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2016年3月12日 (土)

Yesterday 「   」 Tomorrow【水彩suisai】160312

2016年03月12日 近畿大学 Eキャンパス D館3階ホール (30分)

苦手なコンテンポラリーダンス。
と同時に分からないなりに、想像して色々と感じることが出来るので、楽しみだったりもする。
作品名の「   」を埋める何かを感じてみたいなと思い、足を運んでみた。
答えは分からないというか、多分、言葉では無く、観た後の自分の気持ちみたいなものなのかな。

登場する3人。
その人たちには当然、昨日という過去がある。それは当然のごとく、様々なもの。
明日という未来もある。明日、何をするか、何が出来るかの答えは無い。どうなるか分からないものだから。
でも、きっと何かをしたいと今、思っている。
何も変わらずしたいことをそのまましたこと、したいと思っていたのに出来なかったこと、するはずも無かったのに降りかかってきた運命に翻弄されてしたこと。
そんな明日を受け入れるために、今の私たちがしないといけないこと。
繰り返される昨日から今を経た明日。その中で生み出されたたくさんの想いに寄り添いながら、今の自分を見詰める。
そんな分かち合うための想い合いから、明日の自分を見出そうと考える作品のように感じます。

<以下、何を書いているか、自分でもよく分からないので、ネタバレと言うのがおこがましい気がするので、白字にはしていません。ただ、ちょっと舞台演出等でのネタバレはあります。気になる方は、重々ご注意願います。公演は明日、日曜日まで>

感想と言っても、なかなか難しいので、拝見した30分の私の頭の中の変化を記しておきます。

舞台中央に白い布で覆われた何か。布には白いてるてる坊主が付けられている。
客席から向かって右後方に白い机と椅子。左側には格子がすだれみたいに飾られる。
前面に白い紙が数枚、直線上に並べられる。
舞台左上部に細長い通路。格子がすだれ状に。
白を纏った女が左上部で、白いてるてる坊主を一つ、舞台に投げ入れる。そして、白いてるてる坊主をくくりつけていく。
舞台には黒を纏った女と、上半身が白服で下半身が黒ズボンの男が、白い布で覆われた中央の何かの周りを回る。男は、鎖で繋がった黒いてるてる坊主を引きずる。
投げ入れられた白いてるてる坊主は、男は気付くけど無視して、黒い女が拾う。男は鎖に繋がる黒いてるてる坊主を見詰める。
この時点では、白い女はピュアで天使みたいな感じに捉えておく。単純に空間も上層だから天界のようなイメージ。投げ入れられる白いてるてる坊主は、下界に与えれた救いや祈りみたいなもの。
男は、心の奥底に闇を抱える者。脱却しつつあるものの、未だその闇はトラウマのように男につきまとう。男が今、しなくてはいけないことは白いてるてる坊主を手に入れることより、自分の中にまだいる黒いてるてる坊主を消すことみたい。
黒い女は、今、闇の中で苦しむ者。その闇は彼女を捉えて離さず、縛り付けられているかのよう。だから、救いを求める。それが白いてるてる坊主。

昨日、何をしたか。
白い女は日記を読み上げる。ごく普通の大学生の日常。色々と将来の不安とかはあったり、辛いことも時折、降りかかるのだろうが、まあ幸せな生活だろう。
男は床に座り込み、時折、もがきながらも這いずって動く。
黒い女は、椅子に座る。立ち上がっては、何かに突き飛ばされたかのように、椅子にまた座る。最後は椅子の上で怯えているかのよう。
上記した自分で想像した設定がいきなりおかしい感じになったので、一度リセット。
でも、白い女は喜び、楽しみの中にいる。それが普通だから、幸せを意識していない感じ。黒い女は辛い、悲しみの中にいるという感覚はそのままで良さそう。
男は、かつての黒い女の状態から、一歩踏み出そうともがいているような時期なのでは。
白い女が読み上げる日記が時間の経過、つまりは昨日から今を経て、明日への繋がりを感じさせる。
男ももがきながらも、這いずって左から右へ動く。少しずつだが、時が動いている感じ。
黒い女は立ち上がっては座る、座るしかないような状態の繰り返しで、時を進めない苦しみを感じさせる。

明日は何をしますか。
黒い女は左側の格子のすだれの向こう側。男は椅子に座り、やがて立ち上がって、激しくもだえるように動き出す。
白い女が、何か矢のようなものを舞台上に打ち込む素振りをする。
黒い女と男が出会う。
二人は寄り添い触れ合う。
男は鎖で繋がれていた黒いてるてる坊主を外して捨て去る。
黒い女はそれを拾い、抱きしめる。
明日のことを考える。
白い女は、閉じこもり、明日へとは向かえないような感じ。
男は、明日へと一歩踏み出すが、まだ今をじたばたするので精一杯。
白い女が打ち込む矢はきっかけみたいなものか。
これだけで、何か未来が開けたような感じになる。
これまでは、自分のことだけでいっぱいいっぱいだったのだが、人に寄り添えるようになったみたい。
受け止めた人からの想いにより男は解放され、黒い女は誰しもが持つ深い悲しみに想いを馳せて、自分自身を見詰めることが出来るようになったかのよう。

白い女が舞台上に降りて来る。
椅子に座り、机をドンドンと叩く。
机を引きずり、舞台の真ん中に倒して置く。
黒い女が捨てた黒いてるてる坊主を拾い上げ、自分の日記を倒した机の中に置く。
男は左上部に上がり、くくられていた白いてるてる坊主を舞台に投げ入れ続ける。
白い女は舞台前面の白い紙を拾い集めていく。
全ての白いてるてる坊主が投げ入れられたと同時に、舞台中央の白い布が落ちて、ピアノが現れる。
白い女は拾い集めた楽譜を手にしてピアノへと向かう。
白い女に何か辛さ、悲しみが襲い掛かったのか。
彼女のこれまでの平穏な日常を描く日記が葬られる。今までは目に入らなかったのだろうか。黒いてるてる坊主にも気付いたようだ。
解放された男が上層に上がる姿から、それで幸せを得たのかと思いきや、白いてるてる坊主を投げ入れる。放り投げる。投げつけるぐらいの感じ。
白いてるてる坊主はその色から幸せの象徴みたいに捉えていたのが間違っていたのか。
それとも、飾り付けられた虚像の幸せだと、投げ捨てられていったのだろうか。

白い女はピアノを奏でる。
黒い女は舞台上の白いてるてる坊主を全部、拾い集めて机の中へ。
そして、椅子に愛おしそうに寄り添う。
男はたくさんの白い紙を吹雪のように飛ばしていく。
白い女は楽譜を破り、楽譜無しで演奏する。
黒い女は飛び散った白い紙を手に集め、椅子と共に机へ向かう・・・
演奏曲が分からないという、知識の無さが残念。
聞いたことはあるのだが。曲名が分かれば、少しは想像を膨らませられただろうに。
と言うのも、白いてるてる坊主が、何か明日、生きられなかった命だとか、あした天気にしておくれといった叶わなかった祈りのような悲しみのように思えてきたから。
黒いてるてる坊主の方がもしかしたら、よほど分かりやすく、避けることが出来るものなのかもしれません。
それを慈しむような音楽だったのだろうか。

男はその悲しみを吹き飛ばす。こんなにたくさんの悲しみが世には溢れていて、その上に私たちは生きている。自分は悲しみを心から消し去ることが出来た。そのことを知っているからこそ、それに囚われる人たちの心からも吹き飛ばしてあげたい。そんな人を想える優しさを感じる。
白い女は、自分の平穏な時間から、人の悲しみに寄り添うことを忘れてしまっていた。昨日の平穏が、今、急に変わり、どこかへ行ってしまった。当たり前の明日を見失ってしまった。そんな不安を知るから、自分が見てこなかったたくさんの悲しみに慈しみを心から与えようとしているみたいに感じる。
黒い女は、白の中にも潜む悲しみを知る。自分の悲しみに囚われて、普通に過ごしている人の中には悲しみなど存在しないと思い込み、自分のことだけを考えていた。今なお、悲しみから解放されない自分が出来ること。自分と同じ黒に包まれる前に、その悲しみに気付いて、寄り添ってあげたいという想いが見える。

そんな少しずつ変化する3人が、昨日から変わった今の自分を見詰め、何が出来るのかを考え始める。それが、今を生きることに通じているのか。そして、自分を見詰め、そんな自分が様々な人にどう寄り添えるのかを考えた時に、明日の自分が見えてくるような感覚を得る。
色々な昨日がある。そして、そこから時間が流れて今がある。今は昨日から変わる。そのことを互いに、分かち合いながら今を生きることが出来れば、どうなるか分からない不安な明日を受け入れることが出来るように思う。
輝く未来を得るには、これまでのことだけではなく、そこから変わった今の自分をしっかりと見詰めることが大事なのかなと感じるような作品でした。

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