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2016年7月 3日 (日)

変調・三人吉三巴白浪【カン劇cockpit】160702

2016年07月02日 芸術創造館 (115分)

これ、ちょっと感動する素晴らしい作品でした。
歌舞伎作品だから、名作ではあるのでしょうが、これをこんな迫力あり、味ある、魅力的な作品に仕上げる力に感激します。
話は、歌舞伎らしく、けっこうご都合主義的なところも多く、どこまで因果や悲劇が連鎖すんねんとツッコミをいれたくなるくらいのもの。
それがまた安心した古き面白さを感じられるのだと思っていますが、それを損なうことなく、変調と称するだけあって、どこか新しさも感じさせられます。
何か違う作品の空気も組み込んだりしているみたいで、この作品がいいということに留まらず、舞台表現する作品としての全体的な面白味を魅せるレベルの公演になっているように思います。
とりあえずくらいの感覚で足を運んだのだが、これは伺って良かった。
観劇することの楽しみを改めて感じることが出来たように思います。

<以下、あらすじしか書いていません。ネタバレしていますが、歌舞伎の同作品でネット検索すれば、詳細な情報が出てきますので、白字にはしていません。公演は月曜日まで。お薦めです>

夜鷹のおとせは、客の忘れ物を届けるべく、夜道を走って追いかける。
100両もの大金。失くしたのだと思い込み、身投げでもされたら一大事だ。
途中、一人の女性に話しかけられる。お姉さんと呼ばれたりして、すっかり調子に乗っているところをつけこまれ、川に突き落とされて、その金を盗まれてしまう。
女性は、巷で有名な盗賊、お嬢吉三。
その一部始終を見ていた金貸しの男。庚申丸とかいう刀を購入する武士のために100両を貸したはいいが、その武士が死んでしまった。手元にあるのはその刀。女相手なので、刀を突きつけて、その100両をいただこうという手段。ところが、お嬢吉三は、腕っぷしのいい男だった。ひねりあげられ、刀も奪われて逃げ出す金貸し。
落ち着いたと思ったら、今度は、どこかのお坊ちゃんらしき男が、その一部始終を見ていた。この男も、巷で有名な盗賊、お坊吉三。
二人は金を巡って、決闘を始める。
それを止めに入る豪快な体つきの男。名は和尚吉三。
無駄な命の奪い合いをすることはない。和尚吉三はその金を懐にしまい、二人に両腕を差し出す。
その心意気に惚れ込んだ二人は、名前が同じということもあり、義兄弟の契りを交わす。
元々は名武家の出で、父が盗賊に殿様から授かった庚申丸という刀を盗まれたことで、お家断絶。今は浪人をしているお坊吉三。
八百屋の息子として生まれ、両親に女の子のように可愛がられ、お七なんて呼ばれながら大切に育てられた。しかし、誘拐されて、そんな幸せな生活を失うことになったお嬢吉三。
義理人情に厚い父から、悪行三昧だったことで勘当されてしまって、今はこうして悪党の名を轟かせている和尚吉三。
三人の吉三はこうして出会い、共にすることとなる。

おとせの帰りが遅いため、父の伝吉と母のお多胡は心配している。
そこに、おとせが、川に落とされたところを助けてくれた命の恩人を連れて帰って来る。
その恩人は八百屋の久兵衛。
何か礼をしたいという伝吉に、久兵衛はある願いを申し出る。行方不明の息子を探して欲しいと。
取引先で100両を受け取った息子、十三郎はその帰りに姿をくらました。横領するような子では無い。事件に巻き込まれたか、失くしてしてしまい身投げでもしたのではないかと心配している。
伝吉はボランティアで土左衛門を引き上げて、弔いをしている。
それを聞き、伝吉は見覚えがあると言い出す。
遅かったかと愕然とする久兵衛。しかし、奥からその十三郎が現れる。身投げしようとしていたところを伝吉が止めて保護していたらしい。
そして、十三郎は、おとせが追いかけていた客だった。
その100両は何者かに奪われてしまった。でも、これは何かの縁。100両が巡り合わせてくれたのだと、おとせと十三郎は結ばれることに。
二人は100両を工面するための方法を考えるために奥の部屋へと向かった。
久兵衛は十三郎は実の子ではないと言う。
本当は市松という息子がいた。お七なんて呼んで女の子のように可愛がっていた。ある日、その子は誘拐される。心労で妻も亡くなる。何もかも失った時に、拾った子、それが十三郎らしい。体に犬のようなぶち模様があったのだとか。
それを聞き、伝吉は表情を歪める。
遅くなったので、久兵衛は、十三郎を置いて、帰宅する。

伝吉の下に、一人の男が訪ねてくる。
不詳の息子、世間では和尚吉三と呼ばれている男。
和尚吉三は、100両をこれまでの詫びだと持参。
ちょうど、今はこんな状況。喉から手が出るくらいに欲しい金。
しかし、汚い金は要らないと追い返す。
お多胡はどうしてもらっておかないのかと伝吉を責める。
伝吉はある話を語り出す。
20年も前のこと。盗賊の一味だった自分は、庚申丸という刀を盗み出す。
その盗みの帰り道、吠えてきた犬をその刀で斬りつけた。犬は嫌な表情を浮かべていた。その刀ははずみで川に沈んでしまう。いくら探しても見つからず。
その日から呪われた人生が始まる。
盗賊の親方が死んで路頭に迷う。
結婚して、双子をもうけた。お多胡の前の妻。しかし、その妻は双子を産んですぐに亡くなる。双子は男と女。男は体にぶち模様があった。あの時の犬を思い出し、怖くなって捨ててしまった。
それがきっと十三郎。
つまりは、おとせと十三郎は双子だと。
伝吉は、あまりの因果にただ拝むしか出来ないでいる。
そんな様子をずっと見ていた和尚吉三。持参した100両は、今回は悪事を働いたものでは無い。受け取って欲しい。だから、こっそり忍び込んで、置いていくことにしたみたい。
和尚吉三は100両を置いて、そしてとんでもない話を聞いて、去って行く。
100両に伝吉が気付く。
外に人の気配がする。きっと和尚吉三だ。伝吉は100両を放り投げる。
しかし、そこにいたのは、見知らぬ男。男はその金を持って逃げ出す。伝吉は追いかける。

逃げ出した男は源次坊。和尚吉三の舎弟。
源次坊は逃げた先でお坊吉三と出会う。
舎弟だと知らないお坊吉三は、その100両を男に刀を突き付けて奪う。源次坊は逃げ去って行った。
それを見ていた伝吉。お坊吉三に100両を返してくれと願い出る。
しかし、それを拒否するお坊吉三。
伝吉とお坊吉三は決闘となり、伝吉は殺されてしまう。
伝吉の後を追ってきたお多胡、おとせ、十三郎は息絶える伝吉の姿を見て、ただ泣き叫ぶばかり。

お坊吉三は、和尚吉三の寺にやって来る。
数々の悪行が、役人の知るところとなり、追われる身となっているらしい。
あいにく、和尚吉三は留守。しかし、和尚吉三から指示を受けていた源次坊が対応。奥の部屋へとかくまう。
覆面をしていたからか、源次坊はお坊吉三が100両を奪い取った者だとは気付いていない様子。お坊吉三はすぐに気付くが知らない振りをする。
和尚吉三が役人と共に戻って来る。
役人は、お坊吉三とお嬢吉三を捕えて差し出せば、和尚吉三の罪を許すと言う。和尚吉三はそんな気は無いが、分かったと答えて、役人を追い払う。
三人一緒にいられる時間も長くはなさそうだ。今日は鳥の水炊きにでもして、体を温めよう。和尚吉三は源次坊に買い出しを頼む。
その買い出しの途中、源次坊はおとせと十三郎に出会い、寺まで案内。再び、買い出しに向かう。
おとせと十三郎は、伝吉の死を伝える。殺された。その現場にあった刀の目貫。これはお坊吉三の刀のものだと気付く。
そして、二人は結婚すると。二人は双子であることを知らされていないことに愕然とする。
さらに、二人は出会ったなれそめを話す。事の発端はお嬢吉三がおとせから奪い取った100両だったのかと嘆く。
何という因果だ。
和尚吉三は二人に、話があるから奥の墓場で待つように伝える。
そして、和尚吉三は刀を手にして、二人の下に向かう。

全てを聞いていたお坊吉三。
これは腹を切るしかないと覚悟。
その時、屋根上から声がする。お嬢吉三。
お嬢吉三も隠れて全てを聞いていたらしい。
自分にも責任がある。一緒に腹を切ろう。
和尚吉三への詫びの文をしたため、いざ腹を切ろうとしたところに、和尚吉三が戻って来る。
二人の首を手にしている。
全ては、自分の父、伝吉が庚申丸という刀を盗み出した、その時から始まったこと。
悪い巡り合わせだったのだと。
そして、その庚申丸はお嬢吉三が今、手にしている。
何という因果なのか。
和尚吉三は、おとせと十三郎の首を、お坊吉三とお嬢吉三の首だと偽り、役人に渡すと言う。
そして、二人に逃げるように伝える。

和尚吉三の偽首はバレてしまい、追われる身となってしまう。
お坊吉三は、お嬢吉三に父である久兵衛に会わせてやりたいと試みる。お嬢吉三は、100両を工面して、せめてもの罪滅ぼしをと。
そんなことをしているうちに、時間が経ち、二人は木柵の内外で離れ離れに。
お坊吉三とお嬢吉三が召し取られた時、半鐘を鳴らす。その時、木柵が開くことになっているらしい。お嬢吉三は半鐘を鳴らす。これでお坊吉三は逃げのびれるはず。
木柵が開き、捕り手たちが集まって来る。
お坊吉三は逃げずに、刀を振り回して、最後まで抵抗するつもり。お嬢吉三もそれにのっかる。和尚吉三も包囲網を突き抜けて、やって来る。
やがて、追い詰められた三人。
これまでだと、三人は互いに差し違え、壮絶な最期を遂げる。

三人の月命日。
食べられなかった鳥の水炊き。
毎月、それを食べながら、三人の死を弔う源次坊。
彼の語る、この悪い巡り合わせが導いた、あまりにも悲しい三人の運命は、文士によって書き留められ、今もこうして、様々な形で描かれ続けている。

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コメント

ご来場ありがとうございます。
ご感想を読んで、今回の作品を上演して良かったなと実感いたしました。
また機会ありましたら、よろしくお願いします。

投稿: 松本大志郎 | 2016年7月 5日 (火) 18時03分

>松本大志郎さん

コメントありがとうございます。

3、4年ぶりに拝見しました。
めちゃくちゃ良かったです。
話も分かりやすいし、舞台も綺麗だし、役者さんも迫力あるし。

また、観劇三昧で、夏祭浪花鑑も時間ある時に、鑑賞したいと思っています。
次回作も期待しております。

投稿: SAISEI | 2016年7月 5日 (火) 18時59分

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