« 箱根八里の半次郎【劇団KAZUMA】160714 | トップページ | 或いは魂の止まり木【A級MissingLink】160716 »

2016年7月16日 (土)

JACK【劇団ハネオロシ】160715

2016年07月15日 シアトリカル應典院 (105分)

切り裂きジャック事件を題材に、そこに潜む人の歪んだ欲望と同時に、尊き愛も描いて、より良き社会を創る道標を導き出そうとしているような作品か。
今の貧困や格差が渦巻く生き辛い世の中にも通じ、そこであらゆる人たちが、どのように生きていけばいいのかを、人が愛し合う、想い合う姿を通じて考えさせられるような話でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

ロンドンの貧民街で娼婦をしながら、息子二人を育てるメアリー。
息子二人も、現場仕事をして、家計の手助けをしている。
不真面目で、考えるよりすぐに行動って感じのいい加減な兄、ジャックと、真面目で優秀、母を支え、しっかりと兄の面倒も見る優しい弟、ケニー。
随分と出来に差があるが、二人は仲良し。ケニーは兄を尊敬しているし、ジャックも弟を誇りに思っている。今でも、久しぶりに、稽古と称して、剣を交えたりする。昔は力の強いジャックが優勢だったが、今は頭を使ってケニーの方が一枚上みたいだ。そして、二人は共に母思いだ。臨時収入が入ったというケニーは、ジャックと一緒に母のために靴を買いに行く。

メアリーの家に探偵と助手が訪ねて来る。最近、この街を騒がしている猟奇殺人事件。娼婦が連続して狙われており、その情報を探りに来たようだ。探偵はその犯人探しに執着して躍起になっている様子。これまでは犯罪を犯す悪い人が殺されていた。しかし、最近は娼婦中心。犯人は複数いる可能性がある。組織なのかもしれない。切り裂きジャックと犯人を名付けて、その行方を追っている。助手はお茶目でまだまだ頼りなさそうだが、そんなちょっと暴走気味の探偵を諌める役割も果たしているみたい。
メアリーは話は聞くものの、それを怖がって仕事をしないわけにもいかない。現実は厳しい。こんな探偵ごっこに付き合っている間はないと追い返し、仕事に向かう。
娼婦館の店長、キャサリン。巨漢のゲイ。これだけの言葉で表せるような風貌。
娼婦は小柄で可愛らしいが、引いてしまうくらいのキツい過去を持つアニー、そして、メアリーだ。
キャサリンは、自分を娼婦だと蔑むアニーを、たくさんいい所があると娘のように褒め称える。メアリーも、アニーを自分の友達、妹のように可愛がっている。いわば、一つの家族のように、辛い仕事を互いに分かち合い、支え合いながら頑張っている。

帰り道、メアリーは足をひねってしまう。通りかかった男。お嬢さん大丈夫かなどと言われて、メアリーはそんな歳じゃないと憎まれ口を叩く。殺人事件のこともあり、警戒している。
しかし、男は医者らしく、軽く足を処置してくれる。この辺りでは見かけない紳士的な男。治療費は払えないと言うと、金儲けで医者をしていないと言う。愛を知りたいから。そんな、歯の浮くセリフを平然と口にする。
ユーモアのある面白い男。メアリーは、お礼に晩御飯をご馳走すると家に連れて帰る。
家では、ジャックとケニーが、サプライズプレゼントの予行練習中。
医者はゴードンと丁寧に名乗る。
皆で食事をすることに。

治安はかなり悪いらしく、この日は、別に通り魔事件が起こっている。
貴族の地位を捨てて、貧民街で自由に暮らすお嬢様、エリザベスが、まだ幼い盗賊の二人組に襲われる。どうやら、生きていくためには盗みをしないといけないのか、姉弟のようだ。
エリザベスも腕っぷしは強いようだが、二人相手はちょっときつい。そこにキャサリンが登場。巨体を活かして、盗賊を撃破する。
メアリーの家では食事。ゴードンはみんなと出会えたこと、こうして温かい食事を食べて明日を迎えることが出来ることを神に感謝する。
発砲音。このあたりでは日常茶飯事。メアリーは放っておけと言うが、ゴードンは怪我人がいるかもしれないと外に飛び出す。
代わりに入ってきたのが、盗賊の二人組。エリザベスから金を奪うのを失敗したので、今度はここに流れ込んできたようだ。
家族総出で抵抗して撃退。元々、金目のものなど無い。盗まれはしたが、それはケニーが大事にしていた蛇の抜け殻。
ドタバタした一日だったが、ジャックとケニーは、メアリーに靴のサプライズプレゼントをする。

娼婦館に、面接にやって来た娼婦。この日は、トニーとかいう、何でも分かっていると言いながら、分かっていないことをさんざんして、遊びまくって、さらには自分の宣伝もして去って行く自由人。
もちろん、不合格。明日はまた、別の人がくるはずだ。
それはともかく、アニーとメアリーがやって来るが、今日は予約の客が一人だけ。
キャサリンに任せて、二人はお買い物に出掛ける。
店に幼い子がやって来る。どうやら、予約していた客らしい。盗賊二人組の弟、コニ。可哀想にも、キャサリンと一緒に奥の部屋に連れて行かれる。
外では姉のエドが待機。
エドとコニは、身寄りがないところを、マフィアのカルマに拾われ、仕事をさせられている。暴力を振るわれ、稼いだ金も巻き上げられと、縁を切りたいのだが、なかなか難しい。エドは薬物依存になっており、それをカルマから報酬としてもらったりしているから。
でも、この仕事で最後にするつもり。それは娼婦館を潰してしまうこと。どうやら、その偵察に来ているらしい。
娼婦館にとっては、酷い日となる。
アニーが帰宅途中、何者かに切り刻まれて惨殺。取り調べに立ち会うため、キャサリンは店を留守にする。
その間に、娼婦館が何者かに燃やされて焼失。
エドは仕事を果たした。これでカルマと縁を切って、コニと共に真っ当に働く。
そう考えた矢先に、コニが何者かによって殺されてしまう。
傷心のエドは、犯人を知っているらしい探偵の下に向かう。そして、協力し合うことに。
カルマ曰く、店は貴族の集まり場所にするらしい。薬物を秘密で楽しめる場所。ここなら大丈夫。切り裂きジャックという、情報無き存在に人々が惑わされているから。
そして、その切り裂きジャックを生み出したのもカルマだ。多額のお金を渡して、悪い奴らを殺させる。生活が厳しく、母や兄を助けたいと思っているケニーは、その話を受け入れた。
エドは、最愛の弟を失い、この先どうして生きていけばいいのか分からない。所詮はゴミ。ゴミらしく生きていけばいいとカルマはエドに迫ろうとする。
クズのような人生。この命と引き換えに、もっとクズな世の中に一泡ふかす。エドは全てを賭けて復讐を誓う。

キャサリンは店を閉めることに。家族を殺され、その家まで失った。長年の付き合いだったメアリーともお別れ。
行く宛ての無いキャサリンをエリザベスは家に招き入れる。一人飲みは寂しいからと。そして、経営するバーで二人で細々と生きていくことにする。
そんなエリザベスがまた襲われる。キャサリンが助けに来るが、今回は二人とも刺されてしまう。探偵もやって来る。犯人は急いで逃げる。そして、しばらくして、ゴードンがやって来る。二人を介抱し始める。
キャサリンはもう手遅れだった。エリザベスも息絶え絶え。必死に何かを言おうとしているが、首を掻き切られていて声が出ない。探偵に伝えたかったはずだ。この男に私たちはやられたのだと。
ゴードンはそのまま、メアリーも襲う。
手錠をかけて監禁。
いい子にしていたのに、両親から愛をもらえなかった。ある日、マフィアに家が襲われる。両親は自分に逃げろと言った。どうして、そう言ったのか。その日から、愛の正体を知ろうと彷徨っている。
探偵とエドが、切り裂きジャックの隠れ家として突き止めている場所に向かう。そこにメアリーは監禁されている。
その隠れ家の前に一人の仮面をした男。ケニー。切り裂きジャックは複数いる。そう言って探偵はエドと共にケニーと対決。
助手も助けにやって来るが、結局、皆殺しになる。
隠れ家では、メアリーとゴードンが対決。メアリーは刺され、瀕死。目も斬られて何も見えないみたいだ。最後の力を振り絞って、ゴードンを窓から突き落とす。
カルマがやって来る。
どうやら、ジャックとケニーは、カルマとメアリーとの間の子らしい。メアリーはカルマがケニーをたきつけていることを知っていたみたい。
カルマはそのまま去り、ジャックと出会う。ジャックもケニーのことを薄々気付いていたようだ。カルマから真実を聞き、ケニーの下へと走り出す。

ゴードンは、息絶え絶えにフラフラと歩く。
探偵、助手、エドの死体が転がる中、ケニーは立っていた。
カルマがやって来て、ケニーにゴードンを殺すように指示。
銃を向けるが、ケニーは撃てない。
カルマはその銃を取り上げ、自らゴードンを殺害。自分は間違っていた、でも、世の中はもっと間違っていると言葉を残して、ゴードンは死ぬ。
エドは最後の力を振り絞って、立ち上がり、自分と共にカルマを剣で刺す。ただ、カルマの急所は外れていた。エドの死を確認して、カルマは立ち去る。
ケニーはメアリーの下へ。メアリーは、自分たちのためにしてくれていたことの感謝と共に、やはり人を殺すことは悪いことなのだと諭す。世間は見ているから。どんなに苦しくても、真っ当にきちんと生きて欲しいと。ケニーは助けを呼びに外に飛び出す。
ジャックがやって来る。出来の悪いバカ息子は、姿見えずともすぐに分かる。こんな世の中、間違いだらけの世の中だけど、それに逆らわず、努力して頑張ってと言い残し、遂に力尽きるメアリー。

それから、しばらく時が経つ。
ケニーは死んだことになり、墓もある。
ジャックはずっと荒れている。そんなジャックの下に、探偵がやって来る。どうやら、死ななかった、いや死ねなかったみたいだ。
探偵はケニーの居場所を突き止めたらしい。
ジャックはケニーの下へと向かい、二人は再会。
二人は稽古では無い、真剣に剣を交える。
そこに、銃声。探偵はケニーを撃つ。そして、全てが終わったと自らのこめかみを銃で撃ち抜き自殺。
ケニーは、立ち会がり、剣を捨てる。
そして、ジャックと拳で殴り合う。二人は、自分たちの想いをぶつけ合う。
やがて、ケニーは倒れ、ジャックは去って行く。
警察は、倒れるケニーを確保する。

街では、未だ切り裂きジャックが出没する。
娼婦では無く、犯罪を犯す悪い奴らを殺す男。
生き残ったカルマは、貴族相手に商売をしているが、今度はこのジャックが目障りになってきたようだ。商売あがったり。
カルマはジャックに仲間になって、共に金儲けをしようと誘う。
それに乗ったふりをして、ジャックはカルマと対決。
しかし、警察の手も回っていたみたいだ。
カルマは逮捕。刑務所暮らしなどまっぴらだと、ジャックに自分を殺すように言うが、裁くのは自分では無いと立ち去る。
銃声。ジャックに向けられた弾。
その撃った男はケニーだった。ケニーは記憶を失っている。母、兄を殺した切り裂きジャックへの復讐を誓った目をしている。
ジャックは覚悟する。
ケニーの正しき明日のために、自分は切り裂きジャックとなり、全てを背負うことを。

最後の方で、少し混乱してしまいましたが、だいたいこんな感じの話かと思います。
切り裂きジャック事件を題材にしているので、謎解き、もしくは、その猟奇的な犯罪における心理描写が描かれるのかと思っていましたが、少し感覚の違った作品だったように思います。
貧困や格差といった、今の生き辛い世の中において、人がどう生きるべきなのかを考えさせられるような話になっているようです。
おかしな社会が切り裂きジャックを生み出すのか、それとも切り裂きジャックを人が求めたからおかしな社会になったのかみたいな、鶏と卵はどちらが先かみたいな、謎かけのような興味深い構成も感じさせられます。

明日、きちんと食べられるのかが不安なくらいの貧困があり、ずるがしこく振る舞い、汗水流さずともなぜか金が集まってくるような人もいる格差も存在する。
そんな社会において、切り裂きジャックという、初めは悪い奴を残虐にやっつけてくれるという義賊のような存在は、大衆のヒーローのようにも映ります。人を殺すということは悪いことは悪いし、間違いと言えば間違いだけども、こんな懸命に頑張っているのに報われない世の中だって間違っているのではないのか。だったら、貧困層に属して、悪いことも出来ずに、日々を懸命に働いて過ごす自分たちの安心の下に、そんな切り裂きジャックの存在を楽しんでもいいのではないのか。日常の苦しさ、辛さから目を背けて見える非日常がそこにはあるから。
そんな考えが、いつしか、娼婦のような自分たち自身も脅かされるような、切り裂きジャックという存在に変わっていく。その時には、人々は切り裂きジャックを認めてしまっているので、たとえ自分たちに危害がある存在になったとしても、それを拒絶することが出来なくなっている。
そして、最終的には、自分の大切な家族や友を、その切り裂きジャックによって失うことになってしまう。
全ては、人の歪んだ欲望から、生み出されたもののように感じる。
そんな欲望は誰しもが本能のようにあるものなのかもしれない。その異常は、普段は奥に潜んでいるが、社会の歪みと一緒になって顔を出してくるようだ。

メアリーの最期に最愛の息子二人に残した言葉の意味合いを考える。
今、まさにそんな切り裂きジャックが生み出され、それが、本当はかけがえのなかった大事な日常を脅かす脅威となって、自分の首を絞めるのではないかという警鐘を感じる。
それに対する恐怖を煽り、自戒せよとだけに留まっていないようなところが、この作品に光を感じるところでもある。
それは、同時に愛も描かれているからだろう。歪んだ愛もあるが、それも純粋に、人を求め、人を愛したい、愛されたいという想いがきちんと人には備わってるからだろう。
家族、親子、兄弟、友達、仲間と、様々な形での愛がこの作品の中に散らばっている。それは、人を傷つけたいという切り裂きジャックの歪んだ欲望では無く、大切な人を守り、共に生きたいという尊き欲望から生まれている。
その本来の人の姿を信じ、歪んだ自分がいることから目を背けず、歪んだ欲望に打ち勝って生きていけるように努力をする。周囲の人たちはいつも自分を見ている。その正しき愛の姿は、その人たちをもより良き生き方へと導く。それが自分たちの明日に希望を抱ける社会を生み出すはず。
自分の欲望と向き合い、それを正しき愛として昇華出来るような生き方をして、歪んだ欲望に囚われてしまった切り裂きジャックはもちろん、それを当たり前にする社会にしてはいけない。
そんなことを感じさせられるような話だったように思います。

|

« 箱根八里の半次郎【劇団KAZUMA】160714 | トップページ | 或いは魂の止まり木【A級MissingLink】160716 »

演劇」カテゴリの記事

コメント

お越しいただきましてありがとうございました。

投稿: キャサリン役牛島 | 2016年7月16日 (土) 12時23分

>キャサリン役牛島さん

コメントありがとうございます。

確か、病気をされたんでしたっけ。
バッチリと舞台でご活躍されていて、良かったです。

あの役ははまり役ですよね。
また、けっこう、いいところ持っていきますしね。

また、どこかの舞台で拝見するのを楽しみにしております。

投稿: SAISEI | 2016年7月18日 (月) 20時05分

昨年に脳梗塞で一時は本当に危ない状態でした。
今回色々な人達からはまり役、過去一番良かったと言われて次はそれを越えなければいけないのか…と思っています。
僕の次回は所属先の劇団まっコイになりますのでそちらも是非お越しいただけたら嬉しいです。
今回はご観劇いただきありがとうございました

投稿: キャサリン役牛島龍馬 | 2016年7月19日 (火) 20時50分

SAISEI様

成瀬サキさんが良かったです。真紅組の時は目立たなかったのですが。かなり成長されてますね。

話はやや途中飽きたかな。。確かにカメハウス的なものが(笑)

客出しも一列に並んでのお見送り良かったですが椅子と机の方に行きたかった。

上演時間ここもチラシにしか書いてなかったんですよね。。

投稿: KAISEI | 2016年8月14日 (日) 23時05分

>KAISEIさん

成瀬さんは、ちょっと大人の色気も醸して、役としても非常に良かった印象が残ります。
私の中ではピースピット→カメハウスと流れを引き継いだ感じですかね。ここから、独自の魅力を醸せるところにまで至られて、あっと驚かせてもらえるか、楽しみです。

上演時間はねえ・・・
本当に意識して、ゲネプロとか終わってすぐに速報出してくれるところもあれば、最後までかたくなに提示しないところもありますからねえ。
私は単純に、日程調整も大変なので、優先順位を落とす、そのうち観なくなるという風にすればいいだけだと思っています。
それでも、観たいと思わせるだけの力があれば、また別ですが。

投稿: SAISEI | 2016年8月23日 (火) 14時33分

SAISEI様

成瀬さんの色気については個人的には今回はあまり承服しかねるのですが(笑) 何となくわかります。前に可愛い顔されてるわりに色気がある、と感じたことがあって●な●さんに言うと、「僧なんですよね~♪ あの子」みたいな話になったので。

上演時間についてはまた(笑)←最近私は新しい取り組みを始めています(笑)

投稿: KAISEI | 2016年8月24日 (水) 10時53分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549536/63919810

この記事へのトラックバック一覧です: JACK【劇団ハネオロシ】160715:

« 箱根八里の半次郎【劇団KAZUMA】160714 | トップページ | 或いは魂の止まり木【A級MissingLink】160716 »