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2016年5月22日 (日)

Re:きつねの花嫁【何色何番】160521

2016年05月21日 人間座 (65分)

見事にミスリーディングにはめられたなあと、ラストあたりで苦笑い。
後々考えるとたくさんの伏線は散りばめられていたのですが、ボケとツッコミの連発、爽やかな自然体の女子トークを微笑ましく見て笑ったり、何かの深い念から生み出された影であると分かっていながらもどこか飄々としている謎の幻影に惑わされたり、純粋無垢で何とも可愛らしい男性の言動に男女の力差を感じながら、どこか男の哀れを思いながら観ているうちに、すっかり固定観念にとりつかれてしまっていました。

決してハッピーで終わるような話では無いと分かっていながらも、そんなほとんどの楽しい時間からは、想像できなかった、何とも切なく、胸が苦しいラストが印象的です。
叶わなかった想い、押し殺すしか無かった想い。そんな悲しい想いたちはどこに今いるのでしょうかね。人生の中で、そんな想いはたくさんあったと思うのです。
きつねの嫁にでもなってくれたら、晴れた気分の中で、洗い流されてくれるのでしょうか。
元々は幸せになることを夢見て生まれた想い。それを大事に育てて大きくなったら、それに潰されそうになってしまう人間の不条理さ。
翻弄されながらも、強く生きなくてはいけない人間が狂おしいほどに愛おしく感じられるような話でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

実家から引っ越しをすることになったアラサー弥月。
荷物をまとめていると、小学校の卒業文集が出てくる。
結婚して、子供を産んで、合唱団を作ります。幼馴染の陽菜の将来の夢。
女子中、高、大、保育士という人生、合コン苦手が災いしてか、未だ結婚もしていないのだが。まあ、それはお互い様ではある。
ちなみに、弥月の夢はそんな合唱団のマネージャーとなること。実家が隣同士で、母親が仲良しということもあって、生まれた時からずっと一緒だった陽菜。
もちろん、今日も手伝いに来てくれている。
文集など読んで、自分の引っ越しだろうがと陽菜に叱られるが、すぐにあの頃の思い出話に花が咲く。
いつも明るく元気いっぱい、冗談好きで面白い陽菜。
どうして、急に引っ越しをするのか、どうして相談してくれなかったのかと涙を見せる。弥月は陽菜を抱きしめる。10秒。それで泣き止むのが2人のルールだ。
やがて、台所から唐揚げの匂いが漂い始めて、陽菜は人の家なのにフラフラと食べに行ってしまった。
部屋に残った弥月。
どうして言わないのか。傷つけたくないから、それとも傷つきたくないから。
自分の幻影が話しかけてくる。

引っ越しの日。
車は陸という共通の男友達に頼んだ。
弥月は男と意識もしておらず、単なる友達。
でも、陽菜はそうはいかない。ちょっと気があるのだ。
引っ越しだと動きやすく、汚れてもいいダサい格好で来たので、それを気にしてソワソワしている。
そんなことがありながらも、何とか引っ越し先の部屋へと荷物を運び入れる。
陸の家の近くらしい。何となく陽菜は不安な気持ちがよぎっているみたい。弥月は可愛いし、恋人がいないのが不思議だと思っているから。
皆で食事。一応、陸がコンビニで買ってきたトロロソバ、ザルソバ、カップソバで引っ越し祝い。
トロロソバの取り合いになって、陽菜と弥月は勝負。
馬鹿なことをしながら、楽しく会話。
でも、弥月の傍には幻影がまとわりついて、言えばいいと迫ってくる。
そのうち、弥月は引っ越しの挨拶に。
陸と陽菜はぎごちないながら、楽しく会話。
雨が降ってきた。晴れているから、狐の嫁入りか。
弥月が飛び込んで帰ってくる。
二人がいいムードになることを心配でもしたみたい。

そう、気付かなかったらよかったんだ。自分の気持ちに。
幻影は語る。
陽菜の夢は、女性の弥月には叶えることは出来ない。
好きと言ったら、キモイと思われ、もう終わってしまうだろう。
一緒にただいられることまで捨ててしまうのが怖いのか。
引っ越しをしたら全てリセットできるつもりなのか。
弥月は幻影の首に手をかける。
ゆっくりと締めて殺して、沈め込む。

陸と陽菜が話している。
祇園祭に今度行かないか。陸の言葉に陽菜は戸惑いを見せながら喜んで返事をする。
外は雨。
弥月の死んだ、捨てた気持ちはキツネの嫁に・・・

劇中にたとえ話のようなものが出てきます。
蛇口から滴下する水。
それを貯めるコップ。
どれくらい溜まったら飲む。一口、半分、いっぱい。
いつか溢れ出す水。その頃には、自分の渇きを忘れてしまっている。
そんな感じだったと思います。
じっくりと培って育んで大きくなった想い。
自分の中で知らぬ間に溢れるぐらいになった想いは、自らの願いを満たしてくれるとは決して限らないような感覚が何とも切なさや少し怖さも感じます。
最初の一滴の想い。それが自分の心の中に入り込む時の幸せ。それが少しずつ溜まっていく時の幸せ。
そんな幸せの想いにいつの間にか潰されてしまうことになるのが人の常ならば、生きることはとても不条理で苦しいことなのかもしれないと感じます。そして、同時にそんな人間がとても愛おしくも思えてきます。

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