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2016年5月15日 (日)

どろどろどるーんぷらすてぃっく【劇団カメハウス】160515

2016年05月15日 シアトリカル應典院 (125分)

死に囚われてしまった男が、性に生の救いを求めながらも、自分で決めた死へ向かって時間を過ごす。
そんな男を救い、彼の進む道を生へと向かわせるまでの姿を愛をもって描いたような作品かな。
同時に、そんな救いの力が演劇というものにきっとあることを強く示唆しているような感も残る。
難解だが、生きることを冷静に見詰めながらも、その力強さ、そこにある想いを信じる優しさに溢れた美しい作品だと思う。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

鈴木灯、ごく普通の高校生。
頭はあんまり良くないようで、テスト中もちょっと隣を覗き見。そんな彼を窓の向こうから見詰める視線。遠野明。彼女の願いは、彼もまた自分に視線を向けてくれること。
鈴木は明と図書室で出会う。灯と明。同じ名前。活字は性的興奮を呼び起こす。そう意味深に語る明に鈴木はいきなりキスをされる。鈴木はどうしていいかも分からず、その場を去る。
電車のホーム。人身事故で電車はまた遅れている。友達たちと進路の話。賢い奴はいいが、頭が悪い奴は進路希望を提出するのも一苦労。鈴木の進路は決まっている。それは、死ぬこと。
鈴木は教室に大切なノートを忘れたことに気付き、大急ぎで戻る。明日でもいいじゃないかと友達に言われるがそうはいかない。その明日が、そのノートにあるのだから。
教室には明がいた。自分を探しているとか言いながら、何かをたくらんでいる。
セックスは死の衝動。だったら、オナニーは自殺だろうか。明は、鈴木が授業中にオナニーをしていることを突き付ける。そして、自らの足を舐めさせて、鈴木にオナニーをさせる。

鈴木は授業をサボって、女子の体育を見学。
いい仲になっているマコトが手を振ってくる。そんな姿を見て、友達はからかってくる。
見ているとマコトが怪我を。
鈴木は急いで保健室に駆け付ける。これも青春だ。
保健室のマコトは大した怪我も無く無事な様子。
二人は秘め事のようにセックスをする。

マコトは同級生の真由美にノートを写させてもらう。退屈な吉田先生の授業でノートをとるより、優等生のノートを借りた方が効率的だから。
マコトは真由美に相談。鈴木とセックスする時に、彼がどこか一点を見詰めているような気がすると。そんなの恋人がいる者のノロケ話。
鈴木は吉田先生のお手伝い。点々をつけると透明なものが真っ黒になるものなあに。そんなナゾナゾを出しながら、力仕事をする。結局、答えの出ない先生を放って鈴木は下校する。

鈴木とマコトが学校で会話。
マコトは、鈴木と体も重ねている恋人同士であると思っているが、鈴木の気持ちがはっきり分からず、不安な気持ちが芽生えている。
そんな二人の耳に、怪しげな言葉が飛び込んでくる。演劇部の黒木さん。稽古だと分かってはいても、おかしな人だ。よく分からない。そこが魅力だと言う鈴木。
鈴木はまた遠くを見詰めている。自分が傍にいるのにとマコトは怒りを露わにする。

昼休み、人気の無い場所で弁当を食べる鈴木と明。明はここは自分の場所だと迷惑そう。
そんな二人の下に、友達が訪ねて来る。ここも直にあいつに見つかりそう。明と一緒にいることが分かったら、大変だと注意をしに来たらしい。マコトは今、ストーカーとなって鈴木を追っているようだ。
そんなこと関係無しに、自転車を貸せと鈴木に迫る明。逆らうことは出来ない。だって、あのことを皆に言いふらされたら。鈴木にとって、明は今や悪魔となっている。

電車で帰る鈴木。また人身事故。
電車の中で出会った折川さんと会話。いつも本を読んでいる優等生だ。カマキリに寄生するハリガネムシは、自分の生息する場所に戻るため、カマキリを自殺させる、それもカマキリの脳に自らのタンパク質を植え付けて洗脳するかのように。そんな豆知識を教えてもらう。寄生、死への誘導、洗脳。
自転車に乗った明は弟と会う。離婚なのか、親の事情で一緒に暮らしていないみたい。互いに付いていった親のことを報告し合っているみたい。まあ、元気ならいい。
弟は頭の病気やらで命の危険にさらせれていた。でも、それは3年前の話。死は通り過ぎたのだろうか。それとも、また弟の周りをうろついているのだろうか。童貞では死ねない。弟はそう笑い飛ばしている。

鈴木は水泳部が無いので、プール掃除をさせられている。
そこにやって来た朝比奈さん。彼女は絵を描きに来たみたい。
服を脱ぎ出し、自らの身体に絵を描くように鈴木に指示する。鈴木の持つ筆が彼女の身体をなぞる。彼女の手もまた鈴木の身体を。
教室で鈴木は黒木さんと演劇の話。自分の考えた作品を一緒にしようなんて言ってくるが、有名な作品の完全なパクリだ。
そんな二人の下に、マコトが現れる。
左手にはリストカットの跡、右手にカッターを持っている。
話をしたい。もう大丈夫だから。前みたいにはならないから。
そう言いながら、生気の無い狂気を漂わせて近づいてくる。逃げる黒木さん。
カッターは鈴木の胸に刺さる。

ここまでで、だいたい1時間ぐらい。
気付けば鈴木は、吉田先生の授業中にいる。
鈴木の白昼夢を見せられていたということみたいだ。
今の自分が存在することがはっきりしない。少し前の自分と今の自分が生の時間で継続性、繋がりを見出せない。
そして、やたら性的な妄想が入り込む。
このあたりの理由が、鈴木の大切にしているノートにあることが後半明かされる。
自殺した兄のノート。それは兄が3/31に死ぬまで書き綴った日記。その兄は、鈴木の好きだった女性とセックスをしていた。
鈴木は兄の日記に従って、生の時間を過ごすことを決める。つまりは、3/31に死ぬという結末が用意された生。
だから、生きていないと言ってもいいような状況なのかもしれない。そして、その生を何とか意識させるのが性といったような感じか。
自殺した兄を追随して生きるには、死が用意されている生よりも、トラウマのように鈴木の心に残る性が彼の頭の中には大きく浮かぶようになっていたのかもしれない。

明は鈴木のノートを手にしている。鈴木は返すように大声で叫ぶが、家に来たら返すと明はつっぱねる。
鈴木の下に黒木さんが現れる。
今の自分が本当の自分なのか分からない。あたかも白昼夢のような時間。前の自分と今の自分の継続性。その境界線。自己の認識が崩壊した苦悩。鈴木はそれを黒木さんとのセックスで埋めようと体を交える。
いい稽古だった。鈴木は演劇の練習に付き合わされたみたい。

鈴木が自転車に乗っての帰り道。明の弟はその自転車を見て、この前、明が乗っていたものと同じであることに気付く。明に電話。否定しているけど、恋愛をする明をからかう。
明は折川さんと会話。
折川さんは鈴木のことが好きだ。見ていれば分かる。そして、そんな折川さんを見ていて、明は自分も鈴木が好きであることに気付く。鈴木は、自分にとって空気や水、透明な存在だから。

鈴木は気付くと、マコトの家に。二人っきりではない。付き合っていないから当たり前だ。クラスのみんなと一緒。違うクラスの明もなぜか一緒にいる。
勉強をみんなで一緒にすることになっていたのだった。
鈴木は明にノートを返せと問い詰める。
自分の好きな女の子とセックスをして、3/31に自殺した兄の日記。その通りに生きて、自分も3/31に死ぬために。
ノートを忘れて学校に戻る鈴木。
教室には先生がいる。ナゾナゾの答えはカラスだ。点々を付けたら、透明なガラスになる。透明な鈴木。
自分が誰だか分からない。どこにもいけない。精神患者のように閉じこもる鈴木。
主人公を演じた演劇作品の公演を終えて打ち上げに参加する鈴木。抜け出して朝比奈さんと会話。マグリッドの石になりたいという朝比奈さん。精神が病んだ自分は、いつしかそんな、死に追い詰められたかのように頭上のマグリッドの石に潰されてしまうのか。なかなか戻って来ない鈴木。もしかしたら、やり終えて自殺とか。そんな不謹慎な言葉を友達が発した瞬間に大きな落下音。すぐに明が飛び出そうとする。でも、それは看板で、鈴木は普通に戻って来た。
ホームで進路を友達と言い合う鈴木。電車の音でかき消されたが、彼の進路は死ぬことだった。
マコトとは付き合っていたのだろうか。抱き合ったのか。記憶は断片化されて蘇らない。

そんな断片化された記憶の白昼夢の中にいる鈴木。
1/1。鈴木が玄関を開けると私服の明がいた。
みんなで初詣。
皆が願い事を神に祈る。
友達は鈴木のことを心配している。それよりも、明がもっと心配している。お前の口から大丈夫だと言ってやれという友達の言葉。
鈴木は、今はまだ言えないとしか答えられない。
みんなで引いたおみくじ。
その日から、鈴木は皆の前から姿を消す。

3/31。
明は、鈴木を探すために必死に走り回る。
公園にいた鈴木。
死ねなかった。
兄のセックスを見て、トラウマになった。その兄の自殺を受けて、兄の最後の生の時間を追随しようとした。
セックスしたら、何か分かるかもと思った。でも、その答えは出なかった。
当たり前だ。鈴木は兄では無いのだから。そう明は答える。
兄は桜の季節に死んだ。自分は梅の季節に少し変えるつもりだったみたい。
梅はちょっと季節が違うのではないのか。
明はそう言いながら、鈴木から日記を取り上げて、書き込む。
3/31、死ねなかった。
初詣で祈った願い事は叶わなかった。上手に死ねますように。神など信じれたものじゃない。そう言う鈴木に対して、明は心の中で思う。
私は叶った。私が鈴木と会った時からずっと願っていたことは。
明が鈴木に口づけをした時に、鈴木の携帯のアラーム音が鳴る。
兄が死んだ時間だ・・・

例えば、身近の人がガンで死ねば、自分もそうなのかなあとか、事故が続けば畳の上では死ねないのかもとか、自殺ならいつか自分にもそんな死の誘いがまとわりつくと思ってしまうものだろうか。
死の呪縛に囚われてしまった男が、自らプログラミングした死へ向かって、用意された台本のように生を演じて、その生の時間を過ごす。
それは、ハリガネムシとカマキリのように、彼に寄生するトラウマが、頭の中に住み着いて、白昼夢を見させて、死へと誘導しているようである。また、マグリッドの石のような、どこかいつでも死が自分の頭の上にあって襲い掛かってくるような、ぬぐいされない死の幻影のようなものを感じさせる。
鈴木は、自暴自棄になってしまうのではなく、一学生として、一生物として、普通の生活を過ごす。普通に飯を食って、寝て、起きて、日によって自転車や電車で通学して、友達と進路について話をしたり、退屈な授業をサボったり、みんなで集まってワイワイやったり。
たとえ、彼の時間の行きつく先が死に向かっているとしても。
その中でもちろん、人を好きになったり、好かれたりして性行動もする。セックスは生物種として生殖活動の基本であり、新たな生を生み出すと同時に、自らの命を次世代に繋ぐ、自己の死にも通じる。男はそんなセックスの最中に、その人と共にある未来の一緒の姿ではなく、自分の死の姿を見つめていたようである。
性に生の救いを求めていたかのような鈴木。でも、本当はその性のトラウマが彼の生を消してしまおうとしていたことに気付く。
本当に彼を生へと向かわせ、死の呪縛から解放したのは、明の性では無く、それを超える愛だったように感じる。

また、劇中には、鈴木の中で本当に現実として起こったことと同時に、白昼夢という形の妄想、虚構、劇中劇のような演劇らしいシーンが交錯して描かれている。
これが、観る者を混乱させはするのだが、きっと、そんな現実とは違うところでも、鈴木を生へと向かわせる力が働いたことを証明しているかのようだ。
彼の兄のノートという、限りある生の時間の台本。それにただ準じて、時間を過ごそうとしていた彼が、どうして最後に救われたのか。
それは日記の言葉だけでは分からない、自分自身の想いや多くの彼への周囲の想いを受け止めながら、彼が生の時間を過ごしたからなのではないかと感じる。
そのことは、同時に演劇が、時には死へと向かってしまうような辛い現実の生の時間を変えて、新しい道を切り開いてくれる力あるものであることを証明しているようにも思う。
演劇は人生を変える力がある。
この劇団とも馴染み深い、ある演劇プロデューサーがよく言われている言葉。この言葉は私も信じて疑わない。
この作品は、そのことも自らの実体験を基に、描き出そうとしているような力強さを感じる。

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