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2016年5月 7日 (土)

Mother ~母が残してくれたもの~ 160506

2016年05月06日 近鉄アート館 (115分)

ずっと観たいと思いながら、タイミング合わずに観逃し続けていた作品。
再々演でようやく拝見できました。
題名から母と娘の絆を描くような作品だと思っていましたが、それを基に、自分たちが生きている中で、どれほど多くの人の想いを受け取っているのかに気付かされる話へと膨らませているような感じです。そして、その想いに感謝して、自分の周囲や子供たちに繋げていかなくてはいけないのだということを考えさせられるような作品だと感じます。

今年拝見した、父と息子を同じように描いた、この作品と同調したような感じでしょうか。作家が同じなので、込められていることを、また別の視点で見詰めているような印象を受けます。
http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/105-d6aa.html

観終えて、たくさんのことが心に残っています。心に響くことがたくさんあったというのでしょうか。
上記作品の観劇の時もそうでしたし、あの時はかなり涙が滲みました。
でも、今回はなぜか全くといっていいくらいに泣けなかったですね。
それよりも、自分の生き方、成長の仕方、周囲を想う気持ちに対して、何か悔いや恥みたいなことを感じて、何か心苦しい感覚が残ります。
自分に対して、深く突き刺してくるような言葉に苦しい気持ちの方が大きかったように思います。
人との想いの繋がりを温かく描いてはいるが、そこに甘え無く、厳しさが強く感じられるような気がします。女性の凛とした強さがそうさせているのでしょうか。
もし、踊りや歌が無かったら、エンタメで楽しんで心を和らげる時間が無く、かなりきつい作品だったように思えるくらいです。

<以下、あらすじがネタバレしますのでご注意願います。再々演なので、白字にはしていません。公演は本日、土曜日まで>

女優でありダンサーのメイ。
明日、自らが演出する舞台公演がある。
今はそのリハーサル中。
出演する若い者たちも、大先輩のメイに負けじと懸命に踊り歌う姿を見せている。
舞台監督は、リハーサルで既に心打たれたらしく、メイの想いを形にしようと、熱い気持ちで一杯になって、スタッフたちに指示をしている。
でも、どうもヒロミの顔色が悪く、表情も暗い。
スタッフの話では、リハーサル前の携帯に入っていた留守電を聞いてから、あんな感じらしい。
メイは、実力があることはもちろん、責任感も強いし、さっきは、最後のシーンの照明をより良く変えたいと、最後まで最高の作品を創ろうとしているので大丈夫だとは思うが、少し心配だ。
メイは留守電を聞いて病院に向かう。
病床には笑顔で寝ている母がいた。10年前に家を飛び出してから、久しぶりに会う母。
倒れたという知らせを受けて、やって来たが、少し拍子抜け。でも、容態は決して良くはないようだ。
連絡をしてくれたのは、市の福祉課の職員。人の良さそうな好青年だ。きっと仕事も真面目に真摯に取り組んでいるのだろう。
だって、身寄りの無い母の、唯一の娘であるメイを探し出すのは大変だったことだろう。当然、母は電話番号を知らないし。
手術は明日になるらしい。
メイは舞台があるので立会いは出来ないことを伝える。
こんなことはけっこう多いのだろう。今は、年老いた母を施設に預けて放ったらかしにする人も平気でいる時代だから。職員は代わりに立ち会うことを了承する。
職員は、母の荷物を整理する中で見つけたトランプと手紙をメイに手渡す。
トランプは母が好きだった。よく、勝負をしたものだ。母が勝つことはほとんど無いくらいに下手くそだったが。
手紙は知らない。しかも、こんなにたくさん。
送り主も、宛名も、母の名前、ヒロミ。
読んでみると確かに、自分が自分に書いた文章が綴られているみたい。
それにしても汚い字だ。
母子家庭だったから、パート掛け持ちで忙しく、化粧もほとんどせずで、友達に見られるのが恥ずかしかった母。ガサツで、声も大きく、そんな母を字は表してくれているとメイは思う。

手紙は小学生時代のヒロミのことが描かれている。
文通が流行っていて、アイドルみたいな、いいところの転校生がいて。
ヒロミはそんな輪の中に入れず、いつも一人ぼっちでトランプで遊んでいるおとなしい少女。
おとなしいとすぐに嫌がらせをしてくる子もいる。
そんな子たちに逆らわず、おとなしくしているヒロミ。
そんなヒロミをいつもかばってくれたのがルカさん。
ルカさんは、自称、世界を放浪の旅する人。今から思えば、無職だったのだろう。
いつも明るく、元気で、悲しみや辛さを吹き飛ばしてしまうような人だった。
彼女の歌う歌に元気づけられ、自分の思いのまま、自分の気持ちにいつも正直に生きればいいことを教えてもらった。
この手紙だってそうだ。
文通相手がいないなら、自分に手紙を書けばいい。素直な想いを自分にぶつければいいと言ってくれたのだ。それが、こうして今でも続いている。自分の人生を大きく変えた最初に出会った人かもしれない。
お別れは突然だった。アフリカに歌の勉強をしに行くことになったらしい。
どうして。そんなヒロミの言葉に、自分はこれしかないからといつものように明るく答えるルカさん。
悲しむヒロミに、ルカさんはみんなと仲良く、そして、いつの日か、ここにライブハウスを作って、一緒にステージに立つ約束をする。
一緒に歌ってお別れした。
ルカさんに出会ってから、ヒロミは自分なりに歌の練習をしていた。
この空き地がヒロミの初舞台となる。

メイは驚きの表情を隠せない。
だって、あのうるさいおばちゃんだった母が、こんなにおとなしくけなげな少女だったのだから。
手紙は続いて中学生時代の母を描いている。
何かより一層、字は荒々しくなった感じだが、その文面にはいくつものハートマークが付いている。
ヒロミはダンスを始める。
あのおとなしかった小学生時代はどこにいったのやら、今ではすっかりリーダー格として、文化祭の舞台に向けて、みんなと練習。
もっと情熱を、熱い気持ちを舞台から観ている者たちに届けよう。
みんなに熱く語るその姿は、ルカさんを彷彿させるかのようだ。
みんなと憧れの野球部の先輩の話になる。
ファンクラブが結成されるくらいの人気者らしく、ガリ勉、クソ真面目なクラス委員長ですら、熱をあげているぐらいだ。
ヒロミはそれほど興味ない。色気より食い気。
そんな仲間たちと別れて、お菓子を食べながら、歩いていると一人の男とぶつかる。
お菓子が地面に落ちてしまう。
許せない。
ヒロミはその男に球を投げつける。
男はその剛速球を絶妙なタイミングでバットで打ち返す。
このタイミングだ。スランプだった男は、何かを掴んでスランプ脱出となったみたい。
ありがとうの一言を残して、去って行く。男はあの皆が憧れる先輩だった。
その後、お菓子のことを根強く恨むヒロミは、事あるごとに男に復讐の気持ちを込めた球を投げつけるが、男はそのたびにそれを打ち返す。
そして、いつしかヒロミに恋心が芽生える。
でも、お別れはまたしても突然だった。
男は野球の名門校に転校することに。
お別れの悲しみを感じるヒロミに対して、男は自分のプロ野球選手になる夢の一歩を踏み出せたことの喜びでいっぱい。
自分にはこれしかないから。野球が自分を輝かしてくれるから。
ヒロミは、自分が男を想う気持ちほど、男は自分を見てくれていなかったことに悲しみを覚えるものの、それよりも、自分がこれだということにもっと取り組まなくてはいけないことを覚悟する。
私はプロのダンサーを目指す。文化祭の舞台で満足していてはダメだ。
親の反対を押し切り、家を飛び出し、ダンススクールに行く決心を固める。

メイは複雑な気持ちだ。
こんな過去があったことは全く知らなかったから。
だったら、どうして、自分が女優を目指すと言った時に、あそこまで強く反対したのだろうか。
手紙はダンススクール時代の母を描く。
特待生として入学したヒロミ。授業料は免除されているものの、家を飛び出しているので、生活費はスーパーのバイトで稼ぐ。
生活は厳しく、サユリという同期の女性と同居。
決して楽な生活ではない。働いて、レッスン受けて、家に帰ってもサユリ相手に練習をして。
でも、特待生のヒロミに妬みを見せる者もいる。
小学生時代のおとなしい子だった時はだた受け入れるしか出来なかったかもしれない。中学生時代だったらケンカになってたかも。
今は違う。
そんなことより、今、自分がしなくてはいけないことは、自分の想いをダンスに込めて、舞台に立てる女優になることだ。
近々、大きなミュージカルの舞台がある。
オーディションも近い。
チャンスをものにして、主役に。主役はオンリーワン。ダンススクールのやたらクドくてテンション高い先生は、生徒たちに熱く語っている。
この舞台には、これからの活躍が期待されている男性4人の人気アイドルユニットも出演することになっている。
実はその中の一人とヒロミは付き合っている。
オーディションで、主役を射止めたのはヒロミだった。
いつも陰で嫌がらせをしている疑いがある女性はその結果に納得がいかない模様だが、実力の世界は厳しい。
いつも練習に付き合っていたサユリは、自分は残念な結果に終わったものの、ヒロミにエールを送る。
でも、一つ大きな問題をヒロミは抱えていた。
それは妊娠していること。
そのことをサユリにだけは伝える。無理をしたらダメだというサユリの言葉に、どうしても舞台に立ちたいのだと答えるヒロミ。
付き合っていたアイドルの方は事務所にその事実を伝えたらしい。
アイドルは謹慎処分となる。そして、このまま公になるようなことがあれば、舞台出演はもちろん、ユニットも解散だということになったらしい。
謹慎中のアイドルを置いて、他のメンバーがヒロミに直訴。
このまま、別れてくれ。情けないことを言っていることは分かっている。でも、俺たちはこれにかけている。これしかないんだ。
そんな言葉にヒロミは別れを了承する。
妊娠を隠して練習に励むヒロミ。
そんなダンススクールの下に一通の手紙が届く。
それはヒロミ妊娠を密告し、舞台から降ろさないならマスコミにもこの事実を伝えると言う内容。
先生は悩む。今さら、代役を立てることだって無理だ。
そんな中、サユリが手を挙げる。
私ならできます。ヒロミといつも一緒に練習していたから、セリフも動きも全て覚えていると。
先生は安堵の表情を浮かべ、サユリを主役に替えることを上にかけあうために飛び出て行った。
妊娠のことは誰にも話していない。サユリ以外の誰にも。
サユリは口を開く。自分だって懸命に頑張ってきた。甘い世界ではない。私だってこれしかない。自分の人生、これにかけてきたんだ。
その後、ヒロミは子供を産む。どんな時でも明るく。名前はメイ。
正直、妊娠を知った時に、自分のかけてきた舞台出演の邪魔になるようなことも思った。妊娠のために、好きだった人とも別れ、舞台の主役もダメになった。
でも、自分の中で育つ命をどんどんと尊く思う気持ちが膨れていった。
自分の素直な気持ち。自分を輝かす大切なこと。自分が人生をかけてしたいこと。
それはきっとこの子だ。メイだ。
自然とヒロミはメイに言葉を掛けていた。ありがとう。

手紙はそれからもずっと続いていた。
母子家庭だ。お金は苦しい。パートを掛け持ち。
家になかなか一緒にいてあげられないからか、静かでおとなしいメイ。
自分が大きい声で話せば、自然にメイも元気な子になるのではないか。ルカさんが自分にしてくれたように。今でも、世界を巡って、夢を追いかける素敵な姿を思い浮かべる。
トランプで遊んだ。自分は出来る。自分は勝てる。自分は頑張れば、何でも道を切り開けるんだ。そんな強い意志を持って、人生歩んで欲しい。プロになれたのかは知らないが、先輩の輝く笑顔を思い出す。
ダンススクールは辞めて欲しかった。とても辛いことを知っているから。誰が娘に辛い思いをわざわざさせたいものか。でも、その反面、メイが、自分の出来なかった舞台に立ってくれればどれほど嬉しいかを考える時もある。自分がしたかった想いをぶつける素敵な舞台。そこに立つメイ。いつも祈っている。
何も知らなかった。母がお母さんになるまでのことを。そして、母が私に向けていた本当の想いも。
メイは職員にもう一度、頭を下げて、手術の立ち合いをお願いする。舞台が終われば、必ずすぐに戻ります。

メイは舞台監督に連絡。これから戻ります。
そして、ラストの演出を丸ごと変えたいことを伝える。
自分の今の想いを、ある人にぶつけたいから。
舞台が始まる。
メイと支える仲間たちが創り上げた舞台。
そこにはきっと各々の人生の中で、自分にたくさんのことを教えてくれた人たちの想いが込められている。
力を込めて歌い、踊る。
病室では母の手術が始まる。職員が付き添っている。
姿は見えないが、ルカさん、先輩、サユリも、ヒロミに声を掛けているようだ。
楽屋のメイの携帯に留守電が入る。
ヒロミは舞台でラストの歌を迎える直前。
出られないことは分かっているけど、職員がどうしても待ち切れずに入れた留守電。
その内容は手術の成功、そして、メイの舞台の話をヒロミにした時に、まぶたがわずかに、でも確かに動いたことを伝えていた。
ラストの歌が始まる。
それは、メイが届ける、母、ヒロミへのありがとうの想い・・・

自分だけの想いしか見れない未熟な若い頃から、徐々に周囲の人の想いにも目を向けられるようになる。
そして、母になり、それらを全部受け止めてしまえるような強き人となる。
ヒロミの成長していく姿が描かれているように思います。
そして、それは、子供であるメイに伝わり繋がっていく。
子供だけでなく、周囲の人や、メイだったら教え子とかにも繋がり続けていくのでしょう。
最後の方で、小学生時代、中学生時代、ダンススクール時代のヒロミが、歌を繋げて、メイへと届けるようなシーンがありますが、一人の人生も、その時の出会いや経験から得た想いを繋げていき、それがさらに自分の子供へと繋がっていくようなことを想像させます。
成長するということは、どういうことなのかを考えさせているように思います。

上記リンクした作品と少し異なり、より厳しく感じたのは、もしかしたら、ここに父の愛がどこかへ消し去られてしまっているからのような気もします。
父子家庭を描いた上記リンク作品では、母はどこかに常に存在し、そこに安定した温かみを感じられていたような気がするのです。
この作品でも、もしかしたら、父はお別れの後も、どこかでメイへのもう届かない愛であっても発し続けていたのかもしれませんが、それがあまり見えません。
そのためか、とても厳しい現実の中で、それでも強く生きようとする、甘えの無いきつさをどうしても頭に浮かべてしまうように思います。
それだけに、私の中では、これは親子の絆の物語というよりかは、人が誇りを持って強く生きる中で成長することの素晴らしさを、これまで自分と関わってたくさんの想いを与えてくれた人への感謝と共に描き出そうとしている物語のように映ります。

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コメント

SAISEI様

今回は劇団ショウダウンの公演にZTON、暇ステを優先したのでこの公演時間では観るのがムリでした。気にはなっていただけに残念です。

ただ少し不審な点が。。日曜日の午前中が空いたり土曜日の中空きが空き過ぎていたのでなんか観れるものないかいな、とこりっちを検索するとアカルスタジオ主催のはずが明るすぎる劇団・東州主催に。。「は? 」と。深見東州氏は御存知ですか? 宗教法人ワールドメイトの主宰で現代の万能の巨人と新聞等で宣伝しています。

数年前に『ガラスの仮面』がいつになったら完結するのか調べたときにその一因に作者の美内すずえが宗教にハマっている、というのがあって今回これを見てこけにかな? と。。

新興宗教にそこまで偏見はないですが表には何も書いていないのにこりっちにはそうあるのは気持ち悪いですね。

アカルスタジオの「アカル」もアカルスタジオのホームページに名付けた理由が載ってますがワールドメイトの教義からなのでは? と勘ぐってしまいます。

ちょっとイヤだなあ。。

投稿: KAISEI | 2016年5月11日 (水) 01時03分

SAISEI様

前コメ訂正

「こけにかな」は「ここかな」ですね。

資金源になっていたらイヤです(笑)

投稿: KAISEI | 2016年5月11日 (水) 01時06分

>KAISEIさん

そう、主催がどうなっているのかよく分からなくて、いつもは劇団名を記す【】の中をどう書けばいいのかと。
色々とあるみたいですね。
バックアップをしてくれるしっかりしたところがあることはとてもありがたいことですが、歴史的にもプロパガンダに用いられたりすることも考えるとちょっと違和感はどうしても出ますね。

投稿: SAISEI | 2016年5月15日 (日) 19時35分

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