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2016年6月19日 (日)

WORK OUT【Y2Pチャレンじ】160619

2016年06月19日 金毘羅 (85分)

一見、かなりバカバカしい話で、観ている途中もそう感じて、あんまり好みじゃないなとか思っていたのだが、最終的になかなか巧く創られている作品なのかなと。
作品名のワークアウトのとおり、何となく、惰性で、仕方なく、言われたことに従ってとかで生きていることを止めて、自分自身の明確な意志を持って、目標に向かって生きていきましょうと伝えているような作品でした。
そのために、自分と向き合って、本当に自分がしたいことを見詰める。そこには自分の弱さとか情けなさとかも見え隠れするのだけど、そんな自分を肯定して、本当の自分で生きていこう。飾った自分で、見出した自分の居場所なんか、きっと本当は居心地なんかいいはずが無く、そこからどこかへ進みたいと思っているはず。そのことに気付いて、今、出来ることから始めてみよう。
そんなことが感じられる話だったように思います。

ある世界で生きる人たち。
アイドルのポエミンは、売れるためにと悪徳社長の下でスポンサー企業のお偉いさんたちとの枕営業に励む。
ポエミンの元恋人は死ねないから生きている。ただ生きる。そのためには従順でいることだと自らを犬と名乗っている。
そこそこ芸能界で活躍中の男・前田は、同じ映画に出演させてもらおうとするポエミンに迫られるが、自分を大切にしろと飾った自分を見せて、綺麗事ばかり言っているとポエミンに厳しく責められる。
働かない犬は、底辺で生きる者と社長に蔑まされ、金のためにプライドを売る。
神を信じる田中・セバスチャン・一郎は、自分たちは神の子、神を求め、救われようと、この世の希望を信じて説いて回る。
そんな世界で、魔法も使えないのに魔法少女を名乗る、まりこ☆つぼさかは、特に何の役にも立たない。魔法の修行をして、魔法が使えるようになると、空間が歪み、パラレルワールドが出現し、設定を無視した罪で、悪だくみをしている社長の手により空間の狭間に消し去られてしまう。

魔法少女が消えた世界。世界が元に戻っても、特に何も変わらない。
犬は相変わらず、厭世観に包まれて卑屈に生きる。そんな犬を、男・前田は蔑み、金で自らの力を誇示する。男・前田は、男前でいること、飾った自分を維持することの苦労があり、苛立ちが鬱積しているみたい。
ポエミンも相変わらず売れない。社長に目を覚ませ、夢をいつまでも見るなと見限られる。携帯を取り上げられ、これまでの事務所の借金返済を突きつけられ、親に売春も含めて、全てをちくられる。
犬に田中は、いつものように、この世の希望を説いて聞かせる。働く喜び、欲を持って生きることを説教する。
そんな中、男・前田、そしてポエミンがやって来る。
田中は、ミーハーで芸能人である二人にサインを求める。
犬とポエミンも久しぶりに再会。もう遅い。犬はポエミンの窮状に何もできないでいる。
ポエミンは、自分のファンの田中に借金返済のために体を差し出そうとするが、田中は神を求め、救われよと言うばかり。
男・前田は自分がその借金を肩代わりすると言い出す。
しかし、現れた社長は、あくどい利子を要求し、ポエミンを金づるとして手放す気は無い様子。
そこに神の声が聞こえてくる。いや、魔法少女の声が。

ここがどこなのか。
その魔法少女の声に皆は気付く。ここがワークアウトの舞台であることを。
現れた魔法少女。
社長は暗黒エネルギーを溜め込み、闇の存在と化そうとしている。そのエネルギーに触れると、人の闇が浮き上がるらしい。
田中はあんなにこの世に希望を、神に救いをと説いておきながら、心の中では、アイドルや芸能人を楽しみながら、適当に悠々と生きる自分を求めていたという隠してた自分を露わにさせられ、倒れる。
ここはワークアウトの場。何かをさせられるところではない。自分の本当の目的と向き合い、そのために各々が自発的にそのための行動を起こす場だ。何かをやってみよう。そして、何かが変わると信じてみようと皆の想いが一つになる。
魔法少女もそのパワーを蓄積し、光の存在と化す。
光の魔法少女と闇の社長。二人がぶつかり、ビッグバンが起こる。

宇宙の始まり。宇宙の真理、いわば神のような存在が語りかけてくる。
夢と無の狭間に漂う皆。
ここから抜け出すためには、元の世界に戻るには、現実を見なくてはいけない。
今まで、偽りの自分を演じて、そこに居場所を求めていた自分たち。
現実から目を背け、自分の本当にしたいこと、夢や希望を封じ込めてしまっていた皆は、本当の自分を解放する。
厳しい現実から逃げて、従うことで、責任から逃れて生きようとしていた犬。何かが出来ないのは、目標が達成できないのは、人のせいだと、自分を高めることから逃げていたポエミン。
弱い自分、情けない自分。それでも、したいこと、夢や希望はある。そんなことを全て、露わにして皆で語り合う。
世界が元に戻る。
しかし、まだ闇の支配者、社長はそのまま。
最後の戦い。
皆の力を合わせて、彼の心に想いを届ける。こんな時は歌が一番手っ取り早い。
社長の心の奥に潜む闇が浮き上がる。
アイドルオタクだった社長。熱愛発覚。その裏切りから、アイドルを恨むようになってしまったみたいだ。
社長は正気を取り戻し、世界には本当の平和が戻った。
皆が現実を受け止め、自分と向き合い、本当にしたいことに向かって、希望を抱いて進める世界。
そんな世界で、皆は新しい自分の道へと突き進む。
男・前田は、今の自分がしなくてはいけないことを見詰め直す。
それは、今の自分をずっと見守ってくれていたであろう母への感謝。ありがとうの言葉を母に伝え。飾らぬ自分で、本当の男前として、この世界でこれからも頑張る決意を固めたみたいだ。

最初の20分ぐらいは、何をしようとしているのか、全く分からず、また、キャラもずいぶんと濃いおかしなものになっているので、全然付いていけず。
魔法少女まりこ☆つぼさかのつぼさかまりこさん(演劇集団あしたかぜ)は少々痛い感じもあるが、まあ可愛らしく、ちょっとおとぼけのコミカルさはよく似合っているな。
ポエミンの寺井幸菜さん(遊劇舞台二月病)は、ちょっと前にナンセンスの決め台詞で日本赤軍のきっつい女性を演じられていたのに、この豹変っぷり。観方次第では、こちらの方がちょっと怖いかもしれない。
犬の松原佑次さん(遊劇舞台二月病)は、いつもと変わらず、葛藤に苦しむ深刻な空気。主義主張を語ったりして、こちらは同じく日本赤軍を演じていた時の世界からまだ抜けてないのかと少し面白く。
田中・セバスチャン・一郎の宮崎友治さん(crashrush)は、いかがわしい空気を漂わすイケメンキャラは嫌いじゃない。なかなか目を惹く役者さんを発見と思いながら。
男・前田の江戸ハレさん(演劇集団あしたかぜ)は、かっこはつけているが、それについていけていない真面目さ、人の好さが滲み出る空気は柔らかみのあるこの方の持ち味かな。
社長の金田真さんは典型的な悪い人キャラ。人を人と思わない、品の悪い、嫌悪感たっぷりの役をこなされる。
と、こんな感じで、各々のキャラを楽しむことに専念。

20分過ぎて、15分ぐらい経ってもまだ、話の筋が見えてこない。まあまあ注目の役者さん方が揃った公演だったので足を運んだが、単なる悪ふざけを楽しむ公演だったのかと、決して嫌いなわけではないのだが、このタイプの公演が少し苦手なので、このあたりでもう諦める。
後は、申し訳ないが可愛い女優さんを観て、目の保養と割り切ろうとするものの、この時点で魔法少女は消えてしまい、ポエミンだけ。かなりの痛々しいアイドルキャラなので、ポエミンだけにロックオンするのも、正直キツイ。
なんて思っていたら、何となく少し見えてくる。
作品名がキーワードになっていたようで、登場人物たちは、自分のしたいことや夢、希望、目的から逃げたりして、向き合おうとしていない人たちばかり。それでも、やはり心のどこかで捨て切れないのか、ただぼんやりと道を歩んでいる感じ。これでは、きっといつまで経っても、自分の目標へは近づけないのだろう。
そのために、自分と向き合い、自分の本当を見詰めるワークアウトが必要だったのだろう。そして、この公演自体が、ご出演されている方々の、演劇に対する想いや、自分が目指す表現への道を、明確な自分の意志を持って進むための一つの宣言なのだとばかりに、メタフィクション様の構造も見え始める。
ラストへ向かう途中、また、とんでもない悪ノリの展開を挟みもするが、最後は、飾らない自分たちを魅せる登場人物たちの姿が舞台に浮き上がる。それは、演じているけど、演じていない、本当の表現者としてのご自分方の姿でもあるのだろう。
振り返れば、作品名に合わせて、自分たちの生き様を登場人物たちに投影して見せ、まあまあ、少し引き気味にはなるけど、楽しく話を展開させる面白味も盛り込んだ、個性的な魅力のある作品に仕上がっていたように感じる。

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コメント

この数年間は自分自身の状況を否定した生き方をしてましたが、肯定しないとダメですね。
前進しなきゃ(>_<)

投稿: まこと | 2016年6月19日 (日) 21時19分

この数年間は自分自身の状況を否定した生き方をしてましたが、肯定しないとダメですね。
前進しなきゃ(>_<)

投稿: まこと | 2016年6月19日 (日) 21時20分

>まことさん

えらいご無沙汰ですねw(゚o゚)w

私も同じようなものですよ。
やたら、これではダメだと厭世観漂わせながらの日々で・・・
こんな作品を観て、自分自身にも言い聞かせるように、思ったことを書いたりしています。

また、飲みながら、じっくり話したいものですねえ。

投稿: SAISEI | 2016年6月20日 (月) 11時52分

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