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2016年6月24日 (金)

THE END '16【吉本新喜劇 佐藤太一郎企画】160623

2016年06月23日 YES THEATER (115分)

これは極上品だな。
最初から最後まで、全キャストが走りっぱなしで展開される話。
やがて、そのランマイムの姿は美しくも見え始め、溢れ出る熱い感情に心打たれる。
ここまでの熱さを魅せる、作品への真摯な向き合いが感じられ、舞台表現の力に圧倒される。

追い続ける背中があるから、それに向かって、負けないぞと走り続けることが出来る。
自分の背中を追い続けてくる姿があるから、それを意識して、抜かれてはなるまいと走り続けることが出来る。
立場は違っても、同じ人生というレースで、共に走り合っているのでしょう。
そんな大切なライバルがいるから、頑張って、自分に勝とうと必死に走ることが出来る人たちの幸せな姿が描かれているようです。
そのゴールは、抜こうと抜かれようと、自分に勝つことが出来た時であり、ゴールラインを超えたその時、自分だけに見える真実のゴールの風景なのだろうと感じます。
そして、そのゴールを掴んだ時に、人はさらに、自分を高める厳しくも、より豊かな、新しいレースを走り出しているような感覚を得る作品でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は日曜日まで>

60歳のヒグラシ。
あの電車に乗らなくては。でも切符が。無情にも扉が閉まる。
目覚まし時計のアラーム音。朝の4時。
よく見る夢から目を覚ますとそこには怪しい男が立っている。
自分の守護霊なのだとか。
信じ難い話だが、確かにずっと自分を見守ってきただけあって、色々なことを知っているようだ。
いよいよお迎えが来たらしい。
悔いは残るが仕方のないことか。今日は13時からマラソン大会。結局、ゴール出来ず終いで人生を終えることを残念に思うヒグラシ。
守護霊は不思議そうな表情を浮かべている。マラソン大会のゴール前で亡くなることになっているヒグラシ。なのに、なぜ、こんな家で寝ているのか。
まさか。午前と午後を間違ってしまったらしい。
ヒグラシの死亡時刻は16時。原因は赤いハチマキ。
ここまで喋って守護霊は口を噤む。いらぬことを喋ってしまったらしい。
でも、ヒグラシは細かなことは気にしない。
13時にスタートして、3時間以内にゴールすればいいだけだ。ラストラン。
守護霊に、ゴールで再び会って、あの世へと向かう約束をして、ヒグラシは家をいつものように飛び出す。

新聞配達所。
ヒグラシは、もう何十年と働いているベテラン。頑固者だった、おやっさんに拾ってもらって、ずっと働かせてもらった。印刷したての新聞の温もりを届ける。おやっさんの教えは今も守っている。
自転車なんか使わない。この足で一人一人に愛情を持って届ける。
今は亡きおやっさん。少々、おかしな娘さんが一応の経営者。でも、バイトの若造二人の面倒はヒグラシが見ている。おやっさんの教えを引き継いでもらうべく、スパルタ教育中。
ヒグラシは配達に向かう。
その途中、いつも出会う女学生。黒ジャージでかなりのスピードで走っている。マラソンランナーであるヒグラシは、彼女が力あるランナーであることを見抜き、いつもライバル視して、配達しながら勝手に競争を仕掛けたりしているみたい。
今日はもう一人の女学生と出会う。水色ジャージでいまひとつ冴えない走り。声をかけると、黒ジャージの女学生と同じ陸上部らしい。でも、力の差は歴然で、もう辞めようと思っているみたい。
マラソンランナーであるなら、ゴールまで足を止めるなとヒグラシは説教をするが、水色ジャージの女学生は昨日のクラブでの出来事を語り出す。
厳しい陸上部のコーチ。でも、目を向けるのは優秀な黒ジャージの女学生ばかり。今、不調に陥っているのでなおのこと。だから、自分のことなど見向きもしてくれない。挙げ句の果てには、参加することになっていたマラソン大会に、迷惑だから出るなと言われた。
これにはヒグラシも許せないと怒り出す。一言、コーチに物申してやると学校に乗り込むことに。女学生は恥ずかしいからと学校を教えないが、ヒグラシにはそんなの関係ない。だったら、全部の中学校をしらみつぶしに回るだけ。
その途中、ある学校のコーチを取材に訪れようとして、道に迷っている女性カメラマンと出会う。マラソンのコーチ。名前はアカツキ。何と、女学生がきつく言われたコーチもその男だった。
3人はそのアカツキがいる学校へと向かう。
ヒグラシにとっては決して忘れることのできない名前だ。

アカツキとの出会いは、まだ学生だった頃。
おやっさんの下で、新聞配達に精を出していたヒグラシ。
河原で寝そべっていると、ある女性から声をかけられる。憧れていた先生。
いつも温もりのある新聞を配達してくれる子だと気にかけてくれていたらしい。温もりを届けるランナー。
先生はヒグラシを、自分が顧問の陸上部に誘い、マラソンをさせる。
そこで出会ったのがアカツキだ。
彼は才能もあって、素人の自分がかなう相手では無かった。勝手にライバル視するものの、彼には相手にもされない。背中を追いかけるばかり。
悔しくて仕方が無かった時に、おかしな牛乳配達屋のおっさんが、はっぱをかけてきたこともあったような。
先生は、自分にも目をかけてくれたが、やはり才能あるアカツキには個別の特訓を求められ、特別指導をしていた。
所詮、自分は。そんな卑屈になっていた自分もいた。
でも、そんな時、自分のことをいつも見ていると恋心をハイテンションで押し付けてくる、けったいな女の子や、励ましてくれる工事現場のおっちゃんもいて、頑張ることが出来た。ライバルの背中を見つけた。いつの日か、あの背中を掴む。
ある大会前、アカツキは辞めると言い出す。いいタイムが出ない、不調。ただ、ゴールを目指すだけでいいお前とは違うとヒグラシに悪態をつき、シューズを捨てて立ち去る。
ライバルに逃げられてなるものか。ヒグラシはそのシューズを持って、必死に走って追いかける。アカツキに追いつき、シューズを手渡す。逃げる気か。そう煽って、絶対に大会に参加するように言う。
その大会、ヒグラシはアカツキの背中を見たまま、ゴールを迎えた。

学校に着くと、アカツキ、そして、黒ジャージの女学生がいた。
ヒグラシは、途中、寄って購入したシューズをアカツキに手渡す。
今日のマラソン大会にお前も参加してくれ。
これが最後なんだ。でも、事情を知らないアカツキは、そんな戯言に付き合うつもりはない。
逃げるのか。あの時と同じ言葉を投げかけ、大会で待つと言い残し、去る。
と、大事なことを忘れていた。
女学生への暴言、許すまじ。
でも、黒ジャージの女学生は、水色ジャージの女学生のレベルの低さを言及する。あなたとは違う。言えば、人間のレベルが違う。
その言葉に、水色ジャージの女学生は、自分も参加して、必ず、あなたを打ち負かすと宣言。根性だけは負けない。そう、自分の道は負けない道だから。
ライバル対決。取材の記事タイトルはこれで決まりでは。女性カメラマンは写真を撮影しようとすると、どこかからもう一人のカメラマンが現れて、写真をパシャリ。
同じ会社の後輩カメラマンで、とても優秀な女性らしい。後輩曰く、ここは会社から私が任されましたので、先輩は引っ込んでいてください。
その言葉に、女性カメラマンは、ヒグラシに密着して、必ずいい写真を撮ってやると決意。
かくして、エリート集団のアカツキ、黒ジャージ、後輩カメラマン VS おちこぼれ集団のヒグラシ、水色ジャージ、先輩カメラマンの対決の構図が出来上がる。

マラソンスタートは13時。
その前に、ヒグラシは会わないといけない人がいる。
言って本当に伝えたい言葉は、恥ずかしいから手紙に託す。
それとは別に、お願いしないと。ようやく、その時が来たのだから。
到着したところは、病院。そこに先生がいる。
先生は目を不自由にしていた。それも、かなり昔から。
やっぱりそうだった。自分でも分かってはいた。
先生が父の田舎へ帰ることになった日。いつものように、新聞を配達すると、家の前に先生が。そして、そのことを直接伝えられた。
温もりを届けるランナーの最後の新聞。
でも、自分はまだゴール出来ていない。
いつの日か、大会のゴールで、先生に新聞を渡したい。
だから、これは最後の最後の新聞。
そう言って、新聞を手渡そうとした時、風が新聞を飛ばす。
それを追いかける二人。車が近づく。拾おうとしたヒグラシをかばって、先生は交通事故に。
ヒグラシは見舞いにも行った。
でも、先生は、目のことなど一切、何も言わず、綺麗な夕日を二人で見詰めていた。
いつの日か、この黄昏時の先にあるゴールを。
先生は田舎に帰り、それっきり会っていない。
先生は、既に、今日のマラソン大会を楽しみにしていた。
ゴールの先で待っていて欲しい。
そのヒグラシの言葉を先生は何も言わず、受け入れる。

13時。マラソンレースが始まる。
ヒグラシは忙しい。
一緒に走る、配達所の若造二人に借りていた金やら、時計やらを返す。これでお別れだから。
娘さんからは赤いハチマキをもらう。
これは亡きおやっさんのふんどしで作られた、熱き魂がこもったもの。そして、忘れていた。おやっさんから、だいぶ変わった娘さんをよろしくと言われていたのだ。出来れば、婿にと言われたが丁重にお断りした。だったら、婿探しをと言われていた。仕方がない。ヒグラシは若造の一人に、無理やり、婚姻届けに押印させる。
カメラマンは、自分の会社での境遇を話し出す。ヘボ扱いされ、これで結果が出なければお終いかも。母が撮った一枚の写真。こんな素敵な写真を撮りたいといつも目指していた。その写真は、若い男と工事現場のおっちゃん。よく見ると、若い男はヒグラシ。
そんなことがあった。自分が好きだとまとわりついていた女性が、よく一緒に写真を撮ろうとしてきた。どうりで、このカメラマンの子とは、今日、初めて会ったのに、お互いに気が合うはずだ。きっと、母が巡り合わせてくれたんだろう。カメラマンはゴール前で必ず最高の写真を撮ると言い残して、去っていった。
そして、工事現場のおっちゃん。よく見ると、あいつじゃないか。守護霊。本当にずっと見守ってくれていたんだ。そして、最後のこの時も。

アカツキは黒ジャージの女学生と走りながら、自分のことを語る。
ずっとトップを走ってきた。人の背中を見てゴールをしたことが無い。
そんな自分が最後に伝えられること。自分の背中を超えて、ゴールをしろ。その先に、真実のゴールが見えてくるはず。
女学生は、アカツキの想いを受け止め、必死に走る。
ヒグラシは水色ジャージの女学生と共に走る。
俺たちの道は、負けない道。その道を貫き、自分に打ち勝つ。いつだってそうだ。
あの背中を追い続ける。ライバルがいるから、あの背中があるから、孤独じゃないから走り続けられた。
自分に負けそうになる女学生に、ヒグラシは赤いハチマキを渡す。魂の力で走れ。代わりに女学生からは白いタオル。
それを頭につける。もうすぐ、命尽きる自分にはふさわしい姿かも。
二人は、追い続けた背中を目指して、自分のために走る。そんな背中がある自分たちは幸せだ。

ラストスパート。残り時間も少ない。
ゴールには、たくさんの人が待っている。
その時、赤いハチマキが、風に飛ばされる。追いかける二人。拾おうとした女学生の前にヒグラシが立ちはだかる。そこに一台のダンプカーが。
気付くとヒグラシは、守護霊と一緒にいた。
お見送りか。色々と世話になった。ずっと、ありがとう。本当に最後の最後まで。
でも、結局、あの電車には乗れなかったか。切符を手にすることは出来なかった。
守護霊は、切符を渡す。
そんな作り物の切符なんかいるかとツッコミを入れるヒグラシ。
でも、守護霊は、新聞も手渡す。
中には、あのカメラマンが撮影した一枚の写真と共に記事が載っている。
ゴール前100m。ダンプに飛ばされたヒグラシは90m吹っ飛んだ後、執念で立ち上がり、10mを前へと進んだ。そして倒れ込み、伸ばしたその手は、確かにゴールラインを超えて、多くの待つ人たちを掴んでいた。
時刻は16時ちょうど。
真実のゴールを手に入れたヒグラシは、天へと走り出す・・・

熱くて爽快。
走っている自分は、決して孤独のランナーなわけではなく、追いつけなくとも、何かを掴もうと必死で、自分の背中に追いつこうとしている人に、負けてなるものかという気持ちと、激励の想いも込めて、恥ずかしくない最高の走りを続ける。
その先に、誰かのためではなく、自分のための、自分に打ち勝った人だけがたどり着けるゴールがある。
そんなランナーの走りを、人生の走り方に同調させて描いて、素敵な生き様を見せているような作品でした。

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コメント

SAISEI様

今週末の予定

25日(土)劇団しようよ→アカル劇場
26日(日)笑の内閣→片岡自動車工業→佐藤太一郎企画※
30日(木)展覧劇場※

※以外は予約済み。

投稿: KAISEI | 2016年6月24日 (金) 18時12分

SAISEI様

私は出演メンバーのわりには。。という感じでしたかね。この会場を安い価格で観れたのはお得ですが。

既製台本をするときの一つの難しさだと思うのですがキャストの配役。キャストがそこまでハマった感じがしませんでした。

佐藤さんは相変わらず熱い。そしてやはり存在感を感じました。

上野さんは走る姿勢がキレイだな、と。

投稿: KAISEI | 2016年8月23日 (火) 23時40分

>KAISEIさん

私は、なかなか小劇場でご活躍の役者さんを上手くはめこまれたなあといった感じですがね。
舞台でいかに存在感を醸せるかなんてことを意識するのに、ふさわしい作品で、佐藤さんの続けられている企画が、演劇界の底上げにも繋がっているように思われ、頼もしいように感じています。

投稿: SAISEI | 2016年8月27日 (土) 19時36分

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