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2016年3月19日 (土)

CROCKERS【劇団ちゃうかちゃわん】160318

2016年03月18日 大阪大学 豊中キャンパス 学生会館2F 大集会室 (90分)

例年、ここの卒業公演は個性豊かな役者さんたちの集大成といったエンターテイメントを見せてくれるが、今年も同じく。
楽しく華やかな舞台を創る腕前は、数ある学生劇団だけでなく、普通の劇団も含めてトップクラスだろう。
昨年はちょっと不気味な不穏さを残す話の中でのエンターテイメントだったが、今年はまだ未知なる力を秘めていると信じる若者たちの頑張る力を温かく描いたような感じか。

卒業される方々は、ほぼ全員、顔と名前が一致している。恐らく、2012年に拝見したオムニバス公演の印象が強かったのだと思う。
何か、この時、癖が強い新入生が多いなあと思ったのを覚えている。
あの時、自分の頭の中に植えついたキャラと今回もあまり変わっていないかな。
相変わらず男前のままだなあ、ガツガツしているなあ、いかがわしさが漂うなあ、真面目さの中の飄々とした笑いがいいなあ、可愛かったけど随分と大人っぽくなったなあ、相変わらず破壊的な笑いで勝負されるなあ、何か悪さを隠し持つ空気を醸すなあ、ちょこちょこと可愛らしく笑顔で踊る姿がいいなあ・・・
と色々と、個性的な役者さんの晴れ姿を楽しく拝見。

作家を目指す山田。幼き頃からの夢だ。真面目に黙々と、奇天烈なことをして一時の名声を得るのでは無く、誠実に自分と向き合った作品を目指すみたいな、優しい空気を持つ人。
その夢をいつも応援してくれている幼馴染の幸子。山田と一緒に暮らしているみたいだが、ずっと一緒では疲れるだろうといったぐらいにパワフル全開な女性。ぐいぐいくる圧迫感があるけど、その反面、純粋に尽くすみたいな温かみも持ち合わせている感じ。
あなたが作る話が大好き。
山田は、幸子のそんな言葉に励まされながら、才能が無いのか、どこの出版社からも相手にされない不遇の時期をずっと過ごしている。
倒産が決まった出版社、集栄社。あの大企業と勘違いして就職した編集者の岡本は愕然としている。真面目で実直そうだが、どこか抜けた感じの人だ。神経質そうだけど、かなり適当だったりと、外観と言動が一致していないシュールな独特の雰囲気を醸している。
そんな出版社に山田からの原稿が届く。
それを読んだ岡本は、すぐさま山田の下に向かう。
素晴らしい。ハリウッドを目指せる。
幸子は岡本を怪しむ。正直、山田がこれまで書いた原稿を見た限りでは、そこまでの作品は無い。でも、山田はこれは自分が作家生命を懸けて書いた作品だからと。
今まではダメだった。でも、これからは違う。ダメ人間、負け犬達の下克上を見せてやろう。
岡本と山田は意気込む。

映画監督、遠藤。朴訥にしか振る舞えない不器用さを醸す。名声や地位に興味が無く、ただ、いい作品を撮りたいという表現者としての貪欲さを見せている。
そんなだから、現実社会では要領よく立ち振る舞えないのだろう。かつてはその才能を見込まれ、作品が多くの人に認められていたが、色々と妬みを受けて、今は不遇の時を過ごしている。才能だけではやっていけない世界のようだ。
遠藤の一番のファンであり、今は助手を務めているミノル。真面目な遠藤のことを好きになるだけあって、彼女もまた素朴で真面目な感じ。しかし、その内は、遠藤ほどいい人では無いようで、不条理な世間を許さず、抗うという芯が感じられ、その目は虎視眈々と何かを狙っている。
予算も乏しく、思った映画が撮影できず、なかなか復帰のチャンスを得られないことにやきもきしている。

ハリウッドの映画監督であり、ミュージシャンでもあるスピルバード。いかがわしい雰囲気を醸し、弾けるテンションの高さで大衆たちを魅了する。まさにエンターテイナーとして生まれてきたような人。
そんなスピルバードが、次回作の脚本を募集。
遠藤とは同期。
彼の落ちぶれた姿を気にして、その選ばれた脚本の撮影は、遠藤に任せようという考えがあるみたいだ。
同じく、ハリウッドの映画監督、マドンナ。そのナイスバディ、美しい容姿、なまめかしい声を活かして、金と色気で今の地位を得たB級監督。監督としての才能は無いのに、持って生まれた美貌と同じだけの魅力を映画界でも発揮しないと気が済まないようなわがまま女。
遠藤を闇に葬ったのも、このマドンナが絡んでいたらしい。自分より優秀でチヤホヤされる姿が許されなかったのだろう。そんなマドンナの下にミノルがやって来る。いい話があると、原稿を手にしている。

山田の作品は、スピルバードに目を付けられ、採用される。
実際に撮影を頼む、遠藤監督に皆で会いに行くことに。山田の未来はこれにかかっている。岡本も同じだ。幸子はスピルバードに代わって撮影する遠藤という男をきちんと見極めるつもりだ。
しかし、遠藤がいない。部屋に残された動画。それには、マドンナにさらわれて、彼女の作品を撮影すると約束させられている遠藤の姿が映っていた。
スピルバードたちは、直ちにハリウッドに向かう。
スピルバードは、マドンナに遠藤を返すように要求するが、驚くことに遠藤がそれを拒否する。お互い、映画監督なら勝負をしようと。
スピルバードはその言葉に受けて立ち、2ヶ月後に上演が行われる。
作品は山田が書いた同じファックマン。
売れない作家の下に正義の味方がやって来るという話。

遠藤が監督した作品は酷いものだった。
責任はマドンナにまで及び、彼女を非難する者と、支持する者との間で暴動が勃発する。
マドンナはこんな状況に自分を陥れた遠藤を許さない。遠藤の実力であんな酷い作品になるわけが無い。かつて、遠藤を映画界から追いやったことへの復讐だったと思っている。
マドンナは銃を遠藤に突きつける。
そこにスピルバードが現れ、銃をマドンナに。
さらにミノルがやって来る。遠藤の助手だ。当然、銃はマドンナに向けられると思いきや、その銃口はスピルバードを向いている。あの追いやられた時に、自分の地位の安泰のために、何の助け船も出さなかったスピルバードへの恨みのようだ。
確かにスピルバードは、あの時このまま遠藤がいなくなってくれれば、自分はトップでずっといられるという考えが頭にかすんだ。
でも、遠藤は、それは違うと言う。あの時、自分の実力はまだ未熟で、それを自分で認めたから、追いやられることを受け入れたのだと。
にらみ合いが続く中、各々が発砲。ミノル以外、皆、倒れる。
ミノルは遠藤への想いを告げて、自らも命を経とうとする。
しかし、遠藤は力を振り絞って立ち上がり、ミノルに語る。人生はノーカット。まだまだ、これから、意地を見せて頑張る。落ちぶれてもまた這い上がれる。

その頃、山田は自らの脚本が招いたこの事態に怯えて、逃げていた。
そんな山田の下に岡本が向かう。幸子は一緒に向かわなかった。自分は彼を甘やかしてしまうから。山田に立ち向かって欲しい。そのために、共に仕事をする仲間、岡本に自分の想いは全て託した。
スピルバードもマドンナも遠藤もいない。
今、この暴動を止められるのは作家の山田しかいない。
今こそ、ヒーローになれ。
最初からそう言い合っていた。これは負け犬達の下剋上なのだから。
山田は暴動を起こす大衆の下へ向かい、彼の想いを言葉にして伝える。

色々とあったが、暴動は収まり、皆にもいつもの日常が始まる。
銃弾は命までを奪うことは無かったみたいだ。
スピルバードは、いつものごとく、ハイテンションで華やかに踊り、次回作へ向けて動き出す。
マドンナは、今度は女優として、世界一を目指すつもりだ。立場は変わるものの、同じ映画界で監督と女優として、これからもスピルバードとは良きライバル関係を続けるつもり。
遠藤は、焦ることなく、じっくりとこれからもいい作品を撮っていくつもり。
ミノルは、遠藤の助手をしながらも、自らの監督作品を輩出し始める。評判はなかなかいいようだ。
岡本は一流編集者の道を目指して再出発。いつの日か、山田の作品をまた担当すると言い残し、旅立つ。
山田は、また筆を執る。そばには幸子がいる。
ファックマン。あれは幸子が書いたものだ。山田は最後までそれに気付きながら、何も言わなかった。
最初は悔しいと思った。でも、そのうちにどうでもよくなったようだ。多くの人が、ファックマンを見て笑っていた。その笑顔を自分はずっと見たかったのだと気付く。自分もそんないい作品を残せるように頑張ればいいと。
自分にはきっと才能が無い。でも、ずっと書き続けてきた。それは、そんな作品を読んで笑ってくれる人がいたから。
だから、これからも書き続ける。頑張る。山田の目に笑顔の幸子が映っている。

才能は無いけど、そこから生み出された作品に想いを寄せてくれる人のために真摯に生きる者。
才能はあるけど、その才能を武器にはせず、自分の中の大切なことを信じて生きる者。
才能は未知だけど、それを信じてこれから開かれる道へと歩む者。
才能はあるけど、それを器用に活かさず、自分らしさを見失わず、己の信じる道を突き進む者。
人の才能に従属し、自分の才能を磨くことを見失っていたことに気付いて、新たな道を歩み始めた者。
才能を活かして活躍していたが、それを確固たる自信を抱けるまでに自分を高めようと頑張り始める者。
自分の中に眠る新たな才能を活かして、自分で切り開いた道を進む者。
だいたい、主要登場人物たちの描かれる姿は、才能とそれに関わる生き方という点に絞ればこんな感じでしょうか。

才能なんてものは、上手くいっていればある、ダメな時には無いなんてことで済まされてしまうだけの、あるか無いかなんて考えて生きること自体がおかしいことなのかもしれません。
不遇な環境に陥ってしまうことは、人生で何度もあるでしょう。その時に、出来ることは、自分なりに頑張ることだけで、ダメであろうと、何だろうと、自分を信じて、その場を脱出して、どこかへ向かって歩き出すしかない。
言葉にすれば簡単だが、実際はけっこう厳しいことだと思う。動きが取れないから、不遇な状況になっているのであって、その状況で頑張ること自体が大変だ。
でも、この作品で描かれる人たちは、皆、何かしらの形で道を切り開いている。
それは、自分自身の頑張りもあるが、自分を信じて想ってくれる人が実はそばにいてくれたことに気付けたことも大きいように思う。
仲間、友達、恋人、家族、ライバル・・・、どんな関係であろうと、自分を見てくれていて、動き出して、また笑い合い、語り合い、罵り合い、いがみ合いながらも共に進むことを待ってくれている人がいるということが、大きな力となる。
ダメ人間、負け犬の下剋上は、いつだって上を向いて、戦える仲間がいることを知っている者だけが出来るように思う。

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コメント

SAISEI様

本日新入生歓迎公演『てのひらを太陽に』を観劇。関西大学と同じく大阪大学は複数劇団が存在しますがちゃうかちゃわんはオリジナル脚本なんですか? 若干粗い印象があります。

投稿: KAISEI | 2016年4月16日 (土) 15時02分

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