箱根八里の半次郎【劇団KAZUMA】160714
2016年07月14日 天然温泉 ゆの蔵 (55分)
池田呉服座、オーエス劇場に引き続き。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post.html)
職場が近いので、非常に行きやすい大衆演劇の劇場。
しかし、大衆演劇は、劇場の空気が違い過ぎますねえ。時間さえあるなら、旅しての劇場巡りも、なかなか楽しいのではないでしょうか。
この劇場は、いわば銭湯に附属されたレストラン。まあまあ、立派なものだと思います。
1000円の入場料で、風呂入って、観劇は無料ですから。
ただ、座長も冗談交じりに言われていましたが、芝居と舞踊ショーの間の時間が長過ぎて。
芝居を見て、次のショーまでの2時間は一人では、ちょっと寂し過ぎて潰せません。
ということで、今回は芝居だけ。
箱根八里の半次郎、大井追っかけ音次郎をベースにしてるのかな。大衆演劇らしい、喜劇よりの人情ものって感じでしょうか。
単純明快で分かりやすい作品でした。人情ものと言っても、泣くより、笑いの方が強い作品かな。
芝居の後は、役者紹介がありました。普通の大衆演劇の劇場だと、最初にするミニショーと言われる部分に当たるのだと思います。これはありがたいですね。今、観ていた役を演じられた方の名前がその場で分かりますから。
その後、せっかくなので、風呂へ。
それなりにくつろぎ、電車で帰って地元の飲み屋へ。ビール一杯飲んだあたりで、そろそろショーの時間。やっぱり、間、長過ぎですわ。
お気に入りの役者さんの舞踊を観たかったなと少し悔いながら、そのまま楽しく飲みました。
箱根のとある村。今日はお祭り。祭囃子が響いている。
馬方のジンベエと、娘のオミヨ。母は昨年に亡くなった。今年は七回忌だと、少々ボケてしまっているジンベエに、それに優しくツッコむオミヨ。
生活は厳しく、オミヨの祭りの晴着も買ってあげられない。来年こそはとオミヨに誓うジンベエに、その言葉に純粋に喜ぶオミヨ。
そんな中、繋いでいた馬に近づいて蹴られたのか、気を失った男が。
柄杓で水をかけて目を覚まさせる。
どうやら、旅のヤクザ者。ジンベエは助けるんじゃなかった。もう一度、馬に蹴られて死んでしまえと男を罵る。
ジンベエがヤクザを嫌うには訳がある。大切に育てた息子が、ある日、ヤクザ者になって家を出て行ってしまったから。
ヤクザ者の男は、音次郎という自分の名を名乗り、旅の道中、息子を見かけることがあれば、必ず連れて帰ると約束する。息子の名前は半次郎。来年の祭りを楽しみにしてなと音次郎は去って行く。
その頃、半次郎は、3年の凶状の旅を終え、盃を交わした親分の下へと戻って来ていた。
親分は、半次郎が戻って来たことを喜び、若い衆と一緒に賭場に向かうのを止めて、今日は酒を酌み交わそうと半次郎を誘う。
その前に、半次郎は親分に聞きたいことがあるらしい。
女房の待つ家に戻ったところ、そこはもぬけの殻。近所の者に聞けば、女房は親分が面倒を見てくださっているのだとか。
その感謝と共に、無事に戻って来たので、自分の下に返して欲しいと。
しかし、親分は決まりが悪そうな表情を浮かべる。
そして、本当の事を語り始める。
半次郎が旅に出てから、このあたりはだいぶ物騒になった。
一人で不安な半次郎の女房は親分を訪ね、一晩泊めてくれと言う。
旅人部屋に一泊。最初はそのつもりだったが、次の日も、次の日も。
さすがに、旅人部屋にずっと泊まらせるわけにはいかない。と言って、若い衆と一緒に寝させるわけにもいかない。
結局、自分の部屋に泊めた。寝相の悪い女房は、いつの間にやら、自分の寝床へ。
そのうち、ついつい、一線を越えてしまい、今では自分の女房となっているのだと。
申し訳なさそうに語る親分に、半次郎は3年を待てなかった女だったということ、未練は無いので気にしないでくれと返す。
ただ、女房をいったん返してもらい、三下り半を突き付けた後に、熨斗をつけて、改めてお渡ししたいと願い出る。
この熨斗という言葉が気に入らなかったのか、親分は激怒。親分子分の関係もこれまでだと縁切りを半次郎に申し渡す。
待ってくれと諫める半次郎。その手が親分の腕をねじりあげてしまい、事態は一層悪化する。
若い衆は半次郎を抑え付けて、親分は刀の柄で半次郎の額に傷をつけて去って行く。
去った後、親分は若い衆に半次郎の殺害を命令する。しかし、顔が割れている自分たち。悪い噂が立つのも困る。どこかに腕の立つ男はいないものか。
そこに、音次郎登場。しばらく、この親分の下に身を寄せていたが、また旅に出ると挨拶に来たらしい。
親分は音次郎に目をつけ、旅から帰って来た半次郎という男に自分の女房を手籠めにされたと嘘をつく。
音次郎はさっき親分の女房に挨拶したばかり。その後、家を出て、この親分の下にたどり着くまでの間にそんなことがあったというのか。では、なぜ、そのことを親分が知っているのか。若い衆が知らせにきたのなら、この一本道でどうして、自分が追い抜かされたことに気付かなかったのか。まさか、秘密の小道でもあるというのか。
かなり苦しい親分の嘘だが、音次郎はそれを信じ、半次郎にけじめをつけさせて、そのまま旅に出ると世話になった親分と若い衆たちとお別れ。
音次郎は半次郎に追いつく。
いきなり刀を抜き、斬りかかる。
しかし、半次郎の方が腕が上。話を聞けと恫喝され、音次郎はずっかりおとなしくなる。
聞けば、どうやら、全く逆の話らしい。それに、どう考えても半次郎の話の方が信用できる。
二人はどこか兄弟のような気がすると意気投合し、分かち合う。
半次郎の故郷。それは箱根。
音次郎が思い出す。ジンベエさんのところの息子さんじゃないか。
親がいるのに、こんなヤクザ者をいつまでもやっていてはダメだ。足を洗って、堅気になって、一緒に箱根に帰ろうと音次郎は半次郎を諭す。
半次郎は、それを了承する。しかし、どうしてもけじめをつけたい奴がいる。あの親分。
音次郎は、それに協力すると約束。
やって来た、親分たち。
刀を交えるが、大人数の斬り合いの中、音次郎は半次郎を連れて、そのまま箱根へと向かう。
祭りの日。
ジンベエは約束通り、オミヨに晴着を。珍しい四角い模様の綺麗な着物。
そんな中、戻ってきた音次郎と半次郎。
ヤクザ者が大嫌いなジンベエ。このまま帰っても、もう一度出て行って死ねと言われるだけだろう。半次郎は音次郎に一芝居うってもらうことにする。
半次郎は身を隠し、音次郎がジンベエを訪ねる。
ジンベエはすっかり忘れていたが、あの時の馬に蹴られたヤクザ者と言うと思い出したみたい。
あの時の馬鹿か。ヤクザ者の馬鹿のこと。結局、半次郎を見つけ出せずに、謝りに来たのだろうと。
しかし、音次郎は半次郎と会ったと言う。
やはりヤクザ者になっていた。草津の宿で知り合い、堅気になるように諭した。半次郎も、故郷に戻って、父と妹に孝行すると誓った。
その堅気になる前の最後の諍いに巻き込まれ、あわれ、半次郎は亡き者に。
腕も足も、目も耳もバラバラに斬られ、みじん切りされて、遺体を持ち帰ることも出来なかったのだと伝える。
その話を聞き、ジンベエはどんなヤクザ者でもよかった。ただ、無事に生きて帰って来て欲しかったと号泣する。
芝居は巧くいったようだ。
隠れていた半次郎が出てきて、ジンベエ、オミヨと再会。
これからは親孝行すると改めて誓い、二人は抱き合う。
ジンベエは、自分を騙した音次郎に酷い剣幕。手拭いをどこかの名プロレスラーのごとく、気合を入れて首にかけて、音次郎の方へ向かう。そして、ありがとうと感謝の言葉を述べる。
そこに、親分の追手。
刀を抜こうとする半次郎を音次郎は諫める。もう堅気になったのだろう。この始末は俺だけでする。そう言って、音次郎は親分たちを斬り捨てていく。
みんなで幸せに暮らしな。音次郎は、また旅に出る。
大衆演劇らしい、人情ものと、喜劇が巧く組み合わさった作品ですね。
花かんざし、歓呼の纏に続いて、まだ3作品ですが、一番、良かった花かんざしに匹敵する気に入りかな。
大衆演劇、3回目の観劇。
初回は藤美一馬座長がおらず。その代わり、柚姫将さん、冴羽竜也さん、千咲大介さんの個性豊かな重要な三人衆、千咲凛笑さんの妖艶かつ可憐な魅力を知る。2回目はお目当てだった大介さん、凛笑さんがおらず。その代わり、座長の貫録、龍美佑馬さんの渋さ、藤美真の助さんのユニークさに目を惹かれる。
今回は、初めて皆さんお揃いでした。
音次郎は座長、半次郎はゲストの藤千代之助さんでした。木村拓哉似と福山雅治似のお二人設定でじゃれあったりしており、微笑ましく。兄弟だとか言われていましたが、実なのか、盃酌み交わすような仲なのかは、よく知りませんが、通じ合っている感は強く。
親分は華原涼さん。実に渋く、響く声で貫録のある方でした。実は未だに顔とお名前の区別がいまひとつついておらず、最初はこの方が龍美さんだったかなあなんて思っていましたが、ちょっと空気が違うんですよね。淡泊というのか、笑いをとったりもされますが、冷徹で厳しい空気も漂わされます。
その龍美さんはジンベエ。少しおとぼけ、優しい空気は前回、拝見した時と同じような感じでした。最初、分からなかったのは、前回に感じた大らかさというか、安定した感があまり見えなかったから。まあ、役を演じているので、毎回違うのは当たり前ですがね。今回は少しコミカルさを醸されていたかなあ。
そのジンべエと掛け合いされるオミヨが凛笑さん。初回、拝見した時は、おとなしさを感じましたが、今回はけっこう弾け気味。いい間合いでのツッコミを入れられたりして。そして、相変わらず、可愛らしく。
大介さん、柚姫さん、冴羽さん、真の助さんは子分をされていたので、この芝居ではあまり見せ場が。と言っても、さすがにちょこちょことPRされていましたけどね。後、一人いらっしゃったのですが、名前が分からず。
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