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2016年6月19日 (日)

父が愛したサイクロン【DOORプロデュース】160618

2016年06月18日 space9 (85分)

日程調整ミスで、ある劇団と予約をダブルブッキング。
こちらは演劇パスだし、向こうはチケットぴあで予約変更も出来ず、どちらかを選ぶしかない状態に。こんなミス、2000本以上観劇してきましたが、初めてですね。
どちらも、コミカルを交えて、ハートウォーミングな作品だろうなと。
それだけに、かなり悩みましたけどね。
正直、最近の作・演の虎本剛さん作品は、心がざわつき、観劇後、すごく心苦しくなるので、逃げようかなとも思いましたが、自分と向き合い、見詰め直すなんてことはこういった機会でしかなかなか出来ないので。
チラシのあらすじ、既にご覧になられた方の感想を拝読する限り、父娘愛を描いた泣ける作品であることは歴然ですが、きっとそこに守るべき者を守る豊かな生き方が描かれているのだろうと。そこが、個人的に、どうも最近辛いのです。両親も亡くなり、未だ独身で、妹はいるものの、もう一人みたいなもので、自分が生きることだけを考えてこれからを歩むことに、何かしらの不安と、その人生の豊かさに疑問を感じて、厭世観が心のどこかに漂う今の自分には何か責められているような感覚すら覚え、すごくきついのです。
観劇後、思ったとおり、何かしらの心苦しさはやはり残ります。
でも、それ以上に人の隠れた想いを見出すことは、自分自身と向き合い、真剣に見詰められるようになった成長した自分が成せる技なのだろうと感じました。
守るとかは別に、人の想いを汲み取れるだけの成長を続け、自分自身のヒーローでもいいから、そんな人を想える人間となることを考えて生きていけばいいのかなといったような気持ちも生まれたような気もします。
不安の中にいる人に、優しい笑顔と真摯な言葉を投げかけ、それをありがとうの言葉で受け止めている登場人物の素敵な姿がそう思わせたような気もします。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

父、本田真を亡くした、娘の真弓。
そんな真弓の下に、ある女性が訪ねて来る。女性は、亡くなった母から預かった封筒を手にしている。
話を聞くために、お世話になっている居酒屋で会う。
自分が生まれた時に亡くなってしまった母。父子家庭だった真弓は、幼き頃、よくこの店に預けられ、父の帰りを待っていた。
女性曰く、母は真がヒーローだったと言っていたらしい。
高校卒業後、上京した真弓は、あまり父のことを知らない。私の知っている父は単なる町の電気屋だ。カブに乗って、色々な家を回って、電気工事をする。
そんな父がヒーローだと。それではなにか。父は仮面ライダーみたいに、悪の組織を撲滅するためにショッカーと戦っていたというのか。あのカブはサイクロンで、現場仕事のために腰につけていた道具入れは変身ベルトだとでもいうのか。
女性はヒーロー好きみたいで、本当に父がそんなヒーローだった可能性もあると興奮気味に主張する。
居酒屋の女将も、話に交じってくるが、飲んだくれだったという情報ぐらいしかないようだ。
ところが、女性が葉山憲子を名乗ると、女将さんの表情が変わる。母の名前は明子。
女将さんは25年前のことを語り出す。

真はある日、居酒屋で働かせたい女性がいると言い出し、18歳の加奈という女の子を連れてくる。
妻を亡くした真。最近、女性と一緒に歩いている姿の目撃情報があり、女将さんはもしかしたら、この子がそうなのかと勘違い。それは犯罪だとひどく怒り出す。
しかし、誤解だったようで、とりあえずは、その子の面倒を見ることになる。
少々、礼儀はなっていないが、悪い子ではなさそう。それに真が連れて来る子。悪い子なはずが無い。
しかし、もう一人の女性が店を訪ねて来る。明子という女性。
真は、平然と明子と一緒に店で食事。
女将さんは、この人こそ、そうなのかとまたまた勘違い。
かなり明子に敵意剥き出しで、攻撃的にきつくあたる。
結局、これも誤解だったようで、明子が怒り狂う女将さんに必死に事情を話したらしい。

そんな話。
それ以上のことは女将さんは語らない。
分かることといえば、父は、見ず知らずの人の手助けをするようなお人よしで、そして、かなり女心が分からない人だったということぐらいだろう。
加奈に連絡をすれば何か分かるのではないか。
女将さんに頼んで連絡先を突き止める。今は海外青少年協力隊に所属していてシリアにいるらしい。
国際電話でキャンプに電話。繋がるものの、爆発音が鳴り響き、電話も切れてしまった。
唯一、聞き取れた言葉がゲートキーパー。
憲子は、思い当たる節があり、一度、調査をすることに。確か角川文庫でそんなライトノベルがあったはず。

数日後、憲子が再びやって来る。
真弓も調べた。ゲートキーパーズ。
父はもしかしたら、魔法が使えるヒーローだったのでは。
でも、憲子はそんな自分に合わせてくれた冗談めいた真弓の話に、笑いもせずに真剣な面持ち。
多分、真弓も気付いている。ググればすぐに出てくるのだから。
ゲートキーパー。自殺防止人だ。
加奈から手紙が届いている。
そこには、この居酒屋で働いていたあの頃のことが記されている。
明子は妊娠していた。男から捨てられ、この先どうしていいのか分からなく、自殺しようと考えていた。その相談にのっていたのが真。
加奈も学校で上手くいかず、真に相談にのってもらっていた。
ある日、明子は自殺未遂を起こす。電車に飛び込もうとしたところを、たまたま加奈に見つかり助けられた。
加奈は自分のことのように、明子を非難する。一人じゃない。子供がいる。みんながいる。真だっている。もう、そんなことを考えるのは止めようよ。
厳しい言葉をぶつけるが、生を否定しようとしていた自分、そして、今、同じことをしようとしている明子に真剣な想いをぶつける。
真も明子と話をして、明子は結局、田舎に帰ることになった。新しく生まれる子供と一緒にこれからを生きるため。
最後は笑顔で別れた。
憲子は、母の言葉を思い出す。強く生きなさい。今、その言葉に込められた母の想いが深く突き刺さる。
自分を今、生かしているのは、母の想い。その想いの源を知り、涙する。
封筒の中身は、田舎までの二人分の切符。真とそして、もう一人はあの時いっしょにいた幼い娘のものだろう。

真弓は父の葬式の参列者名簿を見直す。
知らない名前も多い。その全てに連絡した。父は本当にヒーローだった。父に救われたという人たちがそこにいた。
真弓は女将さんに問い正す。
本当は知っているのではないか。父はいったいいつから、ゲートキーパーをしていたのか。
女将さんは、語り出す。黙っておくように言われていたのだが。
明子を田舎に送り出し、その夜、真と話した。
凄いことをしていると言うと、真は凄くなんかないと言っていた。
気持ちが分かるから。自分もそうだったから。妻を亡くし、幼い娘をどうして育てていけばいいのか。
そんな辛い気持ちの中、生が揺らいで、死に向かって歩きそうになる。
自分もそうだったから、そんな人たちに少しでも手を差し伸べたいのだと。
そう言って、その日は飲んだ。いつものように一升瓶を抱えて。

父は町内の温泉旅行で入浴中に亡くなった。全裸で一升瓶を抱えた情けない姿で。
いや、そんなことない。
あの日、父は言っていたらしい。一升瓶サイズがちょうどその頃の真弓と同じくらいだったらしい。それを愛おしく抱き締めていた父。
いつも父は真弓の話をしていたらしい。きっと、あの温泉旅行でも。
真弓は今、悩んでいる。結婚。相手は独立して、会社を起こすつもり。一緒に頑張ってくれと言われている。そうなると、この父が住んでいた家も引き払わないといけない。すぐに決断できない。じっくりと考えるつもりだ。
幼い頃、この居酒屋で、父の帰りを待っていた。
寂しかった。不安だった。バイクの音と光。帰ってきた父はいつも、もう大丈夫だと抱きかかえてくれる。
よく頑張ったな。大丈夫だよ。その笑顔と優しい言葉にいつも元気づけられていた。
きっと今だって同じだ。
不安な気持ちの真弓の下に、あのサイクロンの音と光が。そして、ヒーロー、父が優しい笑顔で・・・

私は男なので、この作品のように、父と娘とはまた違うのだろうけど、自分も父のことはあまりよく知りませんでした。
大学を卒業してからは、何か実家の近くにいたくなくて、大阪を離れて職を転々。家族から距離を置くことが独立することなんて幼稚な考えをしていたのだと思います。
8年前に帰阪したのは、父がALSとかいうとんでもない難病になってしまったから。まあ、帰阪がきっかけでこうして観劇するようになったので、よかったのかもしれませんが。
ALSは病気が進行すると体も動かず、喋れずとなります。ただ、眼球だけは大概の場合、最後まで不思議と動きます。だから、視線を合わせることは出来るのだけど、見舞いにいってもほとんど目は合わせませんした。こんな情けない姿になった自分を見られたくないと思っていたのか、父も合わせてこなかったような気がします。他の家族、特に溺愛していた妹にはよく目で訴えかけていたので、互いに距離を置いていたような気もします。
亡くなるまでの闘病生活2年間はずっとそんな感じ。
この作品を見て、思い出すのは、父が亡くなった後、もう寝たきりにも関わらず、2年間、社籍を外さないで、最後まで父の誇りを重んじてくれた会社にご挨拶に伺った時のことかな。社長さんとお偉いさんお二人が応対してくださったのですが、初めてお会いしたにも関わらず、まあ私の情報をたくさん知っていただいている。
聞けば、ほとんど父から自慢めいて聞かされたことらしいです。何か賞を獲ったとか、もっと自慢できることがあればよかったのですが、さほど無い中で、よくずっとネタがもったものだと。
きっと、私の良いところを、私自身でも出来ないのに、いくらでも探し出すことができたのだろうなと思っています。常に肯定、善意の目で私を見てくれていたのだなと思って、それだけで心が溢れんばかりに満たされ、会社を出てから、近くにあった、まだ工事中の姫路城で号泣したのは、懐かしき、でも、きっと一生忘れない最後の父との思い出です。

この作品と同じように父は死んでしまいました。私は生きています。周りの知り合いも、当たり前ですが、死んでしまった人もいますが、なかなか出会って一緒の時間を過ごすことは無くとも生きている人もいます。
自分が生きているということに対して、それは自分自身が強いからではなくて、こうして支えてくれる、自分のことを本当に想ってくれる、この世から物理的な存在は消えたにしてもまだその想いを残してくれる人がいるからだと考えることが出来るような気がします。
そして、自分も、たとえ弱くて情けない自分だとしても、そんな人が生きることに対して、何かしらの力を与えているのだと思うと、自分の生を強く肯定できるように感じます。
生かされているし、生かしている。
私たちが生きるのは、どれほどのたくさんの想いに包まれているのかを感じることが出来るならば、その生を本当に尊く思えるような気がします。
父は本当にヒーローだった。守るべき人を、大切に想い続けることで、本当に守ろうとし続けた。そんな姿が、ふと死へと向かおうとしてしまう人たちの考えを変えたのだと思います。それは明子に引き継がれ、その娘、憲子の生と繋がっている。
父はゲートキーパーだったが、彼もまた、娘が自分自身のゲートキーパーであり、そんな生かし合いの感覚は、ずっと繋がり続けて、今を生きる人たちの世が出来上がっている。
人の心の通じ合いが、未来を生み出すことを映し出しているように感じます。

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コメント

SAISEI様

感想の前に(笑)

何とバッティングしはったんですか?(笑)

それより劇団赤鬼行かれなかったのに驚きです( ; ゜Д゜)

投稿: KAISEI | 2016年6月22日 (水) 23時30分

>KAISEIさん

その赤鬼ですよ(ノ_-。)
とんでもないミスでした・・・

投稿: SAISEI | 2016年6月24日 (金) 11時48分

SAISEI様

この週異常だったでしょう? 私はリリパットアーミーや百景社、アシデマトイなどいくつかを諦めました。。

お金もかかるのでスペース9で3,000円というのを見て六風館の新人公演に心が傾いていたんです(笑) ただムーンビームマシンの公演に出演者の方が来られてお話したので(笑) もともとその方でチケット予約したいとも思ってましたし。

DOOR主宰、よく制作でお見かけする方だったんですね。接客マナーが素晴らしい。おかげで気持ちよく観られました。どこの劇団も見習わあかんですよ。主宰めちゃ好きになってしまいました(笑)

御意さんや早川さん、三原さんとも話せましたし。まあ満足ですね。三原さんも客出し終わって中に入る時客側に一礼して入らはるなど体育会系(笑) こういう見えないところまで見て評価したいです。三原さんとはもう少し深い話ししたかったですけど(笑)

投稿: KAISEI | 2016年6月24日 (金) 15時11分

SAISEI様

今、学園座の『WHITE UNDER PLANET』観て来て十三で蕎麦食い終わりました(笑)

劇団赤鬼は今回私はそこまでは(笑) やはり『キャンディ遊園地・・・』が一番良いですね。学園座の公演も観劇3回目ですが今回赤鬼の脚本みたいですが物語も配役も役者も作りが甘い感じがしましたね。元知りませんからわからないですけど。

行澤さんは前回公演から好きになり終演後、行澤さん、橋爪さんとお話できて良かったです。橋爪さんも独特の良く通る佳いお声で。

今回は田川さんが主人公で男役でした。岡本さんがカッコ良かったです(笑)

投稿: KAISEI | 2016年6月24日 (金) 15時21分

SAISEI様

『父が愛したサイクロン』の感想も書かねば。

仕事に観劇、おまけに暑くなってきて疲れぎみなんでしょうね。こういう時はエンタメの良品が一番心にくるんだろうな、と思いつつ(笑) でもこういう時にこそ心に残る作品がMy年間ベスト10に入ってくるんだろうな、とも思いますが。

最近、感動の押しつけがメディア等で多いせいか感動ものは若干醒めた目で観てしまいます。騙されないゾ、と(笑) ただ虎本作品はやっぱり私とは波長が合わない感じ。もちろんしっかりとしたものを作ってこられますしそれなりに満足度は高いですが突き抜けないんですよね。

前に書いたように虎本さんの客対応がイマイチ(少なくとも私はあまりよく思っていない。上しか見てないイメージがある。なのでそんな人間の書いた脚本で感動したくない、というのがある)なのを引きずってるのかとも思いましたが初めて観た『MATCH』の時は虎本さんとは言葉を交わしていないと思いますし何よりも過去一番ヒドイと思っている高間響の笑の内閣は満足度は高いですから何か私の感性を覆すものがないんでしょうね。

今回は後半の三原さんの台詞の場面で少し涙が浮かんだのがMy MAXの場面ですかね。

役者さんや演出家、観劇好きの方と話をしてるとそれぞれ役者の評価が違うんですよね。確かに技術面での評価は演出家>役者>観劇好き素人でしょうが観るのは観劇好き素人ですからね。特に若さが物凄くフィットする場面があって。今回は三原さんが一番印象に残る場面を作ってくれました。

是常さんも異なった役を上手くされてましたし。やはりウマイなあ、と。

投稿: KAISEI | 2016年6月25日 (土) 23時27分

>KAISEIさん

河口さんは、私も前回の時だったかな、同じくDOORプロデュースで挨拶されるのを見て、この方だったんだあと。
きっと客視点で物を見ることもできる方なのでしょう。
確かに作品はもちろん、公演自体が気持ちのいいものとなっているように思います。

まあ、人が上を見るのか、幅広く上下を見るのか、技術を見るのか、人柄を見るのかなんてものは、その人の立場だけでなく、その時のその人の環境にもよるでしょうしね。
これは客の私たちもあまり変わらないものかとも思っています。
好きでかなり入れ込んでいた人が普通になったり、あまり合わないと思っていた人が最近好きになったり、手放しで楽しめていた劇団がいまひとつに思えるようになったり、なんか癇に障ると感じていた劇団の中に魅力の欠片を見つけたりと。
そんな色々とひっくるめて、楽しめばいいんだと思っています。

是常さんは久しぶりでしたが、さすがの貫録でしたわ。技をしっかり持ってはりますね。

投稿: SAISEI | 2016年6月27日 (月) 12時33分

SAISEI様

仰るとおりです。そのとおりだと思います。私も未来永劫そう思うつもりはありません(笑) 良いと感じたときはそう書きたいですし作品と人物は分けたいと思っています。

投稿: KAISEI | 2016年6月27日 (月) 12時50分

SAISEI様

上記をもう少し補足するならば(笑) ちょうど良い言葉が(笑)

イチローです(笑)

「いろんな数字を残した人,偉大な数字を残した人,たくさんいますけど,その人が偉大だとは限らないですね。偉大な人間であるとは限らない。むしろ,反対の方が多いケースがあると僕は,日米で思う」
 イチロー自身,日米通じて先人たちのさまざまな記録を更新したわけだが,それが,その世界に足を踏み入れたときの実感。彼に言わせれば,「数字を残せば,人がそうなってくれるというだけのことですよ」。多くの人は,“人”ではなく,“記録”を見て,その人を判断しようとする――ということだろうか。
 逆に人格者がなかなか記録を残せないのは,身を置く世界の異常性が背景にあるのでは,と考える。
「ちょっと狂気に満ちたところがないと,そういうこと(偉大な記録を残すこと)ができない世界でもあると思うので,人格者であったら,できないということも言えると思う」

やはり,演劇の世界もある種,異常な世界だろうしそうそう人格者でいられないと思いますよ。

私も昔は仕事で調子に乗っていた時期もありましたし(笑)

皆さん,演技の上手い人が好きだと思います。私もそれはそうですがそれだけを評価するのではなく人格者も評価したいということだけなので。

それに劇団主宰者って人に怒られることもあまりないんじゃないかなあ。言われなき中傷はあると思うんですが。

投稿: KAISEI | 2016年6月27日 (月) 13時52分

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