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2016年6月12日 (日)

屋根のない城【ムーンビームマシン】160611

2016年06月11日 HEP HALL (100分)

作品名でもある絵画を探し求める女性がたどり着いたある画廊。
そこに飾られる3つの絵画に纏わる物語をオムニバス形式で描く。
3作品通じて感じることは、人を人でいさせなくなる原因は全て人の欲望や人への負の感情であり、生み出しているのは人間であるということ。
だからこそ、人間の力でそれを解決することが出来るはず。
愚かな人の姿を見せると同時に、人の尊き姿も浮き上がる。
その感覚は、ブラックな話を楽しいエンタメスタイルで描出す、この劇団の魅力とよく似ているようにも感じる。
作品名はよく分かりませんが、しっかりした柱や壁がありながらも、未完成でまだ拡がる可能性を持つ。でも、不完全で外界からの刺激を受けて容易に傷ついてしまう。それでも、決して崩れることなく、いつしか立派な城となるように成長していく。
これは人間なんじゃないかな。
人間の本当の姿を深く突き詰めようとした女性の話のように思います。

<以下、あらすじがネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

画廊を訪ね歩く女。屋根のない城という絵画を探し続けている。
とある画廊に飾られる3つの絵。
この作品が3つ揃っているとは、なかなかいい目をしている。でも、主人はたまたまだと言う。
それならば、逆に絵に選ばれたのかもしれない。この絵には共通点がある。
女は語り出す。

・Karen
次のセンターはマリアに。ダンススクールの先生の言葉が響く。周囲のダンサーたちは、マリアに賞賛の拍手を。
納得がいかないミト。デザイナーのカーレンに憧れて始めたダンス。夢はそのカーレンの赤い靴を履いてセンターで踊ること。鳴り止まない会場の拍手を受け、深々と感謝のお辞儀をする自分の姿。
赤い靴を履けば、永遠に踊り続けないといけないらしい。それでも、夢が叶うなら構わない。
日々懸命に練習して、技術的にも劣っていないはず。しかし、先生はパッションが足りない、内なる叫びが見えないとミトを否定する。ミトは今度こそはと必死に練習。婚約者はそんなミトを心配しているが、彼女の熱意を出来る限り尊重して、少しでも元気づけてあげられるように優しく接する。
実業家の男がダンススクールにやって来る。エレナを見染めて、スポンサーになるらしい。金と権力に弱い先生だから次期センターは彼女で決まりだろう。
他の仲間から嫌がらせを受けるエレナ。ミトはそれに参加しない。いい子ぶらなくていいとミトに悪態をつくエレナ。しかし、話をすると二人は同じ夢を持っていることが分かる。お互い良きライバルとして、正々堂々と戦いましょう。エレナはそう言って、手を差し出し、ミトと握手をする。
正々堂々。でも、エレナにはスポンサーがいる。自分には何も無い。
そんなミトの下にカーレンがあの赤い靴を持って現れる。
ミトはためらいなくそれを受け取る。全ては夢を叶えるために。そのためなら、周りがどうなろうと構わない。ミトは履いている靴を脱ぎ捨て、赤い靴を。
エレナは怪我をしてしまう。センターはミトに。そして、スポンサーの心も手に入れ、成功を収める。婚約者はミトの脱ぎ捨てた靴を寂しく見詰める。
ミトが目を覚ますと、目の前に白衣を着た先生が。
これがあなたの深層心理。全てを夢の中で手に入れたミト。でも、心は満たされていない。物欲には限りが無いから。少しずつ治していきましょう。そう言って、先生は立ち去る。
婚約者が迎えに来る。ミトは、カーレンのバーゲンに行きたいと言う。
婚約者は顔を歪め、もう行かない方がいいとミトを諭す。
客を赤い靴で殴って怪我をさせた。それに、安いブランドでは無い。そのお金をどうして捻出しているかは、ミトが男と一緒にいる姿を見た婚約者は全てを知っている。
君は普通の女の子なんだ。目を覚ましてくれ。
止まらない物欲に囚われたミトにその婚約者の想いは届かない・・・

嫉妬や権威欲や物欲や。
欲望に囚われてしまった人間が、もっと大切な自分を想ってくれる人の存在を忘れ、見捨てられてしまうというブラックで悲しいお話。この劇団らしい作品かな。
赤い靴を履くと永遠に踊り続けるというのは、童話にも出てくる話ですが、あれは、本当はいつでも脱げばすむ話なんでしょうね。脱げるのに脱がない人間の醜さかもしれません。前に履いていた靴を大切に保管しておいてくれて、それを差し出すようなことをしている婚約者の想いすら、容易に裏切り、今の赤い靴に執着する女。
何とも心ざわつく感が残ります。

・玩具修理工場
悪の親玉に、悪役3人組。ヒロインが囚われの身に。
正義のヒーローが登場し、伝説の剣で見事に悪を倒し、ヒロインを救う。
コテコテのヒーローものドラマの撮影。
悪役の一人、タクヤは、ヒロインのナナに惚れている。
同じ悪役の仲間に告白しろと、どっからパクってきたのか、青い花をタクヤに手渡す。
決死の覚悟でタクヤがナナの下に向かおうとしたところ、ヒーローのショウから呼び止められる。キムラタクヤ君。そう、タクヤの本名。隠していた。バカにされるのが怖いから。それをナナの前で明かされてしまった。イケメンのショウ。ナナの視線もショウに向かっている。
どうしようもなく、恥ずかしくなり、タクヤは家路につく。
その途中、怪しげな占い師に出会う。
その占い師曰く、右手にその青い花を握り、呪文の言葉を発すると、左手に小人が現れるのだとか。
その小人は、何でも直してしまうらしい。でも、ちょっと直し過ぎなくらいに。
翌日、現場ではナナのマネージャーが騒いでいる。ナナの衣装が切り刻まれたのだと。最近、ストーカー被害にもあっているらしく、かなり神経質になっている模様。
ナナの楽屋前をウロウロしていた、悪の親玉役のマサトが疑われて、いい歳をしているのに、ちょっとオドオドして怪しげな態度。
このままでは撮影が出来ない。
タクヤは昨日の占い師の言葉を信じ、自分がそれを直すと言い出す。右手に花、教えてもらった呪文、テン○ュール。
一瞬、ひどく寒い空気になるが、タクヤと仲間2人以外の時間が止まる。そして、テンションおかしい小人、クレイヨンが、可愛いお付きの小人たちを連れて登場。
何か歌と踊りの間に直してしまう。前よりも少し立派に。
クレイヨン曰く、願いは一人一回だけ、秘密を漏らすとその効力も無くなるらしい。
何はともわれ、衣装は直り、撮影続行。
ところが、楽屋に今度はナナへの脅迫状。他の男と喋るなと書かれている。
タクヤたちは、怪しいマサトが犯人であると踏んで、残りの願いを使って、その証拠を掴むことにする。しかし、マサトにはアリバイがきちんとあった。無駄な1回を使ってしまう。
その日は撮影中止。ナナも帰宅。ところが、その途中、ストーカーに襲われる。
犯人はショウ。ショウはナナを監禁する。
翌日、撮影現場に来ないナナを皆が心配する。
タクヤは自分が助けに行くと決断する。小人を呼び出す。小道具の剣を直してもらう。少し、直し過ぎになれば、十分な武器になるはず。
ナナが見つかる。ショウは包丁を持っている。
タクヤが助けようとするより先に、自分が犯人扱いされて怒っているのか、マサトがその剣でショウを斬りつけようとする。
いくらなんでも、やり過ぎだ。本当に死んでしまう。タクヤは咄嗟に小人のことを話し、小道具の剣にかかった魔法は解かれる。
ナナの救出成功。タクヤはショウに近づき、落ち着くように説得するが、逆に包丁で刺されてしまう。
いつもこんな冴えない役ばっかり。名前のようにヒーローにはなれないようだ。
倒れるタクヤの下にナナが涙を流して寄り添ってくる。
こんな最期も悪くないか。タクヤはそう思うが、仲間たちは小人のことを思い出す。
タクヤを治してもらう。ナナは願うのが初めてだからいけるはず。
無理矢理、呪文を唱えさせて、無事にタクヤは命を失わずにすむ。
小人の計らいか、包丁も小道具も全部おもちゃだったように皆の記憶はすり替わっているみたい。
大きな問題にはしたくないと、ナナもショウを許す。
それよりも、このドラマを成功させたい気持ちが強いみたい。
だって、結婚する予定の愛するマサトと出会えた大切な現場だから。
マサトの傷ついた心を治してあげて。その声はクレイヨンには届かない・・・

他作品もそうですが、秀でてエンタメ性の高い作品。歌、踊り、マジック、殺陣と盛りだくさんのエンタメ要素を盛り込みながら、コミカルで分かりやすい話を展開。
右手に花、あの製品の名前の呪文。いったい何でしょうか。花は人を想う気持ちで、あれは自分の中に安らぎの余裕の心を抱けば、傷ついた人や物をなおせる力が沸き立つみたいなことかな。
そして、その直しは、必ず、前よりもより良き形へと導かれるみたいな。

・煙突と幻
言葉を失った街。
ありがとう、ごめんなさい、おはよう、さようなら・・・
街のみんなは、そんな言葉を忘れてしまってる。
郵便配達人のアトウ。
彼だけはその言葉を覚えている。
言葉を街の人から奪ったのは、街の真ん中の煙突から出る紫の煙。この甘い匂いを嗅ぐと言葉を忘れてしまうらしい。彼は嗅覚障害を患っているので大丈夫だったようだ。
アトウの同僚や女性上司も、言葉を忘れている。
気持ちを伝えることが出来なくてイライラすることも多いようだ。
それは街の人たちも同じ。
大切な女性とケンカをしてしまった男は、彼女宛の手紙を書くものの、今の気持ちをどう言葉にすればいいのか分からず、いつまでも出せないでいる。
母親が出て行ってしまったパン屋の娘。父親は彼女から届く手紙が読めないでいる。きっとそこに書いている言葉を理解できないから。パン屋の娘はアトウから言葉を少しずつ習うが、その想いは父親には通じない。
皆既日食。
文献によれば、その日、煙は止まり、人々の記憶が蘇るのだとか。
その日がやって来る。
男は大切な人への手紙を。父親は母親からの手紙を。
そこには、ごめんなさいとありがとうの言葉が、その人の想いと共に書かれている。
男と婚約者は抱き締め合う。そして、パン屋の娘のお父さんもお母さんも好きと言う言葉は父親の心に深く伝わり、父親は娘への生まれてきてくれた感謝と共に強く抱き締める。
郵便局では、女性上司が自分の心の中の素直な気持ちに気付いたみたい。
アトウに久しぶりにゆっくりと飲まないかと誘い、二人は街へと向かう・・・

うろ覚えですが、昔に観た映画で、パーキンソン病患者にだったか、ある医者が薬を処方して、皆が記憶を取り戻し、正常な日々を過ごすのだけど、またその薬も効かなくなって元に戻ってしまったみたいなものを思い出しました。
悲しい結末なのですが、そんな病に侵され、人が人で無くなったように見えていても、そこに心は確かにあることが分かっただけで、何か希望を感じ、人間の尊さを感じます。
この作品も、言葉を失って、心を通じ合わせることが一見出来なくなってしまったように見えても、確かに人を想う気持ちはあったことが分かります。
皆既日食が終われば、また元に戻るのでしょが、それに気付いたことで、今までとは違った世界が広がるような気がします。
どんな煙で人から色々なものを奪っても、決して失わない何かを人は持っている。そんな人の魅力を感じます。
街の人たちを見ていると、どんな人もみんな人を想う気持ちに溢れています。それを伝えること、受けとめることが出来なくなっているだけみたい。人間の不器用な愚かさでもあるでしょうし、煙のように余裕の無い社会がそうさせているようにも思います。
それでも、必ず人は繋がり合うことが出来る。言葉は無くなっても、心は決して無くなりませんし、煙は必ずいつの日か止まる日が来るのでしょう。

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コメント

ご挨拶が大変遅くなりましたが
先日はご来場頂きありがとうございました☆
いつもブログに載せていただき光栄です!
感謝申し上げます!!

投稿: Sarah | 2016年6月24日 (金) 20時51分

>Sarahさん

コメントありがとうございます。

幅広いエンタメ力を持つ劇団の魅力を発揮された公演になったのではないでしょうか。
短編と言っても、なかなか奥深い豊富な内容で、その組み合わせも独特の世界観を醸していたように思います。
また、次回作を楽しみにしております。

投稿: SAISEI | 2016年6月27日 (月) 12時18分

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