町に重要な役割を与えました。

マイリージャ族(Milesians)
 やがて紀元前1700年ころミルが率いるマイリージャ族(ゲール族ー古代ケルト人と起源を同じくする民族)がスペインから大軍を引き連れアイルランド島にやってきました。
 マイリージャ族がアイルランド島に侵略してきたとき,トゥアハ・ディ・ダナーンの3人の戦いの女神たちは,かわるがわるそれを阻止しようと試みました。最初の女神はバンバでした。バンバには魔術師の才能が備わっていましたが,力は及ばず,マイリージャ族はさらに前進して行きました。2番目にマイリージャ族に立ち向かった女神はフォドラでしたが,彼女も侵略者たちに打撃を与えることはできませんでした。
 最後にマイリージャ族の前に立ちはだかったのはエリウでした。エリウは強力な魔力で敵の軍隊に向かって泥の玉を激しく投げおとし,地面について粉々になったときそれは何百という荒々しい兵士に姿をかえました。エリウは勇敢に戦いマイリージャ族の前進をくい止めました。
しかしトゥアハ・ディ・ダナーンはティルタウンの戦いにおいてマイリージャ族の大軍を前についに敗れ,アイルランド島はマイリージャ族の手にわたることとなりました。そしてミルの息子エリモンはアイルランドで最初の人間の王となリ,現在のアイルランド人の祖先となりました。
 マイリージャ族の偉大なる詩人で吟遊詩人の Amhaighin はエリウの勇敢な戦いに敬意を表わし,アイルランド島をエリウ(エール)と名付けました。
 神々の一族トゥアハ・ディ・ダナーンはすぐれた技能や技術を有し,マイリージャ族はトゥアハ・ディ・ダナーンをたぐいまれな魔術師と呼び恐れました。マイリージャ族が倒した偉大なる神々の伝統を受け継いだマイリージャ族の子孫たちは,それを後の王国にも伝え残し,トゥアハ・ディ・ダナーンの神や女神は異教の神々として崇拝され,子孫たちに多くの神話や伝説を残しました。
 アイルランド島をマイリージャ族に譲りダーナ神族トゥアハ・ディ・ダナーンは地下の世界や遠い海の彼方「常若の国」(ティル・ナ・ノーグ)に逃れ,妖精となって目に見えない世界を支配していると言われています。
 マイリージャ族だけでなく,フィル・ボルグ族やトゥアハ・ディ・ダナーンによってもたらされた多くの文化や文明も今日のアイルランドの基礎を築きました。これら3種族ははるか昔に同じケルト民族から枝別れし,東ヨーロッパからさまざまな文化圏をとおり最後に再びアイルランドで出会ったものたちです。その後大陸からやってきたケルト民族がこの西の地に落ち着き,すでに存在したゲールの神話や文化を引き継ぎながら,アイルランドのケルト人社会が確立しました。

投稿: KAISEI | 2016年7月26日 (火) 16時55分

SAISEI様

アイルランド神話の神々

●トゥアハ・ディ・ダナーン(TuathaDeDanann)
ダーナ神族。女神ダヌ(Danu)を母神とするアイルランドの神々の種族で,アイルランドの神話伝承の中心。先にアイルランド島を侵略したネミディア族のうち北へ逃れた人々が数百年ののちあらゆる魔法や技術を完成させ,トゥアハ・ディ・ダナーンとしてアイルランド島にもどってきた。その時アイルランド島を支配していたフィル・ボルグ族を征服し,さらに怪物の一族フォモール族を倒し,約200年間アイルランド島を支配した後,5番目にアイルランド島にやってきて最後の征服者となったマイリージャ族との戦いに敗れ島を追われる。
トゥアハ・ディ・ダナーンの一族の主な神々はダグダ(Dagda),ブリジッド(Brigid),ヌアダ(Nuada),ルー(Lugh),ディアン・ケヒト(DianCecht),オグマ(Ogma),リル(Lir)である。
トゥアハ・ディ・ダナーンには4つの神宝があった。それはヌアダの剣,ルーの槍,ダグダの大がま,そしてファルの聖石。ヌアダの剣は恐るべき力を持ち,それが降りおろされると何人も逃れることができなかった。ルーの槍は無敵で,それを持つものに勝利をもたらす。ダグダの大がまには永久に食物が満たされた。ファルの聖石(トゥラン)はアイルランドの王としてふさわしい人物が乗ると,叫び声を上げてそれを告げた。
トゥアハ・ディ・ダナーンはマイリージャ族との戦いに敗れた後,目に見えない精霊シーとなって丘陵や海のかなたの「常若の国」ティル・ナ・ノーグに逃れた。

●ティル・ナ・ノーグ(TirnanOg)
ティル・ナ・ノーグはトゥアハ・ディ・ダナーンがマイリージャ族に島をひき渡した後,遠い海のかなたに逃れ,妖精となって住んだといわれる国。「常若の国」と呼ばれるティル・ナ・ノーグは西の海のはるかかなたにあると言われ,光り輝く国で病も苦しみも老いも死もなく人間たちが永遠に夢見る理想の国。

●ダヌ(Danu,Dan,Dana,Dann,Danann,Danae,Danna)
トゥアハ・ディ・ダナーンの母神。ダヌはダグダ,ディアン・ケヒト,オグマ,リル,ヌアダ,ゴブニュなどの母である。またダヌはアイルランドの運命の三女神(モリガン,バブド,マハの三体の女神)を主導する女神。

●ダグダ(Dagda,Daghda,Dagde)
トゥアハ・ディ・ダナーンの“大地と父なる神”,生と死を司る。“偉大な神”ダグダは最も力のある神のひとりとされ,ダーナ神族の指導者である。魔術を自在にあやつり,豊富な知識をもち,戦術にたけた兵士で,熟練した芸術家。母は女神ダヌ,モリガンを妻とし,オィンガス,ミディールと女神ブリジッドの父。
ダグダはトゥアハ・ディ・ダナーンの4つの神宝のひとつ,食物が満たされ尽きることがない底なしの大がまと季節を定めるハープを持つ。またダグダがもつこん棒は一方の端をひと振りすると9人の男を殺すことができ,もう一方の端をひと振りすると生きかえらせることができた。

●ブリジッド(Brigid,Brigit,Bridget,Brighid)
トゥアハ・ディ・ダナーンの豊穰と詩人,治癒,家畜そして鍛冶を司る神。ダグダの娘,トゥアハ・ディ・ダナーンの王ブレスの妻である。ブリジッドは“炎の矢と力の女神”と呼ばれ,白鳥に象徴される。ブリジッドを祝う祭りはアイルランドの地方の四大祭りの一つで,2月1日に行われる。またブリジッドは火と健康の神ともいわれている。
ブリジッドの寛大さと広い心はアイルランドにキリスト教がもたらされた後,聖女ブリジットとして受け継がれた。

●ブレス(Bres)
豊穰と農業の神。ブレスはフォモール族の王子エラーサとトゥアハ・ディ・ダナーンの女神エリウの息子。ブレスの妻は女神ブリジッド。
トゥアハ・ディ・ダナーンはフォモール族との平和と善意の統治を期待して,負傷したヌアダ王の後任としてブレスをアイルランドの王に任命した。しかし,暴君となったブレスの悪政により,トゥアハ・ディ・ダナーンの人々は苦しめられることになった。ヌアダが銀の腕をつけ再び王位につくと,ブレスは即座に追放され,その後復権を狙ってフォモール族を再結集し,やがてモイトゥラの2度目の戦いに発展する。

●ヌアダ(Nuada,Nudd,Ludd)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの神。女神ダヌの息子でダーナ神族の王。“銀の腕のヌアダ”と呼ばれた。ヌアダはトゥアハ・ディ・ダナーンの4つの神宝のうちのひとつ,無敵の剣をもち,戦いにおいてはそれで敵を恐れさせた。
ヌアダはモイトゥラでのフィル・ボルグ族との戦いで片腕を失い,王の座をブレスに譲ったが,兄弟である治癒の神ディアン・ケヒトがヌアダに銀の腕をつけたので再び王位にかえりざくことができた。モイトゥラの2度目の戦いで死の神バロルに倒される。

●ディアン・ケヒト(DianCecht)
トゥアハ・ディ・ダナーンの治癒と職人と医療の神。女神ダヌの息子。ディアン・ケヒトは傷を負ったトゥアハ・ディ・ダナーンの兵士のためにスレインの泉を清めた。その泉に身体を浸すと傷が癒され再び戦いに参加することができた。フィル・ボルグ族との戦いで片腕を失った兄弟の王ヌアダのために銀の腕をつくった。

●オグマ(Ogma)
トゥアハ・ディ・ダナーンの雄弁と霊感,言語と学習の神。女神ダヌの息子。古代のアイルランドの文字としてつかわれたオガム文字を発明した。また戦いにおいてはたぐいまれな力をもつ兵士。

●リル(Lir)
トゥアハ・ディ・ダナーンの海の神。女神ダヌの息子。

●ゴブニュ(Goibniu)
トゥアハ・ディ・ダナーンの鍛冶屋と技術の神。女神ダヌの息子。ゴブニュの作った剣は常に真実をつきとめた。醸造者として優れ,ゴブニュの酒を飲んだものは永遠の命が与えられた。

●オィンガス(AengusmacOc)
トゥアハ・ディ・ダナーンの愛と若さの神。ダグダの息子。

●モリガン(Morrigan,Morrigu)
戦争と競争と豊穰の女神。ダグダの妻。トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの三女神(モリガン,バブド,マハ)のひとり。またモリガンは三相一体の女神でもあり,花開く豊穰の女神である「乙女アナ」,永遠に生命を生み出す「母神バブド」,幻影の女王,死母神である「老婆マハ」の三相をもつ。ときにはミュンスターを支配する女神ムーゲンとなった。
モリガンはしばしば渡りカラスとして戦場を飛び回る。モイトゥラの最初の戦いではフィル・ボルグ族と2度目の戦いではフォモール族と勇敢に戦った。
また戦いの結果と死を予言するといわれモリガンは戦いの前に死にゆくものの血のついた衣服を洗う。

●バブド(Badb)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの三女神のひとり。大からすに姿を変え,“戦場に現れるからす”として知られる。戦いに参加するだけでなく,兵士に魔術をほどこし混乱を招いて戦いの結末にも影響を与える。戦場は“バブドの地”と言われる。
バブドは三相一体の女神モリガンの第二のペルソナ。夜の闇に姿を表わし血のついた衣服を洗うと言われる。

●マハ(Macha)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの三女神のひとり。戦争と豊穰の神。“からす”の姿をした神で戦場に姿を表わし,戦死するものの甲や武器を浅瀬で洗うとされる。マハは三相一体の女神モリガンの第三のペルソナ「死の相」として広大な埋葬地を統治していた。また民話に登場する死を予告する妖精バンシーや「夜の洗濯女」の前身。

●ルー(Lugh,Lug)
トゥアハ・ディ・ダナーンの太陽の神,“光輝くもの”または英雄の神。黄金の髪の毛が輝き,若く強くあらゆる芸術,技能,教養に秀でた神。トゥアハ・ディ・ダナーンの4つの神宝のひとつである槍をもち“長腕の賢者”とも呼ばれる。
ルーの母は魔神の種族フォモール族の王であるバロルの娘エスニウ。父はトゥアハ・ディ・ダナーンの一人キアンであった。祖父バロルを倒すという予言があったためバロルによって海に捨てられたが,海の神マナーン・マクリルによってひそかに育てられた。ルーはあらゆる芸術の熟練者となり自ら王都タラへやってきた。ヌアダが万能の神ルーに王位をゆずると,ルーはきたるべき戦争(モイトゥラの2回目の戦い)に備え軍の指導者となった。やがてモイトゥラでのフォモール族との戦いでトゥアハ・ディ・ダナーンを勝利に導いた。
最も名が知れ,広く崇拝されているケルトの神で,ルーの名は形を変えてリヨンやロンドンの古称など,多くの都市の名前の由来となっている。また8月1日はアイルランドの地方で豊かな実りと収穫を祈るルーナサダという祭りが行われる。

●エリウ(Eriu,Eyre,Eire,Eiriu)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの女神。トゥアハ・ディ・ダナーンの王ブレスの母。バンバとフォドラとともに三相一体の女神のひとり。エリウ,バンバ,フォドラはマイリージャ族がアイルランド島に侵略してきたとき,それを阻止するために勇敢に戦った。その戦いに敬意を表わし,エリウの名がアイルランドの古い名前エールEireとなった。バンバとフォドラも詩や物語の中でアイルランドの古称として登場する。

●バンバ(Banba)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いと豊穰の女神。アイルランド島に侵略してきたマイリージャ族を阻止するため戦った。エリウとフォドラとともに三相一体の女神。

●フォドラ(Fodla)
トゥアハ・ディ・ダナーンの戦いの女神。アイルランド島を侵略してきた5番目の種族マイリージャ族と戦った。エリウとバンバとともに三相一体の女神。

●マナーン・マクリル(ManannanmacLir)
トゥアハ・ディ・ダナーンの神のひとり,海の神リルLirの息子。魔術師で呪術師,海と豊穰の神で,天気を予想し,水夫や漁師の守護神。ルーLughを含む多くの神々の里親になっている。マナーン・マクリルは漕がずとも命令どおり動く船と,着れば姿を消す上着,炎でできた帽子,必ず的を突く剣を持っていた。また彼は戦車にのって海をわたると言われる。海のかなたの「常若の国」ティル・ナ・ノーグの王で「黄金の髪」ニァムの父。

●フォモール(Formorians,Fomors)
アイルランド島に最初に住んだ,醜く恐ろしい魔力をもつ巨人の一族。約800年間アイルランドで勢力をふるい,数々の侵略者たちを滅ぼした。モイトゥラにおいて,アイルランド島の主権をかけて神の一族トゥアハ・ディ・ダナーンと戦い,敗れた後海へ逃れマグ・メルでロックランという怪物として暮らしているといわれている。
フォモール族は人間に戦いを挑んだことから神話や物語の中でしばしば霧,嵐,冬,災害,不作などの自然の力に結び付けて考えられる。

●テスラ(Tethra)
フォモール族の王で,海の神または来世の神。トゥアハ・ディ・ダナーンとの戦いで敗れ,その後マグ・メルを支配している。

●マグ・メル(MagMell)
マグ・メル(喜びの島)は死者が暮らす海の底の王国。他の死の国とは違いマグ・メルは理想の島,または海の底の楽園として表わされる。この国はテスラ王によって支配され,トゥアハ・ディ・ダナーンとの戦いの後海に逃れたフォモール族が,ロックランと呼ばれる海の怪物となって住んでいるといわれる。

●ダムヌ(Domnu)
フォモール族の母神。ダムヌの名前は“深海”を意味する。ダムヌの子たち(闇と悪意)とダナの子たち(光と善意)の紛争が多くの神話伝説や英雄物語の中心となっている。

●バロル(Balor)
“死の神”バロルは巨人の怪物の一族フォモール族の王。バロルは一つ目の巨人で,その目はうつるものすべてを破壊する力を持っていた。バロルには自分の孫息子に命を奪われるという予言があった。その孫息子とは万能の神ルーで,やがてトゥアハ・ディ・ダナーンの王となったルーと,モイトゥラの2度目の戦いにおいて一騎討ちとなり,バロルは予言どおり倒された。

投稿: KAISEI | 2016年7月27日 (水) 15時53分

SAISEI様

Wikipediaによると,

神話物語群

 神話物語群(神話サイクル,神話説話群などとも)(愛:naScéaltaMiotaseolaíochta)は,ケルト神話の一つ,アイルランド神話の4つのサイクルのうちの1つであり,キリスト教伝来以前のアイルランドの異教の神話を描写しているためにそう呼ばれる。登場する神々や超自然的な存在は,エウヘメリズムによって王や英雄が神格化されたものと解釈される。[要出典]このサイクルは,吟遊詩人の語り伝えた多くの物語や詩から成るが,そのほとんどが中世の写本や,擬歴史的な同時代史『アイルランド来寇の書(英語版)』や『アイルランド王国年代記(英語版)』,ジェフリー・キーティング(英語版)の『アイルランド史(英語版)』から見出されたものである。こうした物語や詩は,早くは西暦700年から,遅くは950年にその原型がある。

来寇の伝承

 神話物語群は,ゲール語を話すゲール人とされるミレー族の来寇と,それ以前の数回にわたる来寇を通じて,キリスト教伝来以前の初期の住民たちの歴史を追う。こうした来寇者たちには,おそらく純粋な歴史上の移民も含まれる。トゥアハー・デ・ダナン族のような魔法の力を持ったその他の来寇者は,元は神話上の神々であったことは疑いないが,格下げされ,単なる来寇者とされたものである。この伝承の初期のテキストは『アイルランド来寇の書』である。こうした伝承の中には,たとえば,2編の『マグ・トゥレドの戦い』などのサーガや,近代になって編集された『アイルランド王国年代記』,『アイルランド史』なども含まれる。マグ・トゥレド(塔の平原)という名が,キリスト教以前のアイルランドにみられたという円形の塔の存在を間接的に実証しているのは興味深い。[要出典]

洪水以前

 多くの伝承が最も初期のアイルランドの住人たちについて伝えている。その中で最もよく知られた伝承はケスィル(英語版)率いるヴァン族に関するもので,『アイルランド来寇の書』や,他の初期のテキストによって記録されている。ケスィルはノアの孫娘であったと言われているが,箱船に彼女のための部屋がなかったため,彼女と,彼女に従う50人の女と3人の男は,大洪水が起こり,全ての地を浚ったとき,鮭に姿を変えたフィンタン(英語版)の上に乗って難を逃れた。フィンタンはその後の歴史の中を生き続け,幾度も姿を変えて,彼が救った人々の話を語り伝えた。
 キーティングは,17世紀に著した『アイルランド史』の中で,現在では原典が失われたケスィルに関するもの以外の伝承をいくつか書き記している。『SaltairofCashel』に記された詩は,聖書のカインの3人の娘が,アイルランドを見た最初の人間だと言っている。二つ目の伝承,『BookofDruinmSnechta』に記されたケスィル伝説の変異形では,アイルランドの最初の住民は,バンバと呼ばれる女性に率いられていたという。バンバの名はこの島の名となったと伝承は伝える。彼女は150人の女と3人の男とともにやってきて,40年間暮らしたが,大洪水の200年前に伝染病によって滅亡したという。キーティングが記録した別の伝承は,原典が示されていないが,アイルランドは,嵐によって流れ着いたイベリアの3人の漁師によって発見されたという。彼等はイベリアから妻たちを連れてきてアイルランドに植民したが,それはちょうど大洪水の一年前のことであり,洪水によってみな溺れてしまった。

洪水以後

 『アイルランド来寇の書』の伝承は,大洪水の後,アイルランドは300年の間無人の地であったという。が,キーティングは二つの互いに矛盾する伝承を記している。『SaltairofCashel』の中のある詩は,ニネヴェのニヌスの血縁者であり,ビト(Bith)の息子Adnaと呼ばれる若い男が,大洪水の140年後にアイルランドを訪れたが,何もなかったので,彼は,単にひと握りの草を引き抜いて持ち帰り,隣人に見せただけであった。キーティングが伝える別の伝承には,キッホル(英語版)に率いられたフォモールと呼ばれる半神人たちについて記されている。彼等は大洪水の100年後にアイルランドに植民し,200年間住んだという。この伝承によれば,フォモールたちはイーハ平原の戦い(BattleofMagItha)において,パルホーロン率いる一族(パルホーロン族)によって打ち倒されたとされる。またフォモールたちは,「魚と鳥」の上に住んでいたという。一方,パルホーロン族は,『アイルランド来寇の書』によれば,最初に家畜と家屋とアイルランドに持ち込んだと言われている。

パルホーロン族

 『アイルランド来寇の書』によれば,パルホーロン(英語版)率いる一族は,大洪水の300年後,または312年後にアイルランドに植民した。ノアの息子ヤペテの,さらに息子マゴグの子孫であるとも言われるパルホーロンと彼の一族は,ギリシアから,シチリア,イベリアを経てやってきたとされる。彼等はImberScene(現在のケリー州ケンマレ(英語版))に上陸した。彼の4頭の雄牛は,アイルランドの最初の家畜である。彼の一族の,Breaは,アイルランドに家屋を建てた最初の人間であり,Samailiathは,エールを醸造した最初の人間であるといわれている。彼等が上陸したとき,アイルランドにはたった一つの平原「センマグ(古い平原)」だけが存在したという。現在のTallant近郊である。パルホーロンが生きている間に,4つの新しい平原の存在が明らかになり,7つの湖が大地から出現した。が,彼と彼の一族である5000人の男と4000人の女は,伝染病で一週間のうちに全滅した。たった一人生き残ったトゥアン(英語版)は,フィンタンと同じように,何度も姿を変えて生き残り,彼の一族の物語を聖フィネン(英語版)に伝えた。

ネヴェズ族

 30年後,ネウェズ(英語版)率いる別の一族がやってきた。『アイルランド来寇の書』は,スキュティアから来たギリシア人たちであると記している。彼等は44隻の船で航海していたが,アイルランドに到達したのは,たった1隻であったという。ネヴェズの時代に,大地からさらに4つの湖が現れ,12の平原が開拓された。ネヴェズはまた,フォモールたちと3回戦った。ネヴェズは突然の病で斃れた後,彼の子孫たちはフォモールを率いるモルク(Morc)とコナン(英語版)によって支配され,子供たちの3分の2と,小麦と牛乳を貢ぎ物として差し出すよう命じられた。ネヴェズの息子,フェルグス(FergusLethderg)と孫たち,セームル(Semul)とエルガン(Elgan)は反乱軍を率いてドニゴール州の海岸の沖のトリー島(英語版)のコナンの塔に攻め込み,コナンを殺した。しかしモルクは反撃に出た。ところがそのとき,突然海がせり上がり,フォモールもネヴェズ族も,全ては溺れ死んでしまう。だが30人の戦士を乗せた船だけが生き残り,彼等はアイルランド島を離れて世界中に散らばった。その中の一人,フェルグスの息子,BrianMaelはブリトン人の祖先となった。またSemeonはギリシアへ行き,フィル・ヴォルグ族の祖先となった。Bethachは北の島々へ行き,トゥアハー・デ・ダナン族の祖先となった。

フィル・ヴォルグ族

 次の来寇者は,フィル・ヴォルグである。彼はアイルランドに初めて王権を確立し,また法制度を整えた。フィル・ヴォルグを始祖とする王たちの一人,Rinnalは,鉄製の鏃を使った初めての人間と言われている。T.F.O’Rahillyによる物議を醸す説によれば,この一族は歴史上実際に存在した人々であって,Builg族またはベルガエ族,さらにはIverni族とも関連づけられるという。

トゥアハ・デ・ダナーン族

 フィル・ヴォルグ族はトゥアハ・デ・ダナーン族,即ち,「ダーナ女神の一族」によってアイルランドから追い出された。トゥアハ・デ・ダナーン族は,ネヴェズの子孫であり,北の暗い雲がたちこめる地からやってきた。彼等は絶対に引き返さないようにするため,到着した海岸で船を燃やした。彼等はマグ・トゥレド(MaghTuiredh)の最初の戦いで,フィル・ヴォルグ族の王エオヒド(英語版)を倒したが,彼等の王ヌアザは,戦いの中で腕を失ってしまった。不完全な肉体となってしまった彼は王の資格を失い,フォモールとの混血であるブレスが,彼の後を継いで,王となった。彼は,アイルランドの最初の大王となった。
 ブレスは暴君となり,トゥアハ・デ・ダナーン族をフォモールの圧制下に置いた。たまりかねて,ヌアザは銀の義手を装着することで王となる権利を回復,トゥアハ・デ・ダナーン族を率いてフォモールと戦った。二度目のモイトゥラの戦いである。ヌアザはフォモールの王バロールによって斃されたが,バロールは予言されたとおり,ヌアザの孫であるルーによって斃された。ルーはトゥアハ・デ・ダナーン族の次の王になった。
 トゥアハ・デ・ダナーン族は戦車(チャリオット)とドルイド制度をアイルランドにもたらしたと言われている。

ミレー族

 後に,トゥアハ・デ・ダナーン族自身も,ミレー族によって追い出された。ミレー族は,古代の世界を旅し,後にイベリアに植民したミレの子孫である。ミレ自身はアイルランドを見る前に死んだが,彼のおじイト(Ith)はある塔からアイルランドを見張り,先行隊を率いて偵察のためにアイルランドへやってきた。トゥアハ・デ・ダナーン族の3人の王,マク・クル(英語版),マク・ケーフト(英語版),マク・グレーネ(英語版)がイトを殺した。彼の遺体がイベリアへ帰ってきた後,ミレの8人の息子は全軍を挙げて侵略を開始した。
 ケリー州のスリーブ・ミッシュ(英語版)の戦いでトゥアハ・デ・ダナーン族に勝利した後,ミレー族は3人の王の王妃たち,エリウ,バンバ,フォドラに出会う。彼女らはそれぞれ,アイルランド島の現在と過去の名の由来となっている。エリウは,現在のアイルランド島の名"Eire"の由来となった。バンバとフォドラは現代でも詩の中で用いられるアイルランドの伝統的な名の由来である。
 マク・クル,マク・ケーフト,マク・グレーネの3人の王は,3日間の休戦を申し入れた。彼等はこの休戦の間,ミレー族は海岸から9つの波の距離だけ離れた位置に停泊していなければならないとした。ミレー族はこれを受け入れた。しかしトゥアハ・デ・ダナーンのドルイドたちは,魔法を使って嵐を起こし,ミレー族を蹴散らそうとした。しかし,ミレの息子アワルギンは,彼の詩によって海を鎮めた。ミレー族は上陸し,タルティウにおいてトゥアハ・デ・ダナーン族に勝利したが,ミレの8人の息子のうち,3人,エーヴェル,エーレウォーン,アワルギンしか生き残ることができなかった。アワルギンは彼の二人の兄弟と島を分け合った。
 戦いに敗れたトゥアハ・デ・ダナーン族はティル・ナ・ノーグへ移住したといわれる。

とあります。これらを元として換骨奪胎して上演作品になっているわけですね。

投稿: KAISEI | 2016年7月27日 (水) 16時19分

SAISEI様

役者感想ざっと。

●高瀬川すてらさん(エリウ役)
 表情がしっかり作れる方なんですよね。今回は柔かい表情が印象に残っています。殺陣は前傾姿勢で突っ込んでいく癖は見られなかったような。。

●為房大輔さん(スレン役)
最近語尾を「よ~う」みたいに伸ばすセリフ回しがお気に入りのようで(笑) 癖と化してますかね。ZTONの役者の中で一番客演もされていますし安定安心の役者さん。相変わらず殺陣も速いし綺麗。感情面もしっかり作られる方なので。

●レストランまさひろさん(クー役)
 今回は脇を支える感じで私見ではあまり目立たない印象でしたがこういう方が脇にいてると観ていて安心なんですよね。

●出田英人さん(エリウ役)
 すてらさんが公演前にtwitterか何かで「出田さん史上今回の役が最も好き」みたいなことを呟かれていましたがわかります。浮かれた感じから生真面目さ,執念深さ,仮面も含めてステキでした。

●図書菅さん(ファリニシュ役)
 ある意味ハマリ役というか(笑) エリウに膝枕してもらうシーンと最後の文字が覚えられないシーンが一番好きですかね。パッと思いつきます。

●門石藤矢さん(トゥアン役)
 C-3POことトゥアン(笑) 今までされてきた役とは大きく変わった役ではないでしょうか。道化役に近いのかな。結構客席も笑いが起こっていたし良かったと思います。ただ最後の方の長台詞の場面でやはり疲れはるのか少し声が弱かった部分も。。

●前田郁恵さん(ルー役)
 あまりやあらへんタイプの声な感じがします。最後のファリニシュに文字を教え諭す声も含めて私の好きな声と台詞回しです。殺陣も上手いですし。

●天堂悟志さん(役)
 途中の剣を振るった場面で綺麗なところがあったのが記憶に残っています。

●久保内啓朗さん(バロル役)
 これだけの役者なのか? と今回あらためて思いました。安定感のある殺陣,演技。今後も楽しみです。

●魚水幸之助さん(ヌアザ役)
 過去拝見した中で一番ハマリ役ですね。ベテランのいい味が出たはりました。格好も似あいすぎたはる(笑)

●大橋正幸さん(ヨーヒー役)
 『天狼の星』の狼の王もそうでしたが威厳のある役がホンマにお似合いで。カッコいいです。
●岡田由紀さん(フィンタン役)
 少しふっくらされたのかな? 女王という雰囲気でした。公演前に風邪をひかれたみたいでそのせいか最初声があまり来なかった感じがしましたが。。

●土肥嬌也さん(ブレス役)
 姿勢がずっと良いように保たれていました。こんな騎士やはるやろうな,という印象。ZTONを対談されて他の劇団に客演されて引き出しを多くされているのかと思います。

●中山真治さん(モルク,マナナン役)
 過去公演なら蜜比呂人さんがされていた役なのかな? と途中思いました。身体能力の高い中山さんの殺陣もう少し見たい気もしましたが今回の役作りステキだったと思います。

●中山睦月さん(子ルー役)
 初めての子役。足をひっぱることもあるのでは? とも思いましたが二幕の出だし見事な表情。一瞬鼻の奥がツンとなりかけました(笑)

●浜崎聡さん(ネヴェズ役)
 レストランさんと同じく今回は脇を支える感じかなあ。。ZTONでの出演歴も長いですし。こういう方が脇にいてるとほんとうに観ていて安心なんですよね。

●古川智さん(キアン役)
 初出演でしたがめちゃ役に合ってました。エリウとの心通わせるシーンは良かった。もともと他劇団でも生真面目な役も多い方ですし。殺陣も綺麗でした。

●平宅亮さん(キッホル役)
 王というにはやや粗野な感じで私の思い描く王という感じではなかったですが族長と言われたら納得かな。。設定がわからないので(笑) 創業の君主なら粗野なのも分かるのですが100年続いている王家の君としてはちょっと(笑) ただ世襲ではないのならありなので族長っぽい感じなんですかね。ただスレンを殴るシーンの威圧感というか圧迫感はZTONの役者さん達にはないし出せない雰囲気ですかね。ステージタイガーに出演されてる時の軽いヤンキーとは違った凄みがありました。殺陣も本若の時とはやや違い速さを主流としつつ迫力と威圧感を少し加えた剣捌きで綺麗でした。

●アンサンブル
アンサンブルの方々も素晴らしかったのではないでしょうか? 今までZTONがよく言われていたのが殺陣のうまい人とそうではない人の差が大きい,と。SAISEIさんも『オルタソフィア』の感想に書かれていましたね。今回はそれはなかったのではないでしょうか? 特に為房さんが他の方よりも速すぎるという(笑) 今回ももちろん為房さんも速くて綺麗な殺陣を披露されていましたがそれ以外の方との速度の差が縮んだ感じでした。浅場幸子さん、尾崎秀明さん、下浦貴士さんと役付きであっておかしくないメンバーがアンサンブルという贅沢さ。、田中亮資さん、丹羽愛美さんも新人公演に出演されてましたし。岡本光央さんもよく聞くお名前。全員がZTONの速い殺陣をマスターされていておっ,と思うシーンあり,綺麗な殺陣を魅せてくれたと思います。

投稿: KAISEI | 2016年7月28日 (木) 20時19分

>KAISEIさん

とりあえず、印刷。

前田さん、久保内さん共に、ZTONの次世代を担う役者さんということみたいですね。
目を惹いたのも当然だったか。
繋がりを意識して、創られた壮大な物語で、見応えもあり良かったかなと思います。

にしても、自分のブログ、持ちはればいいのに。
このコメント欄だけだと、もったいない(^-^;

投稿: SAISEI | 2016年8月 8日 (月) 12時04分

SAISEI様

劇団主宰が裏話を書かれてるのでご興味あらば

http://zinter.blog65.fc2.com/

投稿: KAISEI | 2016年8月12日 (金) 18時56分

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