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2016年6月26日 (日)

ベリーショート【しろみそ企画】160625

2016年06月25日 カフェ+ギャラリー can tutKu (105分)

大切な人の死を受け止められず、苦しみの中にいる男が、自分を見詰めて、再び歩み始めるまでの物語という、演劇らしいコンセプトで綴られた、全25作品のショート集。
過去の自分、そこにいた仲間たちの姿を思い描きながら、自分自身の心を整理していく。
辛い過去との決別。そこにあった大切な想いを抱いて、男は、今、生きる皆との日々を過ごす決意を固めた時に、暗闇に一瞬光が瞬く。
いわば、銀河鉄道の夜のしろみそ版だろう。

よく構成されているショート集だなと思います。
面白さは、まあ、正直言えば、良くも悪くも、まあまあといったところでしょうか。
コントだけの笑いに徹しず、本公演にも通じる、この劇団特有の温かさをきちんと込めている芯が見える公演だと思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は、本日、日曜日まで>

前説は、いつものようにしろみそまん。
いけじゅんの悲鳴。悪者3人組が舞台を襲う。観劇マナーが侵されるところに、あのヒーロー、しろみそまんは現れるはず。だが、今回は都合が悪かったのか、あの人が出演されていない。
変身と威勢よく玉岡マサノブが叫ぶが、いつまで経ってもしろみそまんは現れない。悪者が3人もいらなかったのではないのか。誰かがしろみそまんをするべきだったのでは。そんな揉めが始まる。楽屋を覗くと、あの衣装を必死に着ようとしている玉岡。もう次の作品のスタンバイをしている女優たち。
<⑤「しろみそまん」>

初沢タケシは、彼女であった鈴村智子と悲しい別れをする。もう二度と会うことは出来ない。でも、人混みの中を歩くと、彼女の声が今でも聞こえてくる。忘れてとは言わないけど、新しい彼女を作ればいいのに。歩みを止めているから心配。
この人混みの誰かの背中を押したらどうなるんだろう。
ふと、初沢はそう思い、誰かの背中に手をかける。
男を元気付ける音楽とダンスが始まる。
<①導入「~その背中を押せば~」>

と、そんな妄想ばかりして、日々を過ごしている初沢。
彼女の墓参り。同級生の中平裕も来ている。
彼女は自分を置いて、逝ってしまった。彼女と一緒に大切にしていた猫も。
自分だけが一人ぼっち。人混みの中を歩くと彼女の声が聞こえるんだ。そんな時、誰かの背中を押したくなる。どこか境界線を越えてしまう自分が怖い。
そんな弱気になって不安で落ち込む初沢を元気づけようとする中平。
<⑲「閑話休題~墓参り~」>

人混みの中。
初沢にしか聞こえない彼女の声。
背中を押したい。そう思って、誰かの背中に手をかけようとして、階段を踏み外す。
落下する中、走馬燈のようにあの子との思い出がベリーショートのフラッシュで蘇る。
<㉔「ベリーショート」>

鈴村との出会いは三年B組の時。
三年B組しろみそ先生。その雄叫びと共に生徒たちが先生の下に集まってくる。巨漢だったので、生徒たちが群がってもみんなドーンと跳ね返されていた。おかしな奴らが多かった。
<②「三年B組しろみそ先生」、⑥「三年B組しろみそ先生」2>
留年しているいけじゅん。中山明菜、中野智佳子、あかさかさくら、そして鈴村。なんでか知らないが、一年下の丸小野真穂もいつもいたような。
女子たちはみんなバレー部。意地悪ないけじゅん先輩の下で、キャプテンのあかさかはじめ、皆が厳しい特訓をしていた。いつもは仲良しだが、女子の嫉妬は怖く、丸小野が野球部の男子と付き合っていることを知った時は、皆から総攻撃を受けていた。
中山、鈴村も野球部の誰かをいつも見ていたが、お目当ての男子がいたのだろうか。自分も野球部にいたのだが。
男子はなかしまひろき、中平。悪さばかりしている奴らだった。
<㉒「未来へトス」>
青春。食パンくわえてダッシュする女子とぶつかって、恋が芽生えるなんて漫画みたいなことは無かったか。
ぶつかりでもしたら、女子vs男子とすぐに対決模様になっていたから。
<⑰「江戸紫心桜日和」>
そんな中、鈴村と自分を結び付けてくれたのは、猫のニャン吉。捨てられた子猫だった。
俺はちゃんと育てたい。鈴村に力強くそう言った。親にもきちんと言って、二人で協力しながら大切に。そんな会話をしろみそ先生は、鈴村が妊娠したと思ったようで、厳しく説教してくる。童貞の嫉妬も大きかったようだが。初沢は、そんな先生に手をあげてしまった。
<⑬「三年B組しろみそ先生」3>
一度、フラれてやけになったことも。その時は、なかしまと中平と一緒に、校舎のガラス窓を壊して回った。
しろみそ先生に止められた。童貞の自分には、羨ましい悩みだと逆ギレされて、ガラス窓を割りまくる先生は狂気だった。
<⑳「三年B組しろみそ先生」4>
卒業を迎え、そんな先生ともお別れ。色々迷惑かけたけど、いい先生だった。
自分たちは卒業。先生は未だ童貞を卒業できず。
<㉓「さよなら三年B組しろみそ先生」>
卒業した後も、鈴村とは付き合いを続ける。
てぶくろを二人で分け合って、手を繋ぐ。
はしゃぎ過ぎだった。彼女は車に轢かれ、帰らぬ人となった。
未練があったのだろうか。毎年、その場所で同じような事故が起こる。
初沢は毎年、その現場に赴き、悲しい犠牲者が出ないように見守っている。
<⑩「てぶくろ」>
もう一度、会いたい。
部屋に戻ったら、昔のように彼女が。なんてことはやっぱり起こらない。
現実はパンツを盗みにやって来た下着泥棒の変態女子ぐらい。
<⑭「続・あなたの部屋に久しぶりに来て」>

ぼんやりと色々なことを思い返す初沢。
自分はあの日から進めないでいる。みんなは、それぞれの道をきっと歩んでいるだろうに。
みんなどうしているのだろう。
中平は昔からモテたので、今も女には苦労していないだろう。二股ぐらいは平気でしているかも。でも気の弱いところもあるから、バレて、きつくコラっと叱られ、ポカリと殴られたりして、大泣きしているところを、それを見ていた親子に軽蔑の眼差しを受けながら、慰められている姿が浮かびそうだ。
<⑫「裕くんどうしたの?」>
昔の女に部屋に乗り込まれたりとかもされているのでは。
<③「あなたの部屋に久しぶりに来て」>

中山は確か、自分に想いを寄せてくれていた。結婚願望が強く、妄想癖のある子だった。
ウェディングドレス姿で街中を歩いて、おかしな言動を繰り返したとかで警察に連れて行かれたらしいが大丈夫だろうか。
ウェディングドレスを身に纏った女性刑事。ウェディング刑事。
現場をそのヒラヒラした裾で好きなだけかき乱す。
密室殺人事件を解決。とはいかない。
彼女を事故で亡くした男が崖から飛び降りようとしている。たまたまいた観光客が止めようとする中、ウェディング刑事登場。でも、ヒラヒラでその男を突き落としてしまう。自分も後を追って、飛び降りる。パラシュート効果で助かる。男も救い、結ばれる。
そんな妄想を警察で語っていたらしい。
<⑦「現場捜査」、⑧「ウェディング刑事~硝煙反応はウェディングドレスと共に~」、⑨「飛び降り」(「ウェディング刑事」)>

中野はコンビニで働いている。
さして、忙しくもなく、暇があれば、店の奥でネット三昧と適当に仕事をしている。
トイレを借りたいという娘を連れた母がよく現れるらしい。お花を摘ませていただきたいのですが。上流階級の出を装っているが、明らかないかがわしさを漂わす。
また、娘がガキんちょで、ビスコにテンション上がって、勝手に商品を持ち出す。
この前はお金はいくらでも払うと、万札一枚置いて、帰っていったが、こども銀行のものだったのだとか。
<④「コンビニ」>
もっとも、店長のなかしまが、次に来た時に、きっちりと嫌がらせを逆にして、仕返しをしたようだが。
<⑮「続・コンビニ」>
中野はまだ、彼氏がいないみたい。
そんな中野の憂さ晴らしなのか、図書館で偽りの彼からの手紙を口に出して読む。隣で聞いている女性は、その想われっぷりにイライラ。対抗心を燃やして、自分も白紙のノート見ながら、妄想を口にする。司書の女性にうるさいと注意されるが、二人の対決は収まらない。やがて、司書も交えて、揉め出すが、手紙も実は白紙であることがばれる。悲しい女性たちは、分かち合い、互いの愚痴を言い合うために図書館を去り、飲み明かす。
そんな寂しい日々を過ごしているみたいだ。
<⑪「手紙」>

あかさかは、音にうるさい奴と一緒に住む。
そいつはいつもあかさかと一緒。でも、最近、ほったらかしにされることが多くなり、心が離れていっているように感じているみたいだ。
一緒に出掛けても、いい女から誘われることもあるが、自分にはあかさかがいるからと断るくらいに大好きらしい。
でも、そんなあかさかが男を家に連れて来る。
これから一緒に住むことに。男は少し、嫌そうな表情を浮かべている。犬アレルギーだからと。
<㉑「掛け違い」>

気付くとベンチに座っている初沢。
人混み。みんな、自分の人生を歩んでいる。
自分だけ、おいてけぼり。
どうして、先に逝ってしまったんだろう。
これだけ人がいるのに、孤独だ。
涙がこみ上げてくる。
声が聞こえてくる。
泣かないで。歌いましょう。笑いましょう。
彼女の声が、初沢の背中を押す。
暗闇の中の自分。同級生と会って、少し気が楽になっても、また暗闇に引き戻される。
でも、大丈夫。
きっといつか、ここを抜け出せる。
ずっと暗闇なんかじゃない。明かりをまた自分の手で点けることが出来る日がやって来る。
<㉕「切れかけの電球」>

全25本のショート作品。
繋ぎ合わせられるのではないかと、再構成してみましたが、どうしても下記2作品がはまらない。
中二病を患う男子と先生の妄想だったのか。

脅されて錠前外しをさせられる男。仕事人に助けを求める女。
でも、仕事人は請け負わない。
その結果、男も女も殺されてしまう。
外道許すまじ。いつもはふざけて、けん玉で遊んでいるような仕事人たちだが、やる時はやる。
依頼金を一枚ずつ受け取って、仕事に向かう仕事人たち。
どこの誰かも分からぬ人も入り込み、挙句の果てには殺された男と女も、さらには仕事人たちも何回も依頼金を受け取っていく。依頼金が無くなれば、誰かがまた金を用意し、永久機関に。
<⑯「必殺しろみそ人」、⑱「必殺しろみそ人の日常」>

立ち止まった人が、再び歩み始めるまでの姿を描いた物語。
大切な人の死と決別して、自分の生を再び見出す。
そこにあった大切な人や共にいた仲間たちとの数々の思い出。
今、生の時間を共に歩む仲間たち。
大切な人の想いを抱えて、これからを見詰めて、歩み出す。
そんな男の姿を、結局は描いているようなショート集だと思います。
数々の濃いキャラ、笑いの中に、芯としてある、そんな温かみが見える作品でした。

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コメント

SAISEI様

昨日19時~観に行きました。

「てぶくろ」「手紙」が好きでした。

投稿: KAISEI | 2016年6月26日 (日) 14時16分

>KAISEIさん

まあ、上手く創られてはいますよね。
素晴らしいとまではいきませんが、新たな挑戦だったので良かったのでは。
こういった公演は、個々の役者さんの魅力を再確認するのにいいですね。
この方が出演されるなら、観に行こうかなといった役者さんを改めてインプットできますので。

投稿: SAISEI | 2016年6月28日 (火) 10時43分

遅くなりすいません。

しろみそ企画第21回公演「ベリーショート」
ご来場戴きまして有り難うございました!

短編の難しさにうちひしがれつつも
作、演出的にはやりたいことをさせて頂けました。
今回で得たものを次回以降に繋げていけたらと思います。

毎回、本当に有り難うございます。

投稿: なかしまひろき | 2016年7月 1日 (金) 14時42分

>なかしまひろきさん

コメントありがとうございます。

今までの本公演は、けっこうじっくりと時間をかけて、心情を積み上げていくタイプの作品が多かったですものね。
でも、今回の短編も、短編でありながらも、一つの大きな作品としてまとまって見ることもでき、本公演と変わらない感覚だったような気もします。
しろみそ企画ならではの、短編集となっていたのではないでしょうか。
これからも、本公演も含め、様々なスタイルでのしろみそを味わえればと思っています。

投稿: SAISEI | 2016年7月 3日 (日) 11時19分

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