THE GOOD MAN -RETURNS-【演劇ユニットはなうたロック】160321
2016年03月21日 インディペンデントシアター1st (105分)
3年前に拝見した作品の続編。
(http://ksaisei.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/the-good-man121.html)
まあ、嫌いじゃないな。
と素直に好きと書くことにためらいが出てしまうような、おふざけ感たっぷりの作品ですが、とても楽しい時間でした。
もう、キャラ自体がかなりふざけた設定ですからね。それが小ネタ、下ネタを挟み込みながら、ドタバタを繰り広げる。しかも、定番の正義と悪の対決。
気恥ずかしくなるような王道コメディーの姿が堂々と浮き上がります。
それにしても、やはり何事も真剣に懸命に、かつ丁寧に真摯にするということは大事なようで、そんな想いが込められたこの作品は、引くことが許されないくらいに惹き込まれてしまう舞台だったように思います。
突き抜けた熱演、キレのある張った声、随所に見られるこだわりの細かな工夫、綺麗なシーン転換による滑らかな話の流れ。
楽しいだけでなく、舞台の魅せ方の技光る一品だったと感じます。
兄たちが正義のヒーローとして、散っていったあの日からもう20年。
三男の正義は、警察官になったものの、それも5年前に辞めて、今は兄たちの跡を継いで、正義のヒーロー、グッドマンを名乗り、ヒーロー業をしている。と言っても、力がある訳でもなく、仕事はうまくいかず、要は無職といった状況。
学校の先生をしていることもあるのか、こんな大人になれない情けないアラサー男、正義のことを好きになってくれた歩美に生活費は全て頼るというヒモ生活。
今日も、悪い奴らに襲われている女性を見つけて、颯爽と登場したはいいが、数が多過ぎて、結局ボコボコにされ、悪い奴らからお金を巻き上げることは出来なかった。
肩を落として帰路につく中、同級生の貴士に出会う。貴士は、ナイスバディな微妙な美女、信子を連れている。グラビアアイドルらしい。結婚してマイホームも。二人はターくん、ノンたんと呼び合う熱々の関係。特に貴士の惚れ込み方には、気味悪いくらいだ。また、いつでも遊びに来いと言われて別れる。
家に戻ると歩美が出迎えてくれる。怖い顔をして。今日も仕事が決まらなかったのかと。堪忍袋の緒が切れたのか、家から叩き出される。
お腹が空いた正義は、厚かましくも本当に貴士の家へ。信子には嫌な顔をされるが、貴士と少しお話。同級生の二階堂。ヒョロヒョロした大した奴じゃなかったが今や凄い人になったのだとか。
テレビをつけると、二階堂が映る。NIKKOと名乗るオカマキャラ。タレント業だけでは無い。
ビジネスも成功し、今やNIKKOタワービルを建設するほどに。次は政治家になるという噂もあるようだ。
貴士と信子がどうやらいいことをするみたいなので、正義はやむなく外へ。
女性がまた襲われている。助けなくては。でも、グッドマンスーツを着ていない。スーツを着ても強くなる訳ではないが、これでは、単なる弱いおっさんでしかない。
どうするか悩んでいると、バニー姿の輝くオカマが現れる。ビューティーバニー。悪い奴らをあっという間に追い払う。
ビューティーバニーの正体は二階堂。自分の売名、会社の宣伝を兼ねて、ヒーロー業をしているらしい。
本当に立派になったものだ。どうして自分だけこんなに不甲斐ないのか。
街中をトボトボ歩いていたら、呼び込みに掴まる。綺麗なお姉ちゃんたちと調子にのって飲んでしまいボッタクリに。
もちろん金は無い。女組長が現れ、体で清算となるところ、その女性が兄たちの知り合いだった。体は許してもらったが、金は払わないといけないようだ。
正義は呼び込みの仕事をすることに。
ヒーロー業が上手くいかない、稼げないという悩みを女組長に打ち明ける。
その考えではダメなんじゃないのか。兄たちは金を稼ごうとヒーロー業をしていたか。大切なあなたを守るためだったんじゃないのか。
そんな女組長の言葉に、正義は自分が守るべき者のことを考える。
一方、その頃、宇宙のどこかでは、宇宙海賊の首領ゴディバが、悪いことを考えていた。自分に酔っているかのような、豪快な悪っぷりをデカい声とオーバーな動きで露わにしている。
今ひとつ色気に乏しいのだが、何から何までやたらエロにしてしまう優秀な研究者、Dr.ワコールが開発したセクシースーツ。これを着る者はとんでもない力を持つことができるらしい。これで、どこかの星を侵略するつもりだ。ただし、かなりのナイスバディーの持ち主で無いと着ることは出来ない。
クソ真面目な剣士、宮本武蔵之介、テンション高くすぐに前に出ようとするボブ・ディラン子、すぐに調子にのってしまう亀田ロッキーたちを連れて、そのナイスバディー女を探しに行くことに。
宇宙船は100階建てのNIKKOタワービルの上層に停船。ビルを通じて、皆は地上に降り立つ。
そして、お目当ての女性を発見。信子だ。
信子は記憶を消され、セクシースーツを着せられる。おっぱいから出るビームは、たちまち街を白濁した海にしてしまう。
地球の危機。
そんなニュースを聞いた歩美が早く避難しようと荷物をまとめ、正義を促す。
そこに貴士がやって来る。信子を助けに行く。愛する者を守るため。悪い奴らがいるだろうが、五段の腕前を活かすつもりだ。もっとも、将棋の話ではあるが。
そんな貴士にNIKKOも協力すると。自分のタワービルの上に停船するものだから、自作自演を疑われ迷惑している。ビルを開放し、宇宙船に一緒に乗り込むつもりだ。
二人は駆け出して行った。
正義は思い悩む。自分はどうすればいいのか。
兄との思い出。かっこいいヒーローだった兄に、自分はビームが出せないなんて言ったことがある。兄は優しく、大丈夫、勇気をもって自分の限界の壁を越えたら、ビームだって何だって出せるようになると答えてくれた。その時、もらったウルトラマンの人形は今でも大切に肌身離さず持っている。
正義が歩美に自分も行くと告げる。
自分は大切な人、歩美を守りたい。そして、その歩美と一緒に幸せに暮らしていくために、この地球を守りたい。
だったら、この書類にサインをして。婚姻届けと生命保険。どうせ死ぬなら、私にたくさん金を残して。そんな憎まれ口を叩く歩美だったが、その目には涙を浮かべ、絶対に生きて帰れときつく正義を叩いて激励する。
正義は必ず生きて戻るから、その時に結婚しようと告げる。
もちろん、これが死亡フラグとなる。
グッドマン正義、ビューティーバニーNIKKO、貴士はビルから宇宙船に乗り込む。
ビューティーバニーは亀田ロッキーと対決。兎と亀の戦い。童話の世界では、兎は負けるが、そんなくだらない話が大嫌いなバニーは、亀田をしとめる。
貴士は、宮本武蔵之介と。棋士と騎士の対決。貴士の打つ手は見事に武蔵を捕らえる。
正義はボブ・ディラン子と。特に何の取り柄も無い、弱者同士の対決。勝ったのか負けたのか、とにかく、正義は先に進む。
3人の前に、Dr.ワコールが、今や戦闘兵器となった信子を連れて立ちはだかる。
とてもかなわない。でも、貴士は信子の繰り出すパンチを何回も受け続けながら、ノンたんとの思い出を必死に語る。愛の力が、科学の力に打ち勝った。
残るゴディバ。
みんなやられてしまった上に、3人からプライドを傷つけられるような言葉で責め込まれ、やけになって、地球を破壊するビームを発射すると、操縦室へ行ってしまった。
宇宙船が揺れ出す。浮上を始めたらしい。このままでは地上に戻れなくなる。急いで、ビルへと戻ろうとする皆。
しかし、正義だけは残ると言い出す。
ゴディバを倒さないと、地球が滅んでしまう。
正義は一人、ゴディバの下へと向かう。
発射ボタンは押されてしまったようだ。3分で地球はビームの餌食となる。
ビームにはビームだ。
正義は、ビームを出そうとするが、もちろん出るはずも無く。
兄たちが現れる。ヒーローがピンチになった時にそれを助ける者が回想となって現れると言うお決まりの現象だ。
勇気を持て、自分の限界の壁を越えろ、お前は立派なヒーローなんだから。
その時、正義の体から溢れ出るパワーが・・・
20年の時が経ち、あの事件は、宇宙人の地球侵略事件として歴史に刻まれている。
学校の先生である歩美は、生徒たちに授業でその事件のことを教えている。
今の総理大臣のNIKKO、名騎士の貴士が地球を救った。二人は地球のヒーローだ。
教科書にはそう記されているらしい。
歩美は語られることの無かった、もう一人のヒーローのことを話し出す。
その名はグッドマン・・・
前作もそうでしたが、死は曖昧にして、それよりもその人にあった想いや信念が未来に繋がっているという姿を描くラストがとても好きです。
前作は兄たちの想いが弟に。今作では、弟の想いが未来の子供たちに。今度はその子供たちが、伝わったも想いを基にどんな素敵な未来を創り出そうとし、それを脅かす奴らとどんな戦いを繰り広げるのでしょうか。
更なる続編にも期待したところです。
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コメント
SAISEI様
同日同時刻に観劇しているのでどう記事に書かれるか楽しみにしていました。
私の方はそこまで入り込めなかった、というのが率直な感想になりますね。
こういう話キライではないので理由として考えられるものを何点か。
①やはり前日の『遭難、』や『THE BEE』が良すぎて精神がリアリズムになってしまっているので設定が荒唐無稽に感じた(実は巧く作られていたりはしている。なので合わない)。
②1人数役やったはったはりましたが衣装チェンジしていないことが多くイチイチ違う人なんだ、と意識しなければならなかった。インパクトのある衣装だったのでどうしてもその役で観てしまって。
③ホット&クールというのが観やすい脚本。今回もよくよく振り返るとホット&クールあったんですが体調にもよるのかなあ、ホットだけで行った感じ。面白かったんですが観てて疲れた、という印象。
④当日パンフを読むと続編なんですよね。今回だけでも楽しめると書いてありましたが私の鋭敏(笑)な感覚が何かしらおかしいと訴えていたのかも(笑)私、ファンタジーとかSFチックな設定の時、設定がどうのこうの言うこと多いでしょ?(笑) 最初のを観てたらそういうもんなんだと理解して観れるのでもう少し入り込めたかも。
とは言え能力(ちから)のある役者さんは多かった、とは思いました。素人考えかもしれませんがまずは発声ができていること、台詞に感情が載っていること、を結構気にしますし。あとは間とかですかね。
今回はゴディバ役の方(唄種さんの弟らしいですよw)の演技力、武蔵之介役の方の渋さ、貴士役の方の熱さ(特に後半)は印象に残りました。
『旅猫リポート』に続いて唄種さんは今回も好印象。次は7月の『真夏の夜の夢』のパックで拝見かな?(笑) the timeless letterは全然宣伝しないから。せめてDFGにれんらくするとかすればいいのに。4月の公演は行けなさそう。
愛甲さんはこれで役者から足を洗わはるみたいですね。。
投稿: KAISEI | 2016年3月24日 (木) 09時08分
SAISEI様
前コメント補足。面白かったことは面白かったんですよ。時間の経つのはまあ早かったし。
ホット&クールというのは伝わるかなあ。私はガアーと行く部分が大半と脳が感じて疲れたみたいです。メリハリがないと思ったんでしょうね(あることはある)。
私の隣の男の子がメッチャ受けてたんですが芝居の内容かそれとも役者の知り合いで普段とは違う姿に受けてたのか不明ですが(笑)
前コメに書き忘れたのですが正義の味方について描いた作品がチラホラ観られますね。一昨年の彗星マジック(SAISEI さんのブログで拝見)や今年のゴサンケなど。ゼロスはちょっと違うと思いますが(笑)
クリエイターの心をソソルんですかね~(笑)
投稿: KAISEI | 2016年3月25日 (金) 23時16分
>KAISEIさん
ホット&クール、緊張と緩和みたいな感じですかね。
ストーリーとしての話の起伏はもちろん、それにマッチした舞台の熱は観る者の惹き込みにはとても重要な要素でしょうね。
確かに、今回はずっとホットですね。ただ、それを一度もクールダウンせずに突き抜けてみた感は評価していいかなと。
続編の違和感は、そうじゃないかなと感じます。前作では、正義の味方の背景がけっこう丁寧に描かれていますが、今作では少しはしょったところが大きかったように思っています。これだけ見ても楽しめますと言うのには、少し最初の見せ方があまり上手くなかったかもしれません。
演劇関係者の方って、けっこう世の流れに敏感なところがありますよね。言い方悪いですが、厳しい下層で頑張る人たちが多いからかなあ。
大変で辛い、苦しい。でも、社会は何をしてくれるわけでもない。家族だってそれほど理解をしてくれるわけでも無く。
こんな時にいてくれたら・・・正義の味方が。
みたいな思考で、気付くとその想いが脚本になってるんじゃないですかね(゚ー゚)
そうか、林さんと唄種さんは姉弟なのかあ。
前作は、林さんからDMがきて、観に伺ったんじゃなかったかなあ。
愛甲さんはさよならなのか。胸の谷間も見納めだったのか(ノ_-。)
投稿: SAISEI | 2016年3月28日 (月) 18時31分