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2016年7月10日 (日)

13~招かざる客人~RADICAL【Artist Unit イカスケ】160709

2016年07月09日 芸術創造館 (100分)

かなり細かく巧妙な構成で描かれているミステリー。
個性豊かな、濃いキャラを面白おかしく演じる役者さんによるコメディー。
ミステリー×コメディーと融合した魅力をふんだんに味わえる面白い作品。
と書きたかったのだが、正直なところは、ミステリーの脚本の凄さが勝ってしまい、コメディーをあまり感じられなかった印象が残る。
観られた方なら分かるだろうし、普段、観劇をされている方なら、ご出演の役者さんの名前を見ただけで、だいたいは想像できるだろう。かなり弾けて突き抜けたコミカルさを醸されていたことは間違いなく、笑えて面白いシーンもたくさんあった。でも、それよりも、この巧妙なミステリーとしての話の展開に頭がいってしまい、そちらを存分に楽しめなかったのではないかなといった感じ。
感想は笑えて面白かったではなく、話が凄くて面白かったに留まる。
まあ、これで十分ではあるのだが、イカスケならば、やはり笑えるし、話は凄いし、やっぱり面白かったわとなって劇場を後にしたかったなという思いが残る。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

古美術商を営んでいた道明寺肇が晩年暮らしていた山奥の洋館。
5年前にその道明寺肇は自殺。さらに、洋館に出入りしていた隠し子のハナエという女性も、この山の崖から転落死。
洋館に飾られていた多くの美術品もただ一つ、絵に顔の彫刻を埋め込んだ作品以外は全てどこかへ消えてしまった。
警察やマスコミは遺産目当ての他殺を疑い、姪である姉妹、光代と沙知代を取り調べるものの、確たる証拠は無く、結局、自殺と事故死で片付けられた。
今は、その洋館を光代が相続し、他の土地などは沙知代が相続している。もっとも、沙知代は、夫共々、幸が薄く、会社が倒産したりして、その遺産は全て借金返済に使ってしまっているのだが。
そして、洋館は、幽霊が出るなんて噂が立つくらいに、人が寄り付かないところになっている。
そんな洋館で、今日は大切な集まりがある。
道明寺肇にはもう一人隠し子がいたらしい。その伊予という女性が、姪たちを集め、遺産相続の件で話し合いを設けたいということになったようだ。

そんなことを何も知らずに、猫探しをしていて、迷い込んでしまった探偵とその助手。
探偵は、本当はドラマのような密室殺人事件とかを扱いたいようだが、現実はこんな仕事がメインだ。
優秀な助手に煽られながら、適当に仕事をする探偵。ふざけて、高そうな絵に埋め込まれた顔の彫刻を外して遊んだりしている。
屋敷の中を探して、帰ろうとした時、誰も来るはず無いと思っていた人が入って来たので急いで隠れる。
弁護士と清掃業者の男女。清掃業者はここに来る途中で拾った猫を持っている。
清掃業者は何かを企んでいるらしく、さっさと仕事を始めようと、外に出て、準備をする。
弁護士はかなりのビビりみたいで、なんとなく気味悪い洋館の空気にオドオドしている。
探偵は猫アレルギー。部屋に猫がいるので、えづいてしまう。その声に弁護士はビビって外へ飛び出す。
その隙に、助手は猫を確保。代わりにジャガイモを入れて、逃げようとするが、清掃業者と弁護士が戻ってきてしまう。
何もいないじゃないか、猫じゃないのかと弁護士をあしらう清掃業者。弁護士は猫を確認すると、そこにはジャガイモ。弁護士は叫びながら再び外へ飛び出す。
その叫び声で洋館の中の人が下りてきてはまずいと清掃業者も外に。

探偵と助手は逃げようとするが、今度は二階から誰かが下りてくる。
沙知代夫婦。隠し子がいたとなると、相続した遺産は全て、返さないといけない。でも、全部、借金返済に使ってしまい一銭も無い。残された手段は、姉、光代の相続したこの洋館の権利書を盗んで、怪しい不動産屋に売ることを考えたようだ。
と言っても、幸薄い二人。権利書は見つからない。地下室で懐中電灯の電池が切れるわで、全く上手くいかない。とりあえずは、電池を買いに出掛ける。すぐに雷雨となる。
今度こそ逃げようとする探偵と助手。しかし、清掃業者と鉢合わせ。助手は巧く、光代の親類となって誤魔化す。探偵は猫アレルギーで顔が真っ赤。その姿を見て、幽霊が出たと清掃業者は逃げ出してしまった。

洋館に新たな人が。
光代と、恋人のアイドル。女性記者とアシスタントの男も連れている。
記者は、5年前の道明寺肇とハナエの事件の記事を書いた人。真相を探るべく、伊予から呼ばれたららしい。しかし、光代はそれに納得していない。出て行けと記者に言って、アイドルと共に、部屋に向かう。
女性記者は、何とかせねばと、色仕掛けを考える。アイドルを地下室に連れ込み、襲いかかり、自分の手の内にしてしまおうという作戦。アシスタントの男を白塗りにして幽霊に仕立て上げる。アイドルを地下室に誘導しろと命じて、自分は地下室でスタンバイ。暗いので、そこにあった懐中電灯を持っていく。電池が切れていたので、交換しておく。
そこにやって来た弁護士。今度はアシスタントを見て逃げ出す。
騒ぎを聞きつけ、下りてきたアイドルもアシスタントを見て外へ飛び出す。清掃業者もやって来て、驚いて地下室へ。
誰もいなくなった部屋に怪しげな男が新たにやって来る。沙知代夫婦から権利書をもらう予定の不動産屋。どうやら、ここにスキー場を建設するつもりらしい。その前に、音楽フェスも開催して、ダンディーガガとかいうけったいな衣装のアーティストも呼ぶのだとか。
沙知代夫妻が戻って来る。夫は途中で雷にうたれたみたいだ。どこまでもついていない、自らの運命を呪っている。そんな中、弁護士が悪霊退散の万全の対策をして戻って来る。そして、お祓いを始める。沙知代夫妻も、共にお祓いに参加する。
しかし、そのかいむなしく、再び現れたアシスタントの姿に弁護士は耐えきれず逃げ出す。
沙知代夫妻が気付く。放り出されていた懐中電灯。電池が切れていたのに今は明かりがつく。遂に光を掴んだ。二人は弁護士に礼を言うために後を追いかける。
結局、無視され続けた不動産屋は、訳分からず、洋館を後にする。

誰もいなくなった。ようやくのチャンスだと、助手は探偵にとりあえず、逃げてと猫を持たせて、洋館から出て行かせる。自分も後から追うのでと言って。
光代が下りてくると、地下室の清掃業者と助手に鉢合わせ。助手は清掃業者も、光代も巧妙に騙して、その場をしのぐ。清掃業者は、仕事に取り掛かる。
白い仮面をした女性が現れる。伊予。
光代はその仮面の下の顔を見て、驚愕の表情になり、怯え出す。ハナエそっくりだったから。
伊予は父と姉の墓参り、姉が転落死した崖に花を供えに行くと言い残し、洋館を後にする。
逃げろと言われながら、タイミングを失って、未だ洋館にいた探偵は、その一部始終を見ていた。ハナエ。顔の彫刻に刻まれたサインもハナエ。何かを思いながら、とりあえず、今度は本当に逃げる。
戻って来た伊予は記者と相続会議の前に事前打ち合わせをする。アシスタントは、なぜか白塗りの顔のまま、絵にはまって抜けなくなってしまっている。
そんなアシスタントを不動産屋は、ダンディーガガと勘違いしている。

色々あったが、ようやく相続会議が始まる。
伊予は、この洋館も、土地も、相続は放棄すると言う。ただ、美術品をもらいたいと。
光代の顔色が変わる。
この洋館で、贋作が違法販売されており、その贋作を創っていたのが光代だから。
その売買の様子を記録したマイクロフィルムがあるらしく、それを清掃業者は狙っている。それは、この人たちが贋作のブローカーだから。
そのマイクロフィルムらしきものを、伊予は首飾りとして持っているみたいだ。
突然、停電。
明かりが点いた時、伊予は台所で殺害されていた。
密室殺人事件。探偵はいないが、助手は、犯人探しを始める。
清掃業者が、突然、ナイフを取り出し、自分たちの正体を暴露する。贋作を販売していたことを知られてしまったからには、死んでもらうと。みんなの携帯も没収される。
助手は椅子を振り回し、反撃。記者を逃すことに成功。
しかし、沙知代が人質にとられ、全員、縄で縛り上げられる。
無駄に人を殺しても仕方がない。ここには伊予を殺した犯人がいるし、光代は贋作創りに関わっていたので、このことを公言することはないと助手は清掃業者を説得する。清掃業者はその説得に応じ、マイクロフィルムを奪って、逃げて行った。

残された皆。
助手は伊予を呼び出す。
平然と台所から出て来る伊予。どうやらお芝居の稽古だと助手から言われて連れて来られた人らしい。
伊予は助手の縄をほどく。
本番はこれから。そう言って、助手は伊予を気絶させる。
助手が全てを語り出す。
これはハナエの復讐。
事故で母を亡くし、目も悪くしてしまったハナエは、病院の屋上から飛び降りようとしており、そこで出会った。
二人は互いに想いを寄せ合うようになり、自分はハナエの入院費用のためにも、必死で働いた。やがて、父を名乗る者が現れる。道明寺肇。今さら、父と名乗られても、ハナエは困惑していたが、現実の生活を考えて、父の暮らす洋館に出入りするようになる。
でも、光代や沙知代のことは恐れていた。自分の存在がために、遺産が相続されなくなることを知っていたから。
目を悪くしていたハナエが崖などに行くはずがない。きっと、この洋館で贋作のことを知り、さらに遺産に目が眩んだ奴らが。
記者は逃した。携帯が無いから、連絡が遅れて警察が来るのは翌朝だろう。その時にみんなが死んでいても、きっとあのブローカーたちのせいになる。完璧な計画だ。
助手は沙知代の夫にナイフを振りかざす。大切な人を失う辛さを味わえばいいと助手は叫ぶ。
その時、部屋に男が入って来る。探偵。絵に埋め込まれていた顔の彫刻を手にしている。
興奮してナイフを振り回す助手を制して、探偵は彫刻に刻まれたサイン見せる。それは、ハナエのものだった。
光代が語る。ハナエは、父に良い土の場所を尋ねていた。きっと、彫刻の作品を創ろうとしていたのだろう。それを助手に見せて、自分がまた前へ向かって生きられるようになったことを伝えようとしていたのではないか。あの崖は、良い土があると噂されているところだった。
道明寺肇は、その彫刻を絵に埋め込み自分の罪を忘れないようにした。マイクロフィルムの存在をほのめかし、全ての罪を被って、この件が公にならぬように、皆を守るために死んでいったのではないか。
助手はハナエの本当を知り、崩れ落ちてただ涙する。
完璧な計画だったのだが、巧くいくことはなかった。
ただ、探偵は、完璧では無かったのだと答える。仮にあそこでみんなを殺しても、きっと助手は犯人となっていた。
目撃者がいたから。よく絵を見ると、あのハナエが創った顔の彫刻が埋め込まれたところには、白塗りのアシスタントの顔がまだはまったままだ。

光代は、罪は罪だからと、警察に出頭するつもりらしい。まあ、大きな罪にはならないだろう。
沙知代は、夫と共に差し押さえられている家に帰る。
助手は特に誰かを傷つけた訳でもなく、皆は何も無かったことにしてくれた。探偵と一緒に、今月には家賃を払わないと追い出される事務所に帰る。
よくよく考えたら、探偵が猫探しみたいなショボい仕事に一緒に付いてくることなど今まで一度も無かった。全てを知っていたのではないのか。
全てお見通しだとキメて答える探偵。すぐに、本当はどこか様子が変だなと思ったからで、何も分からなかったと冗談めかして答える。どちらが本当かは分からない。
過去に縛られるな。そう言って、探偵は新しい仕事に向かうぞと洋館を出ようとする。早く来い、金田一。いつも自分のことをそうやって、金田一だの明智だのと呼ぶ。探偵気取りだと思っていたが、でも、それは佐藤という名を一度捨てて、新しい人生を歩めということだったのかもしれない。
いや、まさか。あの探偵がそこまで考えているとは。
助手はすぐに行きますと返事をして、探偵の後を追う。

話は細かなところまで伏線を効かせて巧妙で、すれ違い、勘違いを多用したワンシチュエーションコメディーの形態をとっているので、あらすじは書きにくいです。
記憶が薄れて、違うところが多々あると思いますが、だいたいはこんな感じかと。
結局は誰が悪いというわけではなく、ちょっとしたタイミングや掛け違いで起こってしまった事件。
大切な人の辛さ、悲しみ、憎しみ、恨みに寄り添えることが出来た助手が、いつしか、自分自身がそんな感情に囚われてしまうことになる。そして、気付く。自分にも寄り添ってくれている人がいたことを。
あの時、助手が彼女に思っていたこと。過去に縛られず、未来を見詰めて笑顔で歩んで欲しい。それは、今の自分に時を越えて投げかけられる。
もつれた感情をほどき、一本の歩む道を作る。
様々な関係性や人の心理を整理して、一つの答えを導き出す探偵ならではの、大きな仕事が成し遂げられる。

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コメント

SAISEI様

自分自身がやや反省しなければならない公演に。。

それはさておき、内容は置いておいて(笑) 良いと感じた役者さんをば(笑)

卯津羅さん、空山さん、叶衣さんの劇団空組メンバーと広川さんが良いと感じました。

卯津羅さんはやはり男ですね。『魅せられるボクたち』のぽんちゃんさんも「女なの? 男なの?」と書かれてましたが(笑) 動きが男性ですわ。自然に(笑)

空山さんは声がクリアで綺麗。

叶依さんは顔を知らず。帰宅して調べました。劇団空組メンバーが輝いた公演として記憶に残りそうです(笑) 広川さんも思ったよりか若そう。貫禄ある感じの演技で資産家の独身女性といった感じでした。

卯津羅さん、空山さんと初めてお話を。というか空組の方とは初めて言葉を交わしました(笑) いつも周りにお客さんがやはるからね(笑) 結果として御二人ともに非常に好感の持てる対応をしていただきました。空組が観客を多く集める所以がわかる気がしました(笑)

空山さんも過分な対応をしていただきましたが卯津羅さんはある対応が初めてのことで(笑) またお話しできれば(笑) それにしてもお会いできない(笑) しかし年配女性の観客は自分のことしか考えてないな~。そうではない方の方が多いと思いますが目立つ(怒)

あっ、もうご存知かと思いますが缶の階の久野さんが6月末にTwitterで「大学生の役者さんにセクハラをしてくる男性常連客の対応を相談された」と呟かれて高間さんがFacebookに対応策を書かれたのを見た方々の数人が気を悪くされてました。

ちなみにこの件では高間さんにどうこう言うつもりはないですが(笑)

投稿: KAISEI | 2016年7月14日 (木) 02時58分

>KAISEIさん

空組は、なかなかに素敵な人たちが揃った、良い劇団ですよ。
表現力が達者で器用なので、職人的な技を持つ青木さんの脚本はハマるんだろうなと思っています。

投稿: SAISEI | 2016年7月19日 (火) 20時35分

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