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2016年7月29日 (金)

悩殺ハムレット【HPF高校演劇祭 北かわち皐が丘高等学校】160728

2016年07月28日 ウィングフィールド (90分)

この作品は、本家の柿喰う客で拝見している。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/111007-4db6.html)
その迫力に驚いた作品だ。
そんな作品を高校生が演じる。
まず、現代口語にされたセリフは、日常の生活で恐らくそのまま使っている高校生の方がより自然で、それがこの作品の特徴であるリズムあるテンポのいい展開に繋がるのではないだろうかと。
ノリの良さも、偏見かもしれないが、今の若者はお得意とするところだろうと。
そんな、観る前のイメージを勝手に持って拝見。

観終えた感じは、あくまで本家と比べたらの話だが、まず全体的にスピードが緩めか。
リズムやノリも若干おとなしめであり、演じること優先で、舞台で思い思いに弾けた姿を見せるまでの余裕が、一部の方を除いて、無いような印象を受ける。
ただ、この点は、個人的には、私の感覚では、少し無骨な感じの方がハムレットのイメージには合う。
悩み苦しみ、立ち止まり。悪く言えば、ウジウジしている、葛藤するハムレットの姿は、洗練され過ぎて、テンポのいい背景はあまり合わない。
それよりも、悩む中で、必死にぎごちなくも、前へ進んでいる感じ、遊び幅が無いから、自分を、相手をとことんまで追い詰めてしまうことで、引き起こされた悲劇、一王子としてのプライドを持ち、虚勢を張って懸命に自分を表現しようとすることへの皮肉めいた面白さが引き立って良かったようにも思う。このあたりは、演じるハムレットの魅力の醸し方が大きく、実に実直で朴訥な、きっとシェークスピアの姿と同調したハムレット像が浮き上がっているのではないかと思う。

本家と同じである必要などはもちろん無く、この高校での悩殺ハムレットを観れたことは、総じて満足に値すると思う。悲劇性、それも愚かな人の業が招いた悲劇の感は、強く表現されているように思う。本家と違って、不満を感じるのは、そんな話の中にでもあるエンタメ的な、楽しさだと思う。いっぱいいっぱいの中で、遊びの空白を入れようとしているような感じがあり、どうしても、不安感が出てきて、安心した観劇がしにくい。
あと一点、どうにも気になり、この感想を書く前に、本家のDVDを早送りだが見直した。シーン転換の止まるところが中途半端な人がいる。
この作品は、けっこうシーン転換がたくさんあり、そのたびに、役者さんは止まり、主要キャストの次へ繋がる表情を楽しむという魅力があるように思う。
シーン転換で止まっても、なぜか、連続性を本家はDVDでも感じる。今回、拝見して一番思ったのは、止まるたびに、本当にいったん止まって、いったんリセットされてしまうような感覚になるところかもしれない。もちろん、全てでは無く、前半よりも後半はノッテきて改善されたように感じるし、しっかりと止まっての魅力を魅せる方もいらっしゃりはするのだが。
メリハリというのか、動と静、緊張と緩和といった、演じるテクニックで解消できるならば、この点は明確にした方が、この作品は、話が比較的はしょって端的に進められるだけに、より惹きつけられやすい舞台を創り上げられるような気がする。

まあ、私は観ることしかしないが、柿喰う客を演じるのはきっと難しいのだと思う。観るのも独特の観方が必要だったりすると思うので。
それに挑戦して、話を理解させる、この作品の特徴である、現代口語やリズミカルな魅力を出せている点は、十分成功なのだろう。
多分、私もこの作品を初めて観ていたのなら、新感覚のシェークスピアを観たと手放しで喜んでいただろうから。

王が急死したデンマーク。
バナード、フランシスコ、マーセラス、ホレイシオ。
城の見回りの際に、つい数ヶ月前に死んだ先王の亡霊を見たと言う。
王子であるハムレットは確認。
その亡霊からクローディアスに毒殺されたことを知る。
親友のホレイシオにだけ、このことを伝え、その日から、ハムレットは気が触れたふりをして、復讐の時を狙う。

叔父のクローディアスは、母のガートルードと結婚。
そのクローディアスに媚びて仕えるポローニアス。彼の息子、ハムレットと剣のライバルであるレアーティーズはフランスに留学する。その妹である、箱入り娘のオフィーリアに、ハムレットが気があることを知り、巧く取り入ろうとする。
しかし、ハムレットは、冷たくオフィーリアにあたり、気があるようには見えない。尼寺に行けという有名なセリフですね。そんなことより、大事なことを抱えて、何か企んでいるのではないのか。
グローディアスは、ハムレットの友達、ローゼンクライツと、ギルデンスターンに様子を伺うように命令。

ハムレットは、デンマークにやって来ている、旅劇団に目をつける。
亡霊の言うことをただ信じているわけではない。もしかしたら、あいつは悪魔かもしれないのだから。
この劇団に、グローディアスがしたことを演じさせて、亡霊が言っていることが本当かを見極めるつもり。
結果はクロ。毒殺のシーンで明らかに様子がおかしくなるグローディアスがいた。
ハムレットは苦悩する。復讐のために、本当にグローディアスを殺すべきなのか。生きるべきなのか、死ぬべきなのか。
グローディアスは、明らかに腹に何かを含んでいるハムレットに対して激怒。
と言って、ハムレットを溺愛するガートルード、さらには国民に人気のあるハムレットを容易く殺害するわけにはいかない。

ハムレットは、叔父の息がかかるポローニアスを殺害。
ハムレットを怖れるグローディアスは、ハムレットに仕事を与え、イギリスに向かわせる。そこで、亡き者にしてしまう手筈が整っているみたい。
ローゼンクライツとギルデンスターンにも後を追わせる。
旅中、ノルウェーの王子、フォーティンブラスは、ポーランドを侵攻中。
ハムレットは、叔父の陰謀を知り、自分の身が危ういと、デンマークに帰国。

父の死のショックでオフィーリアは気がおかしくなり、自殺する。
フランスから帰国してきたレアーティーズ。父がハムレットに殺害されたことをグローディアスに聞き、決闘に。審判はオズリックが務める。
その決闘で、ハムレットは優勢。それを喜ぶガートルードは、会場の酒を飲み干して毒殺される。レアーティーズは、汚い手でハムレットを刺す。ハムレットは刺し返す。毒の塗られた剣で、互いに息絶え絶え。ハムレットは最後の力を振り絞り、グローディアスに剣を向けて、一撃をくわえる。

皆が亡くなってしまった、デンマークに、フォーテンブラスと、イギリスの使者がやって来る。
ホレイシオが対応。
ローゼンクライツとギルデンスターンの殺害を報告。しかし、その命じたものは、ここに横たわっている。グローディアスがイギリス国王に差し出した親書、ハムレットを殺せを二人の名に書き換えたハムレット。
ホレイシオは、ハムレットの最期の言葉を聞いている。それは、フォーテンブラスに、デンマークを任せるというもの。
高らかに、フォーテンブラスは、新王就任を宣言する・・・

上記リンク先で示したように、一度、この作品は拝見しているのですが、今回観て、少し、話をしっかり把握できたような気がします。
まあ、原作をしっかり読めばいい話なのですが、この作品だけで、ハムレットを知るというのも、なかなか面白いかなと。
結局、あの生真面目そうだったホレイシオが全ての手を引いていたのでしょうかね。ハムレットと本来は同じ立場にいてもおかしくなかった、フォーテンブラスを祭り上げるような形で。このあたりは作品中では詳しく描かれておらず、ネットで調べた知識の補足が必要ですが。
悪いことを考えるグローディアス。それを、策略で陥れようとするハムレット。でも、その上にもっと悪いというか、権威欲に憑りつかれた者が。一枚も二枚も上がいる。世の中、信用できたものではない。
この世の中ってやつは。そんな悲劇的な考えに至るところが、この作品を四大悲劇とする由縁なのでしょうか。

ハムレット、益田愛恵里さん。終始、悩めるって感じで、心の葛藤が強く表れる。眉間にしわを寄せて、目をしかめて。その分、ちょっと、お茶目な部分は消えてしまったか。苦悩する姿が緊張ならば、その緩和のコミカルさも、同バランスで見れると、この作品において、はまるハムレットになるような気もするのだが。ただ、個人的には、ハムレットはこうだろうといったところもある。そういった器用さが無いから、ずっと悩んでいるのだろうから。そういう意味では、いいハムレットだったような。

クローディアス、村上さくらさん。下品で、キングに比べたら顔も劣る。チャラチャラしたデリカシーの無い、いい加減そうな男のどこに、ガートレートは惚れたのやら。この設定を、きちんと表現すべく、可愛らしさを捨てて、姿も心も憎たらしい悪役に徹される。

ガートルード、大原さくらさん。悲しき女の性。露骨に艶かしく湧き上がる女の性と、とってつけたような母の愛。シェイクスピアの女の偏見みたいなのが出ているのでは。肉食系で、浅はかさを感じさせる、母でなければ、敬遠したくなるような女を露骨に演じられる。

亡霊、宮元歩美さん。どこかのホストクラブにいそうなイケメンっぷり。言葉はあまりないので、オーラだけで見せる。気取り方がきちんと、キングの貫禄を醸している。

ポローニアス、福田桃花さん。上記に少しテンポの悪さを言及したが、この方は目を見張って、テンポがいい。芸能プロデューサーみたいな、いかがわしさを醸しながら、人の業の深さ、手段選ばぬ生き様を狡猾に魅せる。

レアーティーズ、早崎愛梨さん。イケメンの凛とした女性。その佇まいだけで、魅惑できる女優さんっていうのがいると思うが、この方がそんな女優さんの典型じゃないだろうか。序盤に登場された時から、その毅然とした姿に目を惹く。

オフィーリア、松山寛さん。この作り過ぎなキャラに最初は何かと思ったが、これはありかな。登場時に笑いが起こりそうだが、意外にみんな冷静。唖然としたのか、これは違うってことを受け付けない確固たる力が発散されていたのか。完全に気が狂ってあちらの世界にいってしまった姿。この狂気的な悲しさは何よりの悲劇だ。

ホレイシオ、菅原有紗さん。冷静で、賢そうで、おとなしく、従順で。出来た人だな、ハムレットのブレインなのだろうという印象は正しかったのだろうが、その裏に潜むものがあったというラストなのか。こういう知的で真面目そうな人だからこそ、想像できない潜む何かを持っている。ある意味、ハムレットにとっては、母のガードルードと似た感じなのだろうか。人は裏切る。そんなこの世の悲劇を見せているかのよう。

フォーテンブラス、大長瑞樹さん。野望を抱えた、情熱を持って生きるような感じ。恐らくは、ただ悩み苦しむハムレットの対照形のように、とにかく行動し、自分の運命は自分の手で掴むみたいな強い意志を持った象徴として描かれているように思う。

バナード、亀井幸二さん。、フランシスコ、安居翔貴さん。冒頭で、漫才のようなやり取り。この、以前に本家で拝見した作品を、今回は高校生の手でどんな感じで見せていただけるのかを最初に植え付けられる重要な役だった。感じたのは、やはり幼さと、男に掛ける言葉としては失礼かもしれないが、可愛らしい感じ。でも、そのリズムはしっかりとノッテおり、期待を抱くものだったように思う。亀井さんは、劇中劇で、何か少しナヨっとしたような不可思議な空気を醸す。

ヴォルティマンド、相良友希さん。情報を伝達する、西欧でどういうのか、日本では忍者みたいな役なのだろう。小柄で可愛らしい風だが、その演技はけっこうどっしりと、度胸が据わった独特のオーラを醸す。劇中劇のキャラも含めて、一人で自己完結できているような肝っ玉据わる芝居を魅せる。

ローゼンクライツ、仲田侑加さん。ギルデンスターン、北田香苗さん。イメージはチビッコギャングみたいな感じだろうか。幼く、言葉使いも虚勢を張って、大人に、大きく見せようとしている微笑ましい姿。でも、そんな純粋さだからこそ、あっさりと渦巻く陰謀の餌食となり、悲しい幽霊姿となっている。まあ、その姿も微笑ましく、あまり悲しみを誘わないのだが。

オズリック、曽我部綾乃さん。原作でも、ハムレットとレアーティーズの決闘での審判は言動が可愛らしい役だが、それはこちらでも。その前に演じられる劇団の座長やらで、既に司会者風の仕切りで場の空気を掴む力がある。

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コメント

SAISEI様

この記事が挙げられたということは淀川工科高校は今年は行かれなかった、ということですかね?(笑)

投稿: KAISEI | 2016年7月29日 (金) 01時33分

SAISEI様

昨年『贋作 罪と罰』で英役をされた高村夏樹さんがめちゃ上手くなったはりました。ここの高校おかしいですよ(笑) なんでこんなに上手くなるのか。。高村さんは昨年もコメントしましたがまだやや発声に難があるかな。。ただ表情の作り方がとても良かったです。

投稿: KAISEI | 2016年8月 1日 (月) 11時21分

>KAISEIさん

基本的に割り振られるのでね。
淀工は、ずっと観ているので、マチネで伺おうかとも思いましたが、やはりなかなか仕事がね。
ただでさえ、この期間、早めに切り上げさせてもらっているので。

投稿: SAISEI | 2016年8月 8日 (月) 12時06分

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