« 一家団欒【魚クラブ】160718 | トップページ | 凛笑バースデー【劇団KAZUMA】160722 »

2016年7月19日 (火)

メロメロたち【悪い芝居】160719

2016年07月19日 HEP HALL (75分、休憩10分、85分)

戦争で、大切なものを失ってしまう。
戦争の足音が聞こえるという漠然とした不安の中で、これまでの日常は徐々に壊される。
人はどん底へと陥れられる。
それが終わり、復興の道が開かれる。
日常は再び、徐々に戻って来る。
しかし、それに人の悲しみの心は同調してついていけていない。
悲しみや辛さを心に抱えたまま、戻る日常の中で、強制されるかのように懸命に笑顔を見せて、ポジティブな自分を見せる。
本当はまだまだ辛くて、手を差し伸べて欲しいし、抱きしめて欲しいのに。
真の復興。人の心が、本当に修復されて、未来へと気持ちが向くまでを描いた救済の姿を優しい人の想い合いの心を持って描いているような秀作。
音楽劇形態のすさまじい迫力、役者さんの熱演はもちろん、音が人の心を響かせる音楽となり、言葉が人の心を動かす想いへとなっていくような、想いの溢れる話の展開が非常に良かった。

<以下、かなりネタバレしますので、重々ご注意願います。大阪公演は明日まで、東京公演が来週からと、公演期間が長いので白字にはしていません>

日本で、東と西に分かれた内戦が勃発。
東では既に多くの人が徴兵され、西へと進軍を開始している。大阪はまだ安全だと言われているが、九州は厳戒態勢に入ってる模様。
大阪の高校では、来たる戦争に備えて、実践を意識した訓練が行われている。
女子高生のツヅキは、キンタマが付いているのではと思わせるくらいの男勝りを活かして、敵である男子生徒たちを撃退して、ポイントをあげる。しかし、戦争は遊びではない。本当の人の殺し合い。味方だと油断して、親友であるタミに裏切られて、ジエンド。せっかくの功績も大幅な減点を喰らったようだ。
下校時、ツヅキはタミに、あの裏切りはひどいと文句を言っている。上からの指示だったから、ああしなかったら自分が減点だったと言い訳するタミ。何でも言うことを聞くという条件で許してもらうことに。
ツヅキはライブに出掛ける。大好きなバンド、メロメロ。彼女のいつもしているヘッドホンからは、その音楽が流れている。
戦争が近づいている。死にたくない。どうして死にたくないのか。好きな人がいるから。守りたい人がいるから。いや、ずっとバンドの音楽を聴き続けたいから。

メロメロは、ボーカル、ドラム、ベース、ギターの4人組。
ボーカルが、中2にして髭もじゃもじゃの姿だった味あるドラムに声をかけて結成された。もっとも、当時は役割は決まっておらず、練習スタジオにあったマイクとドラムを取り合った結果、ボーカルとドラムが誕生したのだが。
その後、カップルだった冴えない男とおっぱいのでかい女を拉致して、無理やり、ギターとベースをさせる。
バンドに、ボーカルに憧れて、バンドの雑用をする男も仲間になる。
ベースの女が、おっぱいのでかさに甘んじて、音楽の魂を忘れていることをボーカルは言及。おっぱいを切れと迫る。ベースはこのバンドにいたいから、その言葉を受け止めて、おっぱいを切る覚悟をする。その姿を見て、ボーカルはベースを追放、というか解放する。
あまのじゃくなのか、ボーカルは一事が万事、この調子。ライブ中は客を帰そうとするし、アンコールも終わり客がライブを去ろうとすると、帰らさないようにする。
新ベースの男は、実力派で、専門用語の何一つも知らない皆に色々と口うるさい。それは自覚しており、これまでバンドに入っても長続きしたことが無いようだ。だから、このバンドにはずっといたい。その言葉にボーカルは反応するが、ドラムと雑用男の巧みな説得により、辞めさせられることなく、新メンバーでのメロメロ結成となる。
ちなみにメロメロではなく、×0×0。
大阪で活動をしているが、東の人間。戦争から逃げて来ているようだ。

タミは自宅に戻る。家には武装した母親がいる。
大阪は大丈夫だから。そう言っても、母親はタミを守るためだと、一人、厳戒態勢を貫く。父親は九州の戦地へと物資を運びに向かっている。
タミはツヅキに電話する。
特に用事は無いけど。ツヅキはこれから始まるメロメロのライブ会場にいた。誘ってくれたら良かったのに。動画を見せた時に微妙な表情してたし。友達の好きなものを好きになろうとする気持ちが分かんないかな。ツヅキとの、冗談、毒混じりのごく普通の女子高生同士の会話を繰り広げる。
その時、九州に爆撃があったことを伝える速報が流れる。
ライブは関係なく決行される。ツヅキも、そのライブを楽しむ。
メロメロは、その後、拡がる戦争の中、自分たちの音楽を伝えるために、戦地ツアーを決行し、九州へと向かう。

ツヅキ、タミたち高校生は、みんな九州の戦地へと派遣された。
まさか、本当の戦争で、こうして銃を構えて、人を殺すことになるとは。
ツヅキは、人を殺すことへの罪悪感は漠然としか感じられないでいる。生きたい。死にたくない。メロメロを聞き続けたい。そのために、しなくていけないこと。
男子高校生の中には、こんな戦争は早く終わりを迎えて欲しいと願う者もいる。終戦したら、トンカツ屋でも開いて、生活できれば。
ツヅキたちは、隊からはぐれてしまう。周囲には敵。日が暮れるまでは、下手に動かない方がいい。待機。ツヅキのその判断に皆も同意。
しかし、タミはそれに反発する。
敵が目の前にいる。殺したい。父をこの地で爆撃で殺されたのだから。
一人、飛び出そうとするタミをツヅキは制する。そう言えば、何でも言うことを聞く条件。これはまだ使っていない。ツヅキはタミに、このまま動かないでと願い出るが、周りから東の人の声がする。その声を聞いて、タミは突発的に飛び出す。
ツヅキはすぐに後を追い、タミに近づく人を銃で撃つ。
ツヅキの目の前で倒れる男。それはメロメロのボーカルだった。
彼の命は、文字通り、燃え尽きた。
同時に、終戦を知らせる警報が鳴り響く。

5年後。
音楽ライターの男が、タミの家を訪ねる。
足を引き摺っている。九州での爆撃でやられてしまった。動けなくなったその時、降りかかる大きな看板。一人の男に助けてもらった。そして、その男は死んでしまう。
その男の家がここ。
男手を失くした母は、タミと共に懸命に負けずにタミと一緒に生きようとしている。
ライターは、そのことを告げることが出来ない。
タミから聞いた、友達の話。あの日から、毎日、訪ねている。プリンとかお土産を持って。
そのお土産を渡すだけの時もある。一緒に食べる時もある。話もする。
でも、あの日からツヅキは心を閉ざしている。こんな面倒くさくなった自分のことは、もう友達じゃなくてもいいんだとか、自己否定、卑屈の繰り返し。
彼女のヘッドホンからは、もうメロメロの音楽は流れていない。
だから、ツヅキにもう一度、メロメロのライブを聞かせたい。
ライターはタミのその願いのために行動を開始する。

最初に訪ねたのは、ドラムの男。
あれから、ドラムはずっとドラムをたたき続けている。ボーカルの死を慈しみながら。でも、それは、ただの楽器を弾いているだけ。
最初こそ、ライターを拒絶していたが、持ち前のしつこさが、効いてきて、少しずつバンドの話をしてくれるように。
ドラムは、ライターをトンカツ屋に連れて行く。
高校を卒業して店を開いた若い店長と、そこでバイトをしている冴えない男。ギターだ。
それをきっかけに、今はプロとして活躍する新ベースとも会う。
ボーカルは当然、不在だが、終戦後、再会したドラム、ギター、新ベース。
各々が楽器を弾く。しかし、昔の音は出ない。
やがて、ギターも新ベースも自分の仕事へと戻って行った。
ドラムがするヘッドホン。そのヘッドホンからは、まだあの時のメロメロの音楽が流れているのだろうか。

ライターはうまくいかず、やけ気味で風俗へ。
こんなチンコが勃ち上がるような世の中は、復興に向かっていると考えていいのかもしれない。
おっぱいのでかい女がついてくれる。
ライターはその胸に甘えて、顔をうずめる。そして、これまでのことを話す。
そして、この女がメロメロの元ベースであることが分かる。
あれから、元ベースは、自分のおっぱいに誇りを持って、自分を肯定して生きることが出来るようになったようだ。
そして、大事なことをライターにアドバイスする。
一人、会わないといけない人がいる。それは、あの頃、バンドを誰よりも愛し、雑用をしていた男、ロクロウ。
でも、連絡先が分からない。女はおっぱい占いで、ロクロウは九州の長崎にいると。それは、ボーカルが死んだ地だ。
ライター、元ベース、ドラムは、トラックで長崎へ向かう。飛行機を使わないのは、これがロードムービー劇だからだ。
あの日を思い出す。こうして、自分たちも大阪から九州へ向かった。大阪から戦地へ向かう者たちもきっと同じ風景を見ていたはずだ。

長崎にロクロウはいた。
あれから、ずっとボーカルの死んだ場所から動けなかったようだ。何かよく分からないが、野生の皿うどんとかを食い繋いでいたらしい。
すっかり毛むくじゃらになって、どちらがドラムか分からないような風貌になっている。
そんなロクロウをドラムは抱き締める。
バカだ。ずっと、寂しかっただろうに。誰かと話をしたかっただろうに。手を差し伸べて欲しかっただろうに。
ここで、ボーカルにでもなろうとしたのか。
でも、結局、ロクロウはロクロウだ。自分は自分でしかない。
辛さや悲しみから逃げて。でも、それで構わない。そんなもの全部、自分たちの音楽が×0にする。0にしてやる。
バンドをしよう。
想い続け、転がり続け。それがロックンロールじゃないか。

ライターは、タミの下に向かう。
ツヅキと一緒に長崎へ行こう。そこにメロメロが待っている。
しかし、母は反対する。
大丈夫だと言うライター。
大丈夫じゃない。大丈夫じゃなかった。
そう言って、母はタミを行かせない。
それでも、行きたいと言うタミ。行かせたいと願うライター。
本当ならば、ここで、娘の想いを尊重して行かすのかもしれない。でも、普通の母だから。普通でありたいから。戦争で失った日常を再び手に入れたことの尊さを噛みしめる母の真剣な想い。
母は出掛けると外に出て行く。遅くなる。二人の帰りをずっと待っていると言葉を残して。

タミはツヅキにこのことを報告する。
ツヅキは、普通に喜び、ボーカルを殺してしまったことをそんなに気にしているわけではないと言う。むしろ、燃えて死んでかっこいいなんて思ったくらい。九州で多くの人が死んだ時も、普通にライブで楽しんだ。サイコパスだから。
こんなおかしな奴の友達はもう辞めたらいいんじゃないの。
大切な人を殺して、大切な友達をこんなに困らせて、こんなことまでさせるようにして。
いつもの、自己否定、卑屈の言葉がタミにぶつけられる。
そして、その後、溢れるように心の底からの言葉が出てくる。
笑わないといけない、ポジティブでいないといけない、そんな嘘の自分でずっといること。その苦しみ、辛さ。もう、一人でいたいから、目の前から消えて欲しいと。
タミはツヅキに自分の想いを投げ掛ける。
好きな人が好きなものを好きになりたい。それが友達というもの。だから、メロメロのライブも一緒に連れて行って欲しかった。私はあなたのことが好き。だったら、あなたも私が好きなあなたを好きになって。
ツヅキのヘッドホンを外した耳から、タミの真摯な自分への想いが流れ込む。
ツヅキはライターと共に長崎へ向かう。
タミはここに残る。今は母と一緒にいるべきだと思うから。いつか、またメロメロのライブに誘って欲しい。タミは二人を見送る。

ツヅキは長崎で、メロメロと出会う。
みんなに、私は全然、引きずっていないし、あんな死に方をしてかっこいいと思ったくらい。サイコパスだからと、いつものタミへ向けていた言葉を発する。でも、その表情は晴れやかで笑顔だ。
メロメロのメンバーたちも、自分たちの何もかもを0にして、前へと進む力を持つ自分たちの魂を再び音にすることに誇りある姿を浮かべる。
客はツヅキだけ。
ライブが始まる。カウントダウン。10、9、8、7、・・・1。
2、3、4、・・・∞。
過去の悲しみ、辛さはメロメロ、×0×0によって、今、未来への喜び、希望へと無限に続く道へと昇華された。

冒頭はライターがドラムを訪ねるところから。
今から思うと、ドラムの叩いて響く一音一音が、多くを失って苦しみから抜け出せず、それでも、復興していく日常との狭間でもがく心情をあれだけで表現されていたのだなあと。
そして、最後にその音は、音楽となり、未来の希望へと繋がるものとなる。
劇自体の中で、音を音楽、それも人の心に訴えかけて、響かせて、勇気を抱かせるものを創り上げているという素晴らしい構成だと思います。
実際は、時系列通りには進まず、交錯させながら、じわじわとその想いが浸み込むように展開させています。上記あらすじは、それを並べ替えてしまっています。
シーン転換するたびに、さっきのシーンの意味合い、流れが感じられ、なるほどとか思いながら、観ているうちに、いつの間にかすっかりはまって、最後の方は、もう心が震えんばかりの、人の想いの優しさや力強さにやられてしまうといった感じでした。

|

« 一家団欒【魚クラブ】160718 | トップページ | 凛笑バースデー【劇団KAZUMA】160722 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

SAISEI様

抜け駆けだ~(笑) 千秋楽にお会いできるかな、と思っていたのに(笑)

桃谷高校も何やら鬱陶しく面倒くさいことになったみたいで。。残念です。

投稿: KAISEI | 2016年7月20日 (水) 01時19分

>KAISEIさん

上演時間が長かったので、私も千秋楽の方が良かったんですけどね。仕事がどうも入りそうだったので。

高校という縛りがね。
ものを創るというのは貴重な経験だと思いますが・・・

投稿: SAISEI | 2016年8月 8日 (月) 11時46分

SAISEI様

悪い芝居、2回目。しっかり作ってこられるし山崎さんも身体力高い感じで。。ただまだ合わない感じ。NMBの石塚さんもなかなか。ただ私は中西さんの方が好きな演技だったかな。。客演の大久保さん、アツムさんも良かった記憶が(笑)

投稿: KAISEI | 2016年8月14日 (日) 23時21分

>KAISEIさん

私は数本前ぐらいから、優先順位はかなり落としています。別に何が悪いという訳でも無く、むしろ、しっかりしたものを創られているのですがね。
何かしらの違和感がありますね。

投稿: SAISEI | 2016年8月23日 (火) 14時41分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/63937707

この記事へのトラックバック一覧です: メロメロたち【悪い芝居】160719:

« 一家団欒【魚クラブ】160718 | トップページ | 凛笑バースデー【劇団KAZUMA】160722 »