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2016年3月 6日 (日)

エンプティブルー【夜光殺陣】160304

2016年 03月04日 大阪大学豊中キャンパス 21世紀懐徳堂スタジオ (105分)

美しい舞台で定評のある夜光鯨と、殺陣部の合同企画公演。
照明、音響、映像、舞台美術・・・と何がどうなっているのかは、私には分かりませんが、とにかく美しい舞台になっていることは間違いないでしょう。
それも、ふわ~っと茫然となるような美しさではなく、どちらかというと何か奮い立たされて熱を帯びるような。

話は神話みたいな感じでしょうか。
神と言っても、人間以上に人間臭いその姿から、日本人の中にずっと根付く大切な精神が見えたような気がする作品でした。

<以下、ネタバレしますので、公演終了まで白字にします。公演は本日、日曜日まで>

葛城山。
役小角は、自らに宿る強大な法力を活かし、従順に尽くしてくれる鬼たちを従え、また、七福神を仲間にして、葛城山と隣の山に岩橋を造る計画を遂行しようとしている。
橋を造ることで、隣と繋がる。人の繋がりが生まれ、それは縁となる。その縁はこの国のために大きな力となるだろう。小角は、自分の考えは必ず世のため人のため、ひいてはこの国のためになると信じている。しかし、それは本当だろうか。他の者たちはそんな考えを否定し、自分のことを不要だとは思ってはいまいか。愛する弁財天は、いつも正しいことをしていると励ましてはくれるのだが。そんなことを考えながら、自分の悩みを神に祈る中、オトヒメという少女に出会い、自分の法力の源とも言える大切な数珠を渡す。オトヒメは、この地で神憑きと呼ばれている。自分の中で要らないものではないかという迷いが生じたから。その思いはやがて膨らみ、いつかは捨てられてしまうものだ。自分のこの先の不安を拭うように数珠をオトヒメに託す。

小角の計画は一向に進まない。
小角は、七福神の恵比寿を中心に、神々をこの地に連れてくることにする。
天照大神、月詠、須佐乃男と三貴神、さらには寿老人を、力で抑えつけて拐い、この地で強制的に力となってもらう。
最後は、この山の護り神、一言主。元はと言えば、この神が昼間、仕事をサボり、夜しか働かないからこんなことになっている。
一言主は、ある日、オトヒメを通じて、その美しい姉、エヒメに出会う。自分の醜い容姿のために自信を持てない一言主だったが、エヒメにツツジの花を渡し、その想いを深めていく。エヒメは、大陸からやって来ており、この地の者では無い。この地に馴染めず戻りたいという想い。同じく大陸からやって来た寿老人から、同じ空の青さを感じればよいと言われるが、今の卑屈になったエヒメにはその言葉は届かない。

小角に仕える七福神の中には、朝から晩まで働かされる環境に不満を抱く者も出てくる。それを諌めるように弁財天から指摘を受けるが、一向に自分の理想通りに事が進まない状況に小角は、自信を失い、イラつきと嫌気が露出し始める。
遂に、小角は、一言主の代わりに葛城山を治めるために、全権を自分に委任するように迫る。
それを安易に受け入れる一言主をエヒメはきつく責める。
山を護るという覚悟、祈り。叶わないから、無理だからで捨て去っていいものでは無い。信じて抱き続けることこそが祈りなのだから。
実は、自分の醜い姿を見られたくないから、昼間に仕事をしなかった一言主。エヒメの強い想いに感化され、エヒメの身を借りて、帝にこの山を護ることを直訴する決意をする。
一方、天照大神は、オトヒメの身体を借りて、小角に抗う機会を伺う。姉のために力となることが自分の大義である須佐乃男は、小角に反旗を翻す。
七福神の各々は、小角に逆らい下克上を企てる者、小角を信じて付いていくことを改めて誓う者と分裂する。また、恵比寿は、他の七福神たちと異なり、唯一、日本古来の神であることからか、中立を貫き、より良き日本の国へと導かれる道だけを正しいと信じ、自らの誇りに従って行動する。
鬼も小角に従順に従ってきたが、最後まで共にする者と、愛する者の考えに寄り添い、小角と分かつ覚悟を抱く者も。
かくして、葛城山の岩橋の是非を巡って、小角と神たちの戦いが繰り広げられる。

小角は捕らえられ、島に流される。
弁財天は、共に戦っていた鬼が降伏を願い出たために、命は救われ、この地を去る。
自分たちの考えが実った一言主たち。
オトヒメが付けている、小角の数珠の8個の玉を勝利の印にと分け合い、飲み込む。
一言主は、今後はこの葛城山を自分がしっかりと護ることを皆の前で誓い、その基盤が出来るまで、今しばらく力を貸して欲しいと皆に申し出て、神たちもそれを了承。
エヒメは、一連の戦いで、この地を、この国を愛せるようになった自分を見出す。この国のことをもっと知りたい。そのために旅に出る決意をする。一言主はその別れに悲しみを表すものの、エヒメのこれからを祈り、その間、オトヒメと共にし、戻って来たその時には、この山をツツジで満開にしようと考える。

しかし、小角たちの怨恨の念は、その数珠を飲み込んだ者たちを死へと導く。
そして、エヒメの魂をこの地に縛り付ける。
数珠を飲まなかった恵比寿は、一言主にエヒメは1000年の時の後、再び魂が蘇ることを伝え、この国のために自分の力を活かすべく、去って行く。
天照大神、須佐乃男と兄弟姉妹を失った月詠は悲しみの中、姿を消す。
一言主はエヒメをツツジの群れの中に埋め、幾度と繰り返される月の満ち欠け、昇り沈みを見ながら、エヒメを想い続ける。
1000年の時が流れ、月詠が一言主の下に現れ、そのことを伝える。
一言主は、エヒメを埋めた穴を掘り返すが、そこにエヒメの姿は無かった。長き時の流れはその魂すら風化させてしまったらしい。
空っぽになった穴。
その周りに咲き誇る真っ赤なツツジが悲しい月の青い光に照らされる。
過去にあった確かなエヒメへの想い。その永遠かのような時の流れの中、その想いは祈りとなって、この地に宿る。
その愛する想いは、過去から繋がり、例え姿が消えようとも、狂おしいまでの想いとなり、これからの未来への愛へと繋がる。

ちょうど1週間前に一言主が登場する怪異譚と称する作品を観ていて、その時、ちょっと調べた知識がほんの少しだけ役に立つ。
日本神話のようなものなのだろうが、観ていると、途中、登場人物を神にしなければ、これは今の普通の会社で仕事をするような人たちの姿に見えてくる。
一言主は、古来日本の朴訥な経営スタイルを重視する者。拒絶するわけではないのだろうが、あまり外部の侵入を好まない閉鎖的なところがある。自分は不細工だからなんて、謙虚過ぎるところがある日本人らしい考え方だ。この地を変える必要は無く、今あるここで純粋に楽しみを見出して進んでいけばいい。オトヒメの姿が、求める顧客像か。
ここに、改革を求める小角が現れる。単純に考えれば、市場を開放して、より多くの顧客を見出すような外資的な発想だが、小角の場合は、そこに人との繋がり、縁を大切にした上でという日本らしい考えがあり、そこに突かれる隙間を見せたような感じがする。
小角を無償で愛する弁財天、信じて仕える鬼たち。七福神はプロジェクトチームみたいなものか。それだけでは仕事が進まず、どちらかというと一言主の考えを支持するような実力者、三貴神を取り込もうとする。寿老人は引退しても力を及ぼす重鎮ってところだろう。
一言主は、エヒメと出会い、今のままではこの地、ここでは会社みたいなものかは良くならないことを感じる。戦いが繰り広げられる外の地。この地をそんな戦いから護り、エヒメが愛するような地にしてあげたい。一言主に神、リーダーとしての覚悟を抱かせる存在だったようだ。
結局は、一言主の主張する考えが、社長、帝に認められることとなるようだが、そこには多くの傷跡を残す。
彼女の笑顔を見たい、この地を新しいこれからを生きる地として受け入れ、そこを愛して幸せな時を過ごして欲しい。そんなエヒメへの想いは、一言主が、エヒメではなく、この地をまとめあげなくてはいけない者として、封印しなければいけないものだったのか。
そして、そうして創り上げた新しい良き地、恐らくは満開になったツツジの花が見えるようになった時は、その想いだけが残り、それを与え受け取ってもらうエヒメは存在しない。
上記した怪異譚においても、最後は真っ赤な紅葉が月明かりに照らされるような形で終わります。ツツジの赤と、空の青、月の青い光。
生死の象徴でしょうか。
何かを創り上げる時、それは壊すことが最初にあるように、生の象徴である赤い花は、そんな青から生み出されたものだって感じかな。
今ある生きるは、多くの死ぬから生み出されている。その死ぬの中に、形として無くなってもたくさんの想いが残され、これまでの時間ずっと繋がり続けているなら、それは空の澄み切った青、注ぎ込まれる月光の青となって、いつの時も、私たちの生を照らしてくれているようにも感じます。

舞台はとても美しい光で彩られている。
ちょっと七福神はコミカル風にしているところや、すいぶんと荒々しかったり、ちょっときつかったりする女神もいますが、神たちも神々しさを醸すしっかりとした確かに神の姿です。人間であるヒメたちの姿も御伽噺に登場するかのような、愛らしく、そして美しい姿。
神話の美しい世界の中で、こんな現代の感覚を呼び起こしてしまうのは、おかしいことだなあと思いながら観ていましたが、最後の方になって、神話の中には日本人の精神が刻み込まれており、それが実は今の時代までずっと語り継がれて、繋がり続けているのではないかという考えに至りました。
時間の流れが、そのまま人の繋がりに結びついているような感じでしょうか。
神と言っても、ここでは神が神に祈り、自分のしていることに不安をいつも抱き、時には自己嫌悪に陥り、相手を妬み、想いを寄せる者のために力を振るおうと必死に頑張る。
そんな神たちの姿が、今の自分とさして変わらず、たくさん重なるところがあるように感じられます。
その中で、神たちが、より豊かな時間を生きようと、どんな過ちを犯し、どんなことを成し遂げ、どんな想いを残そうとしたのか。
そんな神たちの過去に目を向けて、それを愛する想いは、私たちが先行き不安なこの日本において、これからの未来を繋げて愛する力となるような気がします。

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コメント

SAISEI様

昨日はどうも(笑)あれからindependent theater1 stに居着いて計3本観ました(笑)

『エンプティブルー』観てきたのですが感想はさておき、昨日話してるときSAISEIさんの顔を見てたら、ん? という感じだったので昨日からずっと考えていて今朝一言主とスクナビコナを取り違えたことに気がつきました。

一言主も雄略天皇の話の神だと思いだし調べたらやっぱりそうでした。歳をとるとダメですね。

役の小角は『宇宙の皇子』で名前を知っていましたが1巻で断念したので詳しく知らず今回のは『日本霊異記』のを参考にしたようですかね。まあwikipediaの可能性も高いですが(笑)

投稿: KAISEI | 2016年3月 6日 (日) 21時59分

>KAISEIさん

いや、ん!となったのは、取り違えだったみたいですが、韓国から来たという、まだ観ていないのに劇中の大陸から来た神や姫という点に言及されていたから。
日本人のルーツを感じさせるようなこの作品。
外からやって来るという感覚は、教科書で学んだレベルでの歴史の知識でも十分たどり着けそうですが、私には全く思い浮かばなかったので。
もう少し、歴史に触れた本とかを読んでおかないとなと感じた次第。
まあ、私は拡大解釈が大き過ぎて原著とかけ離れていたとしても、こうして観劇することで知識を深めていくつもりですがね(゚ー゚;

作・演の方は、たしか、まだ新入生ぐらいの時から、夏目漱石のこころとかを不可思議で美しい空間で演劇作品として創り上げる方だから、たぶん、いっぱい幅広い勉強されているんじゃないでしょうかね。
舞台にはご出演されないので、未だ、どの方か分からないのですが。

投稿: SAISEI | 2016年3月 7日 (月) 07時42分

SAISEI様

お身体大丈夫ですか? 近々『日本霊異記』を見てみます(笑)

Wikipediaの役の小角の伝説のところが結構今回の話とそっくりでして。ただ天照・月読・スサノオをも使役したのかなあ、と。あとは七福神の使い方ですよね。その辺が気になりました。

ちなみに大陸からの神(仏教)と土着の神がというお話は黄金週間明けの土日に劇団ZTON新人公演『王の血脈』が初演と変わってなければそういった作品です。河瀬さん脚本書き換えるからな~(笑)どうなるかわかりませんが(笑)『王の血脈』の最初の構想からの変遷はあらかた聞いてるから(笑)新人公演ということと人間座なので初演の京都文化芸術会館のqualityには及ぶべくもないと思いますが私の小劇場観劇のきっかけになった作品なので。

投稿: KAISEI | 2016年3月 7日 (月) 14時25分

SAISEI様

確かに綺麗な舞台美術でした。夜光鯨さんはいつもそうみたいですね。

出だし、やはり一言主役の長台詞が入ってこない。これは私の方に問題があるのかなあ。最初の方の三貴神も三鬼神と一瞬頭の中で変換してたりして(笑)一言主役の前説から目が不安げでイマイチ自信が無さそうなのは演技なのか素なのかどっちやろう?とか考えてましたね。演技だったみたいで。後になればなるほど味のある演技だったように思えます。表情がとても良かったと感じました。最後の爆発するシーンも。

エヒメ役の方は声がとても綺麗でクリアな発音。私、声フェチなのかなあ(笑)いやいい声でした。

オトヒメ役の方も少し足りない役を好演。発音もリズムカルな感じで好きでした。惜しむらくは後半後に回ったときに声が音楽に負けていたこと。

ビシャ・ホテイらの3人の掛け合いも好きだったし。

天照役の方はお綺麗でした(*^.^*)月読の役の方も落ち着いた演技で。スサノオも破天荒さが出てて。

役の小角の役の方は風格ありました。何かの役に合いそうなんだけど何かなあ?

殺陣は良かったですね。後半スレスレのもありましたし。少しズレた所もありましたが許容範囲内(笑)

投稿: KAISEI | 2016年3月 8日 (火) 01時32分

>KAISEIさん

うむ。要は王の血脈を観に伺えば、この作品から得た知識を活かせるというわけですな。
また、チェックしておきます。

一言主の役者さんは、私はあんな感じの想いを奥に秘めた朴訥風の方が好きですね。また、六風館の公演でお会い出来ればと思っています。
エヒメの方は、声もお姿も綺麗でしょ。昨年の10大女優さんに入れた方ですので。ちょっと芯の通った我の強さを感じさせるような空気がいいなと思っています。
小角の方は、以前に作・演された作品の影響か、アングラっぽさを滲ませる魅力的な方です。確か、近々に熱海殺人事件をされるんじゃなかったでしたっけ。

投稿: SAISEI | 2016年3月 8日 (火) 18時10分

SAISEI様

劇団ZTONのブログに主宰の新人公演についての記事がありました(笑)それによると,

今回は、半分リメイクです。
というか、「王の血脈」の第4稿です。

「王の血脈」っつー作品は大変な難産で、
かなりの分量の書き直しをしました。完成原稿だけで7稿あります。

第1稿は全くの別物。
おもいっきり"進撃の巨人"をしてますね。
当時は進撃の巨人ブームでしたから。

第4稿から現在の形になってます。
アキラちゃんを守るお話。

第7稿で上演した作品。
反乱軍の話とかこっから出てきます。

とのことです(笑)

あまり書くとネタバレになるので書けないのですが,この前もお話ししたように闇の中での光る刀での殺陣が見ものだったり,「王の血脈」という題が最後の方にわかるように作られているという私の好きなタイプの作品でして(笑)

上は私も初耳(笑)結構上演原稿まで何回か重ねる,というのは聞いてましたが。

私が聞いていたのは,それまで為房さんか土肥さんかが主役だったのを変えてもともとは門石さんが主演になるはずだったらしく。。普段では出演されている蜜さんやレストランさんが客演などの事情により出演されなかったという話ともともとは平将門の話をしたかったらしいんですね。それがだいぶ変わった,とのこと。ま,続きは観劇されたらまた(笑)

投稿: | 2016年3月22日 (火) 13時45分

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