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2016年7月 3日 (日)

梓巫女C子の無謀な賭け【アカル×大熊隆太郎(壱劇屋)プロデュース】160702

2016年07月02日 アカルスタジオ (60分)

関西で観劇してたら、嫌でも耳にするお二人、匿名劇壇の福谷圭祐さんの脚本で、壱劇屋の大熊隆太郎さんの演出作品となれば、自然に足が動くもの。
なぜか、チラシを入手しておらず、直前まで情報が入っていなかったが、Twitterで話題になっていたので。

みんな一緒なんだみたいな、ちょっと恥ずかしいぐらいの熱き想いが話の中に込められているのに、それを悪ふざけにも近いキャラや不条理な展開、知的な視点からの描写を交えて、あくまでクールな空気を維持している。もちろん、メタ構造もとっている。
鏡やアクションを駆使して、照明や横長の特殊な舞台とも相まって、不可思議な空間を創り上げている。そして、どこか温かい空気が流れる。
匿名劇壇や壱劇屋を各々、拝見した時のイメージが、確かに混在している。
作品ってこうやって、融合するんだなあ。新しいものって、こうしていいものが互いに認め合うみたいな感じで、生まれるんだなあと感じる作品でした。
そして、話自体も、そんな個性を尊重し合うことで、新時代が切り開かれるみたいなことを思わせるものでした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

4年前、13日間にわたる集中豪雨で壊滅してしまった村。
元来、この村では、村人たちが踊ることで雨乞いをする風習があった。そして、その踊りをよそ者が踊ると止まない雨が降り続け、災いをもたらすという言い伝えも。
今、村にはユバリという女性が一人だけ残っている。
そんな話を、月刊オカルティアの記者、ちえみは聞きつけ、好奇心から記事にしようと単身、その村を訪れる。
ユバリは、修学旅行で、その豪雨災害の時、南の島にいた。村にいた両親、妹はみんな死んでしまった。でも、妹がまだ、この村に成仏せずにいる気配をずっと感じている。
ユバリは、巫女を呼び、妹を実体化してもらうことを試みる。そして、あの日、一体、何があったのかを聞こうと思っている。
やって来た巫女は、梓巫女の頭丘しい子。
厳粛に、妹の実体化の儀式を行おうとする巫女とユバリに、ちえみはKY感を好きなだけ漂わせて、煙たがられる。
特に巫女は、仕事柄、こういういかがわしい雑誌でバカにされることが多いのか毛嫌いしている。捨て子だった自分が、その能力を活かすべく、真剣に仕事をしているのに。だから、記事にでもされたら、たまったものじゃないと思っているようで、拒絶している。
実体化は成功。姉妹は久しぶりの再会を果たす。
しかし、その一方、とんでもないことが起こっていた。
村にUFOが着陸。中から現れた、自称、宇宙人の目がいってしまっている男が、巫女を宇宙に連れて帰るとロープで縛りあげる。巫女は宇宙からの捨て子だと言い張っている。
妹は、あの日は特に何も無かったと言う。ただ、UFOが村にやって来たらしい。
それは、今、目の前にいる宇宙人なのだろうか。問い正すが、宇宙人は覚えていないと答える。
でも、そのよそ者が踊ったのかもしれないと妹は言う。
ユバリはそれを否定する。
そんなよそ者とかに囚われるのはもう止めよう。
迷信に過ぎず、何も関係ないことだ。
この村は昔から排他的だった。そのことは、よそから色々な人が集まる高校にいって分かった。よそ者と周囲から思われているのは、実はこの村の人たちであり、学校でも孤立することになった。それは、きっと妹も同じだったはず。
そんな口論を姉妹がしている中、巫女は放ったらかしにされ、宇宙人に連れて行かれそうになる。

所変わって、月刊オカルティアの編集部。
ちえみが、よそ者が踊ったことで、あの村は豪雨に見舞われたという説を取材に行っていることはみんな知っている。
同僚のしゃくたは、あれは米国の策略であり、自然兵器の試用だと、米国否定、差別の意見に執着している。
やんちょは、UFO専門なので特に興味無し。
そこに巫女が現れる。
誰も助けてくれないので、魂だけを飛ばして、助けを呼びにやって来たようだ。
事情を説明すると、やんちょは、UFOに興味を持ち始める。しゃくたも、宇宙人と名乗る男は、きっと米国人だと敵対視を向け始める。
編集長は、シビアに、このことを記事にしたいから、巫女に取材許可を申し出る。巫女は仕方なく、イニシャルでの記事を約束してもらい、取材を受けることに。
皆は、村へ向かう。

村へ向かう、もう一つの組。男女6人組。
不確か、実在しないものを古今東西ゲームで楽しむ仲間たち。
最初は、妖怪とかUMAみたいなものだった。でも、いつの間にか、そのレベルは上がり、経済とかインターネットとか、目には見えないけど、言葉としてだけ存在し、自分たちに関わるものを言及するようになる。
自分たちの存在。この話の中で、何も関係なく存在している自分たち。
それでいいのだろうか。どうして、舞台から仲間外れにされないといけないのか。
ありとあらゆるものが、この世には存在するということでいいのではないのか。
皆は、この話の中に入り込むために、村へと向かう。

月刊オカルティアの人たち、6人組が村に集結。
宇宙人があの日、自分が踊ったことを告白する。
やはりよそ者が。でも、そのよそ者の境界って何なんだ。村に住まない人、日本人、外人、宇宙人。
よそ者なんて存在しない。
村も、国も、地球も、宇宙も、分けることなんかない。
よそ者だなんて言って、仲間はずれを口にした時、それは、自分が仲間から外れてしまった存在になっているのだ。
宇宙人は実力行使で巫女を連れて、UFOに乗り込み、発射する。
突然、6人組の1人が倒れる。巫女の魂が乗り移ったみたいだ。
雨乞いの踊りをみんなで踊って。
雨を降らせて、UFOが宇宙へと飛び立つのを制止する。巫女は最後の賭けに出る。
でも、よそ者が踊ったら、豪雨がまた村を襲う。
そんなことを言っている場合じゃない。
願いを叶えるための想いを込めた踊りを皆で舞う。

ちえみは記事を編集長に提出。梓巫女しい子の無謀な賭け。
言い伝えは本当だったのか、雨はあれから降り続けている。まだ、3日目だが。
あの日、降り出した豪雨は、UFOを墜落させて、巫女は無事に救出される。
編集長は、一箇所だけ訂正を入れる。イニシャルの約束をしたから。梓巫女C子の無謀な賭け。
あとは、最後の締めだけ書き直し。
とても楽しかったです。いくら自由だからといっても、さすがにこれでは雑誌の面目が立たない。

話自体は、何やねんこの無茶苦茶な設定に、展開はといったものですが、不思議とスッキリとしたまとまりがあり、困惑しながらも、楽しめてしまうような感覚でした。

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コメント

SAISEI様

アカルスタジオ主催の公演は近鉄アート館の場合はこりっちに載せますがアカルスタジオでの公演は最近DFGにも載せてないみたいです。

アカルスタジオで検索していただければアカルスタジオホームページに直近の公演概要は載っています。

来週は劇団SOLAのライブ、再来週はアカル劇場、再再来週はよしもとオフオフというように毎週のように公演をしています。8月上旬には『Last Note of PANDORA』の再演もあります。

投稿: KAISEI | 2016年7月 3日 (日) 12時28分

>KAISEIさん

A4の普通の紙のチラシで、アカルスタジオの公演はだいたい把握していたんですけどね。
なぜか、この公演は本当にノーマークでしたね。
ちょっと風変わりな話でしたが、なかなか面白味のある作品だったのでは。

投稿: SAISEI | 2016年7月 5日 (火) 18時55分

SAISEI様

DFGには載ってましたね(笑) それにしてもお会いできない(笑)

大熊さん、アカルスタジオの演技講師にもなられてるのでこれからも大熊さん演出の舞台は催されると思います。

私は福谷さんの脚本は癖が強いので福谷さん演出の方が良いと予想してまして。。演出は斬新だったしウマくハマった、と思う部分もあったものの途中で匿名劇壇のメンバーならどういう台詞回しで言うかな、とか考えちゃって(苦笑)
何しろ匿名劇壇は2014年My 1位か2位の劇団なわけですから(笑) ハードルは高い。

会場はウケてはいましたが大熊さんの壱劇屋、福谷さんの匿名劇壇両方良く観たはる人はどれだけやはるんだろう。

投稿: KAISEI | 2016年7月 6日 (水) 00時05分

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