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2016年3月20日 (日)

ニドメマシテ【らぞくま】160319

2016年03月19日 船場サザンシアター (60分)

死んでしまった若い女性の未練をたどり、最後に自分の人生の肯定、本当の自分の魅力を知って旅立つまでの話。
よくありがちな話であり、全体的にコミカル色を強めているが、観終えて振り返ると、ずいぶんと観る側の感情を巧妙に制御していることに気付く。
なんてこの女性は可哀想なんだろうとその切ない姿に胸をキュンと締め付けられたかと思えば、実はけっこうあざとく黒さを醸すたくましさがあり、そのときめきは薄れる。
酷いな、この女なんて思って憎々しく観ていたら、実はそこに潜む弱さやずっと抱え続ける葛藤や苦悩が見えてきて、ずっとつらい気持ちを隠して頑張ってきたんだねと励ましの言葉をかけてあげたくなるくらいの同情感を得ている。
心が透き通っている人なんだなあと思ったらただの天然だったり、その美しさや綺麗さは本当の荒々しい自分を隠した偽りの姿であったり、怪しげな人だなと思ったら、それは本当にそのまま怪しいゲス男だったりと。

ある登場人物に深く入り込もうとすると、違う視点での観方でその人を見詰めるような展開に持っていかれ、また違ったその人の姿が浮き上がる仕組みか。
こんな風にきっと人は人を観る時に、ある一つの視点で勝手に決め込んでしまうことは多いのかもしれない。それは他人だけでなく、自分自身ですらそうみたいだ。
見てあげられなかった自分、隠し持つことになってしまった自分。生きることはなかなかに大変で、偽りの仮面をかぶり、いつしかそれが本物みたいになってしまうこともあるだろう。死ぬ時の未練なんてものは、そんな奥に潜んだ本当の自分と対峙しておきたかったみたいなところになるのかな。
色々と感情を揺さぶられながら、笑いと切なさの絶妙なバランスに翻弄されて、生と死を見詰めた巧妙な作品だったように思います。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は月曜日まで>

シオリ、27歳OL。
思ったことを人に言えないおとなしい性格。
そんな性格だからか、高校時代もサッカー部の人気者、ハルトに想いを寄せるものの、結局、告白には至らず。友達だったユカリみたいに、美人だったらきっと劣等感を抱くことなく、もっと思い切った行動が出来ただろうに。
それでも、ほどほどに恋をして、結婚して、子供を産んで、お婆ちゃんになって死んで。まあ、70歳ぐらいだろうか。そして、死んだら、この世からシオリという存在は何もかも消えて無くなる。誰かの心に残るだけ。そう思っていた。
でも、どうやら違うらしい。
記憶が定かでは無いが、私は死んだ。酔っ払って帰る途中、電柱がクソむかつく上司に見えて、頭突きを食らわして、脳みそがぐちゃぐちゃになって、そのまま終わりを迎えたらしい。
今こうして商店街の雑踏の中、たたずんでいる。自分の姿は見えておらず、声も聞こえていないらしい。一体これからどうなるのだろう。どうして迎えに来てくれないのだろう。この世に未練なんか無いはずなのに。
その時、神の声が聞こえ、高いテンション、デリカシーの無い物言いの神様が現れる。未練が無いなんて嘘だ。
思えば、恋をすることもなく、日々、嫌な上司の下で仕事。休みといえばジャニーズの追っかけか、同人誌を買って二次元の世界へ。
そうだ、私はイケメンと月9のような恋がしたい。

神様は、そんなシオリの願いを叶えるために、有能な天使を呼ぶ。
確かに礼儀正しく優秀そうな綺麗な天使だ。
神様の天使への指令は、シオリがイケメンと一夜を過ごし、モーニングコーヒーを飲むこと。
しかし、シオリの死んでからのことを調べたら、もう6日も経っている。どうやら後1日しか時間が無いらしい。それも、今日の夕暮れまで。
とにかく、それまでの間に、イケメンを捕まえて、即SEXして脱処女を。
肉体はもう滅んでいるので、代わりの肉体を用意。顔は有村架純風に。声だけはシオリのまま。
シオリと天使はイケメン探しに出かける。
さっきまで随分と丁寧だった天使だが、シオリがフランクにいこうと言った途端にギャル化してしまったが、仕事はきちんとこなしてくれるみたい。
イケメンらしき人は何人か見つかるが、これが最後だからかシオリはなかなか手厳しい。
そんな中、シオリがスタバで一人でいる男に決める。
シオリが接触を図るが、慣れていないから、不自然極まりない。でも、その男は、そんなシオリに優しく対応してくれている。
天使は特殊な道具を使って、その男の心を読む。悪いイケメンに捕まって捨てられたらたまったものでは無いから。でも、その男は心もイケメンだった。
しばらく、噛み合わない会話が続き、シオリもくじけそうになりながら、天使が何とかなだめたりして時間を過ごす。
しばらくして、男にLINEが入る。彼女から。ここに呼んでもいいかと聞いてくる男。心もイケメンと言うかは天然なのかも。
ショックを受けるシオリだが、そんなことをしているうちに彼女がやって来た。美人。でも、天使の特殊な道具で調べたらかなりの腹黒女みたいだ。
彼女は明らかにシオリを敵対視して、帰らせようと嫌味をぶつけてくる。
こんな人に叶うわけがない。もう、帰る。

でも、それは許されない。
死神が現れる。天使に想いを寄せている単なるストーカーのようだが。
死神曰く、想いを遂げて成仏できなければ、シオリは悪霊化して、未来永劫、地獄を彷徨うことになると。
日が暮れかかっている。
シオリは、彼女に張り合ってみたり、男とじっくりと話をしてみたりするが、どうにも煮え切らない。
天使は死神にも協力を願い、媚薬を使って強硬手段に出たりするが、結局、シオリは男をものにすることは出来なかった。出来なかったというかは、自ら拒否して諦めた。
それもそのはず。
だって、その男はハルトで、彼女はユカリだったのだから。
高校時代、シオリはハルトのことが好きだった。そのハルトから卒業式の日に呼ばれる。
でも、そこにはハルトに告白するユカリがいた。
それっきり、シオリはハルトともユカリとも疎遠になっている。
二人があれからどうなったのだろう。二人の幸せを願っているのか、不幸を願っているのかは自分でも分からない。
今、こうして話をしたら、ハルトはシオリのことが好きだったらしい。つまりは相思相愛だったわけだ。でも、ユカリもハルトのことが好きだった。ハルトがシオリのことを好きであり、告白するつもりでいることを知ったユカリが先回って告白したみたいだ。裏切り。それに対する負い目という劣等感を抱きながら彼女は生きている。そんなユカリをハルトは責めもしたが、今はそれを許し、本当に愛し合っている。
シオリの未練は、そんなイケメンと寝て脱処女などでは無い。本当はそれなりに、冴えない中年男ではあったが、恋もして女にもなっている。二人がどうしているのかの方がずっと気になっていたようだ。

と言っても、このままでは成仏は出来ない。
天使は、最後のチャンスにと、シオリを過去に送り込む。
高校時代。ハルトとユカリの真実を知り、少し前向きな姿勢になった今のシオリなら、きっと告白できる。
思いのたけをぶつけて、ハルトをしとめればいい。
でも、シオリはそこで、ハルトに告白せず、デートでの彼女との接し方の説教をする。未来のハルトの天然っぷりでは、彼女も困惑すると思ったのだろう。
そして、ユカリを連れて来て、ハルトのことが好きみたいだよと。
戻って来たシオリ。
天使はせっかくのチャンスをと怒っている。
でも、これでいいらしい。
二人にいいことをしてきただけみたいだが、実はちゃっかりちょっとした復讐もしてきている。プライドの高いユカリ。自分よりも格下だと思っている冴えないシオリの紹介でハルトと付き合うことになるのはけっこう屈辱的なはずだ。
もうちょっと悪霊化してしまっているのかも。
多分、地獄行きは決定だろう。
天使ともきっともう二度と会えない。シオリは天使とお別れをする。

神様がやって来る。
地獄に行くしかないねえ。でも、僕と一緒にいいことをしてくれれば。
神とは思えない言動。
神様の顔がシオリの顔に近づいた時、天使が怒鳴り声をあげて飛んでくる。
シオリに何をする気だ。
そう言い放った天使の目の前には、瞬殺され情けない姿で横たわる神様と平然としているシオリ。
言ったはず。冴えない中年男性を相手にしたりしたこともある。
この程度の男、軽くあしらえるだけの強さはあると。
シオリは天使のわずか数分ぶりの再会を果たす。
ニドメマシテの挨拶を笑顔で交わす二人。

シオリの優しさ、けなげさ、可愛らしさに危なく涙しそうになりましたね。自分だったら、こんないい子、絶対に幸せにずっと抱きしめてあげるのになんて思わされてしまい、危ないところだった。
シオリはそんなか弱くもなく、けっこう図太いたくましさがあります。
まあ、当たり前のことでしょう。そんな弱いだけで生きていけるわけありませんから。
性格だとか、人生の出来事の中で、封じ込めた自分。もちろん、今、表面にある自分は偽りではありませんが、奥にそんな違う自分も存在している。
生きてきたんだから、最後は自分の全てをきちんと知って、それを受け止めて、また転生を迎えよう。
そんな死ぬことへの自分のけじめみたいなことを感じさせられます。

神の手によって、天地創造が7日間で行われたなら、人の人生という壮大な世界も7日間かけて、一つの終わりを迎えることになるのかなあ。
自分の生きてきた世界、関わった人たちを見詰め、その中で最後に自分自身と対峙する。
コミカル色が強いとはいえ、単に楽しく笑ってお終いではなく、どこか寂しく切ない空気が感じられるのは、やはりそんな死という終末が基盤にあるからなのかもしれません。
かなり抜けた女性だったので、それを半日で詰め込んで行うみたいなことになり、そのドタバタがまたしんみりさを消して、楽しさを良い感じで膨らませているようでした。
単純な話ですが、人の複雑さや、それを背負って生きていき、死ぬまでその生を全うすることを考えさせられる話だったように思います。

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コメント

SAISEI様

なるほどなあ。そういう観方もあるのか。。どう評価すればいいかな、と迷ってました。あがぺるさんの脚本なんですね?(笑)

出だし、満月動物園死神シリーズっぽいところがあり笑ってしまいました(笑)

古川さんは今までにも何度か拝見。今日は何回か噛んだはった感じですが不思議なのは可愛いときとブチャイク(失礼w)なときの落差が激しい印象。演技力か?(笑)

杉森さんは『7月ハリケーン』で拝見してるみたい。カワイイ天使でした。美味しい役や(笑)

田代さん。好青年。声が優しげで(笑) ムーンビームマシン『ゲルダ』で拝見してますね。客出しの際も好青年でした(笑)

投稿: KAISEI | 2016年3月21日 (月) 00時57分

>KAISEIさん

設定や話としては、ありがちなところも多いので、飽きないように上手く惑わしながら観させる巧さがあるなあと思いました。
古川さんは、飄々とされているので、掴みどころがない面白さや可愛さといった感じですかね。未だ、印象が固定できないけど、注目している方です。
杉森さんは、次回、CheekyQueensにも出演されるみたいですね。体がキレそうな感じなので、うまくはまるかもしれませんね。
田代さん、私も物販の時に対応していただきましたが、本当に心もイケメンって感じの方でした。かっこよくて、アクションもきまってて、知的な優しさも醸されて・・・
私の中では、確実に減点対象です(-ε-)

投稿: SAISEI | 2016年3月22日 (火) 13時30分

SAISEI様

Toi powered by knives『遭難、』→劇団六風館『THE BEE 』と分かりやすい不条理系の現実社会の作品を観てきた日だったからかな? ファンタジー色強い作品好きなはずなんですけどね。。

観劇しながら思ってたのは場当たり感の強い作品やな、と。整合性がない作品と意識が感じたみたいです。

ただSAISEIさんの記事を読んで「なるほどなあ」とも。

Cheakyーqeensは行きますからね。情報ありがとうございます。取る役者さんはもう決めていますが(笑) 西部劇楽しみです。

知的かどうかまではわかりませんでしたが田代さんは好印象ですよ。

SAISEIさんは完璧なイケメンがオキライなんですねっ(笑)

私は男に基本嫉妬したことがなく(笑)

投稿: KAISEI | 2016年3月22日 (火) 16時54分

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