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2016年5月 8日 (日)

メビウス ’16【劇団ショウダウン】160507・160508

2016年05月07・08日 船場サザンシアター

(澤井里依×為房大輔 : 85分)
(水木たね×佐竹仁 : 80分)

今や、ショウダウン数々の名作の中でも、一際輝く、切なくも温かい素敵な作品という位置づけのメビウスを、男女2人の6組が各々創り上げるという企画公演。
残念ながら、GW中の仕事や他劇団公演の観劇との日程調整で、全てを観に伺うことは叶いませんでしたが、他作品でもたびたび心打たれることの多い、役者さん方、2組の公演を観劇させていただきました。

2012年6月に拝見した作品。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/120624-e160.html
思い出すために、自分のブログを読み返して、観劇に臨みました。
今、愛する人との出会いを大切に、そしていつまでもそのめぐり合いの中で、今の時を一緒に刻みたいななんて思えた作品。
恥ずかし気も無く、そんなことを書いていますね。
そりゃあそうでしょう。
この年の1月に劇場でたまたま出会った子と仲良くなり、そろそろしっかりと告白しようと考えていた頃だったはずですから。私だってテンション上がるというものです。ちなみに、なかなか自信が出ず、告白したのはこの年の12月という情けない有様でしたが。
ずっと一緒にいようね。そんな約束をしたかは定かではありませんが、その約束は果たされることなく、昨年の9月に終局を迎えます。
再演は昨年の10月。何で観に行かなかったのかが、不思議だったのですが、多分、本能的にこの作品を観ると今は辛いぞと思ったのかもしれません。もしかしたら、観る資格無しと自省したのかな。
そして、今回の公演。想いを繋ぎ続けていく。命と共に、きっとそこに宿る想いは、人が人であることの素晴らしさ、尊さを思い起こさせてくれるようなやはり素敵な話でした。
忘れてはいけない人が人を大切に想う気持ち。日常の慌ただしさの中で、そんな大事なことをすぐにおろそかにしてしまう自分。
切なくも温かい、この物語をもう一度噛み締めて、人を想うこと、愛することの美しさ、優しさを心に刻みたいと思います。

あらすじは上記リンク先と大きくは変わっていないと思います。
細かなところは、DVDも無いので、かなり忘れてしまってはいますが。

地球から遠く離れた無人の惑星。そこは、地球で不要となったアンドロイドたちの墓場となっている。
機能停止寸前、つまりは死を目前にした2体の男女アンドロイドが、2人の記憶を遡って旅していきます。
2人の目の前に、今もある一輪の花が繋げる二人の記憶。

多国籍軍と共和軍の戦争の中で、敵対する軍の兵士として。
一夜を共にしてしまった男とオカマ。
ボロボロの城に探検しにやって来た男と、死んだ姫のゴースト。
絵描きとモデル。
12世紀のいいところの令嬢とみすぼらしい飼い犬。
猟師と優秀な相棒、はやぶさ。
オアシスに必死でたどり着いた女とそこにいた虫。
逃げる獲物とそれを狙うちょっと抜けた獣。
本隊から外れ、追っ手から逃れるために絶体絶命の隊長と部下。
森で倒れるローマ人兵士と、その男を自分の家に連れて来て村人から守ろうとした、敵対するガリア人の女兵士。
二人は、これまでずっと幾度と出会って、別れてきたようです。

記憶の始まりはいつも、仲睦まじき夫婦。
夫の大好きな甘い生クリーム入りのマロンケーキ。
食卓には一輪の花が飾られていた。
世は戦争。
夫は戦争に連れて行かれ、その飛び交う矢に倒れる。
ずっと一緒に生きよう。
その約束は果たされなかった。
妻は戦争が終わったこと、そして、きっと鈍い夫は気付かないだろうけど、子供が授かったこと、そんな喜びを夫の墓前に、あの一輪の花と共に報告する。
年老いた妻は、プロポーズされた場所でもある、その墓の地に、花の種を植え、それはやがて花畑となる。
何も無い惑星で機能を停止した2体のアンドロイドは、その3000年にも及ぶ長き、共に過ごした記憶の旅の向こうに、その景色を2人で見詰める。

アンドロイドたちは、2人の記憶を遡るたびに、その記憶が鮮明になっていることに気付く。
きっと、もうすぐ出会えるのだろう。
夫婦の姿は2人の始まりなのか、終わりの姿なのか。
2人が巡る記憶の旅は、拡がる先に、またその夫婦の姿へと回帰し、宇宙の膨張がやがて飽和した時に一点に収束するような宇宙の様相を見せる。
何度巡っても、メビウスの輪のように始点とも終点とも言える二人の出会いの起点にたどり着くような、繰り返される出会いと別れの転生の輪は、その永遠の巡りの中で、奇跡を生み出すような感覚を得る。
機能停止するアンドロイド。
その死、別れの瞬間は、何度となく生まれ、出会うという永遠を生み出しているかのようである。
また出会おう、そして、その先にあるどこかへ2人がたどり着くその日まで、永遠に一緒に旅しよう。
2人が繰り返される生死、出会いと別れの中で、約束という想いを一輪の花に宿して、心を通じ合わせる時間が愛おしく、尊く感じられる作品でした。

2組拝見しましたが、やはりかなり違った印象を受けますね。
単純にあれは、あの組のオリジナルだったのかなというシーンもあったようです。
ベースに切なく温かい記憶を巡る2人の旅という物語があり、そのたどり着く先が2人の花畑というところがあるだけで、その旅から感じられることや、たどり着く先に見える景色は少し異なっている印象を受けます。
その違いを説明するのは、非常に難解です。
澤井×為房ペアは、安定感があり、描かれるその想いは秘めたる芯を感じさせます。お2人が凛としたイメージの役者さんだからでしょうか。どんな時代でも、環境でも、そこにある2人の想いは、決して形を変えないという強き信念みたな力強さがあったように思います。アンドロイドという設定に忠実で、それだけに、永遠に不変の2人の想いが浮き上がってくるように感じます。最後も、揺ぎ無い想いが、長き時を何一つ変わることなく、2人の幸せな風景に導いたような印象を受けます。
水木×佐竹ペアは、人間味が少し滲み出ていて、それだけに自然に想いが溢れてきてしまっているような感じです。穏やかで優しい雰囲気のお2人だからかもしれません。人間臭さが、人の弱さも醸しているようで、時代や環境によって、得てして壊れてしまうような想いを想像します。だからこそ、2人で大切に、大切に、2人だけの想いを長き時を一輪の花と共に守り抜いた先に2人の幸せへとたどり着いたように感じます。
共通するのは、女優さんの豊かな表情の美しさ、男優さんの真摯に溢れ出る感情でしょうかね。
2人で創り上げられる、その舞台の姿は本当に美しく、見惚れるものだったことは間違いないです。

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コメント

SAISEI様

6組全て観た感想はまた。ここでは別のことを(笑)

劇団ショウダウンは初めて観た初演の『錆色の瞳、黄金の海』が当時、公演+客出しが最高に良かったことからその後ずっと足を運んでいます。

今回は全出演者の方と多い少ないはあれこそすれ言葉を交わすことができました。

初体面の方では鬼門の男性中堅役者(笑) 中鶴間さんに挨拶したのですがとても丁寧な対応でしたね。お話しできて良かったです。

あとやはり澤井さんの気遣いには脱帽。終演後、同じ回を観ていた●な●たさんに感想を話し合うため待っててもらったのですが澤井さんが目ざとく見つけられて「どなたかお待ちですか? 」みたいな感じで声かけられてました。澤井さんの人間性にはホンマ惚れましたわ(笑) 大千秋楽も澤井さん来られていて岡田さんとおられて帰っていく客に自分達の回ではないのに「ありがとうございました」と2人とも声をかけられていました。岡田さんもいつもにこやかで好きな役者さんですが今回の件で澤井さん、岡田さん、余計好きになりましたね。

対応が悪い役者は爪の垢を煎じて飲めばいいのに(笑)

投稿: KAISEI | 2016年5月11日 (水) 01時32分

SAISEI様

誤解を防ぐために。

女性役者と男性役者では女性役者の方が対応が圧倒的に良いことが多い、と個人的には思う。男性役者は女性客の方が好きなのでは? と思うフシもあり。まあそれは仕方ないとはいえそれが見えると甚だ幻滅(笑)

若手男性役者より中堅、ベテラン役者の対応が悪い。それを鬼門と表現した由。

今回の中鶴間さんは話しかけて良かったな、という対応だった。

SAISEIさんはわかっておられてると思いますが投稿後もし誰かにコメントを見られたら、と思って補足をば。

投稿: KAISEI | 2016年5月11日 (水) 01時41分

SAISEI様

サザンシアターはショウダウンの公演でほとんど来てますが観客も芝居好きの心得た方が多いようで(笑) 不快な思いをした記憶がないなあ。

投稿: KAISEI | 2016年5月12日 (木) 17時21分

>KAISEIさん

6公演全部は凄いな。

しかし、ようそんなに話しかけられますねえ。
私なんか、意を決して澤井さんにお声がけさせていただこうと思ったけど、取り囲まれていたから断念。
為房さんは何か怖そうだから、ちょっとやめておきました(^-^;
役者さんとあまり距離が近くなり過ぎるのも何となく抵抗があってね。
まあ、いつも楽しく観させてはもらっているので、SAISEIで多分通じるかなといったような方には、ありがとうぐらいは言うようにしたいとは思っていますが・・・

投稿: SAISEI | 2016年5月15日 (日) 19時44分

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