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2016年7月 2日 (土)

SERVICE【万博設計】160701

2016年07月01日 ウィングフィールド (100分)

よく分からないことも多い、不思議な話なのだが、結局は、大切な人を失い、それに囚われ立ち止まった男が、再び歩み出すまでの物語なのだと思います。
止まった時間。でも、その人の生きる社会の時間は変化し続けながら、流れている。
その時間の流れにもう一度、乗って、社会の一員として生きていくために、差し伸べられた手の中にある、様々な人たちの想いが描かれているようです。
特殊な趣向が凝らされた舞台が、状況描写の想像を膨らませ、そこにある複雑な想いの交錯を強く感じさせられます。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

田舎の国道沿いのコンビニ。
デートがある朝番は、夜番に早めに来てもらい、自分は申し訳なさそうにしながら、あがろうとする。
駐車場には黒いムーブ。タバコと焼酎、あとは携帯の支払いに来るいつものヤンキーおじさんだ。
突然、轟音が響き、コンビニは崩れる。
中には夜番、そして、店で寝泊まりする雇われ店長。
閉じ込められてしまう。夜番はどうにもならないことはあると、さほど焦りはしていないが脱出を試みる。
夜番は、自分より小さい朝番に隙間から入って救出しろと言うが、朝番は難癖つけて、助けようとしない。
駐車場では、ヤンキーおじさんが途方にくれている。
インキー。車の中に携帯も財布もある。コンビニで電話を借りようにも、なぜか開いていない。
一緒に来ていた女子高生は、自分で公言しているぐらいに、少し精神疾患が見られる変わった子。こんな緊急事態にも動じず、むしろ楽しんでいる様子。
家では親に叩かれてばっかり。ヤンキーおじさんにも、よくツッコミで叩かれるが、大好きな人だから。
待つのは慣れているから平気。今は夕方。時間が進むということは、人と関わっている証拠だから。
そんな中、おかしな三人、いや二人と一匹がやって来る。
女軍曹、歯科医、犬。
女軍曹は救助にやって来たと言っている。そして、やたら、敵か味方かを追求してくる。
高飛車な態度で、歯科医に命令。ヤンキーおじさんと女子高生は歯科検診を受けさせられる。
結果も良好でそれだけならいいのだが、歯科医は銃を持っており、色々とうるさく、40にもなってこんな生活をしているヤンキーおじさんに発砲。痛がる、ヤンキーおじさん。
日は沈む。

日の出を迎える。
いつの間にか、店の中で一晩寝ていた朝番。
交代の時間。夜番は店をたやすく出る。一晩、ずっと待って耐えていたから、隙間を抜けられるだけ、身長が少し縮んだのだとか。
朝番は待っている彼氏のためにも、夜番にシフト交代を願い出る。
夜番はやむなく、それを認め、連続して仕事をすることに。
店の中に二人と一匹が入って来る。
救出に来たと言いながら、女軍曹はやたら偉そうな態度で威圧してきて、歯科医は女軍曹の言われるがままに銃で脅してくる。犬は何か蝶々を追ってふわふわしている。
店長は、さして愛着も無いこの店でややこしいことが起こってうんざり顔。
夜番は、人生なかなかこんな劇的なことが起こることは滅多に無いと興味津々。こんな田舎のコンビニで刺激と言えば、ヤンキーとカーセックスした時ぐらいだったから。

女子高生は、外に出て来た犬とお話。犬だけど美しい声。しかも喋れるみたいだ。
そのことをヤンキーおじさんに伝えても、バカバカしいと相手にしてくれない。
ヤンキーおじさんは、歩いて帰ろうとしている。
40kmの道のり。女子高生はマラソンぐらいだから2時間だと、その覚悟は薄い。
朝番が店から出てくる。
ヤンキーおじさんは見覚えがある顔だと、朝番に店はどうなっているのかと食いかかる。
朝番は分からないと答えるばかり。
それでも、威圧的に朝番に絡むヤンキーおじさんを女子高生はもうヤンキーを辞めないとダメだと諭す。
朝番の表情が曇っている。何かに悩んでいる顔。女子高生は自分の今と同じだと感じる。
仕事が辛い、彼氏とのこと、全部分からない。自分がどうなのか分からなくなっている。
きっと、明日、それでもまたここにやって来る。
ヤンキーおじさんは、誰かに自分たちのことを伝えろと言って、去る朝番を見送る。
歩いて帰るにしても、ヤンキーは銃で撃たれて足を怪我している。
女子高生がヤンキーおじさんをおぶる。一歩も動けない。
ヤンキーおじさんは、女子高生をおぶり、歩み出す。
彼女との思い出。この子と、自分は一緒にならない方がいいのかもしれないと思いながら。

店の中では女軍曹がはさまれて身動きがとれなくなってしまっている。目も見えなくなってめくらになってしまったようだ。それを犬は黙って見守る。犬もまた、おしなので声を出すことが出来ない。
朝みたいだが、暗闇に包まれている。
歯科医を呼び出すと、やって来る。
しかし、そこには石屋。歯科医とそっくり。救助にやって来たのだとか。
女軍曹を救い出し、脱出。しかし、まだコンビニには人がいると叫び出す。
店長はこのドタバタ騒ぎで寝れないと疲れている様子。
朝番が来ても、これではもう代わることも出来ない。夜番はずっと仕事だ。
せめて寝れたら楽になるのだろうか。
羊が一匹、二匹。
柵の中で生きると決めた羊。そこには水も食べ物もある。

女子高生をおぶったヤンキーおじさんは、また同じ場所に戻って来てしまう。まっすぐに歩いていたのに。
女軍曹に、石屋に、犬。
ヤンキーおじさんは、昨日のことをすっかり忘れている。
女軍曹は、店の中にまだ人がいると叫び続けている。
石屋は、最初はなだめていたものの、いい加減腹が立ち、ずっと偉そうな態度の女軍曹を蹴りつけて、助けに来て、どうしてこんな不愉快な思いをと、立ち去る。
倒れ込む女軍曹。女軍曹は金をやるから、助けろとヤンキーおじさんに言う。
ヤンキーおじさんは安易に話に乗ろうとするが、女子高生に諫められる。
そのうち、金はかなりの多額に吊り上がる。そのたびに、ヤンキーおじさんは助けようとするが、女子高生に制される。そして、最後に犬の吠え声、ワンで一万円に。
ヤンキーおじさんは、女子高生に待つという時間の感覚を責める。
女子高生は、金など関係なく、女軍曹を助けようとする。
抱き起こすが、一緒に崩れてしまう。
ヤンキーおじさんは、女軍曹の下敷きになった女子高生を助け出す。

そんな姿を、店から夜番は見ている。
柵を飛び出した羊。時間の流れ。必死に走る羊。やがて、その流れに抗おうとした時、羊に死が訪れる。
ヤンキーおじさんは、昨日のことを思い出す。
自分を撃ってきた歯科医。命令したのは、この女軍曹だ。
ヤンキーおじさんは、女軍曹に蹴りを入れる。
自分は助けにきただけ。仲間に裏切られ、目も見えなくなり、こうして蹴られ。
傷心の女軍曹を、犬は連れて、この場を去って行く。
思い出すと、ヤンキーおじさんは、昨日の傷が痛み出す。
女子高生は思う。痛い。叩かれて痛い自分。
遺体の自分にずっと話しかけ続けてくれているヤンキーおじさん。
もう、歳なんだし、ヤンキーは辞めないと。女子高生は去って行く。

朝になり、朝番がやって来る。
見覚えがある顔だと、ヤンキーおじさんは近づくが、人違いみたい。
このコンビニのオープニングスタッフの募集を見て、来たらしい。
店から、店長と夜番のバイトが出てきて、新しい仲間を歓迎している。
店長と朝番は店の中へ。
夜番はヤンキーおじさんに近づき、大丈夫かと聞いてくる。
もう大丈夫。ここからは出て行くと決めた。
朝番がJAFを呼んでくれたらしい。
10分ほど、待てば、助けに来てくれるはず。そして、自分もここから出て行けるだろう。

メモしたキーワードを基に、思い出しながら筋を書いてみました。
頭を整理したら、何か分かるかなと思いましたが、いまひとつぐちゃぐちゃなままだし、よく分かりませんね。
結局は、救えなかった彼女に囚われて、立ち止まった男の再出発の物語なのでしょうか。
彼女を待つ時間は、不毛なもので、そこに時間の進行はありません。少なくとも、男の中での時間は動いているのでしょうが、それは外の世界での時間の流れとは異にしているようです。
その外の世界の時間の流れに乗って生きていくことが社会の一員として生きることであり、それを感じる一つが、コンビニのように便利なサービスを自分が受けられていることに繋がっているような感じで捉えられる話かなと思います。サービスは物理的な供給でもありますし、精神的な想いを得るといったものでもあるようです。
その流れに抗い、自分の中だけの時間で生きていくことは、社会的な死であるのでしょう。
目の前にある、何でも手に入るコンビニやここからどこかへ行ける車。
男は、このコンビニの駐車場で、時間を失った彼女との一緒の時間をいつまでも過ごすために、そんな存在を自分の中で拒絶し、消し去ってしまっていたかのようです。
そこにやって来た救出部隊。
いくら拒絶しても、自分と関わる人たちとの繋がりまでは消すことが出来ず、自分はその中で時間を動かしていかないといけないことを悟ったのか、最後に男は歩み始めています。

コンビニは、衣食住は出来て、便利だけど、人との関わり合いを拒絶する閉鎖空間。
そこの安楽の住人になっているかのような店長。
終わらぬ夜、いつになったら、ここでの仕事を終えられるのか分からず、ずっと居続ける夜番。外の世界の姿をたまに見たり、いつでも出て行くことは出来る。それでも、彼氏と会ったり、家に帰ったりして、社会の時間を育む朝番に対して、自分は所詮、ここで閉じこもるのがふさわしいとばかりに、自分を犠牲にするかのように、朝番の代わりをする。だから、コンビニに朝はいつまでもやって来ない。
そんなところから脱出するのはとても難しそうだ。
でも、最後は、新しい空の店から、再出発する姿を見せている。安楽の地に、身を置いて、止まった時間を過ごすのではなく、サービスを与える場を、自らも参加して創り上げることで、社会の中での一員として、時間を動かそうとしているみたい。

女軍曹は、人を敵か味方かで判断して生きていかないといけないような、今の過酷な社会背景だろうか。ただ、手を差し伸べたいだけだったのに、その手を振り払われ、傷を負い、辛い状況に追い込まれてしまうこともある。それでも、兵士として、強く外の世界で生きていく。
犬は、吠え声をあげられない、生まれつきの障害を持っているみたい。運命というのか、生まれもった環境は変えられない。女子高生は家庭事情がよろしくなかったようだが、これは彼女がどうか出来る問題ではない。だからといって、そこから逃げることは出来ない。綺麗な蝶々を追いかけて夢を見ていても仕方がない。蝶々などいない。あるのは、自分の身体に宿るグロい腸という内臓で、それでも、自分を生かしてくれる大切な腸と共に自分は生きていかないといけない。
歯科医、石屋は何だろうな。社会の中で生きていると、人には肩書が与えられる。歯科医なら、歯の健診から、インプラントまで色々と。石屋は墓でも作らないといけないだろう。自分は何が出来るのか。人に対して、どんなサービスを与えられるのか。その役割を果たすべく、悩みながら、時にはその肩書に文句をつけられながらも、自分の使命を全うすべく、社会の中の大事な構成員として生きていく。
そんな、それぞれ違っているが、皆、生きようとしている姿を見ることで、男にとっては、救いの手となったみたいだ。

コンビニ崩壊などの効果音が、ゴーっといったもので、どうしても震災のようなものもイメージする。
コンビニに限らず、これまで様々なことで普通に与えられていた便利なサービスが消えてしまう。車のインキーなどは交通機関麻痺による、社会からの遮断か。
大切な人を失ってしまい、ただ佇むしか出来なくなっている人もいるだろう。
女軍曹は、憎しみや裏切り、犬は障害や不自由、歯科医と石屋は病気、健康や生死の象徴のように考えれば、被災してしまった人たちを取り巻く環境を描いているようにも見える。
もうどうしようもないから、このままで生きていくと諦めの境地にいるような店長や、いつまでも巡って来ない夜明けに時間の変化を見失ってしまっているような夜番。
どうしてこんなことになってしまったのか、いつからこうなってしまったのか。
そうではなく、これからをどうするのかだ。
これから、この止まってしまっている時間を、外の世界の時間と同じように、変化をし続ける流れを生み出すのか。
新しいコンビニに集う人たち、傷ついた身体や心を抱きながらも、歩み始めようとする人たち。
痛みを忘れず、失ってしまった大切な人たちへの想いを胸に、これからの時間を動かす。
最後はそんな本当の復興の始まりの姿として映っているようにも感じる。

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演劇」カテゴリの記事

コメント

いつもながら、鋭い洞察力ですね。
今回もありがとうございました。
次回はまだ未定ですが、またお待ちしております。

投稿: 秋津ねを | 2016年7月 5日 (火) 19時23分

>秋津ねをさん

コメントありがとうございます。

返信遅くなりまして、申し訳ないです。

色々なことに置き換えて楽しめる演劇らしい作品でした。
最後に温かい想いが浮き上がる感じも素敵だし。

また、次回作を期待したいと思います。

投稿: SAISEI | 2016年7月11日 (月) 14時08分

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