うめうめ。【837B】160327
2016年03月27日 インディペンデントシアター1st (70分)
ここは感想が毎回書きにくい。
ブログ書きには辛い劇団です。
面白いとしか書きようがないから。
冒頭からトップギアに入ってしまっているハイテンションの役者さん方。それも全員。そして、最後までずっと。
しかも、全キャラ、とんでもない個性の塊。
暴走する車に70分乗せられたような感じでしょうかね。
それで、疲れたとか思わさずに、何かほっこりとした感覚も残して、面白かったと言って、降りさせるのですから大したものです。
民宿旅館、こうめ。
ずっと切り盛りしていたサチコ婆ちゃんが亡くなった。
残されたのは、自分が夜中に電話をとるという仕事をしたから、お袋は死んだと言い張り、電話器をグルグル巻きにして、一切仕事をしないと言い張るおやじ。
そして、懸命なのだが、不器用で空回りしてまともに仕事が出来ない、バイトの絵里香。
これからどうするのかと言い合いになり、おやじは拗ねて押入れの中に。何か変な女性が押入れの中にいるが二人は気付かない。
そんな旅館になずなが久しぶりに戻って来る。
10年前にサチコ婆ちゃんと喧嘩をして、家族の縁を切ったおやじの娘。
うめ子という人からメールが届いたらしい。
絵里香が挨拶をしている中、ゴミの分別が出来ていないとエコにうるさい江古田さんが血相を変えてやってくる。ゴミの分別を叩き込むと、二人は奥の部屋に連れて行かれてしまう。
木元が野菜を届けに来る。おやじが押し入れから出てきて対応。さっきの女性はいなくなっている。
おやじは、木元に娘のなずなが帰ってきていることを伝え、どう接したらいいのかを相談する。木元は全てを受け止めよう、野菜のようにとよく分からないことを言う。無理だと2階に逃げ出すおやじを追う。
なずなと絵里香は、江古田から逃げる。外へ逃げたと見せかけて、押入れの中へ。
追ってきた江古田。2階から降りてきた木元。二人は、なずなを探すということで一致し、外へ探しに。
押し入れから出て来た二人。
家族の縁を切ったというなずなに絵里香は興味を抱く。自分も縁を切りたい人がいる。
そこにやって来た、けったいな男。絵里香は臨戦態勢に入る。
兄の菊太郎。不器用な絵里香がここで働くのは無理。サチコさんがいたから、何とかなったものの、もい帰って来いと。
そんなことはない。料理も出来るようになったという絵里香に、菊太郎はだったらシチューを作れと煽る。ちょうど野菜がある。二人は台所へ。
残されたなずな。
もう帰ろうと、押し入れに隠した鞄と靴を取り出そうとすると、おかしな女性と出会う。
よく見ると靴には梅干しが詰められている。心の隙間から、本当の隙間まで、隙間と言えば、梅干しを詰め込む、妖怪、梅ババアだ。本人は、うめ子と名乗っているが、幼き頃にサチコ婆ちゃんから聞いている。なずなは逃げ出そうとするが、妖力のためか、何度出て行っても、戻ってきてしまう。
あなたの居場所はここ。ここから出て行くことは出来ないのだと。
そんな中、同級生の椿がやって来る。梅ババアの話をするが、いつの間にか消えていて、要領を得ない。
やがて、木元が戻って来る。
なずなを見て、お父さんと一緒に会って欲しいと言う。
実は木元に想いを寄せている椿。二人が結婚すると勘違いして、大暴れ。
学生の頃からずっと好きになった男をなずなに盗られていたのだとか。話を聞けば、重過ぎる椿の愛の告白に耐えられない男がなずなに相談していただけらしいが。
三人はもみくちゃになりながら、2階へ。驚いたおやじは階下に降りてくる。
梅ババアがうろついているのだが、おやじには梅ババアの姿が見えていないようだ。
でも、話は聞いたみたいで、なずなとのことを相談し始めて、何か勝手に自分勝手な結論をつけて、押し入れにまた引きこもる。
絵里香と菊太郎。
絵里香の不器用は何一つ治っていない。シチューを作るとかの前に、包丁で指を切りまくっている。
もう、諦めろと菊太郎が厳しく言う中、江古田が戻って来る。
あまりの恐ろしさに震えが止まらない絵里香。
しかし、江古田は頑張る絵里香の肩を持ち始める。そして、もう一度シチュー作りへと台所に戻る。
降りてきた木元、なずなと椿。
誤解は解けたようだ。でも、どうして出て行ったのか、どうして戻って来たのかをきちんと言ってくれないからこんなことになったとなずなは椿に責められる。
それは言えない。なずなは出て行こうとする。梅干しが詰まった靴は履けないから、なずなの靴をパクって。
でも、妖力は解けておらず、やはり戻ってしまう。
梅ババアがいつの間にか現れている。
絵里香のシチュー完成。酷い出来。言うなら、ドブ水のようなもの。
それを見て、木元は激怒。あの大切に可愛いがっていた我が子のような野菜たちの無残な姿。
やはり、無理だったんだ。一緒に帰ろうと絵里香を促す菊太郎。
そんな中、椿が木元への愛の証だとシチューを食べようとする。
それを見た江古田は、絵里香を煽ったのは自分だと、自分が食べると言い出す。
それなら、そもそもこんな勝負を仕掛けた自分がと菊太郎が。
それなら、やはり作った本人の私がと絵里香。
どこかのお笑い芸人のように。こうなったら、いやいや、自分がと誰かが手を挙げて、食べることになることは流れとしてどうしようもないことだ。
本来のツッコミ気質もあったのか、梅ババアに促され、なずなが手を挙げようとした時、おやじが手を挙げる。そして、食べる。
まずい。でも、これはシチューだ。
認められた。木元も今回は絵里香の真剣な気持ちを汲んで、シチューと認める。
ということは、この勝負、絵里香の勝ち。ここでまだ働くことに。
でも、菊太郎はやはりダメだと言う。どうやっても、このおやじと絵里香で旅館が続けられるはずがないから。
なずなは梅ババアに促される。自分が跡を継ぐと言えば、万事、うまく収まると。
ここが居場所なんだから。ここから出て行くことなんか出来ないんだと。
葛藤するなずな。でも、自分はあんなおやじを父とは認められない。居場所が無くなったから、ここに戻って来た。でも、まだ諦めていない。まだ頑張るつもりだ。
いつの間にかおやじにも梅ババアが見えるようになったみたい。
なずなの言葉を聞いて、おやじは梅ババアになずなをここから出て行かせてやってくれと願い出る。
自分も頑張る。だから、安心して、なずなにはなずなの道を進んで欲しい。大切な、今となってはたった一人の家族だから。
梅ババアは、自分の役割は、違う形になったが果たせたと消えてしまった。
おやじは頑張ると張り切って、よく分からないアイディアを出している。そのアイディアにこれまた噛み合わないおかしな対応を絵里香がしようとしている。
本当に大丈夫だろうか、こんな二人で。いや、けっこう、巧く噛み合って、上手いこといくかも。
と、安心して、なずなは出発しようとした時、腹痛を訴えるおやじ。
やっぱり、あのシチューが。
おやじが倒れたら戻れないじゃん。なずなの心配したとおりに、倒れてもがくおやじ・・・
舞台となる部屋を中心に、押入れ、2階、台所、奥の部屋、外と繋ぎ合わせて、登場人物のスレ違いを引き起こしながら、巧妙に話を展開していく。
コメディーの王道ですね。
そう思うと、あの凝った舞台セットも全部、計算されているんでしょう。
やっぱり、コメディーはワイワイ、ドタバタしていれば楽しいわけではなく、こんな巧みな技の中に、楽しい強烈なキャラが存在し、ぶつかり合うから面白いとか笑いが生まれるんだよなあと改めて実感するような、見事な作品でした。
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