マンサク【四方香菜PRODUCE】160513
2016年05月13日 うずめ (85分)
2013年に拝見した作品。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2013/06/130531-29ca.html)
<↑リンク先、あらすじがネタバレしますのでご注意願います>
そのコミカルでテンポのいい会話の掛け合いの面白さ、温かく優しい空気に包まれた話、生死を真摯に見詰め大切な想いを思い起こさせる力強さ、巧妙に仕組まれた脚本の妙などなど、数多くの魅力を味わえて、この年308本の観劇作品の中の10本指に入れた作品です。
今回も、ほぼ同様の魅力だったように思います。
強いて言えば、こんなにスイッと観れる作品だったかと思うぐらいに、体感時間が短く感じられる、けっこうコテコテの関西弁が飛び交いながらのリズムのいい会話がとても良かったように思います。
以前に拝見した時は、けっこう窮屈な客席で、かなり尻と足が痛かった覚えがあるので、その影響かもしれませんが。
公演は日曜日まで。お薦めしたいところですが、けっこう席が埋まっているみたいなので要確認。
ゲネを撮影した撮って出しDVDが売り切れで予約しました。
この作品、部屋の中の会話が中心で、その外の世界の風景は想像して自分で膨らます感覚が大きいので、多分、DVDでも楽しめると思います。
あらすじや話の感想は上記リンク先参照。
今、またこの作品を上演する意味合いが強くなっていることは辛いことでもありますが、降りかかる不幸、苦労、災難、悲しみ、辛さは、生きている以上、幾らでもあるのでしょう。
だからこそ、この作品名でもあるマンサクの花言葉を私たちは信じて、たとえ生死をもって分かつ者同士となったとしても、互いに前へと進む勇気を持たなくてはいけないようなことを感じます。
管理人の清水。前回拝見した時は、かなりのウザキャラでした。今回の坊俊幸さん(音声劇団五里夢中)はやや抑え気味で、どちらかと言えば飄々としたお調子者みたいな感じでしょうか。想いを抱き続けることの覚悟や苦しさがにじみ出ていて、それでも生きる者は、その想いを背負って頑張らないといけないのだという優しくも力強い姿を見せています。
今のマンサク荘にやって来た由喜子、四方香菜さん。等身大の女子大生像で、巧妙な間合いの会話で話を展開する中心に位置するキャラの巧さはさすがといったところでしょうか。この巧みさは前回拝見した時の方もそうでした。要領よくとか、恵まれているとか、今の若者風の空気を感じさせながら、マンサク荘の真実を知り、そこにあった人たちの想いから、彼女が今、生きている、これから人生を歩むことをしっかりと見詰め、成長する姿を見せていることも、この作品の重要なことなのだと感じます。
神経質な男、土屋さん。外池聖さん(勝手にユニット BOYCOTT)が演じる心の衝動に任せた子供のような不器用な言動は、前回とよく似ている感じです。大学受験や恋愛。きっと上手くいかないことだらけだったのではといった薄幸感漂うキャラですが、それでも純粋に前を向いて生きていた。死はそれを消し去ってしまいますが、彼がそうして懸命に生きていた証を管理人さんやその周囲の人たちはきっと心に刻んで生きているのだと思います。それが慈しみに繋がるのかもしれません。
ヤンキー風の男、日下部さん。前回は、ほんまもんやんといった雰囲気を醸す方でした。今回の国本クイナさん(学園座)は、少し甘えが見られるような感じです。自分への自信の無さを、そのまま家族に認められないということへと逃げるように繋げてしまい、弱い一面を見せて苦しんでいる、もどかしさを非常に感じます。こういうのって、時間が経って、大人になればきっと解決することも多く、それだけにその時間を失うことになってしまったという悲しい現実が突き付けられます。それでも、その周囲の人の彼への想いは最後に伝わります。安堵と共に悔いも大きかったことでしょう。それでも、彼は自分を受け入れて、死者として前へ進みます。その姿から、きっと、生きる者として、なさなくてはいけないこと、その時間を大切にしなくてはいけないことが浮き上がってくるようです。
テンション高い女性、かりん、倉知真麻さん。前回拝見した方は、ちょっときつめの弾け方だったけど、今回は少し、抜けた空気を醸した弾け方かな。愛らしいキャラです。ずっと楽しいマンサク荘だったのでしょう。それがいつまでも続くことを疑うこともなかったはずです。あの日、潰れたマンサク荘。でも、彼女をはじめ、そこにあった皆の生きていた証は、そんな楽しさも込められているようで、そのことは決して消えない。そのことをきっと、これからを生きる者たちが新しいマンサク荘で実現しなくてはいけないのだと感じます。
おとなしめの女性、優香、葵郁美さん(空想曲)。あの日、止まってしまった自分の生の時間。共に止まってしまった人たちのこと、自分たちに起きた現実を、漠然と感じながらも、繰り返されるあの日の中で、マンサクを枯らすことなく、ずっと育てていたのでしょう。それは、伸びることもなく、ただ、未来への種になることを信じてのような感じです。時が止まることになった自分たちが、まだ時間の中を歩み続けられる人たちへの願い。まさにマンサクの花言葉に繋がるもののように感じられ、その優しい想いに心を打たれます。
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